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【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
番外編その2 《地球を守るヒーローだって独りぼっちは嫌なんです!》
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番外編その2の6 (約1600字)

「ただいま〜。やっぱり誰も帰ってきてないか」


  自分のマンションに帰ってきたユウタは玄関を開けると家の中は真っ暗だった。


  闇は冷たく、家に入ることを拒むようだ。


  ユウタは一歩踏み出し、電気を点けてラチカを招く。


「入っていいよ」


「えっと失礼します」


  ちゃんと礼儀正しく挨拶してからラチカは廊下に足を踏み入れる。靴のまま。


「ラチカ。靴、靴脱いで!」


「えっ、脱ぐのか? 家ではいつも履いてるからさ」


 ラチカは、厚いブーツを少し手こずりながらも脱ぎ、白い靴下に包まれた足で廊下を歩く。


 ユウタは、リビングのテーブルの椅子にラチカを座らせてから自分も座り、改めて何があったか聞くことにした。


「君のおじいさんは何してる人なの? 子供を助けようとしたって言ってたけど」


「それは言えない」


  ラチカは俯き、視線を合わせないまま続ける。


「ラチカ達の事は誰にも言っちゃいけないんだ。そもそもこうして人間と話している事はもちろん、姿を見られる事自体もあっちゃいけない事なのに……」


「そんな危険を冒してまで、おじいさんは子供を助けたんだね」


 ラチカは以前俯いたまま首を縦に降る。


「見たんだ。ニコニコしながら子供を連れて行こうとする男を。じいちゃんは姿が見られるのも構わずに家に入って、子供を助けたんだぜ。なのに何で連れてかれるんだよ! 悪いのは男の方じゃないか。そいつを捕まえろよな!」


  怒りをぶつけるようにテーブルを叩いた。


  ユウタはそれに怯むことなく、ラチカに話しかける


「落ち着いて。僕が君のおじいさんを助けるから」


「できるのかよ? お前、女みたいですごく頼りなさそうに見えるぞ」


 それを言うならラチカの言葉遣いも男の子見たいじゃんか。


「大丈夫。こう見えても僕は困ってる人を助けられる力があるんだ」


  ユウタの自身溢れる言葉が通じたのか、ラチカは顔を上げる。


「信用して、いいのか?」


「うん。一つ教えて欲しいんだ。ラチカが見たっていう男の事を」


「ラチカも一瞬だったから詳しくは言えないけど、結構おじさんで、身体つきは太めで身長はお前ぐらいか? 頭はハゲてて、あと茶色のベスト着てたな。笑ってるのにどこか不気味だった」


  その顔を思い出したのか、ラチカは自らの両肩に手を置き、温めるようにさする。


「それだけ覚えていてくれれば上出来だよ。あとは僕に任せて」


  ユウタは立ち上がると、ラチカを置いてリビングから出ようとする。


「おいユウタ。どこ行くんだよ?」


「ちょっと知り合いに会ってくる」


「ラチカも一緒に行くぞ」


  ユウタは首を振った。


「ううん。僕一人で行ってくるよ。ラチカはここで待ってて」


「でも……女みたいに頼りなさそうなお前が、じいちゃんを助けられるのかよ?」


  ラチカの声は震えていた。


  それは祖父を連れ去ったものになのか、それとも何もできない自分自身に怒っているのかは、ユウタには分からなかった。


「今の僕は頼りなさそうに見えるかもしれない。けど僕にはもう一つの姿があるんだ」


  ユウタはオーパスを取り出し、力を解放するためのキーワードを静かに力強く入力する。


「立ち止まるな。一歩踏み出せ」


  ラチカの目の前で、解放された力がユウタを包み込み、彼をヒーローへと変えた。


  その姿を見て、ラチカは驚きすぎて声も出ない様子だ。


「ユウタ……その姿……」


「うん。これが僕のもう一つの姿。少しは信用してくれた?」


  ラチカはそっぽを向いてしまう。


「……分かった。早く連れて来いよ。今日はとっても大切な用事があるんだからな」


「うん。ラチカのおじいさんと一緒にすぐ戻ってくるよ」


 ラチカを部屋に残して外に出ると、音もなく飛び立った。

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