第32話、詩織からの提案
お久しぶりです!
書き上がりましたので投稿します!
どうかよろしくお願いします!
「ねぇ広樹」
「ん、なんだ?」
鍋をグツグツ煮込みながら、詩織は聞いてきた。
「広樹は……この島に住み続けたい?」
「住み続けたいか?そうだな〜…」
どうしてそんな質問を?
そう聞き返そうと思ったが、質問を質問で返すのはな。
「どっちでもいい」
「それは困るわ。どうして?」
詩織は再び質問をする。
でも困るって言われてもな…
「俺は安全に生きたい。元の世界に帰る方法が見つかるまでな」
だから住む場所に深くこだわってない。
「詩織に魔法を教えてもらえたし、この島では普通に生活できる」
あのアーマードベアに近づかなければ、とりあえずは安全だ。
「今は見えない目標を追いかけているだけだ。だからこの島に住み続ける理由もなければ、出て行く理由もない」
改めて考えると、本当に目標が見えないな。
唯一の手がかりであるテントの出入り口も、元の世界に繋がることはなかった。
正直、どこから手をつければいいのか分からない状況である。
「じゃあ…」
詩織は手を止め、真剣な眼差しで言う。
「この島から出る気はない?」
「島から出る?それはどういう…」
「迎えが来たのよ」
詩織は話してくれた。数日前に詩織の知り合いが島に訪れ、脱出する準備を話し合ったことを。
「遠くない日に準備が整うわ。ごめんなさい。勝手に決めてしまって」
「頭を上げてくれ。謝る理由が見つからない」
知り合いが詩織の生存を知ったなら、必ずそうなった筈だ。それも踏まえて俺が詩織を責める理由は一つもない。
それよりも俺は詩織に感謝している。
「俺は詩織に戦い方を教えてもらった。だから不安なんてない。詩織が島から出るのなら笑顔で見送るよ」
「っ……ええ、だから提案させて」
本当に優しい。別に一人で帰っても文句なんてないのにな。
「私の国に来てくれないかしら」
詩織は真剣に提案するが、そこには小さな不安があった。
「この世界の男って隔離されるんだよな?」
「それなら大丈夫よ。気をつければ広樹の正体がバレる心配はないわ」
詩織は不安を思わせない口調で、余裕そうに事実をした。
「この世界の男は全員隔離されている。人類の存続の為にね。だからもし広樹の姿を見られても、まず男として見られない筈よ」
つまり俺の姿が目撃されても、男として認識されないと?だったら辻褄が合う。
「それに国内ならサバイバルとは無縁になるから、餓死や捕食される心配はない」
確かに。向こうに住めば、男とバレない限り安全だ。
「私が島からいなくなると、広樹は一人になってしまうわ。そうなったら夜が心配なの」
「え、夜?なんで心配なんだ?」
心配される理由が見当たらない。
「指で数えられる回数だけど、何度か襲撃があったのよ。その柵を飛び越えてね」
「っ!?」
その流れから察すると、まさか知らない間に俺は詩織に?
ちょっと土下座した方がいいですか?
「土下座の体制に入るのはやめて」
はい、すみません。
「その時のことを思い出すと、私は広樹を一人にするのが心配なのよ」
「よし!持っていく物の選別を始めるか!」
詩織がいなくなると怖いです。それを改めて知ったよ。
詩織は『島からの脱出』を提案した。
『YES』or『NO』
広樹は『YES』を選択した。