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ヴォオス戦記  作者: 南波 四十一
ヴォオス戦記・乱
130/152

ヴォオス戦記・乱 語録(その3)

 こちらは物語ではなく人名録のようなものになっておりますので、設定マニアの方以外はお読みにならないようご注意ください。

ア行


アタウェシュク

 コークテラ家の現当主。

 幼少期から成人するまでを王都エディルマティヤで過ごした文化人。

 厳しい躾の甲斐もあり、貴族でありながらどこか品のない人間が多いゾン貴族の中では品格を備えた人物。

 ゾン文化の中心でその人格が形成された影響で、奴隷を人と思わず、女性を物として考えている。

 領地の運営は問題なく処理し、中央との取引も王都時代の人脈を活かしてこれまで以上に円滑に行っている。

 王都時代に現デニゾバ家当主のセキズデニンと知己を得るが、年齢が7歳離れていたことと、セキズデニンが礼儀正しく接していたこともあり、その本質を低く見積もるという失敗を犯す。

 登場時の年齢は34歳。165センチで細身。



アブサラー

 アブサラー家が領有する土地。


アブサラー家

 現当主はフスレウス。

 現在も産出量が落ちない鉱山を多数所有しており、財力という意味では南部八貴族の中でもかなり栄えている。

 基本は地下水源に頼っているが、各地にオアシスが点在しており、農耕にも力が入れられている。

 過去の経緯から、南部八貴族中もっとも王家、中央貴族に対して強い反感を抱いており、軍備の拡充にも余念がない。

 隣接する王家・中央貴族派のコークテラとは揉め事が絶えず、基本揉め事の発端はほぼアブサラー側から始まる。



アルタク

 ゾンと隣接する小国。

 大陸隊商路が通らないため、その経済網はゾンに依存している。

 ゾンがかつて部族単位で分裂していた当時は幾度となく戦火を交えたが、現在は相互不可侵の関係にある。

 小国ではあるが軍は強く、侵攻しても得られるものより被害の方が大きくなることが明白であるため、ゾンとしては西方諸国の野心的な中規模国家に対する防壁と考えている。



イジドール

 クロクス配下の実戦部隊の戦士。

 体格は平均より一回り大きい程度だが、その戦闘能力の高さから、クロクスから特別待遇で迎えられた。

 個人としての実力は確かなのだが、人格に癖があり、指揮官には不向きであるため、常にお目付け役がつけられることになる。

 不敗の傭兵<海王>シルヴァの部下としてゾンに派遣される。

 身長は170センチで、少女を見紛うほどの美貌の持ち主。

 見た目通り柔和な性格で、小鳥や小動物が自然と集まってくるので、よくそれらの動物と戯れている姿が見られる。

 イジドールの実力を知らない者がその姿を見てからむことが多いが、その代償は自身の命で支払うことになる。

 小鳥や小動物と戯れるときの穏やかさのまま人を切り刻む姿は異様であり、一度でもその姿を目撃した者は、絶対にイジドールにからもうとはしない。

 そのため人の中では常に孤立している。

 そんなイジドールに平気で接してくるシルヴァにどう対応していいのかわからず、始め内はたどたどしい対応になってしまったが、最近少し慣れた。



イドリス

 ダマド野盗団幹部。

 元は中堅の奴隷商人であったが、奴隷商の影で行っていた密売が発覚。役人に追われる身となり、当時はまだ小規模な野盗であったダマドの野盗団に、盗品の買取などで繋がりがあった経緯から転がり込んだ。

 その知識と頭の切れから野盗団の拡大に一役買うことになり、頭目であるダマドの補佐役を務めている。



エバべキル

 ナルバンタラー家当主。

 現南部八貴族の中では最年長者で、南部貴族独特の独立気質の強い人物。

 過去の遺恨から王家及び中央貴族に対して否定的な性格で、敵の敵は味方の原理により、東部貴族たちに対して共感を覚えている。

 他の七家が当主の代替わりをしたことで、南部八貴族の盟主的存在を自任しており、結果として他の七家の当主たちを下に見てしまっている。

 登場時の年齢は60歳。身長は160センチで、大きく張り出した腹を抱える肥満体。



エミーネ

 <獣人>ジャナワルの本名。

 誰の目にも奇異に映るその肌の意味を変えるために、ファティマが奴隷解放軍の仲間たちにヒョウ柄の装備を身に着けさせたことにより、エミーネの肌は、ファティマに対する絶対的な忠誠の証として広く知られるようになり、これまで差別の対象だったその肌は、とてつもない覚悟の表れとして畏怖されるようになる。

 幼いころから磨かれたその野獣のごとき身体能力は、無理に正式な剣術に強制するよりは、そのまま伸ばした方が有効と判断され、正式な剣術を身に着けるのではなく、対抗手段を磨くために剣術を学び、その実力を飛躍的に伸ばした。

 剣術を指南してくれたダーンには稽古中ただの一度も勝つことが出来ず、いつか超えてやろうと執念に近い決意を胸に秘めている。

 いつも優しいモランに密かに好意を寄せているが、自分自身それが好意であることに気がついていない。

 ちなみにいつもいたずらを仕掛けてくるカーシュナーのことを、かなり疎ましく思っていたが、いたずらの結果ファティマが笑ってくれるので、逆に仕掛けるようにもなる。

 セレンよりもはるかに笑いのセンスが良く、カーシュナーの影響でいつの間に解放軍のツッコミ役に収まってしまった。



エルデーム

 ヤヴルドガン家当主

 アブサラー家当主フスレウスを兄のように慕っており、目標としてこれまで修練を積んできた。

 王家・中央貴族派から不当な扱いを受けて来た経緯もあり、同じ境遇にありながらただ耐えるのではなく、厳しい軍事訓練から軍備の拡充まで行うアブサラーを見習い、経済力で劣るなりに、ヤヴルドガン軍を鍛え上げて来た。

 登場時の年齢は28歳。身長は160センチで鍛え上げられた肉体を誇る。



オクタヴィアン

 パラセネムが囲う美貌の楽師兼情夫。

 男であるにもかかわらず、男でも色欲を覚えるほどの美貌の持ち主で、パラセネムの邸に楽師として売り込みに訪れたところを一目で気に入られ、パラセネムに囲われることになった。

 癖のある巻き毛と褐色の肌はゾン人らしく見えるが、その顔形は祖先に多くの人種の血が加わっているため、人種不明の奇跡の造形となっている。

 身長は190センチ近くあり、頭は小さく、それでいて手足は長く、その造形は顔だけでなく、全身すべてが神が自ら手掛けた創作物であるかのように整っている。

 弦楽器を得意としており、その腕前は宮廷楽師が務まるほど。

 一つ所に留まらず、一人で旅を続けていたこともあり、剣の腕もパラセネム配下の中では最も優れている。



オメル

 セキズデニンの部下。

 主に非合法な仕事に従事しており、デニゾバ領内はもちろん他の貴族領でも諜報活動や破壊工作、時には暗殺などを行っている。

 ファティマによる奴隷解放運動を利用してナルバンタラー領にて奴隷による反乱を起こし、同時にデニゾバのナルバンタラー侵攻の口実を作った。 

 そしてナルバンタラーの各地に戦火が広がると、反乱奴隷を糾合し、軍と呼べるだけの反乱組織に仕立て上げ、最後にデニゾバ軍に組み込んで見せた。

 セキズデニンによって罪人として鉱山に送り込まれた反乱奴隷の主要人物たちを救出し、最終的にはファティマの奴隷解放組織に糾合されるよう手を尽くす。

 その正体はセキズデニンの元に送り込まれたカーシュナーの間者で、最後まで気取られることなく任務をこなした。

 身長は175センチでゾン人としては長身の部類に入る。鍛え抜かれた肉体は見事に引き締まっているが、姿勢や所作によってその事実を完璧に隠しているため、セキズデニンですらオメルの真の能力は把握出来ていなかった。

 登場時の年齢は30歳。

 これと言って特徴のない顔は、カーシュナー同様表情筋を操り巧みに変装を繰り返すため、カーシュナー以外の人間は、共にセキズデニンの元に送り込まれていたハムザでさえその素顔を記憶していない。



カ行



カマルラマン

 サーヴェリラ家現当主。

 終わらない冬の終わりに先代当主が亡くなり、予定よりも大幅に早く当主の地位を手に入れた野心家。

 自領であるサーヴェリラは南部八貴族の中では漁業と交易を中心に安定した繁栄を続けているが、基本どの産業も大規模に展開出来るだけの余地がなく、現状維持が限界であることに大きな不満を抱えている。

 隣接する領地であるキャヴディル家の当主ジャフェルとは、先代のころから犬猿の仲で、自領よりも豊かなキャヴディルの地を治めるジャフェルに対する憎悪は凄まじいものがあった。

 国内の混乱を好機と捉え、領土拡大の意図もって暗躍する。

 本心はキャヴディルの地を求めているが、先に隙を見せた南方のデニゾバに対して先に攻略の手を打つなど、状況をそれなりに見えている。

 ただその隙が、カマルラマンを動かすためにセキズデニンが自ら作り出したものであることまでは見えていなかった。

 身長は165センチで、登場時の年齢は31歳。



ガリプ

 ダマド野盗団の団員。

 元は自身が首領となって野盗団を構えていたが、拡大するダマド勢力に呑み込まれ、その支配下に収まった。

 女好きで乱暴者という、権力を手にしたゾン人の典型のような性格をしており、頭もよくない。

 首領であるダマドにも劣らない巨体の持ち主で、組織が大きくなるにつれ、細かい作戦行動に不向きなジャナワルに代わり、ダマド野盗団の主戦力となった。

 身長は180センチで、分厚い筋肉の鎧に覆われている。



キャヴディル

 キャヴディル家が領有するゾン南部の土地。


 キャヴディル家

 現当主はジャフェル。

 その立地から、南部八貴族領の経済的中心となっており、高度な貴金属加工技術もあって、王都から唯一大商人たちが直接足を運ぶ土地。

 中央との繋がりが強いため、南部八貴族の中ではもっとも王家、中央貴族寄りの考え方をしている。



ギュナ

 ゾン人の元逃亡奴隷。

 逃げ惑っていたところを偶然ファティマに助けられ、奴隷解放というファティマの意思に触れ、強くその思いに共感し、仲間に加わる。

 無学ではあるが目端が利き、人の感情をわずかな表情の変化などから読み取る術に長けている。

 偶然が味方した部分もあるが、奴隷の監視が厳しい状況下で脱出に成功したのは、生き残るために磨かれた観察眼の賜物。

 登場時の年齢は27歳だが、物心つく前に奴隷として連れ去られたため、自分では正確な年齢を知らない。

 豪商の商家で家事全般をこなしており、生活能力は極めて高い。

 容姿は整っているが目を引くような特徴はなく、主である豪商が美しい性奴隷を多く抱えていたこともあり、屋敷内では目立たない存在だった。

 戦闘には不向きな性格であるため、剣を取って戦うということはないが、奴隷解放運動組織の裏側を支える縁の下の力持ちとして、欠くことの出来ない存在となっている。



クラリサ

 南方民族の女奴隷戦士。

 パラセネムの護衛が主な任務であるが、密偵が集めた各情報を、パラセネムにまとめて報告する仕事もこなしており、護衛よりも事務処理に割いている時間の方が多かったりする。

 奴隷として買われたが、その優秀さと忠誠心が認められるとすぐに奴隷の身分から解放され、奴隷印も消された。

 だが、パラセネムの命令だけに従うという意思を表すために、拳闘奴隷がはめている首輪を今もかたくなにつけているため奴隷と思われることが多い。

 もっとも、拳闘奴隷の印であるその首輪が、見事な装飾で飾られているため、最近ではパラセネムが考えた新しい宝飾品と勘違いされ、ゾン貴族の女性の間で秘かに流行り始めてしまい困っている。

 首輪を装飾品の域まで高めたのはパラセネムの気まぐれで、本当は高価な首輪という矛盾したものを忠誠の証として装着したくはないのだが、パラセネムの命令には逆らえないので仕方なく装着している。

 本人の意思とパラセネムが金に糸目を付けずに高度な訓練と教育を施したおかげで、実はゾン軍全体を見渡しても対抗出来る人材は数えるほどしかいないほどの能力を持つ。

 身長は185センチで手足が長く、ネコ科の肉食獣のような雰囲気を備えている。

 本当は髪を短くしたいのだがパラセネムの命令で伸ばしており、癖が強くて髪質も硬いため毛糸玉のようになっている。

 パラセネムがその中に指を突っ込むのが好きなため、暇を持て余すとすぐおもちゃにされてしまう。

 登場時の年齢は23歳。



ケーナン

 バラ―家当主。

 武芸の腕は大したことはないが、政治的手腕に富み、ゾン貴族社会でもそれなりの発言力を持っている。

 クロクスと裏でつながっており、ゾンでのクロクスの活動を支援している。

 その発言力の半分は、クロクスの経済力によるものであることをしっかりと理解し、可能な限りその力に依存している。

 初登場時の年齢は46歳で、身長は160センチ。

 ゾン貴族には珍しく、節制しているおかげでこの年齢でも太ってはいない。



コークテラ

 コークテラ家が領有するゾン南部の土地。


 コークテラ家

 現当主はアタウェシュク。

 希少価値の高い鉱物が産出される鉱山が多く、ゾンでも屈指の名産地。農業は小規模だが、それを補って余りあるだけの富を生み出している。

 中央貴族からの評価も高く、古くからの繋がりから、中央寄りの考えを持っている。



サ行


サーヴェリラ

 サーヴェリラ家が領有するゾン南部の土地。


 サーヴェリラ家

 現当主はカマルラマン。

 南部八貴族領で唯一大規模な港を有しており、漁業が盛ん。

 立地的な条件にあまり恵まれていないため、海上商人などの寄港地として大きく栄えることはなかったが、それでも南部八貴族領内で産出、生産される貴金属類を求める商人たちが集まるため、中規模程度の繁栄を見せている。

 沿岸寄りの土地では農耕が行われ、内陸では生産量こそ低下したが、今でも鉱石の採掘が行われており、南部八貴族の中では多方面にわたって発展を遂げたが、漁業以外はどれも四番て以下で器用貧乏な土地。

 過去の経緯から、王家、中央貴族に対する反発が強い。



シセクダーギ

 シセクダーギ家が領有するゾン中央の土地。


 シセクダーギ家 (侯爵)

 現当主は不在。

 侯爵夫人であるパラセネムが、ゾンでは例外的にその権限を引き継ぎ、現在は当主不在のまま領地を監督している。

 親族により侯爵位の相続を求める訴訟が起こされたが、その訴えは退けられ、訴えを起こした親族たちは次々と不審な死を遂げた。



ジャフェル

 キャヴディル家現当主。

 少年期から青年期までを王都エディルマティヤで学び、博学でゾン人には珍しい気品を感じさせる人格の持ち主。領民からの支持も厚く、南部八貴族では飛び抜けた名君と謳われる。

 剣技にも秀でており、常に冷静で隙が無い。

 人を信じようとする心根の持ち主で、本来であれば素晴らしい美点なのだが、互いの足を引っ張り合うことに心血を注ぐゾン貴族の中にあっては、唯一の隙となってしまう。

 身長は170センチとゾン人としては高く、引き締まった肉体と相まって、貴族的というより物語に出てくる完璧な王族を思わせる雰囲気を纏っている。

 登場時の年齢は37歳で、南部八貴族の中ではエバべキルに次ぐ年長者だが、ゾン貴族の領主の平均年齢から考えると十分若い。



ジャナワル

 色素異常により、全身が見事なまでの豹紋斑模様となってしまった少女。

 デニゾバ東部の僻地で生まれ、その特殊な肌のせいで人目を避けて育てられたが、皮膚だけでなく、一般的なゾン人の少女をはるかに上回る成長速度から、迷信深い父親が悪霊憑きではないかと疑い出したため、殺される前に母親が鉱山地帯へ逃がし、以後厳しいゾンの自然環境の中、野生の獣のような暮らしを強いられることとなる。

 いつからか人々はジャナワルのことを獣人と呼び恐れるようになるが、珍しい生き物として見世物にしようとしたダマド野盗団に捕らわれてしまう。

 始めはすぐに売り飛ばすつもりでいたダマドだったが、ジャナワルの大型のネコ科動物を思わせる高い戦闘能力に目をつけ、戦闘奴隷として手元に残した。

 その後ジャナワルを捕らえたダマド野盗団はゾン南東部で頭角を現し、他の周辺野盗団を傘下に収め、広くゾン南東部を縄張りとするまでに成長する。

 他の盗賊団やデニゾバ軍との戦いでその戦闘力はさらに磨かれ、ダマドの目論見通り、ジャナワルは野盗団の主要戦力となった。

 野盗団に在っては言葉もしゃべれない獣のようにふるまっているが、知能は極めて高く、獣人を演じつつ、自分の身の安全を守っている。

 初登場時は16歳の180センチと、ゾン人女性では規格外の高身長であったが、その後さらに身長は伸び、190センチを超えるまでになる。

 自分を差別せず、人として受け入れ、人として扱ってくれるファティマに絶対の忠誠を誓ており、セレンと共に奴隷解放軍の主軸を担うようになる。

 本当の名前はエミーネ。ジャナワルは言葉をしゃべれない振りをしていた時にダマドが便宜上付けただけのもので、ファティマの仲間に加わって以降は本名のエミーネと呼ばれるようになる。



ジュムフ

 ゾンと隣接する小国。

 主要な土地はみな標高が高く、ゾンとの国境線には砂漠が横たわっているため、陸の孤島のような存在。

 農業が盛んで、ゾンの食糧庫的役割を担っている。

 過去に何度かゾンも侵攻を計画したが、砂漠を抜ける道が一本しかなく、大軍が通過出来るほどの水が確保出来ないなどの理由により断念した。

 アルタク国とも隣接しているが、それ以外の国とは地形の関係で直通路がなく、西方諸国方面への農産物や加工品の輸出は難しい。

 結局買い手はほぼゾン一択であるため価格設定をゾンが握っているため、ゾンとしてはわざわざ侵略支配する必要性がない。

 また主要な土地の標高が高いため冬の寒さが厳しく、寒さに弱いゾン軍による常駐支配が困難なこともゾンの領土的野心を阻む一因になっている。



ズュベイル

 メヴィケント家の筆頭騎士で、当主ヒュセインの腹心。

 眉目秀麗で、ヒュセインの影響か、ゾン人らしからぬ善良な気質の持ち主。

 幼い頃からヒュセインの従者を務め、ヒュセインを実の兄のように慕っている。

 主であるヒュセインを守るべく、日々研鑽を積んだその剣技は鋭く、並の騎士では太刀打ち出来ない程の技量の持ち主。

 一騎士としては優れているのだが、ヒュセインを慕うあまり判断を依存し続けてきたことが災いし、指揮能力が低いのが大きな欠点。

 登場時の年齢は27歳。身長は175センチとゾン人としては高く、手足もすらり長いため、その立ち姿は非常に美しい。



セキズデニン

 デニゾバ家現当主。

 前当主であった祖父と、その後継者であった父が、終わらない冬が終わると共にいきなり襲い掛かって来た酷暑によって立て続けに亡くなったことにより、その地位を継ぐことになった。

 奸智に長け、商才に優れ、才能に見合った野心を持っている。

 デニゾバ家が持つ南方民族の地北部僻地における奴隷狩りの権利に目を付けた奴隷商人たちが自領に押し寄せる中、セキズデニンは早々に奴隷狩りに見切りをつけ、遠からず訪れるであろう奴隷不足による混乱に乗じ、ゾンにおける権力を拡大させための下準備に着手する。

 ゾン国一の美女と謳われるパラセネムに執着しており、セキズデニンの中央進出の野心の一つとなっている。

 そのために、南部八貴族領の支配を目論む。

 身長はゾン人としては長身の部類に入る170センチで、登場時の年齢は27歳。



ゾン南部

 ゾン南部は全体的に過酷な環境であるゾンにおいても特に厳しい灼熱の土地であるため、その開拓の歴史は浅く、都市が築かれるようになってまだ百年にも満たない。

 開拓が始まったのは生産的目的によるものではなく、むしろその正反対に位置する処罰的目的により始まった。

 当時の国王は猜疑心から有能で求心力の高かった実の弟を、南部開拓の名目で王宮より追放した。

 このままではいつか殺される考えていた王弟は、殺されるよりはましと考え、勅命という名の追放を受け入れ南部へと向かった。

 宮中で王弟の処遇に対する批判的な意見と、同情的な意見が多く見られたため、国王はそれらの声をかわすために、過酷な環境の中、粘り強く開拓を進めた王弟に公爵の位を授け、南部一帯の領主とした。

 これに対して王弟は八人の息子たちに領地を分割相続させ、自分の死後公爵位は返上し、各領地を独立した領地として認め、息子たちに爵位を賜るよう願い出た。

 これは王弟から国王に対する力の分散を約束するものであり、これを持って国王は王弟に対する猜疑を解き、南部は王弟の手によって現在の形へと整えられる。

 国王は王弟に対する猜疑を解きつつも、その息子たちの一部を懐柔することも怠らなかった。

 力の分散を図りはしたが、結束されれば分散も意味がないからだ。

 王弟は国王が兄弟たちの仲を裂くべく画策してくることを承知の上で、国王にとって都合の良い形に領土を分割し、息子たちを配した。

 大き過ぎる力が疎まれるのは、特別なことではない。

 国王の猜疑も、別段珍しいことではなく、むしろありもしない罪状を着せて処刑するのではなく、形式を整えたうえで追放という手段で済ませその判断は、穏健な対処だったとすら言える。

 そもそも兄弟仲が良い王族、貴族が少ない。

 玉座の継承がたった一人にしか許されないように、爵位の相続も一人にしか認められない以上、嫡男以外の男児は立身出世する以外に道はない。

 家督争いは王族貴族の常なのだ。

 王弟は息子たちの心情を利用し、息子たちを貴族としては中流止まりに落とすことで、国王との関係だけでなく、ゾンの上流社会においても敵を作らない、無難な立ち位置を確立したのだ。

 そうとは知らない国王は、兄弟仲を裂くために、半数の四人の息子たちに特権を与えた。

 南方民族の地北部における奴隷狩りの権利だ。

 基本南方民族の地における奴隷狩りの権利は王家が独占している。

 だが、北部の一部は山岳地帯によって広大な南方民族の大平原から隔離されており、効率の悪さもあって奴隷狩りは行われていなかった。

 そもそも大平原に暮らす南方民族たちだけで、ゾン国内の労働力として必要な奴隷数だけでなく、国外輸出用の必要奴隷数をまかなえていたので、多大な労力と経費を掛けてまで、奴隷狩り部隊を北部に派遣する必要性がなかったのだ。

 ゾン全体から見れば不要な土地ではあるが、一貴族の目から見れば手付かずの金山を提供されたようなものである。

 僻地ではあるが南方民族の地北部における奴隷狩りの権利を与えられた王弟の息子たちは、国王の狙い通り、もっと言えば、王弟の狙い通り国王への忠誠を厚くした。

 国王に絡むゾン南部の勢力配置は、国王派の兄弟たちの領地が、それ以外の兄弟たちの領地を王家直轄領で挟む形で配置されている。


位置関係

アブサラー   ヤヴルドガン

メヴィケント  コークテラ

    キャヴディル

ナルバンタラー  サーヴェリラ

    デニゾバ



タ行

 

ダマド

 ダマド野盗団の頭目。

 ゾン人でありながら180センチの長身で、前後に分厚い身体を持ち、禿頭で隻眼という見るからに野盗然とした男。

 見た目に反して知恵が回り、ゾン人らしいしたたかさを持ちながら、ゾン人のもう一つの側面である吝嗇家りんしょくかな面がなく、部下からの人望は厚い。

 野心はあるがゾンという国を達観して見ている部分もあり、野盗である自分の限界を正確に見極めている。

 ただし、その見切りの中で最大限の利益を確保する意思は固く、退くことが出来るその柔軟さに、デニゾバ軍はダマドを追い込みきれないでいた。



ディスタス

 キャブディル領の中心都市。

 後にキャブディル領がデニゾバ領に併合されると、新デニゾバ領の中心都市となった。



デニゾバ

 デニゾバ家が領有するゾン最南端の土地。

 ゾン最南端の都市ファルダハンを領有している。


デニゾバ家 (侯爵)

 現当主はセキズデニン。

 産出量は低いが、金山以外に貴重な鉱石を産出する鉱山を持ち、ゾンの貴族社会では中級貴族に属する。

 一時期大金脈を掘り当てたことにより大金を得るが、中央での人脈作りや新たな産業の開拓といった投資は一切行わず、散財の限りを尽くしたため、結果その地位は上がりも下がりもしなかった。

 


銅木 (どうぼく)

 ルオ・リシタにのみ自生する樹木の一種。

 ルオ・リシタでは神が宿る樹として崇められる銀香木があるが、銅木は銀香木と同じ種から育つ。

 非常に軽く、しなやかなで折れにくい性質をしている。利用価値が高く感じられるが、その外見が枝も葉もつけず、子供の腕程の太さほどの幹がただひょろひょろと10メートルほどの高さにまで成長する不気味な姿であることから、迷信深いルオ・リシタ人はあまり触れたがらない。

 その価値に気がついたカーシュナーによって買い占められることになる。



ナ行


ナルバンタラー

 ナルバンタラー家が領有するゾン南部の土地。


ナルバンタラー家

 現当主はエバべキル。

 ゾン南部においては比較的起伏の大きな土地で、標高の高い地域では農耕が盛んで、南部の食糧庫的存在として安定して発展を続けている。

 金山や宝石類を産出する鉱山はないが、鉄鉱石は今でも安定して産出され続けており、大小様々な道具類を生産することで、食料だけでなく、ゾン南部の工業も支えている。

 過去に受けた王家からの仕打ちを今でも恨みに思っており、王家と中央貴族からは距離を取っている。



ハ行


魃馬 (ばつま)

 現在大陸各地で見かける馬と、系統としては同一の種に当たるが、その存在は神々の時代に創造された馬の原種により近く、本来であれば苦手としている乾燥地帯に好んで生息している。

 気性が荒く人にはなかなか懐かないこともあり、その生息域では主に駱駝が家畜化され、長く野生のままに繁殖していた。

 クライツベルヘン家はかねてから魃馬に注目し、戦牛の元となった牛の品種改良に取り組む側ら、騎馬の民としての意地もあり、半ば趣味に近い感覚で長年その家畜化に取り組んで来た。

 カーシュナーのゾン進出以降はクライツベルヘン家とカーシュナーの個人組織とで共同開発が行われていたが、近年その家畜化についに成功し、実戦配備されるようになった。

 酷暑地帯における運用だが、実際のところ駱駝で十分であり、運搬等に限れば駱駝の方が優れているため、その需要は極めて限られてしまう。だが、その限られた需要である軍馬としての優秀さは戦局さえも左右すると判断したカーシュナーは、魃馬による騎兵団の拡充に力を入れている。



バラ―

 バラ―家の領地。

 バラ―家 (侯爵)

 現当主はケーナンで、ゾン中央貴族の有力貴族であり、裏ではクロクスとつながっている。

 


パラセネム

 ゾン人の絶世の美女。

 生まれは中流貴族だが、その美貌により恋多き人生を歩んで来た。

 美貌と絶技を武器に数多の貴族、豪商たちを手玉にとり、男たちを競わせ、争わせ、時には仲を取り持つことでその力を徐々に蓄えていった。

 王都エディルマティヤにその身を置くが、ゾン全体の情報収集に余念がなく、混迷が続くゾン北西部と南部の状況に介入し、その勢力をさらに伸ばそうと画策している。

 ゾンの宰相ヤズベッシュも、その美貌と絶技の虜となっており、機嫌を取るべく何かと便宜を図っている。

 デニゾバ侯爵であるセキズデニンを魅了し、ゾン南部の動乱の拡大を狙う。



ハムザ

 セキズデニンの部下。

 事務処理能力に秀でた文官で、政務処理にも長けたセキズデニンの懐刀的存在。

 優秀ではあるが前に出過ぎることがなく、その能力を知る者はセキズデニンの部下に限られており、他の南部八貴族でハムザの存在に目を止めている者はいない。

 優秀なセキズデニンの影に隠れ、その存在を上手く消すことで、注目のすべてをセキズデニンに集め、主の自尊心を的確に満たしている。

 セキズデニンの野望に従うと見せながらその行動をコントロールし、最終的に破滅へと導くが、最後の瞬間までその正体と目的を悟らせなかった。

 実はカーシュナーから送り込まれていた間者。

 身長は160センチ。ゾン人男性の平均体格で、一見すると文官らしい細身の身体に見えるが、実は鍛えられ、引き締まっている。

 一見すると神経質そうに見える顔をしているが、カーシュナー同様そう見えるように装っているだけ。実際はゾン人にしては細目の至って平凡な顔立ちをしている。

 登場時の年齢は32歳。



ヒュセイン

 メヴィケント家現当主。

 南部で発生した動乱に巻き込まれて領地を失い、ファティマと出会ったことで奴隷解放と女性の暴力支配からの解放という思想に触れ、貴族としての地位と名を捨てたゾン貴族らしからぬ開明的な人物。

 能力的には貴族としては平均的で、ありふれた人材に過ぎないが、ゾン人としてはかなり善良な性格で、領民や奴隷を虐待するようなことはなく、自身の貴族としての格も理解しており、ある意味卑屈な視点で自分自身を眺め、享楽にふけるようなこともなく過ごしてきた。

 結果として南部八貴族領動乱後のゾン南部貴族の中で唯一生き残ることになる。

 戦場に立つファティマの雄姿に心を奪われ、聖女と謳われるまでになったファティマに対し、密かに忠誠を誓う。

 登場時の年齢は32歳。身長は175センチと、ゾン人としては長身で、剣術で鍛えられた身体はすらりとして整い、見た目の印象がかなり良い。

 剣の腕前は強くもなければ弱くもなく、指揮能力も至って平均的。

 毒にも薬にもならないところが長所となった稀な人物。



フスレウス

 アブサラー家の現当主。

 剛毅な性格で、自己中心的な思考を持つ典型的な戦闘型のゾン貴族。

 南部八貴族領の中では一、二を争う財力を有しているが、自身の贅沢に注ぎ込む以上に軍備の拡充に金を使うところも戦闘型のゾン貴族らしい。

 十代のころから戦闘訓練に明け暮れていたこともあり、その戦闘力と指揮能力はゾン軍で将軍職が務まるほど。

 身長は160センチとゾン人の平均だが、その分厚い胸板と広い肩幅が存在感を出している。

 登場時年齢は33歳。

 近隣のコークテラの現当主アタウェシュクを一方的に嫌っている。 



ボラ

 ファティマの奴隷解放組織に配属されているカーシュナーの部下。

 元々はクライツベルヘン家のゾン人密偵として活躍していたが、年齢により第一線を退き、代わりに最前線で活躍する密偵たちの後方支援に徹していたが、カーシュナーの計画を知るとクライツベルヘン家の密偵業から完全に退き、カーシュナーの配下に加わった。

 経済網の構築からカーシュナーの配下の密偵たちの支援と大活躍していたが、チェルソーの成長もあり、ファティマの奴隷解放運動を支援するため、自ら志願する。

 カーシュナーによる支援物資の受け取りや、ゾン南部貴族の私兵の動きなどの各情報の取りまとめを主に行っており、ファティマの近況をカーシュナーに報告する役目も担っている。

 登場時の年齢は54歳。身長は160センチで身体の線は細く、顔もこれと言って特徴のないいかにもゾン人らしい顔立ちで、全く目立たない。

 だが、クライツベルヘン家の密偵が務まっただけあり、細い身体は見事に引き締まり、見た目の印象からは想像出来ない実力の持ち主。

 


マ行


メヴィケント

 メヴィケント家が領有するゾン南部の土地。


 メヴィケント家

 現当主はヒュセイン。

 地下水脈に頼るところの大きいゾン南部にあって、唯一大きな湖を要し、南部八貴族の土地の中でもっとも農耕が栄えている。

 鉱山なども存在するが、その大半はすでに掘り尽くされており、農耕で地道に領内の経済を回している。

 過去には王家から優遇され、王家、中央貴族寄りであったが、各種鉱山が掘り尽くされ、主な産業が農耕のみとなると、中央からは見向きもされなくなった。

 中央にとっての価値はあまりないが、南部八貴族領ではもっとも暮らしやすい土地である。



ヤ行

 

ヤヴルドガン

 ヤヴルドガン家が領有するゾン南部の土地。


ヤヴルドガン家

 現当主はエルデーム。

 鉱業、農業、生産業と、どれを取っても今一つの土地。

 かつては鉱業分野で大きく繁栄したが、採掘量の低下に伴い急速にその存在感を消していった。

 貧しいと表現するほどにはどの分野もそこまで生産量が乏しいわけではなく、食うには困らないが、贅沢は出来ないといった位置にある。

 過去の経緯と現状から、王家と中央貴族に対する反発は強く、隣接するアブサラー家との関係も深いことから、南部八貴族の中の、中央寄りの他家との折り合いは悪い。



ラ行



ワ行

 ようやくヴォオス戦記・乱のプロローグ付近へ戻ることが出来ます(苦笑)


 つまりこれからようやく物語の本筋に入るわけです(マジかっ!)


 我ながら、

「長過ぎるだろっ!」

 とツッコミを入れつつ、根気強く読み続けてくださる皆様に感謝し、最後まで書ききりたいと思います。


 まだまだ先は長いですが、お付き合いいただければ幸いです。


 最後に、三浦建太郎先生のご冥福をお祈りいたします。

 ダークファンタジーの、グロいとは異なる、まさしくダークとしか表現しようがない作中からにじみ伝わる空気に、ダークな部分を敢えて描く意味を教えて頂きました。

 ただひたすら、感謝あるのみです。

 素晴らしい作品をありがとうございました。

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