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ヴォオス戦記  作者: 南波 四十一
ヴォオス戦記・乱
120/152

奴隷解放組織 対 ダマド野盗団 (その3)

 続きでございます。


 正直今日中に投稿出来てホッとしてます。


 今日は話を2話に分けて投稿しておりますので、万が一(その2)をお読みでない方は、お手数ですが1話戻り、(その2)からお読みください。


 それではヴォオス戦記の本編をどうぞ!

「……なんだ。こいつ」

 激しい斬撃の応酬から、一度距離を取ってのジャナワルの言葉だ。


 一撃離脱が基本のジャナワルにとって、その動きに当たり前のようについてくるファティマは未知の存在だった。

 強いことはわかっていた。

 一度手を合わせ、仕留めるどころか逆に追い込まれたほどの相手だ。そこに侮る気持ちなど微塵もない。


 だが獣のように変則的に動く自分に対して、ここまで反応出来た人間は、デニゾバ軍の騎士や、名のある野盗の中にも存在しなかった。

 それは敏捷性でジャナワルに劣っていたからではなく、正規の剣術からは遠く離れたその動きに予測と反応が全くついていかなかったからだ。

 それこそがジャナワルの強みであり、大きな身体はあくまでその強みを底上げするものに過ぎない。


「降参ですか?」

 息も切らせず涼しい顔でファティマが問いかけてくる。

「ふざけるなっ!」

 言葉と同時に地を這うように駆け、ファティマの左側面に回り込もうとする。

 だがジャナワルが始めの一歩を踏み出すと同時に、まるで心の中を読んだかのように身体を捌き、ジャナワルに踏み込ませることすらさせない。

 このまま無理に踏み込めば逆にやられると理解出来るジャナワルは、結果としてただファティマの周囲をぐるぐると回ることになってしまう。


 一見余裕に見えるファティマであったが、その内心には見た目ほどのゆとりはなかった。

 一瞬でも気を緩めればジャナワルの動きの予備動作を見誤ってしまう。

 ファティマがジャナワルの動きについていけているのは、その動きを観察から得られる情報を基にした先読みがあってことなのだ。


 ファティマはジャナワルに出会ってすぐに、カーシュナーを頼ってその情報を可能な限り集めていた。

 母親の所在を知ると、自ら足を運んで話を聞いた。

 そしてジャナワルが一人生きることを余儀なくされた辺境地帯へと赴き、そこで暮らすことがどれほど過酷なことかを理解した。

 それは同時にジャナワルの強さの根幹を知ることにもなった。


 ジャナワルの獣の様な動きは、生き残るために環境に適応したものであり、強さを得るために修練を積んだ戦士の強さとは根本的に異なるものだ。

 修練と違い、常に生き死にに関わる状況で鍛え上げられたその強さは、技術などに裏打ちされたものと違いごく自然な強さで、状況の変化に対する適応能力も非常に高い。

 ジャナワルにとってデニゾバ軍の騎士や野盗と戦うことは未知なる戦いとの遭遇であったが、そこからの対応力の差が、勝敗を分けて来た。

 加えてジャナワルにとって戦う相手は常に人間だったが、騎士や野盗が野生の獣と戦う機会などまずない。経験を積めば積むほど、対応力に差が出るのは当然だった。


 ファティマがジャナワルに対して互角以上の戦いを展開出来ているのは、ジャナワルの人生を知り、生き抜いた環境とその場所の生態系を知ることで、その動きと思考の規則性を理解することが出来たからだ。

 そして理解したからこそ、ファティマはジャナワルをこれまでのすべてから解放してやりたいと思っていた。


 だがどうすれば解放してやれるのかはわからない。

 野盗団からの解放という意味であれば、それはすでに果たされている。

 そしてそれだけで済むのであれば、ジャナワルはとうの昔に野盗団から逃亡していただろう。

 ジャナワルが野盗団に留まり続けたのは、ひとえに生きていくためだ。

 

 生きているが故に、生きていくということに縛られ、その外見が生き方に大きな枷をはめる。

 無責任な言い方をすれば、生きていくよりも、さっさと諦めて死んでしまった方がずいぶんと楽な人生だ。

 生きていくための意味はなく、それを探すことも許されない。

 ジャナワルはゾン人女性としてこの世に生を受けた者の中で、最も過酷で不条理な人生を強いられた存在だった。


 ファティマは奴隷制度と女性蔑視という不条理と戦うために立ち上がった。

 ジャナワルの境遇には同情を禁じ得ないが、ジャナワルだけを特別に不幸だとも思わない。

 むしろその力で自分の居場所を確保出来たジャナワルは、理不尽な暴力にさらされないだけマシな方だったと言える。

 だがそれは、ジャナワルが望んで手に入れた居場所ではない。

 選ぶことが出来ない中で辿り着いた場所に過ぎない。

 にもかかわらず、ジャナワルはそこに居続けるしかない。

 選べる未来がないからだ。


 このままではファティマはジャナワルの唯一の居場所を奪ってしまっただけで終わる。

 だからと言って野盗団の存在を許すなどあり得ない。

 ファティマはジャナワルに選べる未来を与えてやりたかった。

 では何故戦うのか。

 それは、生き方が違い過ぎるがために、言葉による納得など得られないとわかっているからだ。


 もっとも、戦うことで何かを得られるなどとは思っていない。

 だが戦うことすらしなければ、ファティマとジャナワルの細い繋がりは、そこで切れて終わってしまう。

 何も変えられないかもしれない。

 何も与えられないかもしれない。

 だとしても、それを受け入れるのは、手を尽くした後だとファティマは決めていた。

 その覚悟が大将と暗殺者の一騎討ちなどという無茶を仲間たちに受け入れさせたのだ。


 勝つ――。


 すべてはそこからだった。


 頭の片隅に置いていた逃走という選択肢を、ジャナワルは捨てた。

 この戦いに臨む上での覚悟の大きさで、相手が自分を上回っていることを悟ったからだ。

 ジャナワルにとって戦いとは、食べていくための手段でしかなく、戦いそのものを好んでいるわけではない。


 強くなったのは、弱ければ死ぬしかなく、勝てなければ食べてはいけなかったからだ。

 本来勝ち負けにたいして強いこだわりはなく、命を懸けてまで勝利にこだわったこともない。

 戦いに勝って、命を落としたのでは、ジャナワルには何の意味もないからだ。


 そのため、戦いにおいては常に逃走を念頭に置き、状況に応じて引き際を誤らないようにしてきた。

 正規兵力から追われる身の野盗としてはそれが当たり前でもあった。

 そのジャナワルが、戦いに集中するために、生き残るための思考を捨てたのだ。

 もはや本能でも理屈でもなく、目の前の相手のことしか考えていない。

 この戦いの後のことなど、頭にはまったくなかった。


 何故なのかは自分でもわからない。

 ただこの相手が、自分の外見になど見向きもしていないことだけはわかった。

 自分を一人の戦士とだけ見て、自身のすべてをかけて自分の前に立っている。

 

 ジャナワルは今、生まれて初めて他人と正面から向き合っているという事実を理解出来ないまま、目の前の相手から自分も目を逸らすことが出来なくなっている現実だけを受け入れていた。

 これまで肯定されることのない人生を生きて来たジャナワルには、正当に評価され、向き合うという経験がなかった。

 そのため、自分が何故危険を冒してまでこの相手に向き合っているのか、その意味を理解することが出来ない。


 獣人ジャナワルではなく、一人の人間として、真正面から向き合っているということに、強く惹かれていることに――。


 逃げることをやめたジャナワルは、一撃離脱戦法を捨てた。

 体格で勝るジャナワルは、攻撃の間合いでも勝っている。

 その強みを軸に、ジャナワルは持久戦を挑むことを決めたのだ。


 これまでの一撃離脱戦法は、短期決着からの逃走を目的としてのものであった。

 暗殺目的で敵本陣に踏み込んだのだから、それが死を覚悟した特攻でない限りは当然だ。

 だが逃げることをやめたジャナワルに勝負を急ぐ理由はなくなった。

 時間の制限がなければジャナワルに取れる戦法は他にもある。

 間合いで勝るジャナワルは、自身の間合いギリギリの距離でファティマを攻め始めた。


 遠い間合いからの斬撃。

 短剣が武器のジャナワルであったが、それでも長剣を構えるファティマの間合いの外から攻撃することが出来る。

 大振りはしない。

 小さな攻撃を積み重ね、ファティマの隙をうかがう戦法だ。


 この瞬間、ファティマは相手も自分に対して正面から向き合ったことを理解した。

 これまで視線はずっと向き合っていたが、戦いの目的が異なる二人の精神が向き合うことはなかった。

 ジャナワルの中でどのような変化が起きたのかはわからなかったが、ファティマはこれで答えを出すことが出来ると悟る。

 それがどのような結末になるかまではわからないが――。


 突きを中心とした攻撃を的確に捌く。

 だが反撃を試みてもその攻撃はジャナワルには届かない。

 押し込んだ分だけジャナワルが正確に引くからだ。

 このままでは体力と精神力を削られ、いずれは戦いの均衡を崩す致命的な一撃を受けてしまう。

 ファティマは反撃をやめ、間合いの崩し合いを挑んだ。

 

 捌くのではなく引くことでジャナワルの攻撃をかわしていく。

 それに合わせてジャナワルが出てくる動きを見切り、逆に踏み込む。

 その反撃をジャナワルは持ち前の反射神経と身体能力でかわし、再び間合いを調整する。

 戦いはジャナワル優位に進んでいたが、精神的に削られ始めたのはジャナワルの方であった。


 これまでは奇襲であったり、集団戦の中でその独特の動きを活かし、敵を翻弄して倒してきた。

 対人戦の経験は豊富であったが、一対一でここまで高度な間合いの取り合いは、これまで経験のない事であった。

 ジャナワル自身は気づいていないが、獣の様な予測不能な動きをしていたときも間合いの読み合いは行われていた。

 だがその動きがあまりに変則的過ぎて、相手が間合いを読むことが出来ず、結果として読み合いの重圧を経験せずにここまで来てしまった。

 それでもこれまでは踏み込む動きに相手が対応出来なかったおかげで勝つことが出来ていたが、それをさせないだけの技量を持つ相手を前にして、ジャナワルは初めて一人の戦士としてギリギリの戦いを強いられていた。


 ギリギリの間合いからの攻撃であるため、一歩引かれるだけで届かなくなる。

 始めは防御させることで相手を消耗させることが出来ていたが、間合いを見切られてからは剣を上げさせることも出来なくなっている。

 このままでは持久戦で先に消耗するのはジャナワルの方だ。


 ここでジャナワルは素直に認めた。

 戦士としての技量は相手の方が一枚も二枚も上であると。

 安全に、確実に勝てる方法はない。

 今までのジャナワルであればここで手を引いていた。

 だが生き残ることではなく、勝つことを望んだその瞬間から、ジャナワルは野盗ではなく戦士となっていた。

 絶対に勝てないのであれば戦士としても諦めることが出来る。

 だが絶対に勝てない相手ではない。

 ジャナワルは無意識の内に一歩踏み込んでいた。


 直後にファティマの剣が襲い掛かってくる。

 その鋭い一撃を左手に構えた短剣で捌きながら、ジャナワルは右手の短剣で素早い突きを繰り出す。

 だがその突きは捌いたはずの相手の長剣にすくい上げられ、逆に懐に飛び込まれてしまう。

 

 ジャナワルがここで間合いを取ろうと飛び退っていたら、勝負はついていた。

 むしろファティマはジャナワルが反射的に胴への致命的な一撃をかわすために後方へ跳躍するものと考え、胴を薙ぐのではなく、追撃のための跳躍を行うべく力を溜めていた。

 だが現実はそうはならなかった。


 腹を斬られると悟った身体は反射的にその剣の間合いから逃れようと重心を後方に移動させようとした。

 生きるための本能の反射に、ジャナワルの戦士としての魂が逆らう。

 ジャナワルは身体を後退させようとする本能的恐怖を吐き出すように吼えると、逆に踏み込み強烈な膝蹴りを放ったのであった。


 まさかの反撃にファティマはかわすことが出来ず、ジャナワルと正面からぶつかり、大きく弾き飛ばされる。

 始めから狙ったうえで繰り出された膝蹴りであったら、ファティマはこの一撃で戦闘不能に陥っていただろう。

 もっともその意図があればファティマは飛び込んでいなかったのだが、遊戯と異なり戦いに待ったもやり直しもない。

 あるのは読み間違えたことによって痛打を受けたという現実だけだ。


 幸い飛び込むために身構えていたおかげで腹部や胸部、頭部といった急所に膝の直撃は受けず、何とか腕で受けることが出来た。

 加えて間合いを詰めてから無理に繰り出した膝蹴りであったため力が乗り切らず、体当たりに近い形での衝突であったため、骨折などの重傷も避けられた。

 もっとも、体格で二回りほど上回る相手との衝突だ。

 体重差からくる衝撃の差はどうすることも出来ない。

 ただ、弾き飛ばしこそしたが、自身もその衝撃を受けることになったジャナワルも体勢を崩し、追撃がなかったのは不幸中の幸いであった。


 飛ばされながら自らも転がり、間合いを取り直す。

 ジャナワルが体勢を立て直し、一気に詰め寄ろうとしたが一歩間に合わず、同じように間合いを取り直した。

 その上でジャナワルはこれまでとは違い、慎重に、そして確実に一歩踏み出し、間合いを詰めにかかった。

 ファティマはジャナワルが真っ向からの斬り合いを選択したことを悟る。


 ジャナワルの身体能力を活かすのであれば、これまで同様一撃離脱戦法が最も効率がいい。

 だが一撃離脱戦法はその性質上遠間から一気に距離を詰めるため、最後の動きが単調になる。

 その前の前後左右の揺さぶりで敵を崩してから距離を詰めるのでこれまでは問題なかったのだが、ジャナワルはファティマ相手にまだ一度もその体勢を崩せていない。

 変則的な動きで慌てさせ、相手に判断を誤らせることが強みの一つだったのだが、ファティマは全く慌てることがなく、上手く虚を衝けても冷静に対処され、隙を衝くまでには至らない。

 これまでは崩せていないことについて深く考えず、常に先手を取ることに集中して飛び込んでいたが、意識が変わると目の前の相手に対しての単調な踏み込みがどれほど危険なものであったかがわかり、不用意に飛び込めなくなる。

 今無理に飛び込んで勝てる可能性は十回に一回もないとわかる。


 それでも先に剣を繰り出したのはジャナワル。

 間合いを詰めることにしたとはいえ、先に攻撃射程に入るのはジャナワルだ。

 呑気に相手の間合いに踏み込むまで攻撃を控えるような真似はしない。

 

 これに対してファティマは真っ向から受けて立った。

 ジャナワルの斬撃に飛び込むように間合いを詰め、ジャナワルの短剣を斬り払う。

 すかさず放たれたもう一本の短剣も切り払ったところに、今度は始めから狙いすまされた膝蹴りが飛ぶ。

 上体を反らすように捻ってかわしたファティマも斬撃を返すのではなく、ジャナワルに対して最短距離にあった肘を脇腹目掛けて放った。

 視界の隅にこの反撃を捉えたジャナワルが慌てて腕を引いて脇腹を守る。


 両者は同時に体勢を立て直すと足を止め、火花を周囲に散らす壮絶な打ち合いを始めた。

 本来であれば互いに足を使い、隙をうかがいながら戦いたいところなのだが、一度止めてしまった足を再び地面から引き剥がすだけの隙がない。

 互いの必殺が届く距離で、牽制を挟む隙すらない。

 全力で斬り込み、全力で防ぐ。

 一度の判断の誤りが即座に死に直結する戦い。


 ファティマの正面からの斬撃を、ジャナワルが短剣を交差させて受け、ようやく動きが止まる。

 二人は同時に飛び退ると、大きく息をついた。

 呼吸をする余裕すらなく、無呼吸で戦い続けた両者は、窒息寸前の状態だった。

 ジャナワルは暗く狭くなった視界の端を飛ぶ無数の小さな星を振り払うべく、必死に頭を振る。

 相手も同じなのだろう。

 自分のように頭を振りこそしないが、必死に呼吸を整えながら、目をしばたたいている。

 その様子にジャナワルも乱れた呼吸を懸命に整えようとする。

 

 先に呼吸を整えたのはファティマ。

 正眼に構えたその身体に、力が蓄えられていくのがわかる。

 ジャナワルはまだわずかに乱れた呼吸のまま身構える。


 ここでジャナワルは先手を取って飛び込んだ。

 待っても相手の体勢が盤石なものになるだけだ。

 無理をしてでも敵を乱すべきだと判断する。

 これに対してファティマはこれまでより一歩遠い間合いで踏み切った。


 乱した――!!


 その瞬間、ジャナワルは勝利を確信した。

 これまでどうやっても崩すことが出来なかった相手の冷静さを、ようやく崩せたと歓喜する。

 一歩早かったジャナワルの攻撃に、先に呼吸を整え、万全の体勢で踏み込もうとしていた相手の間合いが乱れたのだ。


 この距離はジャナワルの距離だ。

 どうやっても相手の剣は届かない。

 一歩遠い間合いで踏み切ってしまった相手は、ジャナワルに届く前に失速する。

 その瞬間に合わせて、ジャナワルは速度と体重が最大限に載った一撃を叩き込むことが出来る。


 気がつくと怒りも混乱も消えていた。

 代わりにそこに在ったものは、勝ちたいと願う戦士としての純粋な思いだけだった。

 ジャナワルは不思議な気持ちだった。

 この気持ちがなんなのかを言い表す言葉を自分が知らないことがもどかしくすらあった。

 自分が今、生まれて初めて満たされていることを理解出来ないまま、ジャナワルは渾身の一撃を放った。


 そこにファティマの剣先が迫ってくる。

 失速するはずの相手の身体はまだ躍動しており、振り下ろされる剣が巨大化したかのように近づいてくる。


 馬鹿なっ!!


 驚愕は言葉にならなかった。

 代わりに反射的に動いた左手が、ファティマの剣を防ぐべく構えられる。


 驚愕と反射――。


 生物としての当然の反応が、ジャナワルの渾身の一撃をわずかに鈍らせる。


 そして微塵もその速度を落とさなかったファティマの一撃が先にジャナワルに届く。

 構えた短剣はへし折られ、ファティマの長剣がジャナワルの肩口を捉え、ファティマ目掛けて繰り出されたジャナワルの短剣は、先に受けた衝撃から軌道を逸らし、ファティマの腕をわずかに傷つけただけで、勝利を捉えることは出来なかった。

 ジャナワルは折れた短剣を落とすと無意識に斬られた肩口に手をやり、座り込むように膝を落とす。

 呆然とするジャナワルに、ファティマは剣を突きつけた。


 勝負の終わりである。


 呆然とするジャナワルの目には、突きつけられた目の前の剣も映っていない。

 その脳内では、今しがた自分を驚愕させたファティマの最後の一撃が再生されていた。

 一歩遠い間合いからの踏み込み。

 この時点で特別力を溜めていた兆候はなかった。

 だがその後がこれまでの踏み込みと違った。

 まるで身体の各関節が外れていくかのように、ファティマの身体自体が伸びてくる。

 その変化をすぐに認識出来なかったジャナワルの反応は、咄嗟に左手の短剣を構えることだけだった。

 そしてこれまでで最大威力の攻撃が見舞われた。

 そこではたと気付く。

 

 ……なんであたしは生きている?


 短剣をへし折られた時の手応えを考えれば、真っ二つはないまでも、即死しておかしくないだけの致命傷を負っているはずだ。


 情けを掛けられた?


 そう理解すると同時にジャナワルは、見下ろすファティマをキッと睨み上げた。


「殺せっ!」

 逃げることをやめ、戦うことを選択したときから、負ければ死ぬものと覚悟していた。

 生きて捕らえられ、見世物になるつもりはない。

 何より、自分を一人の戦士として扱ってくれた相手の目的が、そんなことであったとは思いたくなかった。

 だが相手はジャナワルの言葉には従わず、逆に剣を引いてしまう。


「……どういうつもりだ」

 折られなかったもう一本の短剣を視界の隅に置きながら、ジャナワルは問い質した。

 いざとなればその短剣で自ら喉を突く覚悟だ。


「勝負は私の勝ちです。そもそも殺すことが目的であれば、本陣を狙っていることに気づいた時点でそうしています」

 対するファティマの答えはあっさりしたものだった。

「……決着をつけるために、わざわざあたしをおびき出したって言うのか?」

 野盗も大概無茶だが、ここまでの無茶はしない。

 これはもはや無茶ではなく、無茶を踏み越えて狂気の領域に至っている。


「決着をつけるというのもありましたが、私はあなたと話がしたかったのです」

「あたしと話を?」

 ファティマの答えはジャナワルの理解を超えていた。


「お前は頭がおかしいのかっ! 獣と会話が出来ると本気で思っているのかっ!」

 ジャナワルが苛立って怒鳴る。

「もちろん思っていませんよ。 もっとも魔神ラタトスの支配下では、人の言葉を操る魔物がいたそうですが、それももはやお伽話ですからね」

 ジャナワルの苛立ちを、ファティマは肩をすくめてかわしてしまう。

 この辺りのとぼけ振りはカーシュナーにそっくりだ。


「ですが、あなたとは話が出来るとわかっていました」 

 その言葉にジャナワルの眼光が鋭くなる。

「嘘を吐くな。ダマドだってあたしが喋れることを知らなかった。そもそも始めから話せるとも思っていなかったんだぞ」

「そうでしょうね。ゾン人の男は、自分が見たいようにしか女を見ませんからね」

 ファティマの『女』という言葉に、ジャナワルは鼻で笑った。 


「馬鹿かお前は。あたしを女として見る奴なんているわけないだろ」

「そうですか? 結構な巨乳をお持ちの様ですけど?」

 自虐的なジャナワルの言葉をファティマはどうでもよさそうに聞き流し、外套に隠れたその胸元に無遠慮な視線を向ける。

 これに対してジャナワルは、無意識に身を捻り、その視線から逃れようとする。


「言葉の割には恥じらっているように見えますけど?」

 そこにファティマの言葉の追い討ちがかけられる。

「う、うるさいっ!」

 指摘されて初めて自分でもそのことを認識したジャナワルは、皮膚を覆う豹紋斑でわかりにくい頬を真っ赤に染めて声を荒げる。


「あなたがどれだけ自分を否定しようと、あなたが女性であり、優れた戦士であるという事実を変えることは出来ませんよ」

 ファティマの言葉に、ジャナワルは睨み返すことしか出来ない。

「あなたの境遇と現在の環境であれば、知性を隠すのは賢い選択だと言えます。ですが、一度でもあなたと真っ向から向き合えば、あなたが獣のように振舞っていても、けして愚かではないことはわかります」

 ジャナワルは自分でもよくわからないまま、真っ直ぐに自分を見つめてくるファティマの視線から目を逸らした。


「あなたはこれからどうしたいですか? 辺境に戻り、再びあの過酷な環境で一人で生きますか? それも一つの正解でしょう。ですがゾンは辺境でなくても人が暮らすには厳しい自然環境です。一定の生活環境が整えられた土地でなければ生きていくのが難しい土地です」

 ファティマの問いに、ジャナワルはようやく現状を顧みた。


「報告っ!」

 そこにそれまで姿を見せなかった伝令兵が、声に歓喜をにじませながら駆け込んで来る。

「敵首領であるダマド及び幹部であるイドリスの討伐に成功。逃げ散っていた野盗もほぼ討伐が完了しましたっ!」

「わかった。ミランとラニに撤収を始めるように伝えてくれ。万が一デニゾバ軍が欲を出さないとも限らない」

 伝令兵はファティマの指示を復唱すると、命令を実行するべく振り返った。

 その際、一瞬だけジャナワルに目を止めると、腕に巻かれていた豹の毛皮を誇らし気に誇示してみせた。


 それに何の意味があったのかジャナワルにはわからなかったが、それよりも今大事なことは、ダマド野盗団が壊滅したという事実だ。 

 野盗団から逃げるつもりもあったので追われる心配がなくなったのはいいが、これまでの生活基盤が完全に崩壊したことは確かだ。

 ファティマの言うように、今後の身の振り方を考えなくてはならない。


 見世物になどなるつもりはない。当然奴隷になるのもお断りだ。

 となるとジャナワルに選べる選択肢など辺境に逃げ込む以外にない。

 この相手が言葉通り自分を逃がしてくれるのであればの話だが。


 辺境で生きるのは厳しい。

 水源を見つけるだけでも一苦労するだろう。

 そして、ひたすら続く空腹の日々を、食料を求めてさまよい続けることになる。

 またあの満たされることのない飢餓感に苦しみ続ける日々に戻ることを想像し、ジャナワルは震えた。


 まだ目的や終わりがあれば耐えられるが、ジャナワルにはそれがない。

 死ぬまで続く苦しみの日々だ。


 ――なんで生きているのだろう?


 これまで見ぬふりをしてきた疑問が、不意に目の前に現れた。


 苦しみだけの日々など拷問と同じだ。

 最低限の、腹だけは満たされる生活を味わった今では、ジャナワルは辺境で生き延びるということに意味を見出すことが出来なかった。

 不意に腹の底から力が抜けていくような不快感がジャナワルを襲った。

 それが絶望であることをジャナワルは知らない。

 幸福を知らぬがゆえに、絶望の意味を知ることすら出来ない人生だったのだ。


「私に力を貸してもらえませんか?」

 それは全く予想していない言葉だった。

「……お前の戦闘奴隷になれというのか」

 ジャナワルはファティマを見ずに呟いた。


 ダマド野盗団の中でジャナワルは、主戦力の一人でありながら幹部ではなかった。

 言葉を話さず、獣の様な行動を取って知性を隠していたのだから当然だ。

 そんなジャナワルの野盗団の中での立ち位置は戦闘奴隷。

 ゾンにおける戦闘奴隷とは、戦のないときは労働力として使役され、戦の時には歩兵としての役割をこなす一般的な奴隷とは異なり、闘技場で見世物や賭けの対象として扱われる剣闘士などのことを指す。

 ジャナワルはそういった見世物の戦いを強いられることはなかったが、軍や他の野盗団と事を構える際には先陣を切ることを強要されていた。


 戦うことで辺境で暮らしていた時ほど飢えずに済むのだから、ジャナワルとしては不満はなかった。

 いつ命を落とすかはわからなかったが、それは辺境での暮らしも同じだ。

 戦って死ぬか、飢えて死ぬかの違いがあるだけで、より多く食えるだけ自由に生きられる辺境暮らしより、戦闘奴隷の方がマシであった。


 こうして改めて振り返って、ジャナワルはそこに自分というものが存在していなかったことに気づかされる。

 生きるために食うことに必死で、それ以外の思考は満足に働いていなかった。

 それは自然な自己防衛の働きによるものであり、もしジャナワルが孤独の中で自身の在り様を常に自分に問いかけていたら、とうの昔に気を狂わせ、自らの手で命を絶っていたのだが、当事者であるジャナワルにそれを意識することは出来ない。

 出来ることは記憶を辿り、ただひたすらに飢えをしのぐことに必死だったという事実を確かめることだけだった。


 ファティマとの戦いに際し、命を捨てる覚悟を決めたことで、ジャナワルはその逆の、生きることの意味を考え始めてしまった。

 その結果、これまでの意味のない人生に対して、考えるということをしてこなかったことで感じることのなかったむなしさを覚えてしまった。

 一度気づいてしまうと、辺境で生きるよりはマシだと感じられた戦闘奴隷としての生き方にも、むなしさしか感じない。


 答えはすんなりと出た。

 自分でも意外なほど、その答えに抵抗はなかった。

 一度は決めた覚悟だ。

 敗れた以上このまま死のうと決意する。

 だがそこに、またもや予想外の言葉がかけられる。


「奴隷解放組織が、戦闘奴隷にするわけないでしょう」

 しかも心底呆れ返っているのがわかる。

 死まで覚悟した自分が馬鹿みたいで、ジャナワルは耳まで真っ赤になる。


「あなたさえ良ければ、仲間になってください」

 ファティマはついに剣を鞘に納めると、代わりに手を差し伸べた。

 この瞬間、ジャナワルはファティマが始めから自分を仲間に勧誘するために、大将であるにもかかわらずこの戦いの場を用意したのだと悟った。

 一対一。

 逃げることも可能な、完全にジャナワルの自由意志に任された戦い。

 そこまでした上で、ファティマは対等の条件で相対し、自分の命を危険にさらしてまで、ジャナワルに正面から向き合ったのだ。


 自分の言葉と真意を届けるために――。


 無意識に差し出されたファティマの手に、自分の手が伸びる。

 その手を目にした瞬間、ジャナワルは慌ててその手を引っ込めた。


「あたしは親にも殺されかけるような化け物だ。あんたの仲間になんてなれない」

 手の甲に、腕に、脚に、見ることの出来ない顔全体に広がる豹紋斑を思い、ジャナワルは拒絶の言葉を口にした。

「その皮膚が原因であなたを排除しようとしているのはこの世界ですか? それともあなた自身ですか?」

 ファティマが真っ直ぐに問いかける。


「この世界に決まっているっ! あたしに居場所なんてないんだよっ!」

 自分を縛る現実を、改めて口する苦痛にその声が歪む。

「ここにあると言っているっ!」

 だがその悲痛な叫びは、その言葉も思いも吹き飛ばすかのような大音声によってかき消された。


「今、あなたを拒んでいるのは、あなた自身だっ! 私ではないっ!」

 怒りすらにじませたファティマの言葉に、ジャナワルは返す言葉が出てこない。

「あなたがあなた自身を否定するのなら、私があなたを肯定しようっ! 誰かがあなたの肌を見て、あなたを否定するのなら、あなたの代わりに私が戦おうっ! あなたに居場所がないのなら、私があなたの居場所を作ろうっ!」

 真っ直ぐな瞳は微塵も揺るがない。

 むしろその目を見つめるジャナワルの方がひどく心を揺さぶられている。


「だから、私と行こう。エミーネ(、、、、)!!」


 ファティマは叫ぶと同時に差し出していた手の袖を、肩口まで引き上げた。

 そこにはジャナワルの痣によく似た、豹紋斑の入れ墨が彫り込まれていた。


 不意に周囲に影が現れる。

 これまでファティマの頼みを聞き入れ、二人の戦いに水を差さないように控えていた女戦士たちだ。

 それぞれがファティマ同様腕や脚をむき出しに、そこに彫り込まれた豹紋斑の入れ墨を誇示してみせる。

 誰の顔にも誇らし気な笑みが浮かんでいる。

 

 入れ墨だけではない。

 身体のどこかしらに豹の毛皮で造られた布を巻きつけている。

 まるでそれが仲間の印ででもあるかのように――。


 語られずともわかる。

 そのすべてが、自分に居場所を与えてくれるためにしてくれたことなのだと。


 この瞬間まで、ジャナワルに居場所はなかった。

 この世に存在することを許してくれる場所など――。


 行く当ても、帰る場所もなかったこんな自分に、これまで何の関わりもなかった者たちが、ここまでしてくれた。


「なんで……」

 ジャナワルは問わずにはいられなかった。

「私たちは皆虐げられ、命の危機にも直面してきました。女に生まれたというだけで、私たちに自由な意思など許されませんでした。私たちはそれぞれの所有者たちの財産であり、交渉のための道具であり、性欲のはけ口でしかなかった」

 ファティマの言葉に他の女戦士たちの表情が引き締まる。

 

「あなただけではない。私は、いえ、私たちは、同じ境遇で苦しむ人々を助けるために行動を起こしたのです。あなたのことは調べました。その人生が絶えることのない苦痛の中にあったことを私たちは知っています」

 ファティマの言葉を肯定するように、周囲の女戦士たちが大きくうなずく。


「敵の勢力の中にあっても、あなたは私たちにとって救うべき存在でした。どうすればあなたを救うことが出来るか、私たちはその正しい答えを知りません。私たちがしたことは、あなたにとってはかえって苦痛に感じることだったかもしれない。それでも私たちはあなたの過酷な人生と、それに負けずに今日まで生き残ってみせたその強さに敬意を表して、あなたに過酷を強いたこの紋様を象徴とし、あなたのように強く生き、戦い続けようと決意しました」

 その言葉に嘘偽りがないことは、確かめなくてもわかった。

 誰が好き好んでこんな紋様を身体に刻むだろうか。

 この世に自分一人であった苦しみを、共に背負ってくれたのだ。


「私たちと共に行きましょう」

 ファティマがもう一度誘う。

 今度は自分一人の言葉ではなく、仲間全体の総意として。


 語る間も変わらず差し伸べられていた手を見つめる。

 再び無意識に伸びる手を、ジャナワルは今度は引き戻さなかった。

 恐る恐る近づいてくる手を、ファティマは思いきり握った。

 そのあまりの強さにジャナワルが驚き慌てるが、ファティマはその手を離さなかった。


「ようこそ、エミーネ。私たちは喜んであなたを迎えます」

 言葉と共に浮かべられた満面の笑みに、ジャナワルは胸が締め付けられ、涙があふれてくるのを止めることが出来なかった。

 自分が何故泣いているのかすらわからないジャナワルは、ひどく混乱した。

 そんなジャナワルを労わるように、その周囲を女戦士たちが囲む。


「まずは傷の手当てをしましょう」

 ファティマがそう言うと、医療器具を収めた箱を持った女戦士がその傍らに進み出た。

 ジャナワルは大人しくファティマの治療に身をゆだねる。


「最後のあれは何だったんだ? お前の身体が伸びたように感じたんだが」

 ようやく落ち着いたジャナワルは、自分を破ってみせた技について尋ねた。

「あれですか? あれは女性特有の柔軟性を最大限に活して、攻撃の間合いを伸ばす技術です」

 ファティマはジャナワルの問いに正直に答えた。

「あんなのは始めた見た」

 ジャナワルが素直に驚きを口にする。


「剣技とはそもそも男が使う前提でその技術が磨かれてきました。これまでは女が剣を手にすることなどありえなかったのですから当然ですが、こうして女たちが剣を手にするようになった今、私たちに適した剣技が必要になりました。柔軟性を活かし、男には出来ない女のための剣技が生まれたのは最近のことです。あなたが知らないのは当たり前です」

「あんたは本当に凄いんだね」

 ジャナワルはファティマの説明に、ただひたすら感心するばかりだった。


「私は凄くなどありません。技も、知識も、この命さえも、すべて与えてもらったものです。本当に凄い人たちは他にいます。私はその人たちの背中を必死に追いかけているに過ぎません」

「あんたより凄い奴がいるのか。世界はやっぱり広いんだな」

「ダーン様に稽古をつけていただけば、世界の広さがよくわかると思いますよ」

「ダーン?」

 ファティマの言葉にジャナワルが眉をしかめる。


「私が知る中では、シヴァ様やオリオン様に匹敵する数少ない剣士のお一人です」

「……ふ~ん。まあ、そいつがどれ程の腕だろうと、あたしは男になんか負けないから」

 自分が認めた相手が男を褒めるのが気に喰わなかったジャナワルが、見たこともないダーンという男に対して対抗心をむき出しにする。

 その姿にファティマは、やんちゃな妹を見るように笑った。

 周りを囲む女戦士たちも、ジャナワルの気の強さに苦笑いを浮かべる。


「では、我々も撤退しよう」

 治療を済ませたファティマが指揮官の顔に戻り、命令を下す。

 女戦士たちも、勝利の余韻を引っ込めて、再び緊張感を纏う。

 現在の支配体制に反旗を翻した彼女たちに、本当の意味での安住の地はない。

 勝利を収めたこの地も、デニゾバ貴族領であることに変わりはないのだ。


 治療を終えたジャナワルも、自らの足で立ち、その後に続く。

 その視線は目の前を歩くファティマの背中に注がれている。

 

 こいつに目指す背中があるのなら、自分はこいつの背中を追いかけよう。

 これまで飢えをしのぐ以外の目的を持ったことのなかったジャナワルに、生まれて初めて食べること以外の目的が生まれる。

 その事実にジャナワルはまだ気が付いていないが、この目的が今後の彼女の成長に大きく関わることになる。


「エミーネ。大丈夫ですか?」

 後ろに続くジャナワルに、ファティマが振り向き言葉をかける。

 ジャナワルはこの瞬間、これまでずっと自分を隠すために被って来た獣人ジャナワルの仮面を脱ぎ捨てた。


「大丈夫だ。あんたこそ大丈夫なのか? へばったらあたしが担いで行ってやるぞ」

 最終的に倒れたのはエミーネであったが、ファティマもエミーネの巨体と衝突し、派手に弾き飛ばされている。

 戦いの激しさを考慮すれば、体力的に削られているのはファティマの方で、消耗度合から言えば、斬られたエミーネよりもファティマの方が激しいと言える。


 エミーネの減らず口に、ファティマは心底楽しそうに笑った。

 その笑い声があまりに楽しそうなので、エミーネもつられて笑う。

 そして笑ったことに驚く。

 笑ったのはいつ以来だろうか?

 いや、いつ以来ではなく、初めてかもしれないということに気が付いたエミーネは、自分はやはり獣人ではなく、人間だったのだと改めて実感した。


 エミーネの名がゾンの歴史に刻まれるのはもう少し先の話になる。

 だが、ジャナワルの名が人々の口に上ることは、この日以降なくなった。

 獣人が去り、この日奴隷解放組織を象徴する戦士、エミーネが生まれた。


 この後、豹紋斑模様の戦旗を掲げ、豹紋をその身に刻んだ女戦士たちの集団が戦場を駆ける。

 その先頭を行くのはエミーネとセレン。

 ファティマはこの戦いで、その両翼となる戦士を得たのであった――。 

 11月は仕事の絡みで個人の時間がほとんど取れそうにありません。

 それでも時間を見つけてはコツコツと書いていきますが、11月の投稿は正直厳しいです。


 正直ストレスしかありません。


 いつも以上に投稿の間隔が空いてしまうと思いますが、投稿されたら儲けものくらいのお気持ちでお待ちいただけたら幸いです。


 愚痴が多くて本当に申し訳ありません。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。

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