第26話、広樹VSアーマードベア(その1)
アーマードベア。
体長五メートルを超える巨大熊。
アーマードだけに、鎧のように錯覚できる筋肉や骨格がモリモリある。
そんな凶暴そうな熊が、俺の視線の先にいた。
…………え?
アレと戦えと言うのですか軍曹?
行って死んで二階級特進しろとおっしゃるのですか?
だって風格が凄いよ。
まるで島の王者だもん。
天井穴からの光が洞窟広間を照らしてるし、もう最終決戦の舞台だよ。
「これに勝てたら、貴方が島で一番強い事になるわ」
……いや違う。
ちょっと考えてみてほしい。
確かに一瞬そう思ったけど、真に強い存在は俺の背後にいる。
『姫路詩織』彼女こそが島の裏ボス。
バーサークモンスターしおりんなのだ。
あれ?ちょっとカッコよ可愛くないか?
名前にカッコよさと可愛さに満ち溢れてるんじゃないか?
よし!結局は島で一番強くはなれないんだ!
帰ろう!
別にアーマードベアに勝てなくても、この島で生きていけるさ!
「ふんッ!!」
ドドドドッ!
ジャラジャラジャラジャラッ!
飛び上がった詩織が、入り口の天井を崩落させた。
「これで逃げられないし、アーマードベアにもバレたわ。覚悟を決めなさい」
現実逃避して逃げようと思ったけど、もう無理そうです。
「覚悟を決めなさい」
なんで二回言ったの?
そして詩織が怖い雰囲気を漂わせているのは気のせいかな?
あれ?もしかしてバーサークモンスターしおりんって声に出してた?
え、まさかそんな。
「一瞬だけど何か心にムカッときたのよ。あっ、別に広樹に理由があるわけじゃないから!」
ごめんなさい。たぶん俺です。
詩織の野生の本能が、俺の心の声を聞いてしまったんです。
ドシンドシンドシンドシン!
そんな事よりもアーマードベアさんが向かって来てた!?
ヤバイ!どうする!本当に死ぬ!
詩オえもんー!助けてぇえ!
…………。
あれ?いない?
詩織が消えた!?
ヤバイヤバイヤバイ!
「だっ!『第5番─ステルス』っ!」
隠れなければ!
じゃないと殺される!
『アーマードベアが現れた』
『詩織が出口を塞いだ』
『広樹は逃げ道を失った』