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【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第0話 《光臨 地球を救う者》 〜略奪宇宙人イレイド星人、改造怪獣メカキョウボラス 登場〜
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#11 正義が噛み砕かれる

「くっ……フォルモント、バリアー」


 スティール・オブ・ジャスティスは、迫る火球をフォルマントバリアーで防ぎました。


  技を叫ぶその声は、目眩と吐き気のせいで弱々しく見えます。


  バリアーとぶつかった火球が炸裂し、高熱の炎が周囲の赤く色づいた木々を焼き尽くしました。


  衝撃でスティール・オブ・ジャスティスの身体が後退し、大地に両足の跡がくっきりと残ります。


  たった一撃受けただけなのに、円盤の攻撃をもろともしなかったフォルモントバリアーにヒビが入ってしまいました。


  火球の威力もさる事ながら、スティール・オブ・ジャスティスの体内のリームエネルギーがまだ足りないことの証拠です。


  メカキョウボラスは、相手の体調のことなど御構い無しに、息を吸っては火球を吐き出すを繰り返します。


  二回、三回と直撃を受けたフォルモントバリアーの所々に穴が開き、そこから蛇のように侵入した炎がスティール・オブ・ジャスティスの筋肉質な腕や脛を舐め、容赦なく焼いていきました。


  何百本もの針を一度に刺されるような痛みに耐え、半壊したバリアーで火球を食い止め続けます。


  避けることも出来たが、その選択肢は選ぶことはできません。


 何故なら後方に広がる東京には、まだ沢山の人がいるからです。


  侵略者の進行は思った以上に早かったらしく、防衛軍の兵士たちに誘導されながら、道路を逃げ惑う大きなリュックを背負った男性や、子供を抱き抱える女性の姿が見えました。


  スティール・オブ・ジャスティスは自分の作り出したフォルモントバリアーが限界を迎えつつあることを悟ります。


  この事態を打開する為、残る力を全て使い未だ重い右足を一歩踏み出しました。


  火球は容赦なくバリアーを削り取っていくが、それでも前進を止めることなく距離を詰め、メカキョウボラスの目と鼻の先まで近づいたところで、蓄積されていたエネルギーを解放します。


「リフレクト――カウンタァァァ!」


  フォルモントバリアー内部に蓄積されていたエネルギーをメカキョウボラスに叩きつけました。


  スティール・オブ・ジャスティスは衝撃に耐えきれず、熱に焼かれながら後方に吹き飛ばされ、背中を地面に強打するが、痛みに耐えながら起き上がります。


  メカキョウボラスは全身を黒く焦がしながらもその場に大木がそびえるように、しっかりと立っていました。


  ゴーグルに光が戻り「お前の力はこんなものか?」と嘲り笑うように口を大きく開けて吠えます。


  スティール・オブ・ジャスティスはすぐさま追撃しようとするも、まだ身体に力が入りません。


  今動こうとすれば、身体は前に進まず、地面に向かって落ちていくような不安定な状態でした。


  メカキョウボラスが咆哮を上げながら迫り、動かないヒーローの左肩を右腕で掴みます。


  スティール・オブ・ジャスティスは、自由な右腕で引き離そうとするが爪が肩に食い込んで動きません。


 そちらに意識を奪われていると、突然、右の脇腹に激痛が走りました。


  怪獣の爪が脇腹を抉り、ナノメタルスキンに火花が散って四つの傷が走っています。


 メカキョウボラスは、ヒーローの左肩を掴んでいた右腕を離すと、頭めがけて振り下ろしました。


 スティール・オブ・ジャスティスは咄嗟に左腕を盾にして防ぐが、さらに追い討ちを受ける事になってしまいます。


  盾にした左腕を掴まれて防御が崩された隙間に口をねじ込まれ、無防備な右肩を噛みつかれてしまいました。


  メカキョウボラスの強靭な顎にナノメタルスキンが破壊され、乱杭歯に右の僧帽筋を食い千切られ、鎖骨と肩甲骨が砕け散った音が体内から聞こえました。


 スティール・オブ・ジャスティスの口から、かぼそい悲鳴が吐息と共に漏れます。


「がっ、がぁぁぁっ」


  自分の右肩に食い込む乱杭歯を引き離そうとするも両腕に力が入りません。


  次第に腕だけでなく、身体からも力が抜け、怪獣の口に咥えられた人形のような格好になってしまいました。


 メカキョウボラスは興味を失ったのか、口を開いて、砕けたナノメタルスキンと共にスティール・オブ・ジャスティスを地面に落とし、その背中を踏みつけてから未だ避難を完了していない東京に矛先を向けようとしています。


  完全に力尽きたスティール・オブ・ジャスティスは、見る見るうちに身長六〇メートルから一八〇センチに戻ってしまい、メカキョウボラスの踏みつけて出来た足跡の中で土に塗れてしまいました。


  ダンの意識が底なし沼に落ちるように深く深く落ちていきます。


『……ン、ダン』


  遠くから誰かに呼ばれているのは分かったが、土に埋まった顔はおろか、指一本動かせません。


『……ン。しっかりして! 怪……が、東京に向かって……このままじゃヴェルトオヴァールが』


  ノイズ混じりでも分かるアンヌの悲痛な声を聞いたスティール・オブ・ジャスティスは、言うことを聞かない身体に鞭打ち起き上がろうとするが、それも叶わず、土に顔をぶつけるだけです。


  苦労しながらも、うつ伏せの姿勢から仰向けになって顔を上げると、メカキョウボラスが尻尾を嬉しそうに振りながら東京に迫っていました。


  あと少しで街が蹂躙される寸前、左右から飛んできた光弾がメカキョウボラスの胴体に当たり、十を超える爆発が起きました。


  メカキョウボラスの側面の道路に布陣していたのは防衛陸軍の10式戦車です。


  左右に八両ずつ、合計一六両の戦車隊が一斉に主砲の120ミリ砲を発射。東京に迫る怪獣に、砲弾が外れる事なく命中し次々と爆発が起きます。


  しかし、十六門の戦車砲に撃たれても、メカキョウボラスは痛がる様子も見せず、面倒くさそうに自分の皮膚についた火の粉を振り払っていました。


  戦車隊の次に攻撃を開始したのは空を飛ぶ鋼鉄の鷲です。


  スティール・オブ・ジャスティスに救われ、補給を済ませたF-15J七機が対地ミサイルでメカキョウボラスを攻撃していきます。


  七発の誘導弾が全て当たるも、やはり怪獣は倒れません。


  人が周りを飛ぶ羽虫を煩わしいと思うように、メカキョウボラスも自分を攻撃する防衛軍を邪魔なコバエだと思ったようです。


  空を飛ぶ戦闘機に向け、口を大きく開けて火球を放ちました。

 

 F-15Jは回避に成功するも、攻撃が出来なくなってしまいました。


  次にメカキョウボラスは戦車隊に狙いをつけて火球を放ちます。


  10式戦車は急発進して攻撃を避け、走りながら主砲で攻撃を加えるが、効果は今ひとつのようです。


  スティール・オブ・ジャスティスは怪獣と防衛軍の戦いを見て、自分の動かない身体を叱りつけていました。


  こんな所で寝ている場合じゃないんだ! 僕の身体。頼むからもう少しだけ動いてくれ!


  地面に縫い付けられたように動かない身体を無理矢理起こし何とか立ち上がる。が、激しい目眩に襲われ、地面に片膝ついて座り込んでしまいます。


「立ち止まるな……一歩、一歩踏み出せぇぇぇぇっ‼︎」


  ダンは、人類を、この世界を、そして最愛の人を守る為にもう一度立ち上がり、右足に力を込めて踏み出しました。


「うおおおおおおっ!」


  叫ぶ事で自らの肉体の枷が解き放たれたのか、亀のような一歩一歩ではあるが、動けるようになりました。


 次第に速度を上げ、今出せる全速力で怪獣に踏み荒らされた並木道を進むみます。


  走れるようになったとはいえ、今も吐き気がするほどの目眩と、風邪をひいたときのような怠さが続いている。更に右の脇腹と左腕前腕は引き裂かれ、右肩は噛みちぎられて今も腕は上がりません。


  それでも、左腕は動く。両足も動く。立ち止まってる場合じゃないんだ!


「アンヌ聞こえるかい。アンヌ!」


  応えたアンヌは涙声でした。


『ダン⁈ 大丈夫なの?』


「何とか。この無線を戦車と戦闘機の部隊に繋げてくれ」


  アンヌに「少し待ってて」と言われて、走りながら待つと、すぐに返事が返ってきました。


『繋がったわ』


「ありがとう。今戦っている兵士達へ。僕に任せて後退するんだ。奴には勝てない。犬死するだけだ!」


  弾丸のような速度でメカキョウボラスとの距離を詰めると、目の前にあった尻尾を掴みます。


  身長一八〇センチのヒーローは、全身の力を振り絞り、左腕で尻尾を握りしめ、両足を杭のように大地に突き刺して七〇メートルの怪獣の動きを止めるのでした。

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