第3話、猪肉の保存法
やられた…
食料棚が荒らされ、食べられなくなった物がいくつもあった。
その原因となった猪は、今も血を流しながら茂みに倒れている。
初めて動物の命を奪った。
そう思うと胸が苦しくなる。
だが、殺さなければ自分が殺されていた。食料も奪われた。
その事実を思い返せば、スゥと心が軽くなる。
そして次に考えるのは、その猪の身体の行方だった。
どうするか…
猪の身体はほぼ無傷。
斧が刺さった頭部は別として、残りの胴体は綺麗に残っていた。
だから考えてしまう。
この猪を放っておくのは勿体ないんじゃないか?─と、
でも、料理も、保存法も……っ!?
コーナーを走り回り、ソレを探し集めた。
『特殊サバイバルキャンプ』の種類本である。
猪は立派な食料になる。
猪鍋など、猪を使った料理があるくらいだ。
きっと美味しく食べられる筈。
あった!
見つけたのは、『仕留めた食肉の保存法』と記載されたページである。
数ある方法の中から、一番簡単な保存方法を選んで実行に決めた。
『脂肪部分を取り除く』
『肉を薄切りにする』
『海水に一晩漬ける』
『乾燥させる』
まだ詳しい説明文があるが、大きな手順としてはこれだ。
とにかく急ごう。
バケツを持って海に行き、海水を手に入れた。
切れ味の良さそうな包丁を手に取り、本の説明書通りに解体をしていく。
初めての解体だ。刃がうまく入らなかったり、肉をボロボロにしてしまった。
だがそれでも肉は肉だ。
見た目が悪くても、何とか切り分け、薄切り肉にする事が出来た。
肉の量を見る限り、一人で食べるには数週間は持ちそうだ。
安心感に浸りながら、バケツに入った海水に肉を沈めこむ。
これで一晩漬け込むのだが、その次の作業に備えて、乾燥場の組み立てに入った。
既に必要な物はコーナーにある。
ただのロープだ。
それを日陰の木と木の間にかける。
そこに干して、カチカチになれは完成だ。
…………。
やる事がなくなった。
あ、やばい、絶望が振り返りそう……
『猪肉を手に入れた』
『海水を手に入れた』
『包丁を装備した』
『ロープを使用した』