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ヴォオス戦記  作者: 南波 四十一
ヴォオス戦記・乱
93/152

カーシュナー私設船団の戦い!

 すっかり遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

 何とか17時ごろには投稿したかったのですが、午前中に急用が出来てしまい、書き上げと修正作業が間に合いませんでした。


 前回3万文字は超えるかなという予想で話を区切ったのですが、今回2万文字以上になってしまったので、結局トータル4万文字以上のお話だったということがわかりました(笑)

 全然文章量の把握が出来ていない!


 ということで、今回も少し長めですがヴォオス戦記の本編をどうぞ!

 海は穏やかに青く、雲一つない空と水平線の果てで結びつき、まるで青い手の平でやさしく包み込むように世界を覆っていた。

 大陸を遠望出来る近海から離れた外洋に、その船団は世界の空と海を独占したかのように、白波を切り裂き進んで行く。


「……来なきゃよかった」

 その甲板の上で、艶のある褐色の肌をくすませて呟いたのは、リュテであった。

 妹のラニは呟く気力すらなく、船縁ふなべりにもたれて遠くをひたすら見つめている。


 奴隷狩り部隊の本隊を殲滅したカーシュナーは、戦力のすべてを都市に返し、自身はダーンを筆頭としたごく少数のみを引きつれ、南方民族の地を東に向けて横断し、そこで合流した船団に乗り込むと、海岸線を離れ、外洋へと乗り出していた。 


「いや~、それにしても、海ってすごいね~。広いね~。青いね~」

 二人の姉妹と違い、船酔いとは無縁のティオが、一人はしゃぎ続けている。

「あんた、なんで平気なのよ……」

 そんな妹にげんなりしつつ、リュテが問いかける。


「知らな~い。いろいろ考えるからいけないんじゃない?」

 苦しむ姉の問いに対し、ティオはどこまでもティオらしく、あっけらかんと答えた。

「それにしてもすごいね! ふねってみんなこんなに大きいの?」

 頭上に高くそびえる帆柱を見上げながらティオは尋ねた。


「大小様々だね。ただ、この船は特別大きいから、驚くのは無理もない」

「このふねで何するの?」

「ゾンの奴隷狩り専用軍船を襲撃するのさ」

「オッホ~ッ!!」

 カーシュナーの答えにティオが歓声を上げる。


「あれ? でもそしたら方向が逆じゃない?」

 そう言ってティオは小首を傾げた。

「っていうか、ここどこ?」

 ぐるりと一周見回しても、広がる海原が水平線で空と交わる景色しか存在しない。

 陸地が見えている間は現在位置を把握出来るが、目印としていた陸地が見えなくなると、途端に方向感覚は失われてしまう。

 そもそも気づくのが遅すぎるが、普通なら気がついた時点で不安に襲われる。だが、ティオは微塵の不安も抱いていない。


「怖くないの?」

 当たり前の反応を見せないティオに、ミランが思わず尋ねる。

「えっ? 何を怖がるの?」

「いや、だって、自分が今どこにいるのかわからないのって不安じゃない?」 

 質問の意図すら理解していないティオに、ミランが細かく質問する。


「ああ、それ? だってカーシュとかあんたたちはわかってるんでしょ? なら、あたしがわかってなくても別にいいじゃん。そもそもふねの動かし方わかんないから、どこにいるかなんて関係ないし」

「それで不安にならないんだ……。ティオってすごいね」

 ミランが呆れつつ感心する。


 ミランに限らず、船どころか海すら見たことのなかったモランとイヴァンも、初めて船に乗せられたときはひどい船酔いと、方向感覚の喪失に苦しめられた。

 正確には太陽の位置で方向はわかるが、自分がいま無限に広がるかのような大海原のどこにいるのかわからない。

 

 自分がどこいるのか――。


 普段考える必要がない当たり前すぎる問題が、いざ自分の現在位置を見失ってみると、ひどく不安な気持ちにさせる。

 それを、他かにわかる者がいるのだから別にいいと言い切るティオの精神構造は、ある意味恐ろしく強靭に出来ていると言えた。


「……馬鹿最強」

 ミランとティオのやり取りを聞いていたリュテが、呻くように呟いた。

「ばか言うなっ!」

 かなりの小声だったが聞き逃さなかったティオがむくれる。


「まあ、ティオが馬鹿なのは置いといて、初めての航海なのに方向までしっかりと把握しているのはたいしたもんだよ」

 カーシュナーが何気にひどい言い草で、それでも感心してみせる。

「置いておくな~っ!」

 とティオが両腕を振り回して抗議するが、誰も聞く耳を持たない。

   

「ティオの目ならそろそろ見えて来るんじゃない?」

 カーシュナーはそう言うと船の進行方向を指さした。

「えっ! なになにっ!」

 怒っていたことなど一瞬で忘れ、ティオは目の上にひさしを作り、カーシュナーが指差す先に目を凝らした。


「……なんか岩みたいなのがつき出ている?」

「残念。岩じゃなくて島だよ」

「しま?」

「そうか。島を見るのは初めてだったね。水に囲まれた小さな土地を島というんだ」

「あれ、海に浮いてんの?」

「いや、下の方までずっと続いていて、海の底まで続いている」

「底?」

 そう言うとティオは船縁からヒヤリとするほど身を乗り出して海を覗き込んだ。


「ぜんぜん見えないんだけど? どのくらい深いの?」

「この船を縦にして沈めても全然足りないくらい深い」

「ちょっとカーシュナー様! 縁起の悪い例え方しないでくださいよ!」

 そこに丁度通りかかったこの船の船長が文句を言う。


「うおああぁぁっ!!」

 船長に詫びようとしていたカーシュナーの言葉を遮って、ティオが奇声を上げつつ弾かれたように船縁から身を離した。

 間の悪いことに気まぐれな風が不意にその勢いを強め、船体をぐらりと揺らしたため、ティオは飛び離れた勢いのまま足を滑らせ倒れ込む。


「あらよっとっ!」

 そんなティオを、まるで揺れなどなかったかのような身ごなしで船長が片腕一本で受け止める。

「気をつけな。初めてにしちゃあ、たいしたもんだけど、海を舐めてると怪我するよ」

 そう言うと船長は軽々とティオを抱き起し、輝くばかりの笑顔を浮かべた。

 間近でその笑顔に接したティオが、思わず見惚れる。 


 この船の船長であるドーラは、船乗りとしては珍しく女性で、女性としてはかなりの長身の部類に入るティオと並んでも全く見劣りしない見事な体躯の持ち主でもあった。

 身長こそ高いが、いまだ発展途上中のティオに比べ、成熟したドーラの身体は圧倒的存在感を発揮している。

 大陸各地の人種の血が混ざりあったその顔は美しく、どの人種にも属さない全く新しい美を兼ね備えている。

 艶のある黒い巻き毛を布で覆い、出るところはしっかりと出て、引っ込むべきところはしっかりと引っ込んでいる女性としては極上の部類に入るその肢体を、簡素な船乗りの衣服に詰め込み、張りのある腰には舶刀カトラスを吊り下げている。

 

「海に化け物がいる!」

 見とれたのは一瞬で、ティオは慌てて先程までのぞき込んでいた海を指さした。

「化け物?」

 そう言うとドーラは船縁に近づき、海面に目をやると、ティオを安心させるべく笑った。


「あれは鮫という魚だ。この辺りの海にはうようよいる。別に珍しいものじゃない」

「でも、めっちゃでかいよ!」

「いや、あれはむしろ小さい方だ。同じ鮫でもあれの三倍は平気であるような奴もいる」

 ドーラの言葉に、ティオは一度海中の鮫に目をやり、再びドーラに視線を戻す。

「あれの三倍。鯨だったら十倍以上の奴もいる」

「十倍以上!」

 ティオは安心するどころか、青ざめあんぐりと大口を開けた。


「ティオは内陸の人間だから、大きい魚は見たことがないんだよ」

 ティオの驚きぶりに慌てるドーラに、カーシュナーが説明する。

「ドーラは猫好きだろ?」

「ええ。それが何か?」

「人間よりもはるかに大きな猫がいるって言ったら信じる?」

「いやいや、そんなのがいたらそれこそ化け物ですよ」

 カーシュナーの言葉を想像出来なかったのだろう。ドーラは半笑いで肩をすくめた。


「ティオ。その首飾り貸して」

 カーシュナーは人の指ほどの長さのある尖った首飾りを受け取った。

「これ何かわかる?」

「動物の骨か何かですか? 魔よけのお守り?」

「お守りは正解。でもこれは骨じゃなくて、獅子の牙」

「しし?」

 カーシュナーは獅子の牙をドーラに渡した。


「えっ? これが牙? いやいや、だとしたらどれくらい大きいんですか?」

「大きい奴だと立ち上がれば俺よりもはるかにでかいよ」

 身長2メートルのカーシュナーよりもはるかにでかい。

 その言葉を手の中の牙が肯定する。

「ティオが暮らしていたあたりじゃあ、うようよとまでは言わないけれど、結構たくさん生息してるんだよ。小型で縞模様の馬がいるんだけど、首筋にがぶりと噛みついて、力ずくでねじ伏せたりする」

 初めてその姿を想像することが出来たドーラは、ティオ同様青ざめた。   


「海怖い」

「陸怖い」

 ティオとドーラは同時に震え上がり、それを見たカーシュナーはげらげらと笑った。


「鮫の顎はないの?」

 さらにティオを脅かそうとして、カーシュナーがドーラに尋ねる。

「ああ、それなら島につけば面白いものが見れますよ」

「島に?」

 鮫の顎を飾りにする船乗りは多い。この船でも探せばすぐに見つかるはずだ。それを敢えて島に着くまでのお楽しみにしたということは、相当な大物を手に入れたのだろう。

「それは楽しみだ」

 ドーラの提案に乗り、カーシュナーはティオを脅かすのを島に着くまで待つことにした。


 島に到着し、カーシュナーはいきなり度肝を抜かれることになった。

 もはやティオを脅かして遊ぶどころの話ではない。カーシュナー自身が誰よりも驚かされてしまったのだから――。


 そこには骨にされて間もない鮫の顎が、角材を支えに口を開けた状態で干されていた。

 それ自体は別に珍しいものではない。

 鮫の顎は土産物として人気があるので、どこの港町でも大物が上がると骨にされる。

 もっとも、鮫の骨格は軟骨であるため、全体の骨格標本は滅多に造られず、丈夫な顎のみ残されることが多い。


 カーシュナーは呆気に取られたまま、開かれた顎の間を通り抜けた(、、、、、)

 つまり、開かれた顎は、2メートルのカーシュナーが歩いて通り抜けられるほどの大顎だったのだ。

 誰も言葉を発しない。

 途中ドーラが面白がって鮫を釣り上げ、どんな魚なのかを説明してくれたおかげで、全員鮫の基礎知識が身についた。

 だから余計に目の前にある鮫の顎の途方もない大きさが理解でき、理解出来るからこそ、一言も言葉が出てこないのである。  


「ご無事で何よりです。カーシュナー様」

 少し離れたところから、カーシュナーに声がかかる。

 そこには巨大な酒樽を思わせる、全身筋肉の塊と化した男が立っていた。


「やあ、シーム。なんでそんなところにいるの?」

 シームはカーシュナーが抱える私設船団の長を務める男で、カーシュナーからの信頼が厚く、それ以上にカーシュナーに対する忠誠が厚い男だ。

 厳しいが基本陽気な性格で、カーシュナーとは馬が合うため、よく飲み明かしては大騒ぎをして怒られている仲だ。

 普段であれば、大歓迎して出迎えてくれるのだが、今日に限っては距離を取り、気を使っていることが一目でわかる。


「今、父さん凄く臭いんですよ」

 シームの態度を訝しく思うカーシュナーにドーラが耳打ちする。

 ちなみにここまでの航海の指揮を執っていた女船長のドーラは、シームの一人娘だ。


「何やらかしたの?」

 カーシュナーが面白そうに尋ねる。

「この大顎の持ち主なんですけど、だいぶ腐敗が進んだ状態で流れ着いた(、、、、、)んです」

流れ着いた(、、、、、)!!」

「はい。この島に、流れ着いた(、、、、、)んです」

 カーシュナーの驚きぶりに、ダーン以外の全員が困惑する。


「始めはあまりにも臭いんで沖まで引っ張って行って石を括って沈めようとしたんですけど、父さんがこれはカーシュナー様に絶対に報告しなくてはならないって言い出したんです。だけど、とにかく異常なまでに臭くて、疫病の心配もあったんで、腐った肉だけでも処分しようってことになったです」

 その時のことを思い出したのだろう。ドーラは鼻の頭にしわを寄せた。


「ただ本当に、どうしようもないくらい臭かったもんで、若い衆はみんなバタバタ倒れてしまって、結局父さんが一人で解体することになったんです」

「さすがシーム。根性が違うね」

「ええ。まあ、私としては父さんが凄いというより、若い衆の根性のなさの方が情けなかったですけどね」

 そう言ってドーラは肩をすくめた。

 ドーラの声が届く範囲似た男たちが、ばつが悪そうに頭をかく。


「そんなことがありまして、父さんは今、凄く臭いんです」

「すいません」

 娘の説明に、シームは面目なさ気に頭を下げた。

「謝らないでくれ。貴重な情報を俺のために残してくれたんだ。シームにこの島を任せて本当によかったよ」

 カーシュナーの言葉に、普段は厳しくしかめられているシームの顔がほころぶ。


「これ使えば?」

 ティオが荷物から素焼きの壺を取り出す。

「虫よけに使っているんだけど、臭い消しにもなるから……、くさっ! くっさっ!!」

 壺を渡そうとシームに近づいていたティオが、殴られたような勢いで顔をそむけた。

 そして慌てて戻ると大きく息を吸い、息を止めると再びシームのもとへと走り寄り、素早く壺を渡すと引き返した。

 その一瞬の間にまとわりついた臭いだけで、ティオの周囲の人間が悶絶する。

 肝心のティオは息を止めたままもう一つ荷物の中から壺を取り出し、大急ぎで中身を全身にすり込んだ。

 そして走り回った後の犬のように、不足した酸素を求めて荒い息をついた。


 シームは厳めしい顔に若干傷ついた表情を浮かべつつも、ティオが持ってきてくれた臭い消しを試してみた。

「駄目だ。鼻が完全に馬鹿になっていて、効いたかどうかがわからん」

 自分の身体の臭いを嗅ぎながら、シームがぼやく。 

「ちょっと待ってて」

 そう言うとティオは、躊躇なくシームに近づいて行った。

 慌てて逃げ帰った場所に到達しても平気な顔をしている。

 その後もためらわずに近づき、ついには目の前に立った。

 先程のように息を止めているわけではない。普通に呼吸をしている。

 そこからさらに顔を近づけて臭いを嗅ぐ。

 孫とまではいかないが、娘よりも若い美しい少女に身体の臭いを嗅がれ、シームがドギマギする。

 鼻が着きそう距離まで近づいたところで、ようやくティオは顔をしかめた。


「さすがに肌の奥に染みこんじゃった臭いまでは消し切れなかったみたいだけど、かなり消えたよ」

 あっけらかんと告げられた事実に、歓声を上げたのはドーラの方だった。

「本当だっ! 隣まで来ても臭くないっ!」

 そう言ってドーラも犬のようにシームの周りの臭いを嗅いだ。

「っていうか、いい歳して何顔赤くしているのよ、父さん」  

 ティオの無邪気な急接近に思わず赤面していた父親に、ドーラは冷たい視線を向けた。


「ま、待てっ! 誤解だっ!」

「この事は母さんに報告するから」

「いや、ちょ、それだけは勘弁してくれっ!」

 筋肉の塊である大きな身体を必死で丸めてシームが娘に懇願する。


「ティオ。後でその虫よけ兼臭い消しの作り方教えて」

 いつもであればシーム親子のじゃれ合いを見て、腹を抱えて笑い転げているはずのカーシュナーが、真面目な顔でティオに話しかける。

 目が完全に商人の目になっている。 


「カーシュナー様、シーム、ドーラ。話が大きく逸れ過ぎています。事態の本質を見失う前に軌道修正してください」

 なかなかの脱線ぶりに、ダーンのツッコミが入ったところで、話はようやく元に戻った。


「……鮫の漂着前後と、その後の漂着物の状況はどうなっている?」

 それまでの脱線ぶりがまるでなかったかのように、真面目な表情で問いかける。

 一瞬儲け話を優先させかけたが、さすがにそんなことをすれば、今度こそダーンのカミナリが落ちるとわかっているので、さすがのカーシュナーも真面目になる。

 ダーンはカーシュナーの面子を考えて人前で説教をすることは滅多にないが、その分怒らせると後が怖いのだ。


「関連があるかはわかりませんが、たしか三年くらい前におかしな波が打ち寄せて来たことがありました。潮の流れを完全に無視した波で、断続的に小さいのが続いたかと思ったら、その後にでかいのが続いて、その後しばらく小さいのが続いたかと思ったら、来た時同様いきなりピタッと来なくなりました」

 つい最近の話と、三年も前の話を関連付けるのは普通無理があるが、その人生を海と共に過ごしてきたシームの言葉に、カーシュナーが疑問を挟むことはなかった。


「その時はそれで終いだったんですが、それ以来どうも潮の流れに微妙な違和感を感じていたんです。それがここにきて、はっきりと潮目が変わったんですよ。こりゃあ、どういうことだと思っていたら、いきなりこいつが流れ着きまして。それ以降これまでなかった漂着物が流れ着くようになったんです」

 シームの報告に、カーシュナーの表情が一気に厳しいものになる。


「それってまずいの?」

 話が全く見えていないティオが、素直にカーシュナーに尋ねる。

「かなりまずいね。この島は潮流の関係で、漂着物が流れ着かないのが最大の利点だったんだ」

「ながれつくと何がまずいの?」

「人がやってくる可能性が出て来るんだよ」

「う~ん。さっぱりわかんない」

 ティオの言葉に、カーシュナーは肩を落とした。


「この島は、ここに存在していることを知っていて、目印のない海の上でも自分の位置を正確に把握出来る者にしか辿り着くことが出来ない島なんだ。だから、目的もなくただ波と風に任せて進んでいる船は、絶対にこの島には辿り着かない」

「ぐうぜんでもダメなの?」

「偶然でも駄目。陸上であれば偶然もあるけど、海は常に動き続けているからね。方向を確認出来ない限り、真っ直ぐ進むことも出来ないんだ」

「かくれ場所にするにはさいこうの島だったんだ」

「そういうこと」


「一応周辺には巡回の船を出しています。ついでに潮流がどう変化したのかも合わせて調査しています」

 二人の会話が途切れると、シームは現状を報告した。

「まあ、潮流が変わったからって、外洋航海術を持たない船は間違っても近づいては来ないから、そこまで神経を使うことはないだろ。でも、今後のためにも潮流の流れはしっかりと掴んでおいて。船の動きはゾンやハウデンの各港の情報収集を強化することで補おう」

 カーシュナーは少し考えると対応を決めた。


 大陸における航海は、沿岸に沿った比較的近海に限定されたものになっている。

 陸地から離れ過ぎてしまうと、現在の航海技術では位置を見失ってしまうからだ。

 突然の嵐にでも見まわれ、強制的に沖合にでも流されない限り、大陸の船はどこの国のものであろうと外洋には漕ぎ出さない。

 仮に潮流の変化に気づいた者が調査に乗り出したとしても、方向を知る手立てが太陽の向きしかない現状では、その調査範囲は沿岸部から約半日の距離が限界となる。その程度の捜索範囲ではこの島は発見出来ないし、何より調査には莫大な費用が掛かる。

 国家事業として取り組まなければ不可能であり、この海域に最も近いゾンが、明確な利益が確保されていない事業に投資することはあり得ない。

 海の情報に関しては、船乗りがもっとも早く掴み、情報の経路は港を交点に商船の流れに沿って広がっていく。

 港の酒場で耳を澄ませいれば近隣の港まで含めた情報は簡単に集まるのだ。


「わかりました。引き続き調査を進めます。それと、こいつはどうします?」

 シームはカーシュナーの指示にうなずくと、骨だけにした鮫の大顎に目をやった。

「ハウデンに戻るときでかまわないから、実家の方に送っといて。兄さんたちが目の色変えて喜ぶよ」

「アインノルト様もヴァールーフ様も、海の生物がお好きですからな。確かにこいつには目の色を変えられるでしょうな」

 そう言ってシームは笑った。 


 アインノルトはクライツベルヘン家の嫡男で、カーシュナーの策略もあり、現在はクライツベルヘン軍の総指揮官に収まっている。

 それ以前はクライツベルヘン海軍の指揮を執っていたが、アインノルトが総指揮官になったことを受け、現在海軍の指揮は次男のヴァールーフが執っている。

 二人ともヴォオス人には珍しく、海に精通しており、その知識は王都の王立学院の海洋学者をも凌ぐ。

 生物としての常識すら覆しかねない鮫の大顎は、二人にとってはまさに大きなおもちゃのようなものであった。


「こんなのに襲われたらひとたまりもないね」

 船酔いからようやく解放されたリュテが、大顎にずらりと生え並んだ巨大な鮫の歯を突きながら身震いする。

「もうちょっと小さいと良いやじりになるよね」

 その切れ味を指先で確認していたティオが、狩人の顔を見せる。

「これなら矢じゃなくて、槍の穂先になりそうだからね。小さいのが欲しけりゃいくらでもあるから後で持て行きな」

 ティオの言葉が耳に入ったドーラが、自分の首飾りを持ち上げてみせる。

 そこにはティオの首飾りと同様に、魔よけ代わりに鏃に丁度良さそうな大きさの鮫の歯が並んでいる。


「これって本当に生き物なの?」

 二人の姉から離れて、ラニがカーシュナーに尋ねる。

「魔物の可能性が高いね」

 ラニの言外の意図を正確に察したカーシュナーが、声を抑えて答える。

 リュテの言葉の通り、こんな鮫に襲われては、どんな巨大船でも沈められてしまう。

 ただでさえ恐ろしいのに、どうやら魔物であるらしいなどと知れ渡れば、怯える者も出てくる。さすがのカーシュナーも、面白がってばかりはいられなかった。


「仮に魔物だとしても、出会うことはまずないでしょう」

 二人の会話にシームが加わる。

 ラニが言葉にはせず、視線だけで続きを促す。

 カーシュナーやシームのここだけの話にしておきたいという空気を瞬時に読んだラニに、シームは聡い子だと感心しながら理由を説明した。


「中身は腐って抜け落ちちまっていましたが、あんなでかい目をした魚は、深海に暮らす魚以外にありえないですから」

 そう言うとシームは両腕を伸ばし、大きな円を作った。その大きさはシームの両腕では足りないほどの大きさだった。

「そんなに!」

 そのあまりの大きさに、ラニが驚きつつ腕の輪の中に入る。


「父さんっ! 何してんのっ!」

 運悪く、そこだけをドーラに目撃されしまい、シームが怒鳴られる。

 ドーラの目にはシームがラニを抱きしめようとしているようにしか見えなかったのだ。

「ま、待てっ! それこそ誤解だっ!!」

 まるで無実を訴えるかのように、慌てて両腕を上げ、シームは激しく首を横に振った。

「どうだかっ! 最近この島にこもりっきりだったからね。欲求不満なんじゃないの?」

「そんなわけあるかっ! 俺は母さんと所帯を持ってから、ただの一度も浮気なんかしたこともないんだぞっ! もちろん商売女にも手を出したことなんて一度たりともないんだっ!」

 必死に弁明するシームに対し、ドーラは冷たい視線を送っただけだった。

 判断は母さんに任せるよと言って背を向ける娘を、シームが慌てて追いかける。


「……なんか、悪いことしたみたいだね」

 呆気に取られていたラニが、さすがにばつの悪そうな表情を浮かべて呟く。

「気にしなくていいよ。半分は面白がってやっているんだから」

 そう言ってカーシュナーはラニの肩を叩いた。

「残りの半分はどうなの?」

「あ~、ま~、仕方がないんじゃないかな。見た目はおっかないけど、シームは物凄く出来る男だからね。優秀な男を女の人は放っておいてはくれないから、どこの港に行ってもシームのところには女の人が集まってきちゃうんだ。ドーラも度量の大きな女性ではあるんだけど、娘としては父親がいろんな女の人と仲良くしているのは気にくわないんだろうね」

 カーシュナーの説明に、ラニが目を剥く。


「さっき言ってことは嘘なの?」

「いや、嘘ではないと思うよ。シームは見た目通り男らしい男だからね。つまらない嘘をつくくらいなら、たとえドーラと奥さんに半殺しにされるとしても、正直に本当のことを言うよ。まあ、モテ過ぎるのも考えものってことだよ」

「女の嫉妬は怖いからね」

 何かを思い出したのだろう。ラニが猫のように身震いする。


「ねえ、カーシュ。どうしてあなたたちはこの島に迷わず来ることが出来るの?」

 不意にラニが真顔になって尋ねる。

 これが訊きたかったことの本命だ。

 これに対しカーシュナーは表情はそのままに、翠玉の瞳にだけ真剣さをたたえて見つめ返した。


「大陸で唯一の外洋航海技術を、ヴォオスではなく、クライツベルヘン家(、、、、、、、、、)だけが持っているからさ」

 ヴォオスではなく、クライツベルヘン家だけが所有している。

 ミランからヴォオスという国について学んだラニは、その意味するところを過たず理解した。


 ヴォオスは大陸で一、二を争う大国だ。国力や文化水準で対抗出来るのは、東の大国ミクニくらいのものだ。

 そしてヴォオスは、その地形的特徴により、海を利用出来ない。

 東の隣国ラトゥから、ヴォオス南部の海岸線は垂直に隆起し、海底も暗礁地帯が延々と続く、長距離を航海する大型船には絶望しかもたらさない海の難所と化している。

 当然ヴォオスも利用出来ず、その経済発展は陸路を中心とするものとなった。

 幸いヴォオスは建国当初に進めた大陸隊商路の整備により大陸経済の中心地となり、繁栄に成功したことで、海路の開拓を必要としなかった。

 事実ヴォオス所有の大型船は存在せず、国内の各地に点在する湖に、遊覧目的の中規模の船が存在するくらいだ。


 そんなヴォオスの中で、唯一海に面した土地を持つのがクライツベルヘン家なのである。

 クライツベルヘン領である都市ハウデンは、もともと独立した一国家であったが、疫病の蔓延により王家が亡び、最後の王の遺言と、有能な人材の多くを疫病によって失い、もはや独力での国力回復が見込めないことから、クライツベルヘン家との併合を望み、現在ではクライツベルヘン領内の一都市として機能している。

 

 ハウデンは元々は漁業を主とする漁村が点在する土地でしかなかったが、造船技術の進歩により、外国船舶が訪れるようになり、ゾン、ラトゥ間に存在する唯一の物資補給地点として栄えることになった。

 船の進歩に合わせて航海技術も進歩し、海路によって大陸の東西がつなげられることになると、経済網の発展と共にハウデンも発展を遂げていった。

 だが、ハウデンはあくまで外国船舶を受け入れる側であり、海産物以外の特産品がないこともあり、造船技術も航海術も発展することはなかった。


 そんなハウデンに、クライツベルヘン海軍は、併合以前から存在していた。

 他のヴォオス領同様、クライツベルヘン領もハウデン併合以前は海には無縁であった。


 はずだった――。


 だが、クライツベルヘン家は、海賊により甚大な被害を受けていたハウデン王家からの救援要請に応えると、瞬く間にハウデン近海を支配し、海賊を領海内から殲滅してみせた。

 クライツベルヘン家の有能さは、建国以来けして表には出さない恐れと共に大陸中に知れ渡っていた。

 国によってはヴォオス王家に対する以上に、クライツベルヘン家を丁重に扱うほどだ。

 その有能さの一端が、また一つ証明されたと当時の人々は考えたが、それは実は異常なことであった。


 海戦は風を読み、潮を読み、敵の動きを読み切って始めて成立する。

 内陸にも川や湖で漁を行う者もいるが、海は全くの別物だ。

 その逆もまたしかりではあるが、内陸の人間に、一朝一夕で海で自在に船を操るなど不可能なのだ。

 

 不可能が可能になるとき、そこには必ずそれまでの常識を覆すだけの知識なり、技術が存在しなくてはならない。

 そして、クライツベルヘン家には、主であるヴォオス王家にも秘密の知識と技術があったのだ。

 大海原を渡る技術、外洋航海術である。


「なんでそんなものがクライツベルヘンにあるの?」

 ラニの疑問は当然のものであった。

「もともと外洋航海術は、大陸の技術ではないんだよ」

「えっ! クライツベルヘンで独自に開発したものじゃないの?」

「そうじゃない。外洋航海術は、渡来人によってもたらされた技術なんだ」

 カーシュナーの言葉に、驚いたラニは咄嗟に言葉が出てこなかった。


「渡来人って、運悪く大陸に流れついちゃった人たちじゃないの?」

「一般的にはそう思われている。そして、彼らに対する大陸人の認識は、金になる珍しい奴隷でしかない」

「ああ、なるほど。始めから奴隷としてしか見ないから、そんな知識があるなんて思われなかったんだ。だから技術も大陸には全然伝わらなかったんだね」

 ゾン人から家畜と同列にみなされていた南方民族出身のラニには、大陸人のものの見方がよくわかるのだ。


「でも、だとしたら、どうしてクライツベルヘン家にはその技術が伝わったの? ヴォオスだって三賢王時代以前は奴隷制だったんでしょ?」

「いや、クライツベルヘン家を含む五大家は、建国当初からずっと、奴隷を所持したことはないよ」

「そうなのっ!!」

 ラニが思わず大きな声を上げる。

 リュテとティオがちらりと視線を寄越したが、カーシュナーと話していることを確認すると、すぐに興味を他へ移した。

 カーシュナーはからかいこそするが、けしていやらしい目的で女性に手を出すような真似はしないと信用されているので、二人はカーシュナーに対しては安心してラニを任せているのだ。


「そんなこと可能なの?」

 今現在も大陸各国では、奴隷の労働力を頼みに王族貴族の領地運営は行われている。

 ヴォオス以外で奴隷制度の撤廃が進まない背景には、奴隷制と経済とがあまりにも密接につながっているからである。

 それを、ヴォオスが奴隷制に楔を打ち込む以前から、奴隷なしで領地運営を行っていたと言われても、まだ知識の浅いラニでもにわかには信じられなかった。


「可能だよ。って言うか、超簡単」

「うっそ~!」

 カーシュナーがあまりにも簡単に言うので、ラニはその言葉をまったく信じる気になれない。


「富を独占せず、平等に分配し、領民の生活のために率先して働けば、人は黙っていてもついてくる。そうなればそれぞれが生活に創意工夫を凝らすようになり、自然と発展していく。奴隷なんていなくても、領地の運営なんて簡単に出来るんだよ」

「それが出来ないから、いまだにあたしたちの土地に奴隷狩りが来てるんでしょっ!」

 カーシュナーの正論に、ラニが全力でツッコミを入れる。


「でも、クライツベルヘン家を含むヴォオスの五大家は、三百年間それをずっと続けているんだよ」

 そう言ってカーシュナーは、珍しく何も含むところのない素直な笑みを浮かべた。

「……凄いを通り越して、どこかおかしいとしか思えないよ」

 現実としての実感が湧かないラニは、ただひたすら呆れるしかなかった。


「つまり、人を奴隷として見ないから、渡来人のことも始めから同じ人間として見れて、そのおかげで知識や技術を受け入れることが出来たってこと?」

「惜しい。正解は、王家も含むヴォオス建国の<六聖血>は、建国王ウィレアム一世を筆頭に、全員渡来人の子孫だったからでした」

「マジでっ!!」

 叫んだ直後にラニは自分で自分の口を両手で塞いだ。

 一応リュテとティオが視線を向けるが、すぐにもらった大量の鮫の歯に視線を戻す。

 カーシュナーに驚かされるのは、何もラニばかりではなく、リュテもティオも同様だからだ。


「それいつもの冗談じゃなくてマジなやつでしょっ! しかも秘密のやつっ!」

 ラニは小声で怒りつつ、カーシュナーの脇腹に手刀を突き込んだ。

 筋肉の薄い部分を的確に突いてくるので何気に痛い。


「秘密だね。まあ、俺の場合、秘密にしても意味ないんだけどね」

 そう言うとカーシュナーは見事な金髪に手をやり、翠玉の瞳が良く見えるように目を大きく見開いた。

 その容姿はどんな説明も不要なほど、思い切り渡来人の血筋を表している。


「だったらなんであたしになんて教えるのよっ!」

「知りたがったのはそっちだろ?」

「いつもはとぼけて教えてくれない時もあるじゃないっ! なんでこんな重要なことをに限って教えてくれるのよっ! そこはあたしに気を使って、いつもみたいにとぼけなさいよっ!」

 ラニが何気に無茶なことを言う。


 カーシュナーは笑いながら肩をすくめると、

「もともと渡来人の知識と技術力の高さを知っていたから、新たに大陸に辿り着いた渡来人から新しい知識と技術を手に入れたってわけ。教えたのは教えた方が理解しやすいからっていうのと、ラニなら大丈夫だろうと思ったから」

 平気な顔で答えた。

 信頼を示されたラニは嬉しく感じつつも、ヴォオスの源流に触れる秘密を知ってしまったという重圧から黙り込んでしまった。


「……それで、これからどうするの?」

 とりあえずラニは、今の話は聞かなかったことにして、考えることをやめた。そして、話題を逸らすために今後の行動を尋ねる。

「俺たちが全滅させた奴隷狩り部隊の調査に来る新たな奴隷狩り部隊を、航海中に襲撃し、海で沈める」

 カーシュナーの答えにラニは目を見張った。

「海戦ってやつだね」

「まあ、まともな戦いになればの話だけどね」

「どういうこと?」

「見ればわかるよ」

「そこはとぼけないで教えなさいよっ!」

 ラニのツッコミと共に、手刀が脇腹に刺さった。


 仲間たちがいまだにその圧倒的な大きさに見入っている巨大な鮫の大顎を見つめながら、カーシュナーはラニやシームにも話さなかった問題に意識を向けた。

 海流の変化。

 それ自体大きな問題だが、深海を棲み家とする巨大な魔物の死体が流れ着いたということは、その変化が深海にまで及んでいるということになる。


 終わらない冬などと言う異常気象に苦しめられ、ようやく解放された思ったところに、今度は海での異常が表面化してきた。

 陸と海。関連がなさそうに見えて、実は海の変化は陸上にも大きな影響を与える。

 海流が変わるなど、並大抵のことでは起こりえない。

 <龍脈りゅうみゃく>に異変が起きたと考えるべきだろう。


 カーシュナーはこの問題が大事に至らなければ良いがと願ったが、その優秀な頭脳は早くも考え得る可能な限りの被害と、その対策。そして、その被害をどれだけ自分に有利に利用するかを検討し始めていた。

 とりあえず、今出来ることは何もない。

 ことに<龍脈>は人の手に負えるものではない。

 海の変化が陸上にどう影響するかをいち早く知るために、カーシュナーはこの問題を自分の組織だけではなく、クライツベルヘン家として取り組むべき問題だと判断した。


 決断するとカーシュナーの切り替えは早い。

 ラニに告げたように、ゾンの奴隷狩り部隊船団襲撃のための最終確認に向かった。

 そして、

「泳げない人は連れていないからね」

 という無情な一言を放つ。


 それまで熱中していたものからいきなり意識を引き剥がされた一同は、一瞬にして顔中に不安を広げた。

「戦っている最中に海に落ちても、助けている余裕なんてないからね。せめて戦いが終わるまで自力で浮いていられるようじゃなきゃあ、それこそただの足手まといでしかないからね」

 そう言うとカーシュナーはニヤリと笑った。


 ミラン、モラン、イヴァンの三人は、奴隷として使役されてきたため、泳ぎを身に着けているような機会はこれまで一度もなかった。そしてそれは、隷従を強いられてきたリュテ、ティオ、ラニの三姉妹も同様であった。そもそも南方民族の地、中原には、人が泳げるような池も河川も存在しない。

 どこまでも広がる大海原を目にした瞬間、六人全員が泳げないという事実に恐怖を覚えていたのだ。


「あたしも?」

 戦闘に参加しない自分には必要ないんじゃない? という期待を瞳に込めて見つめたラニであったが、表情だけは非常ににこやかなカーシュナーの冷たい笑みによって、はかない希望は粉々に打ち砕かれてしまった。 


「じゃあ、全員着替えを用意してあるから、着替えてきて」


 その後、荒波の中に当たり前のように叩き込まれた六人の悲鳴が、島中に響いたのであった――。

 

 







 沿岸部に沿って、ゾンの奴隷狩り部隊を乗せた船団が南下する。

 奴隷を一人でも多く収容するために造られたゾンの大型船は船幅が広く、波の影響を大きく受けるため、その船足は遅い。

 安定も悪いので嵐に襲われるとひっくり返ることもしばしばだ。

 そのため、他国の商船からは「まるでどんぶりを海に浮かべているようだ」と笑われている。


 天候に恵まれ、不安定な船で安定した航海を続けていたゾンの奴隷船であったが、水平線の彼方に染みのように広がり出した黒い存在を確認すると、にわかに甲板上は騒がしくなった。

 退屈な航海が続いていた兵士たちが海賊船かと騒ぎ出し、返り討ちにしてやると息巻く中で、海の専門家である水兵たちは、刻一刻と水平線に広がる存在に不安を覚えていた。


「お、おい。あれ、早過ぎないか?」

 水兵の一人が同僚に向かって呟く。

「っていうか、何で外洋から近づいて来てるんだ?」

 陸地から離れすぎると現在位置を見失ってしまうという恐怖を理解している水兵にとって、外洋は死への入り口に等しく、まるで死の世界から現れたかのように近づきつつある存在を、不気味に思わずにはおれなかった。


「……大型船ですっ! 数は、十隻っ! こちらに真っ直ぐ向かっていますっ!」

 帆柱の上に設けられた見張り台から、緊張をにじませた声が降ってくる。

「十対十かっ! 丁度いいっ!」

 兵士の一人が威勢のいい声を上げ、勇ましく剣を引き抜く。


 船長は、何も理解していない兵士を怒鳴りつけたい衝動に駆られたが、敢えて士気を下げるような愚かな真似はしなかった。

 不意に現れた船団は、風を背後から受けている自分たちに対し、真横から(、、、、)突き進んで来ている。

 つまり、横風を受けながら、恐るべき速度で真っ直ぐに進んでいるのだ。

 それは風を受ける帆の向きを調整することで可能な技術ではあるのだが、同じことを自分の船やろうとすれば、船の向きを変えることすら出来ずに転覆してしまうだろう。


 圧倒的性能差を見せつつ近づく船団に、船長は警告を発する。

「この船はゾンの軍船だっ! それ以上近づくと敵対行為と見なし、攻撃を開始するっ!」

 隣にいれば鼓膜を破られそうな大声で発せられた警告に、答える声はない。

 他の船からも同様の警告が発せられるが、答える声もなければ、船の進路を変える気配もない。


 ゾンの軍船をどんぶりに例えるなら、近づきつつある船団は、波を切り裂く剣のように鋭い形状をしている。

 そしてその鋭い切っ先は、相手の船の細部まで見分けられ程近づいた今でも、ゾンの軍船の船腹に向けられていた。


「まさか、ぶつける気じゃないよな……」

 水兵の一人が、冗談めかして不安を口にする。

「馬鹿言えっ! こっちの方がでかいんだぞっ! そんなことすれば、木っ端微塵になって沈むのは向こうの方だっ!」

 答える水兵の声も、不安を追い払おうと必要以上に大きくなる。

 そんな虚勢の言葉の応酬も、無言で近づく船団が帆を降ろし、長い櫂を出してさらに加速したことでピタリやんだ。

   

「全員弓を持てっ! あのイカレた連中を針鼠にしてやれっ!」

 いよいよその目的が特攻であると知れ、船長は脂汗を流して怒鳴り散らした。

 まだ弓の射程にも入っていないというのに矢の雨が降り始める。

「慌てるなっ! 指示を待てっ!」

 興奮して先走る兵士たちを船長が怒鳴りつける。

 陸の兵士は海での距離感が合わない。また、波の影響で狙いも定めにくいため見当違いの方向へ飛んでいく矢の方が多い。


 敵甲板上には、どうやらたった一人しか立っていないらしい。

 普通海戦とは、襲撃をかける側が船腹を近づけ、鉤のついたロープなどで互いの船を繋ぎ合わせ、乗り込んで白兵戦へともつれ込むものだ。

 当然甲板上には戦闘要員の水夫でひしめき合っていなくてはならない。

 それがたった一人しかいないとなると、いよいよこの特攻が、命を捨てた道連れ目的のものに思えてくる。


「櫂を持ってこいっ! 何としても押し止めろっ! わけの分からん連中の自殺に巻き込まれてたまるかっ!」

 もはや怒鳴り声というより悲鳴に近くなったその指示に、水兵も兵士も関係なく、大慌てで長い櫂を持って船縁に集まる。

 先程までは勢いの良かった兵士たちも、相手の異常さに気づき、顔色が悪くなっている。

 陸から離れたこんな場所で船から放り出されでもしたら、水兵はともかく、兵士たちは間違いなく溺れ死んでしまう。


 全員が並ぶことなど出来ないので、櫂を持たなかった兵士たちは引き続き甲板上の人物目掛けて矢を射放っていく。

 だが、波を切り裂き激しく揺れる甲板上で、まるで足から甲板に根でも張っているかのように微動だにせず立つ人物には、降り注ぐ矢はただの一本も命中することはなかった。


「はっはあ~~っ! 当たらんっ! 当たらんぞっ!」

 腕を組んで仁王立ちする人物が、初めて口を開いた。

 その良く通る声に含まれた嘲りが、ゾン兵たちの神経を逆なでする。


「我こそは、海の公爵クリストヴァン! 貴様らの私欲で汚れきった魂を、母なる海の大いなる愛で清めてやろうぞっ!」

 クリストヴァンは細剣を芝居がかった動作で引き抜くと、まるで歌うように名乗りを上げた。


「ふざけるなっ!」

 ゾン兵たちの怒声が見事に揃う。

「はっはあ~~っ! ふざけてなどいないっ! そうっ! ふざけてなどいないさっ!」

 ゾン兵からすればどう見てもふざけているようにしか見えないクリストヴァンであったが、本人は至って真面目であった。


 ゾン兵が躍起になって矢の雨を降らせる中、近づいたことで流れ矢が飛んでくるようになったが、クリストヴァンは右手で真っ直ぐゾンの軍船を指し示しながら、左手に構えた短剣で流れ矢をすべて叩き落としてしまった。

 

 ゾン兵が顔を真っ赤にしてさらに矢をつがえた時、至近に迫ったクリストヴァンの顔に、不敵な笑みが浮かんでいることに、兵士たちは気がついた。

 それは間違っても命を捨てて特攻をかける男の顔ではなかった。

 次の瞬間、クリストヴァンの乗る船は、押し返すべく差し出された無数の櫂をへし折りながら、ゾンの軍船の船腹に衝突した。


 凄まじい衝撃が両船を襲う。

 ゾンの軍船の甲板上にいた者は全員倒れ、運の悪い者は衝撃で船から投げ出され、次々と水柱を上げていく。

 そんな中、ただ一人平気で立つのが、芝居がかった構えを微塵も崩さないクリストヴァンであった。

 衝突の衝撃で落下した兵士たちの何人かが、クリストヴァンの立つ甲板の上に落ちてくる。

 ほとんど全員が甲板に叩きつけられ、どこかしらの骨を折って呻く中、一人だけ見事に着地した兵士がいた。

 その身なりから並の兵士などではなく、隊長格であり、その身ごなしから見ても、かなりの実力者であることがわかる。


「ずいぶんと舐めた真似をしてくれたなっ! バラバラに切り刻んで魚の餌にしてやるぞっ!」

 隊長格の男は立ち上がると、いまだに芝居がかった構えのままのクリストヴァンを睨みつけた。

 ようやく立ち上がって船縁から顔を出した兵士たちが状況を察し、歓声を上げる。

「隊長っ! そのいけ好かないにやけ面の男をぶち殺してくださいっ!」

「ゾンの恐ろしさを思い知らせてやってくださいっ!」

「おおよっ! お前らはそこでこのイカレた男が真っ二つになる様を見物しておれっ!」

 部下たちの大声援を受け、隊長が吼える。


「ああ、嘆かわしい。そう。嘆かわしいのだよっ!」

 細剣を持った手を眉間に当てると、クリストヴァンは出来の悪い生徒を持った教師のように、大袈裟に嘆いてみせた。

「なんと口汚いことか。品性の欠片も感じられないっ!」

「うるせえっ!」

 隊長は怒りのままにクリストヴァンに斬りかかった。

 その踏み込みは鋭く、振り下ろされる一撃は、剣先が霞むほど苛烈であった。

 その切っ先がまだクリストヴァンに触れてもいない内から、兵士たちはクリストヴァンが血煙を上げて倒れる様を幻視し、興奮して歓声を上げる。


 興奮に満ちた甲板の上で、クリストヴァンだけは冷静そのもので、迫りくる斬撃を左手に構えた短剣であっさりと受け流すと、目にも止まらぬ速さで細剣を繰り出し、隊長の首に風穴を開けた。

 クリストヴァンが引き抜きながら剣先を捻ったことで、隊長は驚くほどの高さまで血飛沫を上げ、返り血を華麗にかわすクリストヴァンと踊るように回転しながら甲板に倒れた。

「しまったっ! 甲板が汚れるっ!」

 広がる隊長の鮮血を見たクリストヴァンが、大げさに嘆く。


 その様子をドーラの戦場から眺めていたカーシュナーが、ゲラゲラと笑う。

「相変わらず騒がしい男だ」

「しかし、腕は立ちます」

 笑うカーシュナーに、ダーンが真面目に答える。

「遊びが過ぎて相手の沈没に巻き込まれなければいいんだけどね」

「……やりそうですね」

 カーシュナーの冗談に、ダーンが顔をしかめる。


「そこまで馬鹿なら、この船団で船長なんて務まりませんよ」

 自分の船の指揮を執りながら、クリストヴァンを見もしないでドーラが請け負う。

「さっさと離れなっ!」

 直後にドーラの叱咤が飛ぶ。


 クリストヴァンの船同様、ゾンの軍船の船腹に思い切り突っ込んでいたドーラの船が、舳先に集まった屈強な船乗りたちが手にする櫂によって、軍船から押し離れていく。

 船腹に突っ込んだはずが、船の舳先には傷一つついてはいない。

 そして船が離れると同時に、軍船の上から悲鳴が上がった。

 ドーラの船が無傷なのに対し、軍船は吃水下の船腹に大穴が開き、大きな空気の泡を吐きつつ、大量の海水を呑み込み始めたからだ。


「なんで……」

 水兵の一人が絶望的状況に、無意識に呟く。

 だが、次の瞬間敵船の舳先の下に巨大な槍の影を発見すると、その呟きも呑み込まれてしまった。

 吃水下に装着されていたためゾンの水兵も兵士も誰も気が付かなかったが、カーシュナーの私設船団の船は、全船がその舳先に衝角を備えていたのだ。


 軍船は、馬上槍を構えた騎馬の突進を食らった大盾のように、衝角によってその船腹に大穴を空けられ、一瞬にして沈むのを待つばかりの巨大な棺桶に変えられていた。

 状況判断は、兵士たちより水兵たちの方が早い。

 このまま軍船に留まったところで、沈む軍船に巻き込まれて海底まで引きずり込まれるだけだ。

 生き残る最善の道は、敵船を奪い取る以外に存在しない。

 甲板上から慌てて水兵たちが飛び込み、自分たちの船に大穴を空けてくれた敵船目掛けて泳ぎだす。

 

「お前たちも続けっ! ここから沿岸まで泳げるなんて思うなよっ!」

 船長は呆然とする兵士たちに指示を飛ばすと、自身も水兵たちに続いて海へと飛び込んだ。

 兵士たちは互いの顔をうかがうと、慌てて船長の後に続く。

 下手くそな飛び込みで大きな水柱が次々と上がる。

 だが、決死の飛び込みは残念ながら無駄に終わった。


 最後の突撃を風の力ではなく人力で行ったカーシュナーの私設船団は、帆を降ろしていたことで風の影響が少なく、突進時と同様に恐るべき速さで後退してしまったのだ。

 泳ぎに自信のあった水兵たちも瞬く間に引き離されてしまい、絶望を浮かべた顔だけを波間に漂わせることになった。


 カーシュナーはわざわざ船首まで移動すると、追うことを諦めたゾンの水兵たちに対し、まるで見送りに出てくれた友人に対するように、ゆっくりと手を振った。

「えげつないことしますね」

 カーシュナーの行動に、ダーンが呆れる。

「人を奴隷にするために、わざわざ海まで渡って来るような連中は、しっかり苦しんで死ねばいいんだよ」

 笑顔と共に返って来た辛辣過ぎる言葉に、ダーンは呆れるのではなく、カーシュナーに倣って手を振るのであった。


「あんの馬鹿っ!」

 不意に背後でドーラの怒声が響く。

 何事かと思い引き返してみると、ドーラはクリストヴァンの船を睨みつけて苛立っていた。


 ドーラの船のように、始めから突撃後の離脱要員を甲板上に用意していなかったクリストヴァンの船は、他の船から一拍遅れて離脱したため敵船の兵士の侵入を許してしまい、甲板上が戦場と化していた。

 船も引っ掛け鉤によって繋ぎ止められてしまい、このままだと最悪の場合、敵軍船の沈没に引きずり込まれてしまうだろう。


「ちっ! 進路を変えなっ! こんなつまらない襲撃で船一隻失ったら、大赤字だよっ!」

 苛立ちと共に、ドーラが指示を出す。

「まあ、大丈夫だと踏んでやっているんだろうけど、死に物狂いの相手に遊び過ぎるのはよくないな。イヴァン。引っ掛け鉤だけ何とかしてやって」

「わかった」

 カーシュナーの指示にイヴァンはうなずくと、背負っていた弓を外し始めた。


「あたしもやるっ!」

 そう言うと頼まれてもいないのにティオが嬉々として十字弓の準備を始める。

 そんな妹に呆れつつ、リュテも十字弓を手にする。


 矢をつがえると、イヴァンは無造作に射放った。

 大気を打つ弦の音が甲板上に響き、一直線に飛んだイヴァンの矢は、クリストヴァンの船の船縁に食い込んでいた引っ掛け鉤に結ばれていたロープを見事に射抜いて千切り飛ばして見せた。

 そのあまりの見事さに、ドーラは思わず口笛を吹いた。


「負けるか~っ!」

 続いて放たれたティオの矢は、残念ながら大きく的を外し、海中へと消えていく。

 ほぼ同時に放たれたリュテの矢も、同様に海中に没する。


「え~。なんで~」

 自信があっただけに、ティオのぼやきには思いきり不満が込められていた。

「波を計算に入れろ」

 助言しつつ放たれたイヴァンの矢が、次のロープを千切り飛ばす。


「よ~し!」

 気合いを入れて放たれた次の矢だったが、ギリギリのところでロープを捉えることが出来ず、海へと消えていった。

「も~、ゆれんなっ!」

 そう言ってティオは地団太を踏む。


「ティオ。海上でこれだけ離れたロープを狙うなんて、あたしらでも無理だよ。むしろ外れたとはいえたったの二射であそこまで狙いを修正出来ることの方が凄い。ロープはいいから、船に上ろうとしている連中を狙いな」

 悔しがるティオに、ドーラは感心しながら助言を送る。

「くっそう。ぜったいに追いついてやるからなっ!」

 ティオは涼しい顔で矢を射続けるイヴァンに指を突きつけると、狙いをゾンの水兵へと変更した。


 イヴァンの驚異的な腕により敵船と切り離され、ティオとリュテの援護射撃によって敵兵が上がって来なくなると、甲板上の戦いはあっという間に終わってしまった。

 クリストヴァンが無駄のない動きで、次々と相手の急所を刺し貫き、瞬く間に一掃してしまったのだ。


「カーシュナー様っ! ご助勢いただき、ありがとうございましたっ!」

 船縁から優雅に手を振るクリストヴァンが、感謝の言葉を送ってくる。

 これに対し、カーシュナーも手を振り返しながら、

「クリストヴァンッ! 帰ったら一人で甲板掃除ねっ!」

 にこやかに罰を与える。


「なあっ!」

 その言葉に思い切り衝撃を受けたクリストヴァンが、がっくりとうなだれる。

「なあっ! じゃないよっ! あんた、調子に乗るのも大概にしておきなっ!」

 その態度にブチ切れたドーラの怒鳴り声が、海上中に響き渡る。

 ドーラの逆鱗に触れてしまったクリストヴァンは、それまでの芝居がかった仕草もどこへやら、「ひいいっ!」と小さく悲鳴を上げると船内へと逃げ込んだ。


「逃げんじゃないよっ! 男のくせしてみっともないんだよっ!」

 その背中をドーラの怒声がさらに追う。

「お前たち、船をあの馬鹿の船に横付けにしなっ! あたしはゾンのへぼ水兵ほど甘くはないんだよっ!」

 本気でブチ切れるドーラに大笑いするカーシュナーに、ラニが話しかける。


「これで仕掛けは完了?」

「そうだね。下準備は終了ってところかな」

 そう言うとカーシュナーはニヤリと笑った。

「ここまでやって、ようやく下準備が終わっただけなの!」


 ゾンの奴隷供給を断つ。

 そのためにカーシュナーは悪霊の地と呼ばれた土地に都市まで築き、南方民族の地、中原の<長老>と<戦士>を根絶やしにして千年以上も続いていた支配秩序を破壊した。

 そして、南方民族の地にゾンの奴隷狩り部隊に対抗出来るだけの自衛組織を築くと、今度は奴隷狩り部隊の輸送航路を抑えにかかった。


 ゾンはもはや大規模遠征を行うことが難しくなっていた。

 その規模から遠征の情報を伏せることは不可能であり、遠征軍は必ずカーシュナーの情報網に捉えられ、航海技術の差から航路も特定されてしまうため、襲撃を回避することが不可能になってしまったからだ。


 航海技術だけでなく、戦船としての性能差もこの一戦で証明され、対抗するにはこれまで以上の規模での遠征軍を組織し、軍船の性能も見直す必要が生じてしまった。

 だが、そんなことをすれば遠征費は莫大なものになり、これまでの乗船人数を優先した軍船と違い、戦闘力を重視した軍船で収容出来る数の奴隷では、たとえ全船満員まで奴隷を狩ることが出来たとしても、遠征費の穴埋めにもならくなってしまう。

 そして、カーシュナーが組織する私設船団の戦力は、今回動員した十隻程度ではない。


 仮に情報を制限出来る規模の軍を組織し、カーシュナーの情報網をかい潜って南方民族の地に派遣出来たとしても、これまでのように百や二百の小規模の抵抗ではなく、ジュア率いる一万の軍勢によって迎撃されることになる。

 そして、内陸深くまで侵攻しなくては、奴隷を見つけることが出来ない現状では、長くなる補給路と、地の利と機動力を手に入れた敵相手では、まともに戦うことさえ出来ないだろう。


 まだゾン人の誰一人として気づいていないことだが、ゾンの奴隷市場への南方民族の供給は、完全に断たれたのだ。

 それこそがカーシュナーの目的だと考えていたラニは、これ程までのことを成し遂げておきながら、それがまだ下準備でしかないという言葉に、呆気に取られて言葉もなかった。


 これ以上何をするつもりなの?


 そう思ったが、自分の許容量を超える計画を、いつもの調子でしれっと伝えられてはとてもじゃないが神経が耐えられないと考えたラニは、尋ねるのをためらった。

 そんなラニの内心を見抜いているカーシュナーは、全部話して混乱させてやろうかと考えたが、さすがにやり過ぎだなと思いやめた。


 奴隷市場への南方民族の供給遮断――。


 それはカーシュナーがゾンに対して仕掛ける戦略の最初の一歩に過ぎなかった――。

 前半でキャラがしゃべり過ぎてしまったため、海戦は大幅カットとなってしまいました。

 せっかく船長十人分の設定も考えたのに、使えたのはクリストヴァン一人だけでした。

 まあ、今後出番はいくらでもあるのでいいんですけど、もう少し全体のペース配分をしっかりコントロール出来るようになりたいと思います。


 次回もなるべく早めに投稿出来るよう頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです。

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