第14話、腕相撲
本日二話目の投稿です!
昨夜は投稿ができず、今日の早朝に投稿しました!確認してもらえたら嬉しいです!
どうかこれからもよろしくお願いします!
「広樹、無理を承知でお願いがあるの」
「お願い?」
無理を承知でか。
一体どんなお願いを…
「広樹の力を、私に確かめさせて」
「…………」
俺は即座に土下座する。
そういう台詞は創作物の中だけで聞きたかった。
「俺が悪かった。だから命だけは」
「ちょっと何言ってるのよ!?命なんて取らないわ!」
「回りくどく言ってるんですよ。お前をボコボコにするから動くなよって」
「言ってないわよ!?いい加減に立ちなさい!本当に違うの!」
詩織はテーブルを叩き、そこに意識を向けた。
「腕相撲よ!」
「俺の腕をへし折る腕相撲か?」
「へし折らないわよ!」
だって、詩織との腕相撲なんですよ。
死ぬ。
俺の右腕は今日ここで死ぬ。
ありがとう右腕。
今まで楽しい日々だった。
「私は力を入れない。ただ動かずに踏ん張るだけよ」
「じゃあ確かめるのは?」
「単純に広樹の腕力を見たいの」
俺の右腕は大丈夫そうだ。
でも気になる事が、
「無理を承知でって、どういう事なんだ?」
「……」
詩織の顔が赤く染まる。
「セクハラって訴えられないか心配だったのよ」
「……へぇ?」
「女から男に触らせろなんて、完全なセクハラよ。訴えられたら有罪確定だわ」
そういう事か。
いまだに俺はこの世界の常識を掴めないでいる。
だが常識に囚われる気なんて更々ない。
ガシっ
「っ!?」
「腕相撲だろ。最初から本気でいくが、頼むから折らないでくれよ」
「え、ええっ、分かっているわっ…!」
右腕の安全は確認した。 ならば後は迷いなしに。
「レディー……ゴオ!」
「ふん!!」
詩織の合図に、俺は最初から全力を出した。
歯を食いしばって、全身の力を腕に込める。
だが詩織の腕はピクリとも動かないのだ。
強過ぎる。
改めて詩織の腕力の凄さを実感させられた。
「んんっっ!ぎぃぃ!ふんっ〜〜!」
勝てないと知っている。
でも男の矜持というものがある。
せめて、詩織の目がピクリと反応するくらいには……
カァァァァ〜〜!
あれ?
詩織の顔が熟したトマトみたいに…
「ひ、広樹っ、もう十分よ。あ、ありがとうっ」
「あ、ああ」
手は離れ、詩織が立ち上がる。
「これで広樹の実力が分かったわ……そう、平均よりちょっと上くらいね」
「それはやっぱ、女基準でか?」
「ええ。でも男基準で考えれば、広樹は絶対にトップよ」
それは安心していいのか?
「でも、これではっきりした事があるわ」
ん、赤面が消えて、真面目な顔だ。
一体何をはっきりしたんだ?
「ここは実験場だったのよ。強い男を作り出すための」
いや、それだけはない。
『詩織が腕相撲を申し込んできた』
『詩織は広樹の腕力を理解した』