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第31話、島への来訪者(?)

お久しぶりです!

書きあがったので投稿します!

これからもよろしくお願いします!

暗黒髑髏ガシャドクロの右腕を切り落としたまでは覚えている。

だがそれ以降の記憶はない。


気づけば俺は、知っている天井を見上げていた。


「俺は…寝ていたのか…」


「丸一日は寝ていたわ」


隣からの声に振り向くと、そこにはゴリゴリと薬研やげんで何かを砕き潰す詩織がいた。


「そろそろ薬が出来るから、もう少しベッドで寝ていなさい」


「薬?それなら棚に」


「精神エネルギーを回復するための薬よ。棚は探してみたけど、見つからなかったわ」


「ああ、そうか…」


それはないな。


「なあ詩織…戦っている時に…」


記憶違いではない事を祈りたい。


「俺の事情を認めてくれたよな…?」


「ええ、認めたわ」


あっさりと言われる。


「広樹は別の世界の人間で、この世界の事を何も知らない男の子」


薬研から手を離し、詩織は足元に置いていた本を取って、とあるページを見開かせる。


「こんな世界が存在するなんて、本当に夢物語よ。……でも、広樹の力が私に証明してくれた」


その本は俺の売り場コーナーにあった本で、そのページには大勢の男と女が賑やかにキャンプを楽しんでいる写真が記載されていた。


最初は合成写真なのだと詩織は認めなかったが、今となっては諦めたように受け入れている。


「広樹の力を見せられて、私の腕を切り飛ばされて、ここまでされたら広樹は別の世界の人間なんだって認めるしかなくなるじゃない」


「っ…ああ、そうか。ちゃんと切り飛ばせたんだな」


曖昧に浮かぶ記憶だったが、その事実に胸が熱くなる。

あの巨大な骸骨の右腕を両断。


やばい、かなり嬉しい。

物語の主人公になった気分だ。


…………うん。まあ、薄々と分かっていたんだけど、


「あの瞬間……かなり手加減してなかったか?」


「広樹の力量に合わせたのよ」


あ、やっぱりでした。

そりゃあ数日数ヶ月で詩織に追いついたと思ったら。それは詩織に失礼だ。


ちょっと期待していたが、まだ詩織の足元に及ばないのか。


「でも広樹は強いわ。並みの女の子じゃあ勝てないくらいには」


「並みの?」


並みって普通の事?

それは喜んでもいいのか?


爽快そうかいだったわ。男に切られるのって、こんなにも良い心地だったのね」


もしかしてM?

いや、違う事は知ってるけども。


「弱いと思っていた者に切られる感覚。本当なら屈辱を感じるところだけど、全く無かったわ。晴れた気持ちで痛みに耐えられた」


「痛み?」


それってまさか…


「あの、もしかして……あの骸骨への痛覚は全部…」


「私に伝達フィードバックするわ。身体には影響はないけど、痛覚だけは丸ごとね」


え、ごめん。

完全に右腕を切り落としたけど、本当に大丈夫なのか?怒ってない?


「気にする必要はないわよ。たかが暗黒髑髏の右腕くらい、広樹の成長をこの身に味わえただけでお釣りが来るわ」


お釣りが来るんだ…


いや、でも本当に感謝だ。


あの瞬間は凄く燃え上がった。

周囲的にも、俺の心的にも。


俺があの巨大な右腕を……ん?

そういえば、あの暗黒髑髏に気になる部分があった。


「なあ詩織。あの暗黒髑髏の身体なんだが、その…左腕が無いのはもとからなのか?」


砕かれたような右腕の断面に疑問があった。

もしあれが失われたモノなら、俺が右腕を破壊した事によって、最悪の結果が思い浮かぶ。


「もしかして俺は…取り返しのつかない傷を」


「広樹が切り落とした右腕の事?それなら─」


詩織は右手を広げて、


「『暗黒髑髏』」


そう言って現れたのは、手の平サイズの暗黒髑髏。


下半身は無く、あるのは頭と胴体、そして右腕があり、戦う前と変わらない姿がそこにあった。


「元どおりよ。普通・・に破壊された程度なら、しばらくすれば治るわ」


それを聞いて安心した。

ならその元からない左腕は、


「じゃあその左腕は元から無かったのか」


「っ……そう、ね」


表情が突如と暗くなる詩織。

どうしたんだ?


「ねえ広樹。貴方はこの島に住んでいて…安心している?」


「ん?まあ、最初は安心してなかったが、今じゃあ詩織が色々と環境を整えてくれたり、戦い方も教えてくれたりして、とにかく安心している」


「そう…」


顔を暗くさせながら、


「ねえ広樹……貴方はこの島から──っ!?」


ハッと肩を震わせ、詩織は立ち上がった。

そして口元で小さく呟いた。「これは…侵入者?」と。


「広樹。私が帰るまでこの家で待っていて。絶対に外へ出てきては駄目よ」


「お、おい詩織」


「絶対に、分かった?」


「は、はい」


詩織の圧に負けて、心無しに返事を返す。

そして駆け抜けるように詩織はログハウスから出て行った。


どうしたんだ、一体…



────。

────。



第20番─範囲探索フィールドサーチ

精神エネルギーを消費し続ける代わりに、解除するまで発動させ続けられる範囲設置型の魔法。


その範囲内に異物ナニカが入り込めば、自動で発動者に伝わる仕組みで、その発動者である詩織はすぐにその存在を感知した。


目的地は海上。

詩織が『範囲探索フィールドサーチ』で設定していた範囲は、島を含めてその周辺海域50キロメートル程。


その中に入り込んだナニかに、詩織は全力で走って向かう。


そして行き着いた砂浜で、向かって来る対象に片手を伸ばした。


(早いわね…それに海面すれすれを飛んでいる?…敵なら上陸前に狙撃するのが最善…)


精神エネルギーを高め、次に放つ魔法の威力を上昇させる。


その対象の正体が掴めたその瞬間に、詩織は遠距離型の魔法をぶつけようと決めた。


(さあ来なさい。すぐに始末をつけて…ん?あれって…)


視界に映ったものに、その手をゆっくりと下げた。


それは銀色を光らせた球体物。二本のアームを両サイドに生やしたそれは、猛スピードでこちらに向かって来ていた。


(まさか、あのデザインは…)


見覚えるのある浮遊物に、詩織は小さく息を吐き出し、精神エネルギーを体内に分散させる。

もう攻撃は必要ないと、詩織は魔法を撃つ構えたを解いた。


『しーーおーーりぃーー!!』


そして聞こえたのは甲高い少女の声。

海上から向かって来るソレに、詩織は頭をかきながら、


「来てしまったのね…この時が」


諦めたようにそう呟き、詩織は手を高く上げた。

『島に??が上陸した』

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