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7:出発点

 ーーつまりだ。 

 これが神から授かった恩恵の最後の一つ。

 ものづくりの才能を限界の最大値に底上げしたことによる、異常なまでの製作脳。

 

 図鑑で得た知識を総動員して、作りたい物に必要な素材を無意識に脳内でピックアップしている。

 いや、待てよ、図鑑を見たといっても魔物のもつ特性など全て覚えている訳では無い。

 さっき頭に浮かんだ魔物たちもほとんど見覚えが無かったのだ。


 逆だ。

 製作の才能により、作ろうとする物のイメージが細部まで見えてくる。

 そしてどんな素材があれば製作可能なのか想像できる。

 その要求に関連・類似する素材を図鑑側のオプション機能《*自動検索システム》が拾い上げているのだ。

 グーグル先生並の驚異的な性能である。


 それが先の一連の流れ、その答えだろう。

 ーーあくまで推測だが。


 なんにせよ驚くべきことがある。

 完成する弓のイメージや作業手順の理解に関しては、人智を超えたスキル等では無く人間としての能力の範疇であるということだ。

 能力……この場合は製作においての俺の才能か。

 ーーまさしく天才の視点。

 アインシュタインやエジソンといった前世の名高い発明家たちも、近い感覚を持っていたのかもしれない。

 才能というものは、突き詰めるとこんなことまで可能にしてしまうのか。


 会社で働いていた頃の、以前の自分からは味わえないような境地。

 その現実に俺は妙な気持ちになった。

 なんて言やいいのか……まあいいか。


 とにかくこの才能と図鑑スキルの組み合わせは強力無比。

 事実上、素材さえあれば俺にはありとあらゆるものが作れてしまうということだ。

 

 ポケ○ンかと思ったらモ○ハンだった!

 一狩りいこうぜ!


 ……違うか。

 

 しかしなぜ神様に図鑑というスキルを持たされたかこれで合点がいった。

 製作の才能とエシュタル図鑑。

 この世界でのものづくりにおいては最高のセットだろう。

 転生時の質問に対する回答がコレなのだ。


 好きなだけ作ってええぞ、ってことだな神様!

 怪しいなんて言ってゴメンナサイ、この能力最高です。

 本当にありがとうございました。 


 どこかで見ているのかもしれない神様にとりあえず拝んでおいた。



 さて、自分の身辺調査はこのぐらいにしておいて。

 これからどうするか考えよう。

 整理してみるとこんな感じか。


 今の自分が置かれた状況ーー


 ・魔物ウジャウジャ山の中。廃小屋にステイ。近くに水場。


 ・そもそも現在地が全くわからない。遭難中。ふもとに人里があるのかも定かではない。


 ・武器を作ることはできる。現状狩ることができる魔物は数少ないが。


 ・体力や筋力は高い。トップアスリート以上のスペックかと思われる。


 大まかにこんなところか。

 俺がとれる選択肢は限られてくる。


 この廃小屋に、人が住んでいた形跡があるくらいなのだから、案外人間たちが暮らしている場所は近いのかもしれない。

 だが山を下りる途中でフォレストクロウベア以上の……。

 魔物ランク★3以上と遭遇したら多分死ぬ。今の俺では。

 まあそもそも山を下りるにしても方向さえわからないデスケドネ。

 

 かといって何もしないままここにいても餓死するだけだ。

 小屋には食料品など欠片も残っていない。

 人の手を離れて何年か経っているのだろう。その割に劣化具合はそこまで酷く無いが。



 「ふう……なるほどなー」

 

 ギシッと軋む木の椅子に腰かけながら、一人呟く。

 自分の選択が生死を左右する状況に、解放感を感じていた。

 前世では得ることのできなかった体験。

 日本という平和な国で生きていた俺には今までに無かった。こんな感覚は。



 この世界では自分に正直に生きよう。

 前世でできなかったことをやろう。

 自由にーー。



 俺は先ほどまでに得た情報を再度検分し、そしてーー。

 この世界に初めて着いた時とは違う、新たな一歩を踏み出したのだった。

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