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節句シリーズ

April days

作者: 雪羅

エイプリルフールを題材に書いてみない、と後輩に言われて思いついたお話。

忙しさにかまけて、書き上げるのが遅れてしまった……

 4月1日。この日がある特別な日だと言うことを知らない人は世界的に見ても少ない、少なくとも、日本人の中には少ないのではないだろうか。

 エイプリルフール。一年に一度の嘘を吐いてもいい日。わたしなんかは、嘘なんていつでも言ってるし言えるでしょ、と思うのだけれど。

 以前、親友にそう言ったら、そういうとこがかわいくないの、などと言われた。自覚はあるので、あまり言わないで欲しい。


「はぁ〜」


「どうしたの? ため息なんか吐いて」


 行儀悪くベッドに寝転がりながら、思わず漏らしたため息を聞き咎めた親友が、読んでいた文庫本から目を逸らさずに尋ねてくる。

 休みで暇なのは分かるのだけれど、朝から人の家に来た挙句、ずっと本ばかり読んでいるのは一応、親友としてどうなのだろうか。


「家はうるさいのよ。その点、あなたの部屋は静かで読書に最適なの」


「……口に出してました?」


「顔に出てるわよ」


 どうやら、わたしの親友は(さとり)かなにからしい。それともわたしがわかりやすいだけなのか。


「ずいぶん失礼なことを考えているように思えるのだけれど?」


「いえいえ、滅相もございません」


「そうかしら?」


 親友は疑り深い半目でわたしを見る。わたしはその視線から逃れるようにさっと目を逸らし、ついでに話も逸らすことにした。

 というか、どうせ分かってるんだから、わざわざ吐かせなくてもいいじゃないか。


「と、ところで何読んでるの?」


「そうね……(さとり)という妖怪が出てくる物語かしら」


 やはり、親友は(さとり)だったらしい。どうやら、わたしの当てずっぽうに間違いはなかったようだ。

 そんなことを思ってると、ずいぶんとじっとりとした目で見られた。また読まれたらしい。


「それで、話を戻すけど、どうして、ため息なんか吐いてるのかしら?」


「え? いや、わたしも今年から大学生なんだな、と思っただけだけど?」


「あら、わたしと同じ大学に行くのが、そんなに不満なのかしら?」


 親友はそんなことをくすりと悪戯っぽく笑って言った。うん、相変わらずの美少女っぷりだ。わたしは親友のおかげで、美形は何をしてみ美形なのだという世の心理を学ぶことができた。その点では、親友にものすごく感謝している。


「いやいや、そんなわけないでしょ。ただ……」


 言葉を濁したわたしをちらりと見やって、しばらくしてから不意に得心したという風にうなずくと、我が親友は文字列に目を戻して、わたしに爆弾発言をかました。

 せっかく人が誤魔化したのに引っ張り出さないでもらいたい。いや、たぶん、そもそも誤魔化せてないのだろうけど。


「ああ、そういえば、彼は地方だったわね」


「う、うっさい! あいつは関係ないからね!」


 思わず叫んでしまったわたしに対し、親友はくすり、と上品な笑みを漏らす。ずいぶんと余裕で羨ましい。


「あら、私は別に誰とは言ってないわよ?」


「…………」


 親友のカマかけに見事に引っかかった自分が情けない。それ以前に、この親友に口で勝てたためしはないのだけれど。


「とはいえ、長らくお隣さんだった幼馴染みだものね。寂しくなるのも分からなくもないわ」


「そ、そうよ。な、なんか、あいつがいなくなると違和感があるってだけで、深い意味はないんだからね!」


 4月1日はエイプリルフールだけど、4月は出会いと別れの季節でもある。こういう、節目の学年は特に。

 すぐ近くに住むわたしの幼馴染みも、やりたいことがあるとかで、地方の大学に進学し、今日、こっちを発つことになっている。

 わたしは親友とともに、家から通える学校に進学するので、必然的に、幼馴染みとは離れ離れになることになる。


「ああ、そういえば。ごめんなさい、一つ言い忘れてたことがあったの」


「ふぇっ? いきなりなに?」


 突然のことに機を抜けた返事を返すと、やけに親友は申し訳なさそうな表情で言う。気のせいか、その目は笑っているような気がして、とても嫌な予感がする。


「ここに来る時に、彼に会ったのだけれど」


「え? い、いや、わたしには関係ないし」


 あからさまに目を逸らして無視を決め込むわたしの態度を気にすることもなく、親友は告げる。


「後で、ここに顔を出すって言ってたのよね。お世話になったからって。そろそろ来るころじゃないかしら」



「ええー!? ちょっと、そういうことは先に言ってよ。わたしなんの準備もしてないんだけど!」


 どうせ、親友に会うだけなのだから、と思っていたわたしは、服装も部屋着のままだし、すっぴんだ。幼馴染みとはいえ、異性と会う格好ではない。

 あたふたするわたしを見て、満足げな表情をしている時点で、親友は確信犯だろう。

 これは何か言ってやらねば気がすまない。

 しかし、ちょうど何か言ってやろうと思ったところで、お母さんの声が聞こえて、タイムリミットが来たことを教えてくれる。


「…………」


「呼ばれていると思うのだけれど?」


「うー、恨むからね!」


「あら、私は忘れていただけよ? まあ、最後のチャンスなんだから、がんばりなさい」


 危機を演出した当の本人が何を言っているのか。


「だから、あいつのことなんかなんともーーあ、はーい、今行きます!」


 慌てて整えられるだけ身嗜みを整え、部屋を出て行くわたしを、親友はにっこりと笑み、ひらひらと手を振って見送る。後で、絶対復讐してやる、とわたしは心に誓った。


「よっ、久しぶり、元気してたか?」


 階段を降りたわたしに、件の幼馴染みは爽やかな笑みを浮かべて話しかけてくる。親友ほどでもないが、こいつも美形だ。わたしだけが平凡なのはちょっと腹がたつ。


「久しぶりでもないでしょ、こないだも会ったし」


「冷たくね? オレ、今日からしばらくこっちに帰ってこないんだけど」


 素っ気ないという自覚はある。昔からこいつに対してはダメなのだ。どうもつっけんどんな態度になってしまう。親友に言わせれば、わたしはツンデレらしいのだけど。断じて違うと思う。


「それはそうかもしれないけど、帰ってくるんでしょ? どうせ」


「どうせってなんだよ、どうせって」


「言葉通りよ。って、お母さんは?」


 人を呼びつけといて姿をくらました母親について、幼馴染みに尋ねると、


「二人で話すこともあるでしょ、とか言って、リビングに戻ったよ」


 親友といい、母といい、どうして余計な気を回すのか。わたしがこいつを意識してるみたいじゃないか。


「ふーん。わたしは話すことなんてないんだけど」


「そうなの? 篠原はおまえがなんか話があるみたいな言い方してたんだけど」


 訝しげな表情でそんなことを言ってくれやがった幼馴染みに、なんのこと、と素っ気なく返しつつ、親友の余計な気遣いに対して、怒りを燃やす。


「ぼーっとしてるけど、どうかしたのか?」


「どうもしない! ってか、そんなに時間ないんじゃないの? 向こう行ってもがんばりなさいね、ほら、行った行った」


「お、おい、なんでオレは追い出されようとしてんだよ」


「なんでもいいでしょ!」


 わたしの気迫に押されたのか、わたしに押されるままに、幼馴染みは我が家の玄関から出て行く。

 よし、と一仕事終えた気分になったところで、わたしも腕を引っ張られ、一緒に家の外に出る羽目になる。

 なんだ、なんの用があるというのか。わたしは、目の前の幼馴染みをキッと睨みつけた。


「なに? まだなんかあるの?」


「いや、なんつーか、その……」


「はっきり言いなさいよ」


「えっと、オレ、おまえが……」


 ボソボソと言ってるせいで、何を言ってるか聞こえないんだけど。


「え? なに?」


「え? い、いや……じ、実はオレ……」


 ええい、いい加減はっきりものを言わないか。昔からこいつはそうなのだ。なにか言おうとしては、いちいち言い淀んでは、笑って誤魔化すのだ。


「だから、なに?」


「実はオレ、こっちに残ることになったんだ」


「はあ?」


 急に何を言いだすんだこいつ、と思いつつも、一瞬緩みそうになった頰を、大袈裟な反応で誤魔化す。


(って、わたし、なに喜んでるんだ。別になんとも思ってないから、そうなんとも思ってない!)


「あれ? もしかして嬉しい?」


「そ、そんなわけないでしょ! あんたとの腐れ縁が続くんだから嫌に決まってるじゃない!」


 見透かされたのが悔しくて、からかうような言い方をした奴に叫び返す。

 でも、奴のにやけ面を見るに、そんなわたしの心境にも気付いているのだろう。普段は鈍い癖に、こういう時だけどうして妙に鋭いのか。腹が立って仕方ない。


「うんうん。わかってる、わかってる」


「絶対分かってない!」


「というか、そんなに喜んでくれると申し訳ないな」


 微妙に気まずそうにそんなことを言う奴に、わたしはこてんと首を傾げた。


「いや、今日、エイプリルフールだろ?」


「ふぇっ……?」


 ああ、そういえばそんなことを考えた記憶がある。ってことはーー


「今の流れ、嘘?」


「おう。エイプリルフール大成功、だろ?」


「…………」


「あれ……?」


「…………」


「いや、ほら、ぬか喜びさせて悪かったって」


 ニヤニヤしながら言っても全く説得力がない。こいつはわたしをからかっていたらしい。


「うっさい、バカ、大嫌い!」


 吐き捨てるように叫んで、背を向けてドアに手をかける。

 騙されて期待した自分が許せない。何度も言ってるのに、こんな奴大嫌いだ。

 しかし、急に腕を引っ張られ、不意を突かれてバランスを崩したわたしは、幼馴染みの腕の中に倒れこんだ。


「いきなりなにしてーー」


「オレは好きだよ、おまえのこと」


 へ?

 いや、今、耳を疑うようなフレーズをこいつが囁いたような……?

 聞き間違いかな?

 …………………………………


「はあ!? ちょっと、あんた、本気で言ってんの!?」


 ようやくその意味を理解したわたしは、思わず大声で叫んでしまう。

 意味わかんない。いきなりなんだと言うのか。後、早く離せ。


「本気だよ、オレは」


「いやいやいやいや、ないから、幼馴染みとかないから」


「また、そんなこと言って……って、顔真っ赤だけど?」


 うっさい、そんなことわかってる。

 突然そんなことを言われたから戸惑っているだけで、別にこいつに抱き締められていると安心するとかそんなんじゃないのだ。


「うっさい」


「都合悪くなるといつもそれだよな」


「うっさい」


 いい加減離して欲しい。そんな風にされると、勘違いしてしまいそうになるじゃないか。


「もう一度言ってやるよ、オレはおまえのこと好きだよ。今もこれからも」


「うーっ」


 ええい、耳元で無駄に甘い声で囁くな。


「返事、聞かせて?」


 奴は、わたしの肩に手を置いて、わたしの目だけをじっと見つめてくる。

 その真剣な眼差しに絡め取られ、いつもならすぐにできるはずの、目を逸らすという簡単な行為さえできなくなる。


「わ、わたし……」


 抑えようと思ったけどだめだった。

 天邪鬼な仮面(ペルソナ)に隠した本心が漏れてしまいそうになる。

 ほんとのことを言うのは怖いけれど。

 こいつになら素直になってもいいのかもしれない。


「ああ、もうっ!」


 ぎゅっと奴の身体に抱き着いて、胸に顔を埋める。

 さっき以上に真っ赤になった顔なんて見られたくない。恥ずかしいから。

 聞こえなかったらいいなと、聞こえたらいいなと、同時に相反する思いを抱きながら、小さく、囁くように、告げる。わたしの素直な気持ちを。


「わたしだって、好きだもん。言わせんな、バカ!」


 あいつが返す言葉を聞きながら、嘘はいつでも言えるけれど、別れは辛いけれどーー

 たまには勇気をくれるのかな。

 なんて、思った。

いかがでしたか?

相変わらず、一人称が下手なんですが。

まあ、1時間クオリティなんで、大目に見てください。

後、名前考えるの面倒くさいと思って、キャラ名を捨てると、会話が微妙に書きづらかったり。

後半がまたごり押しになった気がする……

あ、題名は適当です。特に意味はありません。


天邪鬼な女の子ってかわいいよね。笑


良かったら感想とかください。

作者は豆腐メンタルなので悪しからず。



こう言っておくと大丈夫な気がする。(ぼそっ)

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― 新着の感想 ―
[一言] ニヤニヤしながら読ませていただきました。 天邪鬼な彼女ですか、良いですね。親友が『覚り』って言うより、彼女が『覚られ』って感じですかね。 恥ずかしさのあまり、天邪鬼を気取っているのにバレバレ…
[良い点] 無駄のないスムーズな進み方で読者にとって読みやすい作品だと思います。こういった短編作品では感情も若干オーバーな位で良いと理解して書いているのがよく分かります。 [気になる点] 短編の恋愛作…
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