第13話、詩織の驚愕、詩織の変化
投稿時間が遅れて申し訳ありません!
今日中にも、もう一話投稿します!
これからもどうかよろしくお願いします!
身体が弱く、病気にかかりやすく、出生率が低い。
そんな生まれながらにして可哀想な劣等種。
それが男だと思っていた。
だが広樹だけは違った。
私が魅せられた光景は。
広樹が奮闘した戦いは。
泥だらけで、必死で、余裕のない姿だったけど。
私の知っている男とは正反対で──
────。
────。
「不甲斐ない勝ち方だったけど、フレイムボアを倒したのは事実だ」
挑発、目潰し、森林火災、何でもあり。
卑怯と非道のオンパレードだった。
…………ほんと不甲斐ない。
でも俺も丸焦げなんです。だから勘弁してください。
「…………」
「これで俺も狩猟に……ん?」
「…………」
「おーい、詩織ー?」
「…………」
返事がない。ただの屍のようだ。
いや、顔が赤いから生きている。
…………はぁ
俺は両手を構えて、バチンッッ!!と、
「っ!?」
俺の強い一発拍手に、詩織の肩が大きく揺れた。
「目が覚めたか?」
「え、……ええ」
「これで俺の強さを認めてくれるか?地形を利用した頭脳プレイだ。リトルチキンなんて目じゃないだろ?」
「あっ、ええ…そうね」
抜けた声の返事だ。
本当に分かっているのか?
「広樹……ちょっと席を外すわね」
「あ、ああ……」
異様な雰囲気を漂わせながら、詩織が森の方へと立ち去る。
…………。
とりあえずフレイムボアを回収するか。
倒した獲物は、ちゃんと食料にしないとな……
…………。
フレイムボアって、食べられるのか?
あ、でもその前に燃え広がった木々が……
…………あれ、ちょっとマズイかも。
み、水ぅうう!!
────。
────。
あれから数日。
「…………」
俺はいつものように、畑で野菜を育てていた。
狩猟もやらせてくれて、詩織は俺に仕事を許してくれている。
だが、あのフレイムボアを倒した日から、変化した事があった。
「あ、詩織」
「…………」
「……はぁ」
俺は詩織の目の前に立って、両手を構えた。
これで何度目だろう。
バチンッッ!!
「っ!?」
「本当にどうしたんだ?数日前からずっと、心ここに在らずみたいな感じだぞ」
「えっ…ええっ!ごめんなさいね!ちょっとね!」
ぼやけていた雰囲気が消えて、詩織の顔が真っ赤に染まった。
鼻息も荒々しい。
「はははは!ちょっと席を外すわね!そうだ薪集めにでも!」
「し、詩織?」
「行ってきまーす!!」
逃げるように走り去る詩織。
え、本当にどうしたんだ?
────。
────。
フレイムボア。
男では絶対に倒せない凶暴生物。
それに勝った広樹に、私は未知の気持ちを抱いている。
今までの男への概念が壊され、私は広樹への見方を見失っているようだ。
『ブモォォオオオオ!!』
「…………」
避ける。そして頭を一撃殴る。
『ブモォオ!?』
そして倒れたフレイムボア。
殺してはいない。
食料は十分に溜まっている。これは単純な再確認。
この島に生息するフレイムボアの実力を確かめているだけだ。
『…………』
見た限りでは普通のフレイムボアだった。
あの日に現れたフレイムボアと全く同じ。
それに広樹が勝った。
直接的では無かったにしろ、地形を利用して狩猟には成功した。
それは広樹がフレイムボアより強いという事であり……
「この気持ちは……っ〜〜!!」
正体の分からない感情が芽生えた。
ドキドキと表せばいいのか、とにかく心臓の鼓動が早い。
広樹の戦っていた姿を思い出すと、胸が苦しくなって、顔が熱くなってしまう。
私は広樹の事が……『男』という存在が、根本的に分からなくなり始めていた。
『詩織の中で、何かが芽生え始めた』