呪印の効果
イェ・ソン五万の軍勢は、ヴォオス側の予想を大きく覆す策を仕掛けてきた。
老兵ばかりで構成されたイェ・ソン軍は、将軍から一兵士に至るまで、『腐毒の呪印』を身体に刻まれ、死をもってハウデンベルク城塞を呪い陥としにかかって来たのだ。
初日の犠牲者数は、イェ・ソン軍五千に対し、ハウデンベルク城塞軍は若干の負傷者を出しただけで、死者は出ていない。
数字だけを見れば圧勝であり、ハウデンベルク城塞の虎の子の一つである城門前への矢による集中攻撃による戦果よりも、リストフェインがばら撒いた食糧の方が、最終的にはより多くの命を奪ったことが、戦術的勝利も意味していた。
だが、その勝利はハウデンベルク城塞兵たちに何の高揚感ももたらさなかった。
それどころか、夜になって兵を引いたイェ・ソン軍の代わりに、恐ろしい魔物をハウデンベルク城塞におびき寄せることになった。
けして大きな音ではない。
だが、明らかに何者かが蠢いている気配が、死体の山と化しているはずの城門前から伝わってくる。
見張りに立つ兵士たちが不気味に重い城壁から下をのぞき込むが、闇に呑まれていて何も見ることは出来ない。
月明かりでもあればかなり違うのだが、運悪く今日は雲の多い夜で、月明かりどころか、僅かな星の光すらも地上には届いていなかった。
時折何かが折れ砕ける音が、闇の底から城壁の上まで届く。
その音が何を意味するか、想像したくはないが嫌でも考えさせられてしまう。
堪え切れなくなった兵士の一人が松明を一本闇の中へと放り投げる。
落下していく松明は、闇の中へと吸い込まれるように小さくなっていき、最後に死体の山の上で跳ねて堀へと落ちた。
松明を投げた兵士の回りに他の見張りの兵士も集まり、固唾を飲んで見守っていたが、松明が最後に跳ねた瞬間、かすかな光の輪の縁を、人の様な影がかすめて消えるのをはっきりと確認すると、小さく悲鳴をあげた。
「……今の影、人の腕くわえていなかったか?」
「言うなっ!」
兵士の一人が思い切って自分が目にしたものを口にすると、その兵士より青い顔をした兵士が短く怒鳴りつける。
「っていうか、余計なことしてんじゃねえよっ!」
さらに別の兵士が、松明を投げた兵士の肩を殴りつける。
だが、殴られた兵士は怒りも振り向きもせず、ひたすら闇の底を凝視し続けている。
「なんだよっ! なんか言えよっ!」
殴りつけた兵士の方が怒鳴る。
無視されたからというわけではなく、その兵士の恐怖に引きつった横顔が、周囲の恐怖心を余計に煽ったのだ。
「……あれ、何だと思う?」
兵士が闇の底を指さす。
「見えねえよっ!」
松明が消えたことで城門前は再び闇の底へと沈み込んでいる。他の兵士たちは再び闇の底に目を凝らしたが、何も発見することは出来なかった。
「そっちじゃない。俺の指をたどって見てくれっ!」
そう言う兵士の手はブルブル震え、焦点は定まっていない。
「……なにか、登って来ていないか」
城壁に沿って視線を下へと降ろしていった兵士が、自分の言葉を自分が一番信じられないといった様子で呟く。
「馬鹿言ってんじゃ……」
恐怖を振り払うように否定しようとした兵士も、闇の中で城壁にへばりつく影を確認してしまい、その声は一瞬で消え萎んでしまった。
恐怖に凍りつく彼らであったが、真の恐怖は彼らのすぐ隣に迫っていたのであった。
闇の底で城壁にへばりついて蠢く影を見つめていることが恐ろし過ぎて、無理矢理視線を引き剥がした兵士の顔の真下に、人間によく似ているが、絶対に誰も人間とは見間違えない『顔』が迫っていることに気がついた兵士は、絶叫を上げた。
直後に『顔』の主が闇から手を伸ばし、細くて長い指をした手で、兵士の喉笛を鷲掴みにした。
兵士の絶叫がくぐもって消える。
その存在に気がついた他の兵士たちも、悲鳴を上げて飛び退る。
だが、絶叫を握り潰された同僚が、闇から伸びた手によって城壁の外へと引きずり落とされそうになると、恐怖に縛られた身体は反射的に動き、兵士たちは仲間の身体にしがみついていた。
引きずり落とせないとわかったそれは、兵士の身体を下に引く代わりに、自身の身体を城壁の上へと引きずり上げた。
その醜い姿が露わになると、仲間の身体にしがみついていた兵士たちは、反射的に手を離してしまった。
兵士の身体を伝って登ろうとしていたそれは、結果として兵士と共に闇の底へと落ちて行った。
兵士たちはその様子を、凍りついたようにただ見ていることしか出来なかった。
「ほ、報告だっ!! ば、ば、化け物が出たっ!!」
一人がそう言って走り出すと、残りの兵士たちも恐慌状態に陥りながらその後に続いた――。
◆
「おそらく屍食鬼でしょう」
兵士たちの報告を受けたリストフェインが、厳しい表情でアデルベルドに告げる。
二人はすでに屍食鬼が現れた城壁の上にいた。
周囲には松明を手にした兵士たちが城壁をぐるりと囲み、必死で他の屍食鬼を探し回っている。
「下の死体が屍食鬼になったということか?」
アデルベルドが尋ねる。
「いえ、屍食鬼はその外見から亡者の一種と思われがちですが、違います。魔神ラタトスの統治下では、主要戦力の一角を占めたと言われる危険な魔物です」
「そんな魔物がどうしてここに?」
「『腐毒の呪印』の効果で湧き出た瘴気に誘われて、やって来たのです。ハウデンベルク城塞は、対イェ・ソンを主要目的として建設されましたが、ヘルヴェン城塞同様、<北の魔境>に対する備えでもあるのです」
ヴォオスの北部には、<北の魔境>として恐れられる大森林がある。
ルオ・リシタに<白香木>や<銀香木>などの聖なる樹木が存在するように、<北の魔境>には<悦楽の樹>のような植物系の魔物が多数生息している。
ヴォオスの建国王であるウィレアム一世によって魔神ラタトスが倒されて以降人類の生息圏からその姿を消した魔物たちも、今でも辺境や<北の魔境>のような地に生息していた。
「<北の魔境>か……」
ただでさえ目の前のイェ・ソン軍だけで手いっぱいだというのに、この上<北の魔境>から魔物に攻められては対処のしようがない。
さすがのアデルベルドも言葉が出てこなかった。
「こんなものは外道の術です。絶対に屈するわけにはいきませんっ!」
いつになくリストフェインが強い口調で吐き捨てる。
「この戦術は、魔神ラタトスが古代帝国ベルデを滅ぼす際に使用したもので、征服した地の奴隷兵に『腐毒の呪印』を刻み付け、次の土地を征服するための道具としてきました。その結果どれ程の数の人間が地獄の苦しみを味あわされたことか……。従属国とされたイェ・ソンの民も、その苦しみは知っているはずなのに、このような外道の術に手を出すとは、ヴォオス、イェ・ソンに関係なく、人間としてけして許すわけにはいきませんっ!」
「とりあえずどう処理する? いくつも大戦を経験したが、さすがに魔物の相手は初めてだ。何か有効な手段はないか?」
怒りで感情を高ぶらせるリストフェインに対し、アデルベルドはどこまでも冷静に対処する。
「屍食鬼は基本臆病な性格で、単独で行動するその習性から、生きている人間を襲うことは滅多にないのですが、今回のように瘴気に誘われて数が集まると、躁状態となり、暴走することがあります」
「厄介だな」
「はい。恐怖で退くことをしなくなるので、撃退ではなく討伐するしかないので厄介ではありますが、本当に恐ろしいのは単独の時なのです」
「臆病な状態の方が厄介だというのか?」
アデルベルドの問いかけに、リストフェインはうなずいた。
「屍食鬼はその見た目に反し、高い知能を持ち、変身能力まで有します。人間に化けて長く村に潜み、身寄りのない者を狙って襲っていたという記録もあります」
リストフェインの説明に、アデルベルドから唸り声が漏れる。
「味方に紛れ込まれたら、兵の士気どころか統率すら満足にとれんようになるぞ」
「はい、ですからむしろ躁状態の方が対処は簡単なのです」
「あそこにいるぞっ!」
リストフェインのすぐ隣で、屍食鬼を見つけた兵士が震える指を突きつける。
「その弓を貸してくれ」
そう言うとリストフェインは震える兵士から弓と矢を借り、兵士が見つけた屍食鬼目掛けて射放った。
城壁を舐めるように飛来したリストフェインの矢は、見事に屍食鬼の眉間に突き刺さる。
即死した屍食鬼は一瞬そのままの姿勢で城壁にへばりついていたが、ゆっくりと城壁からはがれていくと落下していった。
ドサッと軽い音が響き、直後に他の屍食鬼が群がる音が、気分の悪くなるような響きと共に、夜の闇の奥で蠢いた。
「痩せ衰えているように見えますが、全身が筋肉の塊で、体重の軽さも手伝って身軽な動きを見せます。また、手足の爪は猫のように出し入れが自由で、今回のように人間には登坂不可能な城壁も、容易に登ってきたりします。ですが、戦闘力そのものは並の兵士とさして変わらず、急所も人間とほとんど変わりません。対処法は普段の警備と変わりません。しっかりと見張り、見つけ次第殺すだけです」
リストフェインから弓を返してもらった兵士は、過剰に怯えてしまった自分が恥ずかしくて、思わずうつむいてしまった。
「気に病むな。むしろそのくらいの警戒心は持っていてくれ。魔物が相手であれば、どれだけ警戒してもし過ぎるということはないからな」
リストフェインの優しい言葉に、兵士は顔を上げて大きな声で返事をする。
そのやり取りはその場だけで留まらず、城壁の警戒に当たっている全兵士へと伝播していった。
不死の化け物などではなく、人間とさして変わらない存在だと理解した兵士たちの士気は、それまでの怯えをなかったことにしようと、一気に上がった。
「お見事」
城壁上に灯された松明の明かりにわずかに照らし出されただけの屍食鬼を射倒すのは、実はかなり難しい。距離感が測りにくいのと、城壁に近すぎるため、僅かな射角のずれで簡単に外れてしまうからだ。
だが、リストフェインは兵士たちの恐怖心を取り除くため、至難の業であるはずの一撃を、何でもない事のようにやってのけたのだ。
リストフェインとしては、ここまで失態続きだったと考えていたので、アデルベルドの賞賛を素直に受け取ることは出来なかった。
こんな程度では、かけた迷惑を取り戻したことにはならない。
「交代でしっかりと休みを取らせましょう。今日はそれほどの数ではありませんが、イェ・ソン側の死者数が増えれば増えるほど、湧き立つ瘴気はその濃度を増し、より多くの魔物を引き寄せるはずです」
リストフェルンのこの言葉通り、翌日以降戦局は坂道を転がり落ちるように悪化していくのであった――。
◆
明けて翌日――。
日の出とともに姿を消した屍食鬼たちに代わって兵士たちの目を捉えたのは、食い散らかされたイェ・ソン兵たちの亡骸であった。屈強なはずの兵士たちが次々と堪え切れなくなって嘔吐する。
死体は見慣れていても、食い散らかされた人間を見るのは、皆初めてだったのだ。
屍食鬼が去るとイェ・ソン軍の攻撃が再開される。
堀が死んだイェ・ソン兵で埋められ、攻撃拠点が増えるのに対し、ハウデンベルク城塞側は守備範囲が広がり、守りの厚みが失われていく。
その日からはさすがに城門前に強行突撃をかけ、無駄に死んでいくような戦術は取らなくなり、代わりに城壁を埋め尽くさんばかりの攻城梯子が掛けられ、ハウデンベルク城塞は、真正面から消耗戦を仕掛けられることになった。
被害は攻め手であるイェ・ソン側が圧倒的に多いのだが、正攻法であるだけに、リストフェインもこれを奇策で退けることは難しく、兵士の運用を効率よく指揮し、味方の消耗を極力減らすことに集中した。
昨日のように食料を局地的に投げ込み、イェ・ソン兵の飢えを利用して混乱を生じさせるという策は今も有効ではあるが、この策はハウデンベルク城塞の食糧を消費するもろ刃の策であることから、策の使用は緊急時のみと定められた。
人道的に外道の策であるというのも使用を控えた一因だ。
結果として、この日もハウデンベルク城塞は守り抜かれた。
だが、もはや命を捨てに来ているイェ・ソン兵との戦いは、肉体以上に兵士たちの心を消耗させた。
戦いの興奮は疲れを忘れさせる効果があるが、ある意味自殺志願者の手伝いをさせられているような状況は、兵士たちの中に興奮を生まず、疲労は常に意識の片隅に置かれ、時の流れは遅々として進まないように感じさせた。
日が沈み出すと潮が引くようにイェ・ソン軍は撤退して行く。
負傷兵を置き去りにしたまま――。
残された負傷兵たちは、最後の気力を振り絞り、その身を堀に投げ出して、明日の戦いへの礎とした。
イェ・ソン軍の死者数は一万を超え、昨日の被害を合わせると、二万近い兵士がハウデンベルク城塞の堀にその身を沈めていることになる。
闇がイェ・ソン兵の亡骸を包み込むと、呪印の効果が発揮され、瘴気を生み出していく。
その量は昨日とは比較にならないほどの量で、まるで城壁を這い上るかのように上昇し、城壁の上で見張りに立つ兵士たちに、腐臭と毒素をもたらした。
「この空気をあまり吸い込んではいけないっ! 聖水を浸した布で口元を覆うんだっ!」
指示を出しつつリストフェインは聖水の在庫があったことに、歴代のハウデンベルク城塞城主たちに感謝した。
清潔な水でも対応は可能だが、ハウデンベルク城塞は地下水を汲み上げて使用している。
地上に湧き出た瘴気は大気を汚染するが、それ以上に大地を汚染する。
瘴気は大地に浸透し、腐らせ、その先にある地下水をも汚染し、その土地を人の住めない魔境へと変えていく。
ハウデンベルク城塞の地下水源が汚染される可能性もあるのだ。
城壁の見張りは昨日の倍用意している。
だが、日中の激戦の影響で、兵士たちには疲労の色がうかがえた。
加えてイェ・ソン軍が一万以上の被害を出したのに対し、ハウデンベルク城塞も無傷というわけにはいかなかった。
千人近い兵士を失い、元々余裕などなかった状況は、より厳しいものへと変わっていた。
地中から屍食鬼たちが湧き出し、さっそくイェ・ソン兵の亡骸に群がっていく。
地上からは吐き気を催す貪り喰らう音が響き、兵士たちの緊張を煽った。
しばらくすると不意に気配が変わり、貪る音に加えて、城壁を這い登る音が加わって来た。
昨日が大木から害虫を探し出して駆除していたとすれば、今日は大木にびっしりとたかった害虫の駆除に近かった。
もはや探す必要などない。
日中のイェ・ソン兵の猛攻に劣らぬ規模で屍食鬼が這い登って来ていた。
矢や投石を駆使して次々と落としていくが、屍食鬼の群れは際限なく湧き出し、きりがなかった。
だが、昨夜屍食鬼に対する恐怖の根本的部分を払拭出来ていたおかげで、兵士たちの動きは重さこそ感じさせるものの、恐怖は感じられなかった。
体重の軽さと長く鋭い爪を持つことから、登坂能力こそ高いが、身体能力そのものは一般兵とさして変わらない屍食鬼に対し、ハウデンベルク城塞兵も次第に慣れ、効率よく撃退が出来るようになった。
その様子から、リストフェインは応戦している部隊を一隊減らし、少しでも体力回復のために休ませる判断を下し、まさに実行しようとしたとの時、ハウデンベルク城塞にとっての新たな脅威が、頭上から襲い掛かって来たのであった。
人面鳥の襲来である。
身体は鳥で、胸から頭部にかけてが醜い女性の姿となっている魔物で、飛行能力を有することから、辺境に近い村落などでは未だに目撃されることが多い魔物だ。
ひどく不潔で、鋭い鉤爪には毒もあり、子供一人なら一匹でも悠々と運び去ってしまう。
残忍な性格で、捕食目的以外でも襲い掛かることがあり、ただ殺すことを愉しむために人間の子供をさらうこともある。
屍食鬼との戦いに集中していた兵士たちは、不意に頭上から襲撃を受け、大混乱に陥った。
二匹の人面鳥に両腕を取られ、空中へと連れ去られて城壁外へと捨てられる兵士もいれば、鋭い鉤爪で傷つけられた上に、毒までくらって倒れる者が続出する。
咄嗟に反撃出ようとしても即座に宙に逃れてしまうため、兵士たちは完全に翻弄されていた。
空中に逃れた人面鳥が兵士たちを嘲笑う。
夜目はそれほど利かないが、屍食鬼対策のために用意された大量の松明のおかげで、何の不自由もない。 だが、松明の明かりの外に出られる人面鳥は、夜の闇に容易にその姿を隠すことが出来る。
有利な状況に勢いづく人面鳥は、加虐的な悦びにけたたましく喚き散らしながら、執拗に襲い掛かって来た。
屍食鬼と違い、人面鳥は元来好戦的な性格で、瘴気の影響によりその傾向はより顕著になる。
一方的に攻撃出来る現在の状況で、攻撃をためらうことはない。
いやらしい笑みでその醜い顔を歪めながら攻撃を続ける人面鳥であったが、恐ろしい勢いで襲い掛かって来た矢に、一匹が貫かれ、二匹目が脇腹から矢羽を生やして落下する。
続け様に二の矢、三の矢と放たれ、怒りと狼狽交じりの悲鳴を上げながら、人面鳥たちが次々と落下していく。
生命力が強く、射抜かれてもすぐには死なずにもがき続ける人面鳥を、兵士たちがすかさず切り刻んでとどめを刺す。
「リストフェイン、別働の弓兵部隊を組織してくれっ! もはや明日のことを考えている余裕はないっ!」
強弓を手にしたアデルベルドがリストフェインに指揮を託す。
アデルベルド自身は対人面鳥用の弓兵部隊が組織されるまでの間、この場の状況を支えなくてはならない。
屍食鬼に対する迎撃を割く余裕はないのだ。
「はいっ!」
答える時間も惜しいとばかりに、リストフェルンは一言だけ応えると、部隊の再編のために城塞へと駆け出した。
「ハウデンベルク城塞の全兵力をもって迎撃に当たるっ! 休憩に入っていた部隊は直ちに装備を整えて城壁へ上がれっ! 弓を忘れるなっ!」
待機していた各部隊の隊長たちに指示を出すと、リストフェイン自身は自分の部屋へと向かった。
もちろん疲れたから休憩に向かったわけではなく、自分の部屋にある家具調度に用があったのだ。
戦のための城塞ではあるが、時には大貴族出身の将軍が使用する部屋である。事実リストフェインは大貴族であるディーフェンター家の出身だ。
一般兵たちの大部屋と違い、家具や調度は一級品が揃えられている。
そしてリストフェインに割り当てられている部屋の家具調度は、すべてルオ・リシタ産の<白香木>で出来ていた。
確信はなかったが、だからこそ試さないわけにはいかない。
リストフェインは見事な作りの椅子を手に取ると、急いで城壁の上へと戻った。
そこにはリストフェインが手配した増援を指揮しつつ、ハウデンベルク城塞の上空を飛び回る人面鳥と戦うアデルベルドの姿があった。
ずいぶんと戻りが遅いと心配していたアデルベルドは、戻って来たリストフェインが椅子を抱えて戻って来たので、場違いないたずら心を刺激される。
「どうした。ここで休憩か?」
アデルベルドのつまらない冗談のおかげで、リストフェインの心に余裕が生まれる。
意識していなかったが、昨日から想定外過ぎる事態の展開に、気持ちも頭も固まり始めていたのだ。
「出来ればそうしたいところですが、しばらくは休憩どころか眠ることも出来ませんよっ!」
リストフェインは軽口で応じると、持って来た椅子を振り上げ、叩きつけてバラバラにしてしまった。
何事かといぶかる周囲にかまわず、リストフェインは砕けた椅子の残骸を、松明の中へ次々と放り込んでいった。
残骸はすぐに炎に呑まれ、煙を空へと立ち昇らせていく。
弓兵部隊の反撃を受けるも、戦意は全く衰えない人面鳥たちであったが、リストフェインが残骸を投じた松明の煙に呑まれると、途端に苦しげな悲鳴を上げて逃げ散った。
どういうことかと目顔で尋ねてくるアデルベルドに、リストフェインは半信半疑だった策が通じて一安心しながら説明した。
「あの椅子は<白香木>で出来ていたのです。ルオ・リシタでは精霊が宿る聖なる木として崇められ、一説ではルオ・リシタが魔神ラタトスの侵攻を受けなかったのは、聖なる木々に守られていたからだとも言われています。上空を自在に飛び回る人面鳥の相手は、屍食鬼を相手にする以上に難しいものがあります。効果は半信半疑でしたが、どうやら有効なようです」
説明を終えたリストフェインは兵士たちに自分の部屋から家具調度をすべて運んでくるように命令すると、自分も弓を引き絞り、人面鳥の撃退に加わった。
昨夜をはるかに上回る魔物の襲撃に遭い、ハウデンベルク城塞は夜が明けるまで戦い続けた。
被害は大きく、日中のイェ・ソン軍との戦いに加え、さらに千人近い犠牲者を出すことになった。
そして陽が昇り、魔物の群れが引いていくのと入れ替わるようにイェ・ソン軍がその姿を現す。
昼夜を通して攻め続けられることはけして珍しいことではないが、昼はイェ・ソン軍、夜は魔物の群れという、まったく異なる種類の襲撃に、ハウデンベルク城塞軍の消耗はリストフェインの予測をはるかに上回った。
始めの三日をしのぎ切る――。
それがリストフェインが出した勝利条件の第一項目であったが、どうやらそれはかなり難しい見通しとなったようであった――。
◆
三日目のイェ・ソン軍の攻撃は熾烈を極めた。
すでに明け方までに溜まった瘴気は陽の光でも退けられない程にその濃度を高め、イェ・ソン兵たちは瘴気を纏いハウデンベルク城塞に襲い掛かって来た。
濃度の濃い瘴気はその毒性も高く、攻城梯子を上るどころか、梯子まで辿り着くことも出来ないまま死んでいく兵士が出るほどだった。
そして死んだ兵士たちは、夜の到来を待つことなく、濃く漂う瘴気によって『腐毒の呪印』の効果が発動し、さらなる腐臭と瘴気を湧き上がらせていく。
濃く溜まった瘴気はぶ厚い城門の隙間をじわじわと浸食し、ついにはハウデンベルク城塞内へと広がり始める。
ハウデンベルク城塞には近隣の村落の住民が避難していたが、瘴気の浸食に気づくのに遅れた者たちが次々に倒れ、ハウデンベルク城塞は予想外の場所から混乱が広がっていくことになった。
リストフェインの指示で避難民が城塞の奥へと移されたが、状況の悪化に歯止めがかかりそうもないことは誰の目にも明らかだった。
瘴気を纏ったイェ・ソン兵が城壁に達すると、城壁上の瘴気の濃度が一気に上がる。
聖水で浄化した布で口元を覆い、なんとか瘴気の毒素に対抗しているが、浄化効果を瘴気の濃度上昇が上回ればそれまでとなる。
ハウデンベルク城塞軍は、数で勝る敵を相手取りつつ、時間とも戦わなくてはならなくなったのであった。
「屍食鬼が、城塞内に侵入しましたっ!」
この状況でもっとも聞きたくなかった報告がリストフェインのもとに届けられる。
瘴気が城塞内にまで浸食して来た時点で、その可能性を考慮しなかったわけではないが、日中でも屍食鬼が活動出来るほどにその濃度が高まるのはまだ先のことと考えていたのだ。
「リストフェイン。行ってくれっ!」
アデルベルドが城壁上の全ての指揮を引き受け、リストフェインを送り出す。
イェ・ソン軍の大攻勢に、城壁上はすでに乱戦状態になりつつあり、ここで指揮能力の高いリストフェインを欠くのは致命傷になりかねないが、城塞内の避難民を見殺しにするわけにはいかない。
リストフェインを城壁上の指揮に残し、アデルベルドが屍食鬼の対応に向かったとしても、魔物に関する知識が不十分なアデルベルドでは、対応しきれない事態が発生する可能性もある。
リストフェインが行くしかないのだ。
「千連れて行けっ!」
アデルベルドの言葉にリストフェインが首を横に振る。
「この場がもちませんっ!」
「もたせてみせるっ! 行けっ!」
ここで口論していても意味がない。
リストフェインは最速で屍食鬼の処理を済ませ、城壁が陥とされる前に戻ることを誓った。
千人の兵士が減ったことで、城壁上の力関係はイェ・ソン軍に傾いた。
老兵ばかりとはいえ数が違う。まして相手はハウデンベルク城塞を死に場所と定めた死兵の集団だ。
ハウデンベルク城塞兵に対して怯むことはない。
数の差を覆せる唯一の方法は、個人の武勇であった。
すでに決した戦局はけして覆らないが、状況はまだ決したわけではない。
この状況を覆し得る唯一の男は、全体の指揮を放棄し、迷うことなく最激戦区へと踏み込んでいった。
斬り、突き、薙ぎ払う。
それだけでなく、蹴りつけ、殴りつけ、体当たりまでかましてイェ・ソン兵をなぎ倒す。
アデルベルドの強さは、局地的に発生した自然災害そのものであった。
将軍が孤軍奮闘する様を見て、奮い立たない弱兵など、ハウデンベルク城塞には一人もいない。
強兵揃いのハウデンベルク城塞兵たちは、身体に絡みつく疲労を気持ちで振り払い、アデルベルドの後に続いた。
このまま戦況はハウデンベルク城塞側に傾いたまま推移すかと思われたその時、招かれざる客が両陣営の間に割って入って来た。
濃度を増し続ける瘴気に誘われて、再び人面鳥が飛来したのだ。
人面鳥にとってヴォオス人もイェ・ソン人も関係ない。
弱っている兵士を見つけると、手当たり次第に襲い掛かっていく。
ハウデンベルク城塞軍にとって地味に負担となっている要素に、イェ・ソン兵の死体を城壁上から落とさなくてはいけないことがあった。
そのまま放置しておくと『腐毒の呪印』の効果が発動してしまい、城壁上の瘴気濃度が限界を超えてしまうからだ。
知能も高い人面鳥は人間どもの動きから、どんな邪魔をされることが一番嫌かを見抜くと、攻撃は主に城壁上のイェ・ソン兵を狙い、ヴォオス兵に対しては、死体を城壁外へと投げ落とそうとしている兵士を狙って襲いかかるようになった。
ヴォオス軍は昨夜同様白香木を松明にくべ、聖なる力を宿した煙で人面鳥に対抗していく。
だが、空への対応に人手を割かれたことで、城壁上の守りはさらに薄くなり、各所で守りが突破され始める。
「人面鳥への対応を優先しろっ! 援軍はすぐそこだっ! ここまで守ってハウデンベルク城塞を失っては、死んでも死に切れんぞっ!」
アデルベルドの檄により、すべての兵士がこの瞬間にもてるすべての力を振り絞る。
たとえ今日一日を持ちこたえることが出来ても、もはやその後に戦う力は残らないだろう。
連日続く激闘により、ハウデンベルク城塞の城壁は、あまりにも大量の流血により、流れた血が城壁の隙間を伝って流れ下り、ハウデンベルク城塞自体が激しい出血に身もだえているこのような有様になっている。
それでも戦いがやむ気配は微塵もなく、血と死の臭いは混ざり合い、瘴気に溶けてハウデンベルク城塞を呑み込み、魔境へと堕としていく。
地上の地獄と化しつつあるハウデンベルク城塞をもちこたえさせているのは、皮肉にも、戦いの修羅と化して戦い続けるアデルベルドの奮闘のおかげであった。
城塞内に湧き始めた屍食鬼に対応するため送り出されたリストフェルンであったが、地中を移動する術を持つ屍食鬼に対する有効打を見出すことは難しかった。
堅固な岩盤の上に築かれているハウデンベルク城塞であるが、まっさらな一枚岩の上にあるわけではない。侵入可能な場所は限られるだろうが、地中に潜ることなど出来ない人間の身では、見つけ出すのは至難の業だった。
リストフェインは城門周辺の一定区画を切り捨て、避難民を城塞の奥に移動させると防衛線を敷き、自身は城門周辺が見渡せる場所へ移った。
屍食鬼の動きから規則性が見出せないかと考えたのだ。
だが、目的を持った兵士と違い無秩序に行動する屍食鬼の動きから、規則性を見出すことは不可能だった。
ひたすら守るだけの消耗戦を覚悟しかけた時、リストフェインは一つの策を思いついた。
だが、もし失敗すると対魔物用の有効な手段を一つ無駄にすることになってしまう。
迷いは一瞬だった。
リストフェインは部下に指示すると、白香木の煙を城門前に立ちこめさせた。
人面鳥対策として用いた煙であるが、同じように瘴気にひかれて出現した屍食鬼にも効果があるのではないかと考えたのだ。
予想は的中し、人間が煙に巻かれて苦しむ以上に、屍食鬼は白香木の煙を恐れ逃げ出した。
攻撃は無秩序であったが、逃げるという行動には一定の規則性が存在した。
リストフェインの予想通り、侵入可能箇所には限りがあり、屍食鬼たちはその限られた逃げ場所に殺到し、互いに争い始めたのであった。
「同士討ちを続けている間は手を出さなくていいっ! 代わりに大きな布を集めてきてくれっ! 聖水もありったけ用意するんだっ!」
リストフェインの指示は即座に行動に移され、煙から逃げ出した屍食鬼の痕跡から、侵入可能箇所の所在が判明し、その上を聖水に浸した布で覆うことで封じ込めることに成功したのであった。
再び侵入しようとする屍食鬼たちは、地中から出した頭を、聖水を浸した布でからめ取られると、くぐもった悲鳴を上げて再び地面へと逃げ戻っていく。
「やったぁっ! 撃退で来たぞっ!」
「さすがはリストフェイン様だっ!」
その見事な成果に兵士たちは歓声を上げた。
「屍食鬼は変身能力を持つが、頭部の骨格だけは変化させることが出来ない。頭が通らない隙間は通り抜けられないということだ。この辺りは土が多い。地中でどう広がっているかわからん。瘴気を吸わないように高所に見張りを立て、新たな侵入路を発見したら、同様の手段で封じ込めてくれっ!」
リストフェインは指示を下すとこの場に兵百を残し、城壁上へと戻ろうとする。
「あそこは警戒しなくてもよろしいのでしょうか?」
急ぐリストフェインに、兵士の一人が質問する。
見落とし箇所があったかと振り向くと、兵士が指さす先は、兵舎と兵舎の隙間に存在する、僅かな面積の地面だった。
「あの隙間では屍食鬼は通り抜けられない。地中を這い進む恐ろしい魔物ではあるが、身体能力は人間と大差ない。場所が特定出来たら、念のため兵士三人がかりで運べる重さの物をその上に置いてくれ。屍食鬼の力では押し退けることは出来ないはずだ」
「わかりましたっ!」
リストフェインの指示に、兵士が大きな声で答える。
後の指揮を百騎長に任せると、リストフェインは城壁上へと駆け戻っていった。
苦戦しているであろうアデルベルドのことが心配で、リストフェインはあることを失念していた。
魔物ではあるが生物でもある屍食鬼は、雄個体が存在するように、雌個体が存在し、当然幼体も存在すということを――。
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終わりの見えない戦いにも、ようやくその幕が下りようとしていた。
この日のイェ・ソン軍は、日が落ちても兵を引かず、湧きだす屍食鬼と共に襲撃を続けた。
人面鳥がそうであったように、屍食鬼にもヴォオス人とイェ・ソン人の区別などない。
ハウデンベルク城塞以上の被害を出しながら、それでも攻撃の手を緩めることはなかった。
ハウデンベルク城塞の兵数はすでに三千をきり、避難民の中から男手が、義勇兵と参加しているような状況であった。
アデルベルドもリストフェインももはや満身創痍で、手傷を追っていない者など一人もいなかった。
それでも両将の不屈の闘志に支えられ、ハウデンベルク城塞兵は四倍近い敵兵と渡り合い続けた。
日が落ちて夜が始まり、夜が更けて明け始める。
もはや自分が誰と、何と戦っているのかすらわからないほど追い詰められられながらも剣をふるい続けた兵士たちは、不意に辺りに静寂が訪れていることに気が付いた。
空にはもはや一匹の人面鳥の影もなく、城壁上にもイェ・ソン兵はおろか、屍食鬼一匹見当たらない。立つのはハウデンベルク城塞兵のみとなっている。
「……勝ったのか?」
兵士の一人が呟く。
「えっ? 終わったのか……?」
その呟きに、別の兵士が半信半疑ながら答える。
「……敵はいない。俺たちは生き残った」
「じゃあ、勝ったんだ。勝ったんだよっ!!」
勝利が徐々に浸透し、ボロボロのはずの兵士たちが歓声を上げていく。
まるで勝利の高揚に誘われるかのように、一度はハウデンベルク城塞兵たちを見限って、その姿を隠していた太陽が再び顔をのぞかせる。
ゆっくりと昇る朝日は、壮絶な死闘を生き抜いた兵士たちの勝利を見事に演出した。
対イェ・ソン戦の、第一幕の終わりを――。
勝鬨を上げようとしたアデルベルドの目が、北の平原が日の光によって闇の衣をはぎとられる姿を捉えた。
そして、そこに広がる完全武装に身を包んだイェ・ソン軍重装騎兵十万の姿も――。
「……嘘だろ」
誰かが呟き、剣を落としてへたり込む。
ハウデンベルク城塞兵で生き残ることに成功した全兵士が、眼前に広がる光景に、心をへし折られたのであった。
「……ここまでとは」
リストフェインも、それ以上言葉は出てこなかった。
五万のイェ・ソン兵が全員老兵だった時点で、別に本隊が存在することは予測出来ていた。
だがそれも、軽装騎兵が多くて二、三万と考えていた。
ハウデンベルク城塞を死守することさえ出来れば、今もこちらに向かいつつある救援の兵で十分討伐可能な規模と予想していたのだ。
だが、その予想はあまりにも大きく覆されてしまった。
この三日間の戦いなど、目の前の軍勢にとっては全く無意味なものでしかなかった。
ライドバッハが起こした大反乱も、十万規模のものであったが、その半数以上が平民に過ぎなかった。
だが、目の前の十万は、完全武装した兵士が十万揃っている。
その脅威はヴォオスを崩壊寸前まで追い込んだ大反乱の比ではなかった。
さすがのリストフェインも頭が真っ白になってしまった。
頭は働かず、すぐには対応策を練ることも出来そうにない。
もっとも、どれほど知恵を絞り、対応を練ったところで、目の前の軍勢に通用するような策など存在しないのだが――。
リストフェインは不意に気配を感じて振り向いた。
そこには生気を感じさせないうつろな目をした子供が立っていた。
こんな地獄を見せつけられては無理もない。
今は現実に目を向けることが出来ないリストフェインは、様子のおかしい子供を保護することで、現実から少しの間逃避しようと近づいた。
子供に目線を合わせようとひざを折る。
膝をついた瞬間疲労が一気に押し寄せてくる。
一度疲労を自覚してしまった身体は、簡単には力を取り戻してはくれない。
リストフェインは子供と視線を合わせるどころか、そのまま倒れ込まないようにするので精一杯だった。
それでも気持ちだけで何とか顔を上げる。
だがそこにいたのは、子供などでなく、恐ろしい形相をした屍食鬼の幼体であった。
しまった――。
それが自分の失態であることを瞬時に理解する。
問題ないと判じたあの僅かにのぞいた地面でも、頭部の骨格がまだ小さい幼体であれば通り抜けることは可能であった。また、変身能力を発動されてしまえば、この緊急時に子供の細かな様子などに気が付く者などいるはずもない。
咄嗟に飛び退ろうとするリストフェインであったが、力を失ってしまった身体は思考に反してまったく機能してはくれなかった。
鋭い牙と爪がむき出しになり、リストフェインの喉笛目掛けて迫ってくる。
こんな終わり方が私の最後なのか――。
無念と後悔がリストフェインの胸に押し寄せるが、どうすることも出来ない。
覚悟を決めて目を閉じた瞬間、リストフェインの身体は強い力を受けて弾き飛ばされた。
直後に周囲の兵士から悲鳴が上がる。
血で汚れた城壁上を転がったリストフェインは、何とか首だけ動かし、何がどうなったのかを確かめた。
直後にリストフェインを襲った後悔は、先ほどの比ではなかった。
自分を助けてくれたのはアデルベルドだった。
そしてそのアデルベルドの首筋には、屍食鬼の幼体が深々と牙を突き立てている。
「アデルベルド卿っ!!」
リストフェルン絶叫が城壁上に響く。
屍食鬼の幼体に喰いつかれたアデルベルドは、周囲の狼狽をよそに、その大きな手を屍食鬼の幼体の首に回すと、一瞬でへし折り、自らの手で窮地から脱して見せた。
だが、その首元はアデルベルド自身の鮮血により、真っ赤な染みを広げていく。
頑健なアデルベルドも、ここにきての大量出血に、ついに限界を超え、傷口を押さえて倒れ込む。
這いずりながらアデルベルドへと近づいていくリストフェルンの頭の中は、絶望によって占められていた――。
今週は珍しくいつもより多くの方に読んでいただけました。
もし、どなたかが宣伝してくださったのならありがとうございます。
正直なんで読まれのか未だに理由がわかりません。
まあ、ありがたい話なので文句があるわけではないのですが、どなたかの親切の結果であれば、ちゃんとお礼を言いたいなと思った次第であります。
次回は6月30日投稿予定です。
かなりぎりぎりの状況で回しているので誤字脱字等の見落としがあるかと思いますが、ご容赦いただけますようお願いいたします。




