表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第2話 《新生 最弱で最強のヒーロー 後編》 〜限界改造獣メカメカキョウボラス ムベホスアーマー 登場〜
51/148

#3 おでことおでこがくっついて

 見ると自分の額に押し付けられていたのは、紛う事なきサヤトの額だった。


 ユウタの顔が、油性ペンで塗られたように赤く染まる。


「サ、サヤトさん⁈」


  身じろぎひとつも、サヤトは許してくれない。


「動かない」


 おでことおでこがくっついて、そのまま数秒が経過。


  満足したのか、サヤトが『ほうっ』と息を吐いて離れる。


  対してユウタの心臓は、胸から飛び出しそうなほど激しく動いていた。


 サヤトは姿勢を正すと口を開く。


「ユウタ君」


「はい」


「熱はないみたいね」


「えっ?は、はい。 さっき体温計で測ってもらいましたけど……」


 サヤトは、残像が見えるような速さで座ったまま、後ろを向いた。


「……んな。わた……事が。ん、んん!」


  小さくつぶやき、気持ちを整えるように咳払いをして振り返ると、いつものように刃のような冷たい雰囲気を纏っていた。


「汗をかいていたみたいだから気になっただけ。熱がないならそれでいいの」


  サヤトさん。僕の事心配してくれたのかな?


  改めて目の前のサヤトの顔を見ると、表情は美しく整った人形のように変わらない。


  それでも、昔の、優しかった頃のサヤトを思い出してユウタの胸が暖かくなる。


「……心配してくれてありがとうございます」


 だから、自然とお礼を言ってしまった。


 それを聞いてもサヤトは表情一つ変える事なく、冷静に応えた。


「お礼を言われるようなことはしてないわ」


  返事したサヤトの膝の上に置いた両手に『ギュッ』と力が込められた事に、ユウタは気づかなかった。




 ユウタは、いつもの冷たい雰囲気のサヤトと話しているのに、不思議と緊張せず落ち着いた気分になっていた。


  だが、サヤトの一言で、心が裂けそうな感覚に襲われる。


「ユウタ君。アンヌさんのことなんだけど」


「はい……母さんは病院(ここ)にいるんですか?」


  サヤトは小さく頷く。


  でもそれだけでは、生きてここにいるのか、それとも息絶えてここにいるのか分からない。


  でも、そんな事を聞けるはずもなく、黙っていると……。


  サヤトが先に切り出した。


「安心して。アンヌさんは無事よ」


  その一言で、ユウタの心の重りが一つ消える。


 けれどまだもうひとつ確かめないといけない。


「あの……フワリ姉は?」


「フワリも、この病院に入院しているわ」


  ユウタは目頭が熱くなってきて慌てて擦る。


  何となくサヤトに泣いているところを見られるのは恥ずかしかった。


「良かった。無事なんですね」


  サヤトは、表情一つ変える事なく淡々と話していく。


「ええ。手術は終わってるわ。後は目覚めるのを待つだけ」


「手術……そんなにひどかったんですか⁈」


  もしかしたら歩けない?


  そう思った途端、自然と語尾が上がってしまった。


「落ち着いて。言葉が足りなかったわね。手術は無事成功。傷跡も残らないわ」


「歩けなくなるとか、そういう事は?」


「ないわ。ただ出血が多くて、体力を多く消耗した事と、手術で麻酔を投与したから、まだ眠っているの。先生は暫くすれば目覚めるでしょうって」


「ああ……良かった〜」


  ユウタは、肺に溜めたままだった酸素を吐き出す。


 それからベッドの上で、サヤトに向けて大きく頭を下げた。


「? 何してるのかしら?」


「その、ごめんなさい。僕のせいでフワリ姉、怪我しちゃったんです」


「どういう事」


  靴をなくしたフワリが素足のまま、それを顧みず自分を探しに来た事を話した。


「そう……」


「ごめんなさい!」


 ユウタ頭を下げることしかできない。


 サヤトからどんな酷い言葉で罵られるのか。


  思っただけで心が潰れそうだった。


「頭を上げなさい。ユウタ君」


  ユウタは頭を上げられない。


  するとサヤトが少し強い口調でもう一回。


「頭を上げなさい」


 ユウタは恐る恐る頭を上げた。


「何で私に謝ったのかしら?」


「それは、フワリ姉を怪我させたのは僕が原因で……」


「だから私が怒ってると? 妹を怪我させた原因に対して」


「……はい」


「もちろん怒っているわ」


  サヤトの言葉の刃が、熱でも帯びたかのように熱くなり、ユウタは肩をすくめて顔を伏せる。


「ご、ごめんなさい」


  サヤトが小さくため息をつく。


「顔を上げて。話を最後まで聞きなさい」


 ユウタが顔を上げたのを確認して、サヤトが続ける。


「怒りの対象は今回の犯人。この事件で一体どれだけの人が犠牲になったか……」


 ユウタは、昨日、目の前に落ちて来たコンテナから滲み出る赤い液体を思い出してしまった。


  傷ついたフワリとアンヌの事を考えるだけで、胸が締め付けられるように苦しくなってくる。


「ユウタ君はフワリだけでなく、多くの人を救ってくれた。その人に怒りを向ける理由なんてないわ」


  サヤトはユウタの左肩に手を置く。


「妹の事、助けてくれてありがとう」


  まるでユウタがシルバーバックを倒した事を、知っているような口ぶりだった。


「サヤトさん……」


 僕の()()()()姿()を知ってるの?


  そう言おうとした矢先サヤトは、こんな提案してきた。


「ユウタ君。アンヌさんに会いに行きましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ