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【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第5話《護振剣 それは護るために振るう力》〜地醜蛾獣ソンブリブル 絶美蝶獣マトゥファーラ 登場〜
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#1 雲の中に……

 深夜。高度九千メートルの夜空を二機の飛行機が飛んでいる。


 シャーペンのような細身な白いボディに三角形の主翼と垂直尾翼。


 コクピット側面の小さなカナード翼が特徴的な、防衛空軍の主力戦闘機E-ペッカーだ。


 今から二〇分前。レーダーサイトが未確認飛行物体を日本海で捉えたのだ。


 その時間に飛行機が通る予定はなかった。


 確認された飛行物体は、まるで灯りに集まる羽虫のように、目的もなく日本海を右往左往している。


  目的は不明だが、日本に近いこともあり、防衛空軍日本支部はスクランブルを発動し、二機の戦闘機を緊急発進させたのだ。


 E-ペッカー二機は無数の星に照らされながら夜空を駆け抜ける。


 下に見えるのは母なる海、ではなく厚い雲の海であった。


「こちらキツツキ1。目標地点まであと一分で到達する」


 二機のうち一機キツツキ1が報告する。


『目標は視認できましたか?』


 女性オペレーターからの質問に否定する。


「いや。確認できない。キツツキ2は何か見えたか?」


『こちらも確認できず』


 僚機のキツツキ2も何も発見できていないようだ。


 キツツキ1は酸素マスクと一体化したヘルメットを着用した頭を、左右や上に巡らせる。


 左に見えるのは少し後ろを飛ぶ僚機。見上げると、新月の為月は見えず、代わりに満天の夜空に照らされる。右側も見るが異常は見当たらない。


 円形のレーダーに目をやる。


 自分と僚機、未確認物体が重なり一つになっていた。


 レーダーでは存在しているのに肉眼では確認できない。


 オペレーターに確認を取る。


「こちらキツツキ1。レーダーの故障という可能性はあるか」


  すぐ帰ってきた返答は予想通りだった。


『こちらに問題はありません。依然としてレーダーに反応があります。何か飛んでいませんか?』


「キツツキ2。何か発見できたか」


『いや。何も見えない。下にあるのは雲だけだし……』


 そこまで行ったところで言葉が途切れ、閃光が目を灼き、()()()()()()()()()


 キツツキ1は、目も絡むような強い光が起きた左手側を見る。


 下から撃たれた雷を浴びたキツツキ2がエンジンから火と黒煙を吹いていた。


「キツツキ2。大丈夫か!」


『操縦不能、操縦不能』


 キツツキ2のE-ペッカーは煙を吐き続け、機首から雲の海に落ちた。


 肉眼では何が起きているか分からず、聞こえてくる無線でしか状況を把握できない。


『エンジンが死んだ。機首が上がらない……脱出する!』


『キツツキ1。キツツキ2の反応がレーダーから消えました。何がありましたか?』


  女性オペレーターの声音からも、状況が掴めていないようだ。


「突然下から雷のようなものを撃たれた。キツツキ2は被弾炎上して雲の中に消えた。脱出したか確認できていない」


『雷? そのエリアで雷雲は確認されてませんが……』


「だが、雷のようなもので攻撃されたのは確かだ」


 オペレーターと会話していると、無線に割り込みが入る。


『こちら……ツツキ2……無事……脱出した』


「こちらキツツキ1。キツツキ2聞こえるか?無事か?」


『何とか。だが機体は炎上して爆発。今雲の中を降りている……ああっ!』


 突然鼓膜が痛くなるような大声が耳を打つ。


「どうした。何があった?」


「雲の中に、雲の中に……」


「雲の中? 雲の中に何かいるのか? おい聞こえているのか?」


『悪夢みたいにデカい……だ。気をつけろ……そっちに向かってるぞ』


 肝心なところが雑音で聞き取れない。


 だが何かこちらに向かってくるらしい事は分かった。


  キツツキ1は機体を傾けて、風防越しに下を見る。


 見えるのは一面の雲海。


 その雲が僅かに膨れ上がる。


 巨大な翅が雲を跳ね除けるように、突き破って下から現れたのだ。


  キツツキ1は反射的に機体を操り、翅と衝突するのを避ける。


  そのままフルスロットルでその場を離脱。


 プラズマエンジンが限界まで回転し、青いアフターバーナーを噴き出す。


 燃料計の数値がゼロに近づき、強いGで身体がシートに押し付けられているのも構わず、全速力で逃げる。


 レーダーには、一つの光点がキツツキ1の後ろにピッタリと張り付いていた。


『キツツキ1。何があったんですか。報告してください』


 オペレーターの声に返事することもできず、キツツキ1は機体を全速力で左右に蛇行させる。


 それでも後ろにいる何かを振り払えない。翼長六メートルのE-ペッカーより遥かに大きいのに小回りも利くようだ。


 キツツキ1は後方が輝いているのを傍目で見た。


 その光がどんどんと強くなっていく。


 決断は一瞬だった。


 機体の操縦を諦め、太ももの間にあるレバーを両手で思いっきり引っ張る。


 火薬が炸裂してキャノピーが吹き飛び、一瞬遅れてキツツキ1も上空へ飛び出して脱出する。


  しばらくして座席のパラシュートが開いた。


 キツツキ1が下を見ると、今乗り捨てたE-ペッカーが後ろから迫る雷に撃たれるところだった。


 雷撃を浴びた戦闘機は炎に包まれ爆発。


  破片が火と煙を撒き散らしながら雲の海に沈んでいく。


「ああ……あれは」


 キツツキ1は見た。


 僚機を撃ち落とし自分を追いかけ回して愛機を破壊した存在を。


 それは翼長二百メートルはありそうな巨大な蛾に酷似した怪獣であった。


 異様に胴が膨れた蛾の怪獣は、髪をとかす櫛のような触覚を帯電させたまま、雲海の中へ消えていくのだった。

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