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ヴォオス戦記  作者: 南波 四十一
ヴォオス戦記・序
3/152

混乱の追い討ち

「何か言いたいことはありますか?」

 厳しい顔で腕を組んだダーンが問いかける。

「……二日酔いです」

「……同じく」


 朝帰りしたカーシュナーとシヴァが、昼をとうに過ぎたころにようやく起き出すと、そこには仁王立ちしたダーンが待ち構えていた。

 うなだれたカーシュナーの言葉に、シヴァが同意する。

 ダーンはそれ以上は何も言わず、黙って陶器の湯呑を二つ差し出した。

 カーシュナーが思わずたじろぐ。

「まずいのか?」

 その様子を見たシヴァが、痛む頭を押さえながらたずねる。

「効果は抜群。でも飲みたくない」

「……そこまで言われると、逆に飲みたくなるな」

 余計なひと言が、シヴァの目の前に、濃すぎる緑色をした液体を招き寄せる。

 そのにおいが鼻孔を突き、シヴァは大きくのけぞった。

「においを嗅いじゃだめだ。鼻をつまんで一気にいかないと」

 腹をくくったシヴァが、片手で鼻をつまみながら、一気に濃すぎる緑色の液体を飲み干す。そして、飲んだ勢いのまま、一気に吐き出した。

 シヴァは即座に壁際へ行くと、激しく嘔吐する。

 その隣では、カーシュナーがもらいゲロを吐いているが、二人ともすでに胃の中身は空っぽで、胃液しか出てこない。


 ダーンは少し満足したのか、今度はただの水を持って行ってやる。

 二人は口の中をすすぐと一気にあおり、続けて二杯飲み干した。

 するとシヴァが驚きに目を見張る。

「すげえ! なんか少しすっきりした。二度と飲みたくないけど」

「ほとんど飲んでいないだろ」

「でも本当に効果が出てるぜ!」

「はい、少量で十分ですから」

 二人の会話にダーンがしれっと加わる。

「だったらなんであんなに大量に寄越すんだよ!」

「吐くのはわかっていましたから、その分を見込んで大目にお渡ししたのです」

「あんたダーンって言ったっけ? ほんとうにカーシュの従者なのか? 主人にこれ・・、普通出さねえだろ!」

「大丈夫です。見るのも嫌なので絶対に飲みませんから」

「じゃあ、なんで出したんだよ?」

「朝帰りのお仕置きです」

 淡々と答えるダーンを前にシヴァは、


(これじゃあどっちが主人かわかったもんじゃねえな)


「ダーンは従者をしてくれているけれど、幼馴染の親友でもあるんだ」

「カーシュナー様。そういうことはあまりおおやけにしないでください。クライツベルヘン家の若君が、従者との主従関係の線引きが曖昧だなどと知られれば、家名に傷がつきます」

「シヴァは大丈夫。そんなこと気にしないよ」

「根本的な話をしているんです」

「わかった。注意するよ」

 普段は言葉の応酬を楽しむカーシュナーだが、しゃべるのもきついので素直に従う。


「今日はこれからどうする?」

 シヴァが幾分かすっきりとした面持ちでたずねる。

「稽古に付き合ってくれないか? 一汗かいてこの頭痛をどこかに飛ばしたいんだ」

「真面目だねえ。迎え酒でも飲んで寝ていればいいだろうに」

「そうしたいんだけど、さっさとしゃっきとしないと、さっきの二日酔いの薬を本当に飲まされるんだよ」

「いつでもすぐに飲めるように用意していますよ」

 ダーンはそう言うと、先程カーシュナーが受け取らなかった湯呑を再度差し出した。

 においが届いたのだろう。カーシュナーは慌てて飛び退くと、シヴァの腕をつかんで稽古が出来る敷地を探しに向かった。



 カーシュナーはヴォオス貴族の筆頭であるクライツベルヘン家の者である。当然第一城壁内に一際壮麗なクライツベルヘン家の屋敷がある。だが、シヴァと一晩中飲み歩いたカーシュナーは、屋敷へは戻らず、領地から率いてきた三千の兵が宿営している兵舎に帰って来ていた。


 前日の夜半過ぎに到着したカーシュナーたちは、その家名に気を使った役人により、今いる一般兵用の兵舎ではなく、外交に訪れた大使などが護衛に引き連れてきた兵士たちが寝泊まりするための上質な兵舎に案内されかけた。

 しかし、そこにはすでに別の貴族が引き連れて来た兵士たちが入っていた。そこで、兵士たちを移動させるのでしばらくお待ちいただきたいという願い出があった。

 ようは今いる兵士たちを追い出すから少し待ってくれという話である。


 これは何も特別な話ではなく、明らかに家格に違いのある場合はむしろ当然の処置であった。

 ヴォオス筆頭貴族が率いてきた兵士に、一般兵用の兵舎をあてがうなどもってのほかと考えた役人たちが気を遣うのも無理のない話なのである。

 だが、追い出される側にとっては気分のいい話ではない。

 夜半も過ぎに叩き起こされ、荷物をまとめて追い出されるのである。兵士たちは不平を抱くだろうが、慣れたことでもあるので不満の根は浅くてすむだろう。その代わり、彼らを引き連れてきた貴族の不快感は根深いのになる。それが当然の措置であったとしても、追い出されるのは体面に傷がつく。決して表には表さないが、それゆえに不満の根はなかなか枯れることはない。

 各地で内乱が起こっている現在の状況で、協力すべき貴族同士の感情にしこりが残るのは、今後のいくさに影響がでる可能性もある。


 カーシュナーは以上のことを役人に言い聡し、細やかな気遣いに感謝しつつ、金子きんすを持たせて追い払い、今いる兵舎に収まったのだ。

 このことを王宮での会議後に耳にした、配下の兵士を追い出されるはずだった貴族は、体面を守ってもらったといたく感動し、後々までカーシュナーに対して友好的な存在となる。

 この話は王弟ロンドウェイク、宰相クロクスの耳にも入り、カーシュナーの評価は単なる若造から、好感の持てる若者になった。

 この辺りを計算ずくで行動出来るのが、カーシュナーの非凡さである。





「防具が面倒だから、木剣でやろうぜ」

 兵舎と併設して設けられている練兵場で、見つけた木剣を素振りしながらシヴァが提案する。

 涼しい顔で振り回しているが、真剣と同様の重量に調節されている木剣がうなりをあげている。

 それを見たダーンが眉をしかめる。

「防具をつけてください」

「大丈夫だって。俺もシヴァもそんなに下手じゃないから」

「だから言ってるんです。お二人の腕で万一のことがあれば、木剣だろうと命にかかわります」

 シヴァ同様木剣で素振りをしながら、カーシュナーがにやりと笑う。ダーンにだけわかる違いだが、会議に出席していた時同様細い目をしているが、普段は垂れている目じりが少しつり上がり、戦闘態勢に入っていることがわかる。

「……危なくなったら止めますからね」

 防具を着けさせることを諦めたダーンが、審判でも務めるかのように、少し離れたカーシュナーとシヴァの中間位置へと移動する。


「じゃあ、やろうか」

「片目のままで大丈夫かい?」

「外したら修行にならんだろう?」

 言いながらシヴァが右目をふさいでいる布を持ち上げ、にやりと笑って元に戻す。こちらも戦闘態勢に入ったようだ。


 何が始まるのかと集まった兵士たちが事情を察し、見物するために仲間を呼びに行く。

 あっという間に人の輪に捕らわれた二人は、はやし立てる周囲の声などまるで耳に入らない程の集中力で意識を高めていた。


 試合ではないので始めの合図もない。

 二人はまるで散歩でもするかのような何気ない足取りで間合いを詰めると、一気に激突した。

 見るからに歴戦の勇者であるシヴァは当然だが、枯れ木と揶揄されるカーシュナーは、そのひょろ長い外見からは想像もつかない速さと力強さで攻撃を仕掛けていく。それも、誇りを重んじる騎士とは思えない、蹴りや体当たりまで織り交ぜた喧嘩剣法である。


「若様、すげえ!」

 初めて目にする主君の力量に、少年兵が歓声を上げる。

 大貴族とは思えない気さくな人柄で人気のあるカーシュナーだが、その実力を知る者は少ない。カーシュナーがあえて見せないようにしているのも原因の一つだが、その細長い外見が実力を裏切るのだ。


「若はお小さいころから兄上たちに徹底的に鍛えられたからな。剣に限らず弓でも馬術でも、なんでも一級品の腕前なのさ」

 白髪交じりの元退役兵が、目を輝かせている少年たちに、我がことのように自慢する。

 平均的な貴族の気質をよく知っているのだろう。自分だけ第一城壁内に構えられた屋敷に入らず、自分たちと同じ兵舎で平気で寝泊まり出来るカーシュナーの気質を誇らしく思っているのだ。

 忠誠心とは少し違う、親馬鹿に近い心情である。


 カーシュナーの変則的な攻撃に、初めは面食らっていたシヴァだが、そこはコンラット将軍に一国に冠絶するとまで言わせた騎士である。素早く対応すると、以降はカーシュナー同様戦場の殺し合いのような勢いで立ち回った。

「稽古だということをお忘れなく!」

 ダーンが思わず口をはさむほど、二人のぶつかり合いは激しかった。


 シヴァの前蹴りを木剣の鍔元近くで受け止めたカーシュナーが、その蹴りの威力に押されて間合いが開く。


 二人の必殺の気が交差し、弾ける。


 それまでの動きがまるで本気ではなかったとわかるほどの神速の踏み込みでシヴァが突っ込み、カーシュナーは長身と長い腕のすべてをしなやかに使った鞭のような一撃で迎え撃つ。

 不意に開けた間合いが刹那の間に消滅し、カーシュナーが振り下ろした一撃と、シヴァが踏み込んで放った一太刀が激突する。


 折れるのではなく、一点に途方もない力が集中した互いの木剣は、まるで破裂したかのような勢いで砕け散り、折れた木剣の剣先が、見物していた兵士たちの間に飛び込んでいく。

 

「負傷者一名!」


 一本はダーンが何とか叩き落としたが、まったく反対の方向に飛んでいった木剣はどうすることも出来ず、少年兵たちに自慢げにカーシュナーのことを語ってた元退役兵に直撃したのだ。


「すまん! 大丈夫か!」

 カーシュナーが慌てて駆けつける。

 元退役兵は少年たちの肩を借り、何とか立ち上がる。額にもろに受けたらしく、大きなこぶが出来ていた。額が切れなかったのが不思議なくらいだ。

「若、どうやら見る方が防具を着けねばならんようです」

 いまだに目の焦点が定まらない状態で、それでも元退役兵は軽口をたたいた。


 これに対し、大笑いしたのは言われたカーシュナーではなく、シヴァだった。元退役兵の根性と、その根性の表し方が気に入ったのだ。

 カーシュナーもつられて笑う。

「全員見物は防具着用で行うように!」

 絶妙な間で差し込まれたダーンの指示に、その場にいた全員が爆笑した。





「こちらはシヴァ千騎長! 王国軍から俺を補佐するために来てもらった!」

 稽古を終えたカーシュナーが、集まった兵士たちにシヴァを紹介する。

「シヴァだ! かしこまるのは好きじゃないんでね! 気楽に付き合ってくれ!」

 大貴族の御曹司と、王国軍でも百人いない千騎長の挨拶が、あっさりと終わる。

「もう少し何かないんですか?」

 ダーンが思わず口をはさむ。

「長話なんて退屈なだけだろ?」

 カーシュナーが答えれば、

「俺なら寝るね」

 シヴァが同調する。

「……お二人がそれでかまわなければ」

 それ以上は何も言わず、ダーンは引き下がった。


 三人の周囲には、カーシュナーとシヴァの稽古の後、自分にも稽古とつけてくれと殺到した兵士たちが、息を切らせて座り込んでいた。

 そんな兵士たちを見ながら、二日酔いが吹き飛んだと笑うカーシュナーは、いい汗をかいた程度の疲労感しか見せていない。

「さっきのあんたを、昨日ぎゃあぎゃあ騒いでいた、<黒豹>やら<猛牛>とか言われていた連中に見せてやりたかったぜ」

「嫌だよ。絶対に手合せしろってつきまとってくるに決まっているんだから」

「鬱陶しいですね」

「確かにそうだけど、少し手厳しくないか、ダーン?」

「先程稽古中にシヴァ殿から昨日の会議の様子を聞きました。カーシュを侮った態度は許せませんね」

 冷静そのものといった態度で立っているが、内心の苛立ちが相当なものであることは、今日が初対面のシヴァにもわかった。


「殿とか様付けはやめてくれよ。一つしか違わねえんだからさ。シヴァでいいよ。俺も呼び捨てでいいよな?」

「本当は失礼にあたるのですが、そこまでおっしゃるのなら、わかりました」

「そういえば、シヴァって何歳なの?」

「俺か? 今年で二十四になる。いい男が増していく一方だぜ」

「じゃあ俺と二つ違うのか。俺が二十二で、ダーンが二十三だから」

「大将まだ二十二なのか! その割にはやり口が老獪だな。歳ごまかしてないか?」

「乙女じゃないんだから、ごまかすわけないだろ! それなりに苦労してきた結果さ」

「それにしても、二人ともいい腕してるな。俺とまともにやりあえる奴なんて滅多にいねえのに、いきなり二人も現れるなんて思わなかったぜ。これだけ使えて、今まで名前の一つも聞いたことがなかったなんて、世の中意外と広いな」


 近隣諸国でも屈指の強兵を誇るヴォオス軍にあって、シヴァの実力は突出していた。

 訓練と娯楽を兼ねて開催される馬上槍試合や剣術などの各大会で、無類の強さを示した。

 騎士の称号を持つだけの準貴族でありながら、有名貴族を平気で叩きのめす強心臓ぶりは、下級層の興奮を呼び、貴族の間からは憤懣ふんまんの呪詛を招いた。


 特に槍を持たせたら右に出る者はなく、それが馬上であれ、闘技場の中であれ、自らの槍先でシヴァを捕らえられた者は皆無であり、シヴァの前に五分以上立っていた者は一人もいなかった。

 それからしばらくの後、貴族たちからの圧力によりシヴァはあらゆる大会から参加を断られることになるが、本人は鼻で笑って終わりだった。

 広く名を知られることはなかったが、一時期無敵の強さで勝ち続けた騎士の名は、彼の戦いを見た人々の記憶に焼きつけられている。

 そのシヴァが本気で認めるほど、カーシュナーとダーンの剣の腕前は確かなものなのだ。





「カーシュナー様」

 流した汗を、固く絞った布で拭っていると、中肉中背の、これといった特徴が全くない商人が、営業回りにでも来たかのような気安さでカーシュナーに近づいてきた。

 細い目、低くて平らな鼻、薄い唇。どこにでもいそうな顔に愛想笑いを浮かべながら、商人は何気ない口調で重要な事実を告げた。

「国内北西部が、所属不明の軍から侵略を受けているとのことです。その数およそ一万五千。すべて騎兵で、恐ろしく統制のとれた略奪を働くそうです」

 この突然の報告に、シヴァが驚いて表情を変え、まったく表情を変えないカーシュナーとダーンを見て、己の失態を恥じた。


 商人かと思った男は、その実クライツベルヘン家の密偵であり、おそらくまだ大将軍ロンドウェイクや宰相クロクスの耳にも入っていない情報を報告に来たのだ。

 クライツベルヘン家に用意された兵舎であり、不特定多数の人間の紛れ込む余地が少ない状況であるとはいえ、もしここに裏切り者や他国、ライドバッハの密偵が潜んでいれば、シヴァの表情の変化から、密偵の正体と、何か重要な情報を得ていることが伝わってしまう。


 密偵がシヴァの前で報告したということは、主であるカーシュナーの人物眼を信用したということである。つまり、シヴァは間接的に、カーシュナーに部下の前で恥をかかせたということになるのだ。

 それが顔に出たのだろう。カーシュナーが笑いながら肩を殴りつけてくる。

「問題ない」

「……気がまわり過ぎなんだよ」

 シヴァは苦笑しつつカーシュナーの肩を殴り返した。


「正体不明ですか。野盗や山賊が手を組んで、混乱に乗じたということでしょうか?」

 逸れた話をダーンが修正する。

「可能性がないわけではないけれど、野盗や山賊で、騎兵一万五千の軍勢をそろえるのは無理なんじゃないかな。なにより、略奪に統制を持たせることなんて不可能だよ」

「ってことは、どこかの軍で間違いないってことか」

「問題はどこが軍を動かしたかだね」 

「ライドバッハが軍をひそかに割って、北から西回りに南下させた可能性はありませんか?」

「あるね。その辺はどうなの」

 カーシュナーが密偵にたずねる。


「マウラガンの野での一斉蜂起後に限って言えば、そのような事実は一切ございません。それ以前に兵を用意していたのならば話は別ですが、一万五千もの不審な兵の動きは捉えておりませんでした」

「だろうな。俺もきな臭そうなところはそれなりに自分で嗅ぎまわったけど、そんなでかい気配は感じなかったしな……」

 言いつつカーシュナーが何やら考え込む。


「西側で態度を保留していた貴族の誰かが、ライドバッハにつくことにしたとか?」

 カーシュナーの思考の邪魔をしないために、シヴァはダーンに問いかけた。

五大家ごたいかを除けば、西で騎兵のみ一万五千もの兵力を持つ貴族はおりません。貴族の私兵を集めたというのならば、騎兵三千以上の兵力を所有する貴族が五つは同盟しなくてはならず、その動きを隠すのは容易なことではないはずです」

「……西の五大家と言えばザーセン家だったか? あそこが動いた可能性はないのか?」

「ございません。五大家の動静は、王家および五大家、その他の貴族、近隣諸国の密偵すべてが把握に努めております。一万五千もの兵を出せば、その動きは必ず知れます」

 ダーンに代わって密偵の男が答える。


「そんなに見張られているのか!」

「はい。おかげさまで、相当数の密偵の顔見知りが出来てしまいました」

 この言葉に、シヴァが思わず吹き出す。

「この手の軽口は、クライツベルヘン家の家風なのか?」

 ダーンは即座に否定しようとしたが、一瞬言葉に詰まると顔を歪めてうなずいた。

 カーシュナーは特にだが、当主のヴァウレルから始まり、三人の兄も皮肉の効いた冗談をよく口にする。主の性質は、従う配下にもうつるようで、先程の元退役兵や目の前の密偵のように、軽口や冗談が頻繁に飛び出すのだ。


「ザーセンは動かない」

 カーシュナーが独り言のように漏らす。

「動くのならば、まず宣戦布告するはず……」

「正体を隠す必要性……」

 ぶつぶつとつぶやいていたが、最後にはにんまりと笑った。悪い笑顔である。


「何か思いついたみたいだな、カーシュ」

「自由に動く口実に出来るかもしれない」

「自由に?」

 カーシュナーの言葉にシヴァが首を傾げ、ダーンが不安そうに顔色を曇らせる。

「ああ、自由にだ!」

 カーシュナーは密偵に目を向ける。

「この情報の流れ方を知りたい。うち以外のどこがはじめにこの情報をつかむか。どの層に広がるのが早いか注意していてくれ」

「かしこまりました」

 密偵は答えると、来た時同様、何気ない態度で任務に戻っていった。


「どの層に広がるかってどういうことなんだ?」

 シヴァがたずねる。

「上級貴族の層に広がるのか、下級貴族や商人なんかの中級層に広がるのか、一般兵や民衆なんかの下級層に広がるのか、そのさらに下(・・・・・・)に広がるのかで、謎の軍の意味と俺の動き方がわかるんだ」

「全体に広がったらどうなるんだ?」

「最終的にはそうなる。だから情報の動き始めが肝心なんだ」

「なるほどね」

 合点のいったシヴァは大きくうなずい。


 上級貴族の層に広がれば、貴族連合に亀裂を入れるためにライドバッハが放った策略の可能性が高くなる。特にヴォオスの西側に領地を持つ貴族たちは、いつ自分の領地が略奪されるか気が気ではないはずだ。なかには領地へ兵を引き上げようとする者も現れるだろう。そうなれば貴族連合は進軍を待たずにバラバラになって終わりだ。

 中級層に広がる場合が一番害が少ないと言えるだろう。ごく当たり前のうわさ話の広がりと考えられる。もっとも、謎の軍が国内で略奪を働いているのだ。主要隊商路で商隊などが襲われれば、経済に混乱を招きかねない。

 下級層にうわさが広がる場合は、王都内にいるライドバッハの支持者たちが、王都内の不安や混乱を助長するためにうわさをを広めている可能性が高くなる。これは上級貴族の間にうわさが広がるのと重なる可能性が高いのだが、広がり方次第で、ライドバッハがどちらに策略の比重を置いているかをうかがうことが出来るのだ。


 この時点でカーシュナーはこの謎の軍をライドバッハと関連付けて考えていた。そして、謎の軍の謎の部分も、推測だけでその実態を暴いていた。それらを考え合わせたうえで、カーシュナーは自分の目的を果たすために、行動の自由を得ることにしたのだ。

 当然、このことをヴォオス軍の大将軍であり、王弟でもあるロンドウェイクや宰相のクロクスに伝えるつもりは毛頭ない。


 兵をいつでも動かせるように準備しつつ、カーシュナーは第一城壁内の屋敷に戻って王宮からの呼び出しを待つことにした。その間、ある流言を流し、情報操作も行った。 

 その日のうちに呼び出しがかかるかと思われたが、結局急使が現れたのは翌日の昼過ぎだった。

 いつでも参内出来るようにカーシュナーが準備を整えていたことに急使は驚き、丁寧に労をねぎらわれて金子を持たされると、王宮に帰った急使はカーシュナーに対する好意的な評判を流した。


 カーシュナーの細やかな気配りが人物評価を上げている裏で、ヴォオス軍の情報収集能力の低さにあからさまな舌打ちと、その無能さに対する悪態が盛大に吐き出されていたことを知っていたのは、ダーンとシヴァの二人だけだった――。









 先日大会議が開かれた王宮の一室は、その混乱ぶりを表すように、終始ざわついていた。

 カーシュナーの予想通り、謎の軍が姿を現したヴォオス西部に領地を持つ貴族たちは、兵を返す許可をロンドウェイクに願い出ていた。彼らが引き連れてきた兵は、元来自身の領土を守るために、貴族たちが雇い入れたものである。当然兵力の維持に必要な経費は各貴族の私財から出されている。

 その兵士を勅命とはいえ国のために使い、反乱の鎮圧に成功して帰還をはたしたら、領土も領民もぼろぼろでしたでは話にならない。王に仕える義務があるのと同様、貴族たちには領土を守り、領民を守る義務があるのだ。

 そして、王家には、従う貴族たちを外敵から守る義務がある。

 未曽有の大反乱を前に、王家も貴族も相反する義務に腕をつかまれ、ねじりあげられながら思い切り引っ張られている状況であった。


「俺は兵を引かんぞ!」

 ヴォオス西部に領土を持つジィズベルトが、ロンドウェイクに兵を返す許可を求めて嘆願している貴族たちに宣言する。

「国あっての貴族であろう! その国が一大事だというのに、我が身惜しさに領地に引き返したいなど、お主らそれでもヴォオス貴族か! 恥を知れ!」

「無責任なことを申すな! お主は父の代理で兵を率いて来たに過ぎぬではないか! 領地を守る責任のない若造に、貴族の何たるかを説教される筋合いはないわ!」

 どちらも正論である。ただ、より現実に即している正論は、後者の貴族の弁だろう。ジィズベルトの正論は、少年が持つ潔癖さに近い。


「お主、国のためなどと申しておるが、その実領地が侵略され、領主である父が死ぬのを狙っておるのではないか? そうなればお主が領主になれるからな!」

 ジィズベルトの言葉に、カッとなった別の貴族が厳しい言葉を投げつける。言いがかりに過ぎないが、野心の強い者ならばやりかねない話なのだ。


 ジィズベルトが顔を真っ赤にして立ち上がるのと同時に、言いがかりをつけた貴族の近くにいたブレンダンが、鬼の形相でその貴族を吊し上げていた。

「事態がここに至った今でも、軍装も身に着けず、絹服に香水を振りまいてこの場にいるような貴様に、ジィズベルトを愚弄する資格があるとでも思っているのか?」

 大声で怒鳴りつけるのが常のブレンダンが、ドスの効いた小声で、吊し上げている男にだけ聞こえるように言う。その怒りの深さに周囲が凍りつく。


「ひっひぃぃぃぃ!! で、殿下! お助けを!!」

 自分が死の淵から地獄の入り口にぶら下げられていることを悟った貴族が、恥も外聞もなく、ロンドウェイクに助けを求める。

「ブレンダン!!」

 しかし、ロンドウェイクが反応する前に、ジィズベルトがブレンダンをたしなめた。

 周囲も、吊し上げている貴族すらも無視して、ブレンダンがジィズベルトを凝視する。

 強烈な眼光を、それに倍する力を込めてジィズベルトが跳ね返す。

 二人の間で何らかの合意が得られたのだろう。

「お前はもう口を利くな」

 引き寄せた貴族の耳に言葉を流し込むと、ブレンダンは文字通り貴族を投げ捨てた。


 緊張をはらんだ沈黙が室内を支配する。不用意な発言が再び誰かの暴発を招きかねない状況に、誰もが互いの顔色をうかがう。

「エルフェニウス。何か策はあるか?」

 さすがのロンドウェイクも事態の展開と、状況の混乱を持て余しており、即断出来ずにいた。

「貴族連合は割られたと考えるしかないでしょう」

 帰還を求める貴族たちを、無理に引き止めることは出来ない。大義など所詮飾り立てられた建前に過ぎない。己の領地が侵略されるかもしれない状況で無理に引き止めれば、不満と不安からライドバッハに寝返りかねないからだ。それは腹中に裏切りの虫を飼うのと同じことだった。


「兵力を整え、速戦即決を目指すという基本方針は転換せざるを得ないと、私は考えます」

「反乱の長期化は隣国の野心をあおることになる」

 クロクスが渋い顔をする。

「この異常気象の影響を受けているのは何も我が国だけではありません。隣国で糧食に余裕のある国は、南方のゾンぐらいでしょう。ヴォオスよりも北方に位置するイェ・ソン、ルオ・リシタはもとより、東方のエストバは山深いため現在雪に埋もれており、隊商路の機能確保が精いっぱいの状況です。

 真に警戒が必要なのはゾンのみであり、そちらはクライツベルヘン家の協力のおかげですでに備えは出来ております。他国の蠢動にあおられ、事態の解決を焦るよりも、確実に一つずつ対応していくべきです」

 エルフェニウスの弁に、クロクスも考え込む。

 

「ではまず、この所属不明というふざけたならず者どもに対して、お主はどのように対応すべきと考えておるのか?」

 ロンドウェイクが問いかける。

「ライドバッハに関しては、レダム砦にて確実に足止めを行い、時を稼ぎます。その間に謎の軍を退けます。各地で一戦で敵を討伐するような、兵力差が必要な派手ないくさの戦端を開くことは我が軍にとっても負荷が大きく、いたずらに兵力を分散させる愚を犯すことになります。

 まずは守りに徹し、想定外の敵を排除すべきと考えます」

「そうするより他に手はあるまいな。しかし、ライドバッハの兵力は、質こそ大したことはないが、いかんせん数が多い。レダム砦に割く兵の数を誤ると、一気に抜かれかねんぞ」

「はい。そのために、西方に領地を持つ貴族方をただ領地を守るためだけに戻すのではなく、一つの組織として互いをつなぎ、謎の組織を追い込むための網として送り返します。この包囲網にかかった謎の軍を、選りすぐった部隊でもって一戦のもとに葬れば、全戦力をライドバッハに向けることが出来ます」


「素晴らしい作戦です! アルスメール卿はこのように優秀なご子息を持ててまことにお幸せだ!」

 ロンドウェイクに帰還の嘆願をしていた貴族の一人が、媚びるように褒めそやす。エルフェニウスの作戦案が採用されれば、確実に領地に戻れるからだ。

「他に提案のある者はいるか?」

 公平を期すために、ロンドウェイクが意見を求める。

 誰からも反対、代案等はなく、基本方針が定まる。

「では、エルフェニウスの策を採用し、詳細を詰めると……」


 ロンドウェイクの言葉が終わらないうちに、血相を変えた兵士が入室してくる。そのただ事ではない雰囲気に、何事かを察したロンドウェイクが顔をしかめる。

 この反乱が始まって以来、ロンドウェイクの発言が凶報で遮られることが再三あったからだ。


「アペンドール伯爵が、ライドバッハにつきました!」

「なにっ!!」

 驚愕の事実に、さすがのロンドウェイクも腰を浮かせる。

 

 アペンドール伯爵とは、ヴォオス屈指の武門、アペンドール家の当主であり、先代大将軍であったゴドフリートとともに、多くの戦でその武名をとどろかせた騎士である。

 最後の戦で受けた毒矢が原因で一線からは退いたが、いまだヴォオス軍に対する影響力が強い有力貴族の一人であった。


「討たれたの間違いではないのか?」

 クロクスも驚きに目を見張りながら、兵士に問いただす。

「そうだ! ライドバッハに膝を屈するを潔しとせず、挑んで討たれたのではないのか! あの御仁がいかにもやりそうなことではないか!」

 アペンドール伯爵をよく知っているのであろう別の貴族も、兵士に詰め寄っている。 

「お、お待ちください! ここに、アペンドール伯爵からの書簡が届いております!」

 兵士はそういうと、丁寧に封蝋された書簡をコンラット将軍に差し出した。宛名は国王のバールリウスになっているが、直接国王に手渡されることはない。反乱に加担した者からの書簡となれば、何らかの毒が仕込まれている可能性があるからだが、下手に渡したりすると、国王の怠惰な性格から、いつ開封して中身をあらためるか分かったものではないからだ。

 

 本来であれば不遜にあたる行いも、国王の日頃の国政への無関心さを知る一同にとっては日常と化していた。

 中身はすでにあらためられ、書簡に毒など仕込まれていないことが確認されている。コンラットは受け取った書簡をロンドウェイクに差し出した。

 驚きのあまり立ち上がったままだったロンドウェイクは、座るのも忘れて書簡に目を通す。

「間違いない。アペンドール伯爵の筆跡だ」

 真贋しんがんを自ら見極めると、ロンドウェイクは声を出さずに内容に目を通した。アペンドール伯爵の影響力を考慮したからだ。


 書簡に目を通すと、ロンドウェイクはクロクスに書簡を渡した。

 受け取ったクロクスが内容に目を通すと、クロクスは声を上げて大笑いした。

「陛下に私を退け、自ら責任をもって国政にあたられるよう諫言しておる」

 そう言ってクロクスが放り出した書簡をエルフェニウスが拾い上げ、目を通していく。ただ読むのではなく、縦にしたり横にしたり、ときには裏返して確認する。

「何か痕跡は?」

 エルフェニウスの行動の意図を理解していたカーシュナーが問いかける。

「なにも」

 エルフェニウスは書簡を丁寧に折りたたみながら答えた。

「脅迫されて書かされたわけではないか……」

 エルフェニウスの答えに、カーシュナーは残念そうにつぶやいた。


 カーシュナーとエルフェニウスは、この書簡がライドバッハによる揺さ振りの可能性を考慮したのだ。

 アペンドール伯爵の影響力は、自身も認識のあるところであったはずだ。その影響力を利用してライドバッハが王国軍側の動揺を誘い、王国軍側の貴族の離反を謀ることも想像出来たはずである。

 アペンドール伯爵が本当はライドバッハにつかず、脅迫されてこの書簡を書かされたのであらば、その事実を何らかの形で伝えようと試みたはずだ。

 もしそうであれば、貴族たちの動揺を鎮めることが出来たし、対応の基本方針は変えずに事態を前に進めることが出来ただろう。だが、その痕跡が全くないということは、文面通りの意志で行動しているということだ。


「おいぼれがっ! どうやら受けた矢傷から回った毒が、すべて頭に流れ込んだと見える」

 大笑いから一転。クロクスが不機嫌に吐き捨てる。

「破産の瀬戸際にあったこの国の財政を、誰がここまで建て直したと思っておるのだ。戦場で剣を振るうことしか能のない奴が、きれい事ばかり並べておるが、一度でも国の発展に貢献したことがあるのか! 戦場でどれほどの数の兵を指揮出来ようと、その兵士たちを食わせているのはこの私だ。私が生み出した利益があってはじめていくさが出来るのだろうが!」

 言葉を続ければ続けるほど、自分の言葉で不機嫌になっていく。


 そんなクロクスを心の目では心地よく眺める。クロクスをもっとも邪魔に思い、排除したいと願っているのは、自分自身だとロンドウェイクは考えている。この反乱が真にクロクスのみの排除を目的としたものであれば、ライドバッハと手を組むこともやぶさかではない。

 だが、ライドバッハの本心がどこにあるのか、ロンドウェイクには全く読めなかった。このような大規模反乱を起こす気配など微塵も感じさせなかったが、現実には、戦端を開く前から追い込まれている。

 ライドバッハはまぎれもない天才だ。今後の対応を誤れば、反乱の鎮圧どころか、クロクスと共に討たれて首を城門にさらすはめになりかねない。

 国のためと言っているが、ライドバッハが玉座を望まないという保証はどこにもないのだ。


「アペンドールの動きに備えなければならんな」

 ロンドウェイクが現実の処理に戻る。声に苦さが混じるのは、抑えようがなかった。

「ライドバッハはアペンドール伯爵を引き入れたことで、強力な遊撃兵力を手に入れたと考えるべきでしょう。伯爵の影響力を考えれば、兵力は増えこそすれ、減ることはないはずです」

 冷静であろうとするエルフェニウスの声にも、あまりの現実の流れの速さに焦りの色が混じる。

「兵は足りるのか?」 

 不機嫌の仮面は外さぬままに、クロクスが問いかけてくる。

「守りに専念し、各所から兵力を集めていますが、いよいよ厳しくなってまいりました」

「おそらくそこまで計算しておるのであろうな。あやつは」

 ライドバッハの顔でも思い浮かべたのか、額に青筋が浮かんでいる。それでもしっかりと自分を抑えているところが、多くの人間から嫌われていてなお、国の第一人者の地位にあり続けられる所以であろう。


 激発して判断を誤るようなことは決してしない。状況認識力と判断力に優れたクロクスという男は、その精神の核が濃度の濃い利己主義でなければ、あるいはヴォオス中興の功臣としてその名を歴史に残したかもしれない。だが、クロクスが野心を手放すことはない。野心を手に持っているのではなく、暗殺者の毒手のように染み込んでしまっているのだ。

 その存在は一時で死に至らしめる劇薬ではなく、精神を犯し、幻覚に包む麻薬である。クロクスが魔術師よろしく操る金貨という名の黄金色をした利益の麻薬は、ヴォオスという国の痛覚を、すでに麻痺させていたのであった。





 情報の流れを、事態の推移を、人の感情の変化を、この場のすべての事柄を、カーシュナーは掌の上に乗せて観察していた。

 アペンドール伯爵に関する情報は、昨夜のうちに入手していた。そして、その情報を国の密偵に流させたのは他ならぬカーシュナーだった。もしカーシュナーが情報を伏せていたら、今この場の混乱は、悪い意味で生じることはなかっただろう。

 カーシュナーが師と仰ぐ人物が、一人いる。


 ゴドフリート前大将軍だ。


 王宮の腐敗に嫌気がさし、大将軍の職を辞した後は王都に構えた屋敷も処分し、隠居生活に入っていた。本来であれば生家の地に帰るところだが、宰相クロクスともめ事を起こしたゴドフリートを一族の者たちは快く思わず、ゴドフリートの帰郷を拒んだ。

 その事実を知ったカーシュナーの父ヴァウレルがゴドフリートを領地に招き、ゴドフリートの望みをすべて叶えたうえで、カーシュナーの教育を依頼したのだ。

 現王宮の体制を批判した人間に、あえて教育を任せるということの意味を理解していたゴドフリートは、自身の思想、信念をカーシュナーに叩き込み、今日こんにちのカーシュナーの基礎を作り上げた。


 アペンドール伯爵はゴドフリートの無二の親友である。その人となりは、クライツベルヘン家の領地に移り住んだことを知り、はるばる訪ねてきた際に交流を持てたことで直接知っている。

 アペンドール伯爵が動く可能性が高いことを予測していたカーシュナーは、その動静をずっと探っていたのだ。


 今の状況にアペンドール伯爵の動きが加われば、状況がロンドウェイク等の手からこぼれ落ちることは見えていた。こうなるとヴォオス西部を荒らしまわっている謎の軍団に対して十分な対応をとることが出来なくなる。

 謎の軍団に対する対応だけでもつけ入る隙は十分あったが、アペンドール伯爵のおかげで、カーシュナーは現状況下で行動の自由を得る見込みが高くなったのだ。


「一つ提案してもよろしいでしょうか?」

 カーシュナーが遠慮がちに手を上げる。この場にシヴァがいたら、カーシュナーの役者ぶりに吹き出していただろう。

「どんな提案だ?」

 ここ数日で劇的に印象を良くしたカーシュナーの提案に、ロンドウェイクが期待を込めてたずねる。

「騎兵五千騎の当てならば、心当たりがあります」

「騎兵で五千! どこにそんな兵力がある?」

 ロンドウェイクが驚きに声を上げ、エルフェニウスも目顔で問いかけてくる。


「リードリット王女殿下と、赤玲せきれい騎士団です」


 カーシュナーの発言に、会議の間は納得と苦渋のうめきに満たされた――。


5/12 誤字脱字等修正

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