第2話、売り場コーナーと共に大自然、突然の狩猟開始
よし、状況を整理しよう。
テントから出たら大森林のど真ん中。
以上!理解不能!
「なんでだぁあああ!!」
大きく叫ぶが、返ってくる返事はない。
あるのは虫や鳥の鳴き声だけで、人間の気配は全くしなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……ふ〜〜」
叫んでスッキリし、一周回って思考がクリアになった。
改めて、今の状況を再整理しよう。
俺はどこかの森にいる。
そして自分の周囲にあったのは、『特殊サバイバルキャンプコーナー』そのもので、
まるで空間を切り取ったみたいに、何故か売り場が丸々とそこにあったのだ。
どう見ても、ドッキリのレベルを超えている。
モニタリングと考えたかったが、その光景が人間業には不可能だと悟らせた。
何度も思うが、これがテレビの企画だったら、ほんとどれだけ良かった事か…
「とりあえず…」
コーナーを漁り、あるものを確認した。
食料、工具、生活用品、医療キッド、サバイバルキッド、開拓キッド。
本当に色々と揃えられている。
これなら数日は生き残れると思い、ひとまずホッとした。
……少し歩こう。
俺は何も持たず、草の低い獣道を歩き出す。
そして数分経って、塩の香りを感じた。
やがて見えてきたのは、
海…
浜辺から見える広大な海。
辺りを見回したが、目に見える範囲に人工物は見えない。
そこで俺は、小さな憶測に恐怖を感じた。
人間業とは思えない不可解な現象によって、この場所に来てしまった事実。
──人間業ではない
つまり、ここは人間が知っている場所ではないのかもしれない。
その可能性を考えれば、ここはなんだ?
もしかしたら……
「な訳ないだろ!!」
思考よりも口が叫んだ。
妄想から生まれた恐怖に、俺は身震いを起こしながら元いた場所に走り出す。
もし、もしもだ。
ここが、この森が、この地域が、
世界のどこでもなかったとしたら──
自分の世界ではない、別の世界に来てしまっていたとしたら──
怖い。そんな事があってたまるか。
何がどうしてそうなるんだ。
俺はただ百貨店に訪れていただけなんだ。
なのにっ、なのにっ、なのにっ!!
俺は無我夢中で駆け抜ける。
そして元いた場所に戻って来た──だが、
ぐしゃぐしゃっっ!
『ブモォォオオオオ!!』
「なっ!?」
食料棚を荒らし、獰猛な雄叫びを上げるのは、黒い毛を生やした猪だった。
しょ、食料!
『ブモォォオ!』
っ!?
猪の顔が自分に向いた。
『ブモォォオオオオ!!』
「なっ!?」
突進してきた猪を間一髪で避け、その場に転げ回る。
そして即座に立ち上がって、足を止めた猪を見た。
まさかっ…俺を…
殺されるっ!
そう思った次の瞬間にも、猪は自分に向かって突進してきた。
「!?」
真横に飛び込んで回避する。
そして目に入った物に、俺は咄嗟に飛びついた。
『ブモォォオオ!!』
「やられるかぁあ!!」
そう叫んで構えたのは、鋭く光る中斧。
新品同然のそれを、向かって来る猪に振り下ろした。
グシャァアアア!!
『ブモォォオオオオオオオオ!!?』
「ぐがぁっ!?」
突進に弾き飛ばされながらも、その断末魔を確かに聞く。
振り下ろした斧は猪の脳天に命中し、悲鳴を上げてすぐに、その猪は動かなくなった。
「ぁ、ぁ……本当に……これは」
肩と背中に痛みを感じる。
その痛覚に俺は、改めて気付かされた。
「夢じゃないんだな」
『売り場コーナーを手に入れた』
『中斧(20000円)を装備した』