6:図鑑について−2
自分の脳内に、とんでもないものがあることに興奮する俺。
(次は次は〜……)
メインメニューに戻って《*全国図鑑》をひらく。
するとNo.1から名前付きでズラ〜っとリストが出てきた。
ーーうお、多いな。
俺はあまりの文字の多さに、ふらりと少したじろぐ。
なんせ頭の中にイメージとして見えているのだ。
こんな経験初めて……。
気を取り直してよく見ると、端の方には1/1000と数字が記載されている。
ページ数の表記かと思ったが、どうやら魔物の種類の総数みたいだ。
例えばNo.12のあたりに目線(と言うのも変な感じだ、意識、か?)を向けると、数字の表記は12/1000と変化している。
ということはこの世界に魔物と分類される生物は1000種類存在するということだ。
多いようで少ない……いや多い。
そしてもう一つ、名前の横に★がついている。
これはモンスターの説明のとき、名前の後に出てたランクだろう。
まるでゲームか何かで見たことがあるこの手のは、たいてい強さとかレアさ加減で★が増減するはずだ。
(この図鑑もそうなのか?)
ちなみにフォレストクロウベアはNo.67だった。
ランクは★★。
その前後あたりのナンバーもクマ系の魔物で集まっているが、後のナンバーほどランクが高い。
No.72のメギドブレイズベアなんて名前だけで強そうで、ランクは★★★★★★★。
これは強い(確信)。
ソート切替もあるようで、ランク順にしてみる。
ランクの最大は★10のようだ。
さっきのよりまだ上がいるんだな……。
何体か存在するうちの一体を見てみる。
《レギルス・オルタ:★★★★★★★★★★》
《火山地帯に君臨する竜種の王》
《牙:アレキサンド鉱石より硬く、魔力を通すと斬撃波が発生する》
《角:魔力を吸収する性質をもつ。大量の魔力を蓄えることができる》
《心臓:魔力を永遠に生み出すことができる器官。ただし、生成速度は遅い》
はー竜王ときた。
やっぱりランクは強さ順のようだな。
しかし竜か。こんなヤツに襲われたらひとたまりもないぞ。
恐ろしい世界だぜ……。
首筋に冷や汗が垂れ落ちた。
改めて俺はこの世界が俺の知っていた世界とは全くの別物だということを自覚する。
クマから逃げた時から感じている何とも言えない気持ち。
その感情が胸中で強く大きくなっていくのを俺はじくりと感じていた。
(ぐ……ビビってるのか、俺?)
いや! ええい、ビビるか! こ、怖くなんかねえ!
俺は強く自分に言い聞かせた。
そうじゃないとやってらんねえって。
しかし説明文にある魔力という単語。
この世界に魔法なるものの存在があるということは確定したわけだ。
魔法、かぁ。
(ホント、ファンタジーな世界だよなあ)
俺のこの体は転生の際にいろいろと細工されているらしく、たしか肉体の基礎ベースをMAXにしたとあの憎き天の声は言っていた。
実際クマに襲われたときは、自分でも信じられんほどの脚力で逃げ切ることができたのだ。
なので、もしかしたら俺は魔力も多いのかもしれん。
チート無双も夢じゃない!?
なんてアホなこと考えたりビビったりしながら、他にもいくつか魔物を見て過ごす。
多分この世界でここまで魔物について詳しい知識を保有しているのは俺一人だろう。
なんたって神様からのオプション装備だからな。
さっきは冗談めかしたが、もうチートと言っても過言じゃない。
ちなみに他のメニュー《*モンスター分布》《*メニュー新規作成》はなぜが選択不可だった。
なにか条件があるのだろうか?
一通り図鑑を見終えた後、俺は考え込むようにしてうーむと唸る。
図鑑から得た情報を元に人里に下りて知識人として重宝されるのもいいだろう。
それとも魔法を勉強し、異世界無双を目指してみるのも悪くない。
だが正直、今の俺は魔法や異世界人との交流よりも気になることがあった。
図鑑を見る限り、魔物の部位にはそれぞれ様々な特性や能力があり、この素材を使ったら何か面白いものが作れるんじゃないかと考えたのだ。
まあしかし、今の俺は魔物を倒すどころか武器すら持っていない。
こんな状態ではまたクマに襲われるだけでも、かなり危険だろう。
山を下りるにしてもここに留まるにしても俺には武器が必要だった。
何があればあんな魔物を倒せるんだ。
剣? いや危険だ相手は素早く獰猛な可能性が高い。
剣技もろくに知らない俺では、いくら筋力が上がっているからといっても勝てないかもしれない。
それに、いざ目の前に対峙したときに、自分が恐怖心に勝てるか不安だった。
せめて……弓。
弓のような遠距離の武器なら恐怖も薄い……はず。
当てる技術は訓練しなければいけないが、奇襲をかける際でも有効になるはずだ。
だが問題があった。
俺は弓なんて作ったことが無い。
それにあいつの毛皮を突き破れるぐらいしっかりした弓矢も必要だろう。
どうしよう、どうしたら。
そう考えていた時、ふいに頭の中に何種類かの魔物の姿がぼんやり浮かんできた。
そしてその魔物たちの素材を使えば、イメージしている弓を作れるという確信があった。
弓を作る手順までもが、なんというか本能的に理解できていた。
これは……。
俺はまたも、転生時のシステムガイドの言葉を思い出していた。
『ーー基礎ベースの《製作の才能》を最大値に』