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ヴォオス戦記  作者: 南波 四十一
ヴォオス戦記・乱
98/152

訓練遠征

 まず始めに、前回の投稿で文章内に非常にお見苦しい点がありましたことをお詫びさせていただきます。


 誠に申し訳ありませんでした。


 投稿後すぐに、文字数の増え方に違和感を覚え、何気に確認したところ、冒頭のゾンの状況説明文が丸々コピーされたものが、その後のジェウデトのストーリーの中に貼り付けられているのを発見しました。


 直ぐに修正しましたが、おそらく投稿後30分以内にお読みくださった方々は、ジェウデトのストーリーがいきなり中断され、すでに読んだ冒頭の文章が再び現れるという非常にみっともなくて意味不明の文章を読まされる羽目になってしまったかと思います。

 

 改めてお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。


 投稿前に誤字脱字の確認、文章の修正を行っているのですが、ジェウデトのストーリー部分に関しましては、短い空き時間を利用しながら執筆していたので、ジェウデトのストーリーの終盤に一度、文章の流れを確認するために読み直しを行っておりました。

 そのため文章的に大きくおかしな部分がないことは確認出来ていたため、ジェウデトのストーリー部分について再度の確認作業は行わずに投稿しました。


 今回の問題が文章の入れ替えなどを目的に起こったミスであればまだ対応も簡単なのですが、実は何故こんな現象が起こるのか、原因不明の症状となっております。

 今回の投稿に際しても、実は同じ現象が起こっており、以下にその症状が発生した部分の文章をコピーして貼り付けておきます。


『ヴォオス国王都ベルフィストに設けられた赤玲騎士団練兵場は、鋭い剣戟の音色で満たされていた。

 鋼と鋼がぶつかり合う甲高い音色の間に、同じく高音域の怒号が混じり、踏みしだかれる地面が鈍い低音を奏で、時折混じる鎧がぶつかり合うけたたましい音が、戦いの交響曲を派手に彩る。

 

 赤玲騎士団が新たな団員を新規募集したのが約一年前。

 ほぼ全員が素人だった新入団員たちであったが、女性の身でヴォオス正規軍と同等の訓練をこなし、男でも音を上げ都ベルフィストに設けられた赤玲騎士団練兵場は、鋭い剣戟の音色で満たされていた。

 鋼と鋼がぶつかり合う甲高い音色の間に、同じく高音域の怒号が混じり、踏みしだかれる地面が鈍い低音を奏で、時折混じる鎧がぶつかり合うけたたましい音が、戦いの交響曲を派手に彩る。

  

 赤玲騎士団が新たな団員を新規募集したのが約一年前。

 ほぼ全員が素人だった新入団員たちであったが、女性の身でヴォオス正規軍と同等の訓練をこなし、男でも音を上げて逃げ出す訓練を、負傷等で離脱した者たち以外の全員で乗り越え、わずか一年という期間で騎士の下地を作り上げた。』


『』で閉じた文章の中のものが今回確認作業の中で発見した異常な部分なのですが、どうやら冒頭部分がどのような原因でそうなるのかコンピューターに詳しくない南波には分りませんがコピーされ、無作為にそれ以降の文章の間に挿入されるという現象が現在起きています。


 上記の文章も執筆中に読み返しを行っていた部分ですので、執筆直後に起こった現象ではないことだけは確実なのですが、いつ、どのような原因でこのような症状が起こるのか、正直南波の知識では追求のしようがございません。


 場合によっては誤字脱字の確認で間違いを発見し、その修正を行った直後に、すでに確認済みの文章内で起こるかもしれません。

 こうなるともはや手の施しようがなく、今後も同様の文章異常が発生する可能性があります。

 もしこのような症状に詳しい方がいらっしゃいましたら、ご助言いただければと思います。

 また、お見苦しい文章をさらさないよう今後も確認作業を続けていきますが、南波の見落としがございましたら、ご指摘いただけると助かります。

 誤字脱字のような小さなものは結構です。

 文章構成上の事故のような文章がありましたらよろしくお願いします。


 本編とは無関係な内容に長々とお付き合いさせてしまい誠に申し訳ありません。

 それではヴォオス戦記の本編をどうぞ!

 ヴォオス国王都ベルフィストに設けられた赤玲騎士団練兵場は、鋭い剣戟の音色で満たされていた。

 鋼と鋼がぶつかり合う甲高い音色の間に、同じく高音域の怒号が混じり、踏みしだかれる地面が鈍い低音を奏で、時折混じる鎧がぶつかり合うけたたましい音が、戦いの交響曲を派手に彩る。

 

 赤玲騎士団が新たな団員を募集したのが約一年前。

 ほぼ全員が素人だった新入団員たちであったが、女性の身でヴォオス正規軍と同等の訓練をこなし、男でも音を上げて逃げ出す訓練を、負傷等で離脱した者たち以外の全員で乗り越え、わずか一年という期間で騎士としての下地を作り上げた。


 赤玲騎士団の充実は全ヴォオス軍の中でも随一であり、一定の評価を得た今でも、その向上心に陰りは見られない。

 女性のみで構成された騎士団を偏見の目で見てきた人々も、今ではそんな視線を向けたが最後、その偏見を力ずくで矯正されることになる。

 その規模はもはや一騎士団を超え、戦となればその中央を支えるに足る一軍にまで膨れ上がり、民衆の、特に女性層からの人気は絶大であった。


 王宮騎士も兼任する彼女たちであったが、現在拠点を置くのは、第四城壁の外であった。

 第四城壁の外とは、つまり王都の外であり、これまでは違法に建築されたあばら家が広がる貧民街があった場所だ。

 新たに建設が決定した第五城壁の建設に伴い、貧民街に住み着いていた人々に雇用が生まれ、不衛生で無秩序だった貧民街はすべて取り壊され、新たな都市計画が進められている。


 貧民街に暮らしていた者たちの最初の仕事は、自分たちが新たに移り住むことになる集合住宅の建築であった。

 住宅は王宮によって運営管理され、これまで違法居住者であった貧民街の住人たちは正式な戸籍を持つことを許され、現在の王都の城門である第四城壁の門を潜り、王都へ出入りすることが許されるようになった。


 まだ集合住宅街が出来ただけでしかないが、それでも人の集まる場所には問題が発生する。

 王都治安兵はサミュエルが起こした反乱によってその数を大きく減じており、三国同時侵攻を退けることに成功したヴォオス軍も、その被害はあまりにも大きく、いまだにその傷は癒えていない。

 兵員募集は随時行っているが、新たに誕生した集合住宅街の治安維持を務めるには、現在の王都治安部隊はあまりにも人手不足だった。

 そこで、王都治安部隊に代わって集合住宅街の治安維持を、その規模を順調に伸ばしている赤玲騎士団が担うため、騎士団の拠点を城壁外に移し、日夜訓練と巡回を行うようになっている。


 練兵場は元々第四城壁内にあったヴォオス軍の練兵場と拠点を新たに新設する予定だった土地を、赤玲騎士団が使用することになった。

 今後は第五城壁が王都ベルフィストの防衛前線となる。

 当然軍事拠点は最前線になくては意味がないので、そのための用地確保は設計段階からなされている。

 臨時の駐留地として確保してあった土地であるため、その使用に対してヴォオス軍と赤玲騎士団の間で軋轢が生まれるようなことはない。


「訓練やめっ!」

 鋭い静止の声が練兵場に響く。

 まだ訓練半ばでの中断に、団員たちは怪訝な表情を浮かべつつも、指示に従いきびきびと整列する。


 先日正式にアナベルが将軍職に就き、リードリットの補佐と王宮警備の責任者に就任したことで、新たに赤玲騎士団の団長に就任したスザンナが、整列した団員たちの前に立つ。

 創設者であり、初代団長であったリードリットと、その後を引き継いだ二代目団長であるアナベルと比較すると地味に見えるが、そもそもリードリットは設立当時はヴォオス国の王女であり、大陸人としては異相である赤髪に金色の瞳という恐ろしく派手な外見をしていた。

 また、アナベルも女性としてはずば抜けた長身に、女性らしからぬ凛々しい顔立ちをしていたことから、王都の女性人気を現大将軍であるレオフリードと二分したほどの人物だ。

 余程外見的特徴がなければ、先の二人と比較されては地味にしか映り様がない。

 だが、これまでスザンナが赤玲騎士団のためにどれだけ尽くしてきたかを知る団員たちは、幹部を筆頭に全員が全幅の信頼と忠誠を寄せている。


「皆、訓練中にすまない。急に持ち上がった話なのだが、五大家の一角、シュタッツベーレン家のヘルダロイダ様より合同訓練のお申し出があった。これはかねてより上伸していた実戦訓練要請を耳にされたヘルダロイダ様が、シュタッツベーレン軍の訓練と、ハウデンベルク城塞軍との北の隊商路の合同警備への参加をご提案くださったものだ」

 スザンナの言葉に、全員が色めき立つ。

 

 ヘルダロイダは以前に赤玲騎士団を訪れたことがあった。

 それも、女性のみの騎士団を物珍しく思い、気まぐれに視察に訪れたというような軽いものではなく、三日間団員とともに寝泊まりし、新人たちに交じって一日中訓練を行うという破天荒なものであった。


 ヴォオスにおける貴族の最高峰、五大家。

 その中でも唯一の女性当主であるヘルダロイダは、女王であるリードリットを除けばヴォオスにおいてもっとも格式の高い女性になる。

 謎めいた笑みをたたえる美貌は妖艶の一言に尽き、同性である女性ですら、その瞳に見つめられると落ち着かない気持ちになる。


 並みの貴族どころか、五大家の当主たち以外は大貴族ですらまともに声をかけられないほどの圧倒的存在感を放つヘルダロイダは、五大家が他のヴォオス貴族と一線を画していることもあり、謎に包まれた存在だった


 そのヘルダロイダが平民出の素人集団に交じり、同じものを食べ、同じ寝台で眠り、同じ訓練を行う。

 常識で考えれば、貴婦人がそもそもそんな環境に耐えられるわけがない。

 だが、ヘルダロイダは平気な顔をしてすべてをこなして見せた。


 三日目の訓練の最後に、模擬戦が行われ、ヘルダロイダはアナベルを圧倒し、リードリットさえもあと一歩というところまで追い込んで見せた。

 これまで知られることのなかったヘルダロイダの実力を知った貴族社会は、その常識をひっくり返されることになった。


 リードリットの実力を疑う者は、もはやこのヴォオスには存在しない。

 ヴォオス西部のフールメントの野において、ルオ・リシタの王子ゲラルジーを討ち、ケルクラーデンの野においては、叔父にして元大将軍でもあったロンドウェイクを打ち倒している。

 これ程の実力者相手に勝利出来る者など、実力主義のヴォオス軍においても、三人しか思い浮かばない。


 それは、大将軍レオフリードと、今では他国から黒の双刃として恐れられる二人の黒衣の将軍、シヴァとオリオンだ。

 この三人が桁外れであることは、ヴォオス東西の雄として知られるブレンダンとジィズベルトが身をもって体験し、証言している。


 リードリットの訓練の相手をまともに務められるのはもはやこの三人のみであり、その訓練風景を目にしたヴォオス軍人は、誰もが言葉なく押し黙るしかないほど、四人の実力は想像を絶する領域にあった。

 そのリードリットに肉薄して見せたのだから、ヘルダロイダの実力が知れようというものだ。


 その後ヘルダロイダは、何かと赤玲騎士団のことを気に掛けてくれるようになった。

 わずか三日とは言え、ヴォオスで国王に次ぐ地位ある女性が自分たちと全く同じ時間を過ごし、その上で圧倒的な実力を示して見せたのだ。

 赤玲騎士団の団員たちはほとんどが平民出だが、貴族であること、女性であることという常識を見事に打ち破って見せた先駆者に共感と尊敬の念を抱いていた。

 訓練だけでは超えられない壁を、先の内乱を乗り越えた先輩団員たちから感じ取っていた新人たちは、今回のヘルダロイダの気遣いに深く感謝した。


「我々には王宮の警備と、ここ第四城壁外の警備という仕事がある。ヴォオス軍に余力があれば城壁外の仕事を代行してもらえたのだが、現状こちらに割ける人員はない。よって、今回のヘルダロイダ様からのお申し出には、新人のみで参加することとなった」

 訓練に参加していた先輩団たちからため息がこぼれ、新人たちの間からは歓声が上がる。


「本日の訓練はここまでとする。出立は明朝。直ちに準備にかかれ!」

 スザンナの号令一下、赤玲騎士団員たちは直ちに行動に移った。

「ファティマ!」

 準備に向かおうとしていたゾン人の少女であるファティマを、副団長に就任したフランシスカが呼び止める。

 他にもルオ・リシタ人のマルファと貴族出身のヴィルフェルミナ、元商人のテレシア、元農婦のソフィーにも声が掛けられる。


「シュタッツベーレン軍と合流するまでは私も同行するが、私はヘルダロイダ様にご挨拶をしたら王都に帰還する。そこで、お前たち五人にはその後の訓練と北の隊商路の警備に際し、新人たちを率いてもらいたい」

「む、無理ですっ!」

 スザンナの言葉に、ソフィーが悲鳴を上げる。

 一年前までただの気の良い農婦に過ぎなかったソフィーに、新人とは言え今やその規模は一万を超える軍勢となった赤玲騎士団を率いろと言うのは酷な話であった。


「まあ、無理だろうな」

 ソフィーの悲鳴に、スザンナがあっさりうなずく。

「だったら、どうしてっ!」

 ソフィーの抗議は至極当然のものであった。


「他の新人たちには、お前たちの補佐をさせる」

「補佐?」

 ソフィーだけでなく、他の四人もスザンナの言葉に小首をかしげる。


「軍律は絶対だ。それぞれが自分勝手に行動しては、数の力は発揮されない。命令に迷いを持たず、即座に行動出来ることは重要だ。だが、同時に戦術理解度を高めることも大切だ」

 スザンナの説明に全員が神妙な顔をしてうなずく。

 これまで赤玲騎士団の訓練は、小集団を軸にした、個人の能力を高める訓練を中心に行われてきた。

 最近になってここに千騎単位の戦闘訓練が加わったが、新人たちは先輩たちとの模擬戦闘において惨敗を喫することになった。

 戦術を理解することの重要性を、身をもって体験したばかりなのだ。


「お前たち新人は、たった一年で驚くほどの成長を見せた。個の力だけみれば、全員ヴォオス軍の正騎士に匹敵するだろう。中でもお前たちは、実力だけなら百騎長、いや、千騎長にも匹敵するだろう」

 予想外の高評価に、一人を除いた全員が照れ笑いを浮かべる。


「でも、実際に千騎を率いることが出来るかと言えば、出来ない」

 唯一笑みを浮かべなかった一人が、感情を交えず事実を口にする。

 ゾン人の少女、ファティマだ。


「その通りだ」

 ファティマの言葉にスザンナがうなずく。

「五人や十人単位の小隊を率いることと、千人を率いることは全く違う。隊の先頭に立ち、真っ先に突き進めばそれでよかったこれまでの小隊と異なり、千という単位は、戦場において明確な影響力を発揮する。千騎が有効に機能しなければ見方が窮地に陥り、逆にその能力を十全に発揮すれば、戦場の勝敗を左右する働きも出来る」

 先ほど照れ笑いを浮かべていた者たちが、表情を引き締め団長の言葉に聞き入る。


「千を率いるということは、千の力が及ぼす効果範囲を把握し、その範囲内で最大限の効果を発揮する指揮を執るということだ。先頭に立つことが有効な場合もあれば、一度も剣を抜くことなく、後方から全体の指揮を執ることもあるだろう。戦場とは予想外の動きを見せる巨大な生き物のようなものだ。その全体の手綱を握るのは軍師の役目かもしれないが、手綱たる我々がたるみきっていては、ヴォオス軍軍師第一席のライドバッハ卿であっても、戦場を御することはかなわない」

 スザンナはここで一呼吸置く。


「千を御すること。それが万という軍勢が蠢く巨大な戦場を御することの根幹だ」

 改めて兵を率いるということの重大さを理解したソフィーたちが、緊張で表情を強張らせる。

 だがファティマだけは、緊張はしても重圧に呑まれるということはなかった。

 自身がどれほど個人の実力を高めたところで、掲げた目標である奴隷とゾン人女性の隷属からの解放はかなわない。

 どれほど正しい御旗を掲げて振ったところで、たった一人では何も成し遂げることなど出来はしないことを、ファティマはカーシュナーを通してよく知っていた。

 ファティマにとって、これから学ぶことこそが本命なのだ。


「同時に、指揮官だけでは千という力は十全にその機能を発揮することはない。一の力を十に束ね、十の力をまとめて百として活かす。千を生かすための、より小さな単位をまとめる部隊長の力も重要になってくる。お前たち以外の新人たちには、一の力を百にまとめ、千へと繋げる力を身につけてもらいたいと思っている」


「お前たち五人にかかる負担は確かに大きいかもしれない。だが、他の新人たちも、ただお前たちに寄りかかっていればいいというお気楽な立場でもない。むしろ団員一人一人のことを把握し、その上でお前たちの意図を酌んで全体の意思疎通を図らねばならない。ある意味気苦労が多いという意味では、お前たち以外の新人たちの方かもしれんぞ」

 スザンナの言葉を引き取って補足したのは、五人の反応を面白そうに眺めていたフランシスカだった。

 苦労するのは自分たちばかりではないと知ると、ソフィーたちの重圧も幾分か軽くなる。


「始めから大きく考えるな。いかんせん急な話だ。お前たちの下準備がまだ整ってはいない。だからと言ってせっかくのお誘いをお断りするなどということは、相手がヘルダロイダ様でなくても今の赤玲騎士団にはない。実戦の可能性が高い訓練と警備に参加出来る機会は、今のヴォオスでは少ないからな。戦に次はない。どんな機会も活かして強さの糧にしろ」

 団長のまとめの言葉に、五人はそれぞれの思いを胸に敬礼した。









「あ~、なんだか今から胃が痛いよ」

 無理だとごねていたソフィーが、胃の辺りを押さえながら愚痴をこぼす。

「ならばお主の夕食は私が代わりに食べてやろう」

 愚痴るソフィーにそう言って笑いかけたのは、貴族出身のヴィルフェルミナだ。

「大丈夫。胃が痛くてもご飯は食べられるから」

 それに対してソフィーは平然と無茶苦茶なことを答える。

 普通、食欲は胃痛に勝ることはない。

 ソフィーの答えに、ヴィルフェルミナは声を上げて笑い、その肩をやさしく叩いた。

 片や元農婦、片や現役貴族という全く異なる生き方をしてきた二人だが、意外なことに気が合い、非常に仲が良かった。


「それにしても急だね。まあ、真夏に軍事訓練するよりは、少し暑さが緩んだ今くらいの時期はありがたいけど、前もってある程度計画立てたりしないのかしら?」

 元商人のテレシアが首をかしげる。


「日頃きちんと準備しているのかも見る抜き打ち検査だったりして」

 笑えない冗談を皆の頭上から降らせたのは、ルオ・リシタ人の少女、マルファであった。

「抜き打ちじゃなかったとしても、馬や糧食の準備が間に合わなかったら、普通に怒られると思う。たぶん出立には陛下も顔を出しそうだし」

 マルファの笑えない冗談に対し、ファティマがそれ以上に笑えない現実を突きつける。


「陛下ってお忙しいのに何かと顔出してくださるよね」

「陛下がいらっしゃるということは、当然アナベル様もお越しになられるはず。先輩方の目もいつも以上に厳しくなること間違いなしね」

 ソフィーが微妙に無礼な物言いをすれば、ヴィルフェルミナは明日の朝の様子を脳裏に浮かべ、眉間にしわを寄せる。


「糧食の準備とかって、先輩たちがしてくれるんだよね?」

 マルファが何気なく尋ねる。

 その言葉に、ファティマがすっと目を細める。


「スザンナ団長は、私たちに(、、、、)新人たちを率いさせるって言った。つまり今回の訓練と警備の遠征の責任者は私たちということになる。準備に関しても私たちが責任を負うことになっていてもおかしくない」

「…………」

 ファティマの言葉に、他の四人が黙り込む。


「ソフィーとヴィーは糧食と武器、備品の準備状況を確認してきて。もし手配がまだなら、その足でヴォオス軍に申請に行って。テレシアとマルファは皆にこのことを伝えて荷台と馬の手配を。私は先輩方と今夜の巡回要員の変更確認をしてくる」

 黙り込んだのは一瞬。

 ファティマの指示に他の四人は「わかった」と答えると、何の疑問もはさまず従った。


 スザンナは五人で率いるようにと言ったが、その五人をまとめるのがファティマであることに、他の四人は何の疑問も抱いていない。

 ファティマはゾン人だ。ルオ・リシタ人であるマルファはまだしも、ヴォオス人であるソフィー、ヴィルフェルミナ、テレシアの三人も、ファティマが指示を出すことを当たり前と思っている。

 それは、この日までファティマが築き上げた信頼の厚さの証明であった。


 それぞれに散っていく五人を、物陰からこっそり見ていたロッテとユリアが、にやりと笑いながら見送る。

「やるな、あいつら。よく気づいたよ」

「本当にね。スザンナも何気に意地悪なことするよね」

 

 ファティマの読みは正しかった。

 スザンナは五人を責任ある地位につけると宣言した。

 その責任の意味を正しく理解しているか、五人は試されたのである。


 一見陰湿なように見えるが、スザンナは新人たちだけでなく、赤玲騎士団全体に質の向上を求めていた。

 勝手なことをする兵士など問題外だが、言われなければ何もしないという兵士も問題だ。

 だが残念なことに、両者は常に一定数存在し、後者は特に多い。


 言われなければ何もしない者たちは、単に怠け者と思われがちだが、意外なことにそうでもなかったりする。

 強制的に徴兵されたわけではない現在のヴォオス軍と赤玲騎士団に、自主的に怠け者が入団したとしても、訓練の過酷さに初日から逃げ出し、脱走兵として罰を受け、その日のうちにぼろ雑巾のような有様になって放り出されるからだ。


 では、何故命令されなければ何もしない者たちが出てくるのかというと、それは思考能力が極めて低いからである。

 けして頭が悪いわけではない。

 だが、入団し、経験することのほとんどすべてが初めてのものである新人たちは、訓練についていくのがやっとの状況で、目の前のことしか見ることが出来ない。

 命じられることをこなすだけで精一杯であり、命令の意味を深く考えるような余裕がないため、広い視野が育たないのだ。


 ある意味命令に忠実な兵士が育っていると見ることも出来るが、ヴォオスは終わらない冬の影響で多くの人材を失っている。加えて先の三国同時侵攻でも、退けることに成功したとはいえ、多くの兵を失い、補充もままならない状況にある。


 幸いにも、敗れた三国の傷の方が、ヴォオスが受けた傷をはるかに上回ったおかげで大きな戦が起こる心配は今のところはないが、これまでのように数で補えた国内の治安維持などの部分が手薄になってしまっている。

 ヴォオスは大陸を繋ぐ大陸隊商路の唯一の交差点だ。

 その経済を支えているのは四本の大陸隊商路であり、これらの往来を安心して行えることが、ヴォオス経済の生命線とも言える。

 規模が縮小してしまった現在のヴォオス軍は、数ではなく、質で対応するしかない。


 それはヴォオス軍とは命令系統で切り離されている赤玲騎士団も同様で、これまでのようにあくまで国王リードリットの親衛部隊的な立ち位置でいればよかったかつてと異なり、現在は人員が不足するヴォオス軍を補い、国内の治安維持のために活躍することが期待されている。


 ヘルダロイダ率いるシュタッツベーレン軍との合同軍事訓練の後に、ハウデンベルク城塞軍とも合流しての北の隊商路の合同警備が予定されているのも、イェ・ソンの実質的滅亡による北の隊商路の安全確保のために、イェ・ソン領深くまで警備に当たらなければならないハウデンベルク城塞軍の支援的役割を務めるためだ。


 順調に団員数を増加させ、その戦力はもはや部隊規模から一軍に相当するまでに成長した赤玲騎士団に求められる役割は、その幅を大きく広げつつある。

 人員の確保も大事だが、新たに任されることになった業務に対応するためには、それ以上に確保した人材を使いこなせる指揮官の育成が急務であった。


 スザンナの意図を見事に酌みとって見せたファティマたちは、翌朝には完璧な出立態勢を整えて見せたのであった。 









 ヴォオス北部にある小都市スニークに、その酒場はあった。

 場末の酒場という言葉がよく似合う、すえた臭いのこびりついた薄暗い酒場の隅に、その男たちは陣取っていた。

 皆一様に薄汚れ、荒んだ目つきをしている。

 一見ただのならず者に思えるが、薄汚れた衣服が実は上等な生地で作られていることに気づいた者はいない。

 

「まずい。こんなものは豚も口をつけんぞ」

 男の一人が小声で悪態をつく。

 男が手にしているのは、この辺りではむしろ高価な部類に入る葡萄酒だ。


「嫌なら飲むな。そもそもこんな酒場の酒など頼むな」

 別の男が悪態をつく男を諫める。

「酒場に来て酒を頼まねば怪しまれるだろうが」

 悪態をついていた男が馬鹿にしたように言い返す。

 それに対して諫めた男が表情を険しくして立ち上がろうとする。


「そのくらいにしておけ」

 別の男が落ち着いた声でたしなめる。

 立ち上がろうとしていた男は怒りを抑えて椅子に戻り、悪態をついていた男は、まずいと文句をつけていた葡萄酒を一息で飲み干すとそっぽを向いて黙り込んだ。

 この場には他に三人の男が席を占めていたが、どうやら落ち着いた声の男がこの中では一番の実力者のようだ。


「お待たせして申し訳ありません」

 そこに、遅れて一人の男が加わる。

 ありきたりな顔立ちをした中肉中背の男は、程よく薄汚れ、誰の注意も引くことなく男たちに交じり、まるで始めからそこにいたかのように場になじんだ。


「我々を待たせるとはいい度胸だな」

 先ほど悪態をついた男が、遅れてきた男にかみつく。

「申し訳ありません」

 男は重ねて詫びた。

「だいたい我らをこのような場所に……」

「そろそろ黙ってくれないか」

 男がなおも遅れてきた男をなじろうとするのを、先ほどの落ち着いた声が遮る。

 先ほどと違い、静かなその声には明確な威圧が込められている。

 言葉を遮られた男ばかりでなく、他の男たちの間にも緊張が走る。

 非難の視線を集中された男は、ふてくされつつも黙り込んだ。


「王都で動きがあります」

 遅れて加わった男が、要件を切り出した。

 ふてくされた男も含め、全員の耳が男の言葉に向けられる。


「先ごろ王都からシュタッツベーレン領に向け、赤玲騎士団が合同訓練のため派遣されました」

 男の報告に、幾人かがそんなことかと失望を露骨に顔に出す。

「派遣される団員は全員入団一年程度の新人で、国王リードリットは団員の訓練を視察するために、お忍びでここヴォオス北部に入ることがわかりました」

 失望の直後にもたらされた情報に、男たちは色めき立った。


「お忍びということは、護衛は少数ということだな?」

「はい」

 問われた男は端的に答える。


「国政を放り出して物見遊山の見物か。早くも馬脚を露したな」

 それまで沈黙を守っていた男が、侮蔑を込めて吐き捨てる。

「所詮は脳みそまで筋肉で出来ている女だ。国政などまるでわかりはすまい。そもそも女などに政治がわかるわけがないのだ」

 別の男も嫌悪感丸出しでリードリットを批判する。

 そのまましばらくリードリットに対する不満が爆発し、それぞれが小声で批判を吐き出し続ける。

 この場で沈黙しているのは、報告を持ってきた男と、終始落ち着きを維持し、乱れない男だけだった。


 それまで抑えつけてきた分、噴き出した感情は容易には収まらない。

 男たちは互いの言葉などには耳も貸さず、不満を口にし続けたが、次第に無言を貫く男の重圧に負け、一人、また一人と口を閉ざしていった。


「このことをドクム卿はご存じなのか?」

 男が問いかける。

 ドクム卿とは、この小都市スニークを含むドクム領を治めるドクム家当主のことだ。


「いえ、報告はあげておりません」

 ここでも男は必要なことだけを答える。

「うむ。賢明な判断だ。このことはこのまま伏せておけ」

「かしこまりました」

 

「あの臆病者が!」

 悪態をついていた男が、声を抑えきれずに吐き捨てる。

 振り向いてまで男たちに注目する者はいなかったが、酒場の人間たちの耳が男たちの方に向けられたことを、報告に現れた男が感じ取り、初めて批判的な感情を、その特徴のない顔に表した。


「なんだ貴様っ! この私に文句でもあるのかっ!」

 自分を批判する空気を敏感に察した男が、怒声を張り上げ立ち上がる。

 後ろに倒れた椅子が派手な音を立て、今度こそ酒場中の人間が振り向く。

「喧嘩か! やれやれ!」

 という無責任にはやし立てる声がそこかしこから上がったが、無言で立ち上がった落ち着いた男がわめく男の後ろ首を掴むと、恐ろしい勢いで机に叩き付けて黙らせてしまった。

 叩き付けられた男は白目をむいて失神している。


「騒がせた。気にしないでくれ」

 男は静かに周囲に詫びると、何事もなかったかのように席に戻った。

 一瞬の静寂ののち、他の客たちは男が示した無言の警告を理解し、男たちを自分たちの意識から締め出した。

 表にこそ出さないが、内包した怒りの大きさは伝わってくる。下手に関わるとろくなことにならないと察したのだ。

 中には面倒事はごめんだとばかりに、早々に席を立つ者までいる。


「ドクム卿がかくまってくれているおかげで、我らはヴォオス中を逃げ回らずに済んでいるのだ。そのことを忘れてはいけない」

 抑えた男の言葉に、白目をむいた男以外がうなずく。


 男たちは三国同時侵攻の際に、内乱を起こした真・貴族連合軍の血縁者たちだった。

 地下競売上に関しては、処罰は関わった者のみとしたリードリットであったが、内乱を起こした貴族たちに対しては、厳しい処罰を下した。

 数少ない例外が、内乱に際し、リードリットを支持し、真・貴族連合軍に関する情報をヴォオス軍に提供したディーフェンター家のレオポルトと、その弟で、情報を受け取り包み隠さずヴォオス軍に提供したヴォオス軍の将軍でもあるリストフェインだけだった。


 それ以外の者たちは、反乱に参加した当主はもとより、その親、妻子、重臣に至るまで処刑され、家系は廃絶されて領地は没収され、行動が疑わしかった親族も容赦なく処罰の対象とされた。

 この場に集った者たちは、領地の立地的な理由により真・貴族連合軍の一斉蜂起に参加出来なかっただけで、真・貴族連合軍の反乱を知りながらその態度を明確にせず、黙認した罪は等しく重いと判断され、爵位と領地を没収された者たちだ。

 本来であれば真っ先に奪われるはずであった命を今も持ち続けていられるのは、ヴォオス軍が三国同時進行によりその戦力を減少させてしまったため、討伐の兵が向けられるのが遅れたことで何とか逃げ延びることが出来たからに過ぎない。


 国外へと脱出した者もいたが、生得の権利を諦めきれない者たちは、身分を伏せてヴォオスの各地に潜伏した。

 表面上は新王リードリットを頂点とした現在の支配体制を受け入れ、素直に従っているように見える貴族たちだが、その中にはいまだリードリットに対する根強い反感が残っており、目立つような支援こそしないが、さりげなく逃亡中の貴族をかくまう者がいる。

 ドクム家の現当主もその中の一人で、自身の屋敷に客人としてかくまうようなことはしないが、逃亡中の貴族たちが潜伏していることには目をつむっていた。


「この好機を逃す手はない!」

 音量は抑えられているが、興奮は隠せない声で、別の男が発言する。

 他の男たちも同意を持ってうなずき、視線を落ち着いた男に向ける。

 後はあなたの判断次第だと、決定をゆだねて――。


「やろう」

 男は瞳に力を込めて、短く答えた。

「だが、我々が集められる戦力だけでは、逃げに徹されると取り逃がす危険性がある。今少し兵力が欲しい」

 続けて発せられた言葉は、報告を持ってきた男に対して向けられていた。


「手配はすでに済んでおります」

「早いな」

 男の回答に、落ち着いた男以外の男たちが感心する。

 ただ一人、反応を示さなかった男は、内心ではその早過ぎる対応に不満を持ったが、黙ってその不満を飲み込んだ。

 他の男たちはいまだに自分は選ばれて生まれたヴォオス貴族だという矜持にしがみついているが、男は自分がもはや選べる立場にはいないということを理解している。

 目的のためには、他人に踊らされる(、、、、、、、、)のもやむを得ない。


「どういった連中だ?」

 頭を切り替えて訪ねる。

「イェ・ソン人の残党です」

 男の答えに元貴族の男たちが不満と警戒の色を浮かべる。


「事が済んだ暁には、すべての罪をイェ・ソン人共に被せてしまおうという魂胆か」

「ここでまた内乱ということになりますと、五大家の影響力を増大させることになりかねませんので」

 手配の早さの裏に潜む魂胆を見抜いた男に、報告を持ってきた男がその理由を説明することで男の言葉を肯定する。 

 これに対し、そこまで考えられているなどとは想像もしていなかった他の男たちが呆気にとられる。


 自分たちを貶めたリードリットに復讐を果たした結果、五大家がヴォオスの実権を握りでもしたら、自分たちは地位を取り戻すどころか、五大家によるヴォオス支配体制を世間に受け入れさせるための、手頃ないけにえにされかねない。

 自分たちがどれほど罵ろうと、リードリットが国王である事実に変わりはなく、国王殺しの犯人が英雄扱いされるような状況でもない。

 五大家によって捕らえられ、弁明など許されないまま卑劣な罪人として扱われ、民衆の前で公開処刑され、国王リードリットの仇を討ったとして五大家の名声を高めるための道化にされて終わりだろう。


 考えなしに行動していたら、間違いなく破滅の入口へと足を踏み入れていただろうと察した男たちは、改めて自分たちの立場の危うさを理解した。


「皆、くれぐれも軽はずみな行動は控えてくれ。それと、彼の処遇はお前に任せる。今回の計画に、彼の力は必要ない」

 落ち着いた声で男は白目をむいた男に一瞥をくれた。

 その言葉の意味するところは誰の耳にも明白であり、男の軽率さに道連れにされかねない危険性を感じ取った他の男たちも、男の決定に異を挟まなかった。


「かしこまりました」

 報告を持ってきた男が丁寧に頭を下げると、落ち着いた男は立ち上がった。

 他の男たちもここでこれ以上の会話は必要ないと理解し、男に続いて立ち上がる。

 そのまま振り向きもせずに店を後にする男たちと入れ替わるように報告を持ってきた男が白目をむいた男に歩み寄り、肩を貸して立ち上がらせた。

 意識がないので歩くことなどもちろん出来ない男を引きずると、男は全員の会計を済ませ、店を後にした。 


 翌朝、顔を潰された裸の男の死体が発見された。

 身元の確認が出来るような物や身体的特徴もないく、行方不明の届け出もないことから、スニークの治安兵たちはさっさと死体を片付け、忘れることにした。

 偶然ではなく、明らかに身元を伏せるために潰された男の顔が、これ以上の深入りを治安兵たちに躊躇わせたのだ。


 一部の人間を除き、小都市スニークは代わり映えのしない日常を始めた――。









「……報告は以上になります」

 ヴォオス王宮の一室で、逃亡貴族に関する報告が行われていた。


「スニークなんぞに潜伏していたのかい、元オルデブローク卿ともあろうお人が」

 そう言って嘲り笑ったのは、盗賊ギルドのギルドマスターであるリタであった。

 本人がよく口にするように、絶世の美女と称するに値するその美貌は、言葉の毒と不思議とよく合い、リタに怪しい美しさを加える。


「接触した男の身元は確認出来たかい?」

「クロクス配下の密偵です。一応張らせていますが、始末しますか?」

「いや、泳がせときな。どうせなら国内の膿を全部かき集めてもらいたいからね」

「わかりました。ヴォオス軍への報告はどうしますか?」

 一応という感じで部下が尋ねる。

 盗賊ギルドは本来存在しないことになっている組織だ。当然ヴォオス軍との繋がりもない。 


「あたしから陛下に報告しておくよ。元々陛下の方から持ち出してきたことだからね。獲物が掛かって喜ぶだろうさ」

 そう言ってリタはにやりと笑った。


「でもいいんですかね? 陛下が自らおとりになるようなことをして。最近はずいぶんと落ち着いたように見えていたんですけど」

「あれは落ち着いたっていうんじゃないよ。ただ忙しくて無茶している暇がなかったってだけさ」

「じゃあ、暇が出来たと?」

 部下の問いに、リタは鼻で笑って首を横に振る。

「単なる我慢の限界だろ」

 リタの容赦ない言葉に、部下を苦笑を浮かべてうなずいた。


「それより、最近の王子様の様子はどうだい?」

「ルートルーン殿下のことですか? 身体を壊すんじゃないかってくらいの勢いで文武に励んでいますよ。おかげでヨナタンから少しは休むように懇願されています」

 報告する部下の声に、隠しきれない好意が混じる。

 盗賊が認めるほど、ルートルーンの努力は際立っているのだろう。


「そいつはよかった。修行の成果を発揮してもらわなくちゃあいけないからね」

 そう言って笑うリタの顔は、カーシュナーを彷彿させる黒い笑いだった――。

 今後は確認作業に時間を取られることになってしまいそうなので、投稿ペースが落ちてしまうかと思いますが、今後もお付き合いいただけると幸いです。

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