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【続報】俺氏異世界に飛ぶ【メシマズ確定】

 「……………ださい…!」


お、おい、いきなり罵倒すんなよ。思わず意識が覚醒しちゃっただろうが。

あれ、生きてる…? 何気なく脊髄反射したせいで、認知した事実が遅れてやってくる。

 相変わらず人一倍罵詈雑言には反応しやすい地獄耳である。ヘルイヤーとも言う。なんだか発音がヘルニアによく似ているので多用は厳禁だ。ついでにドライヤーにも似てる、こちらの場合多用は現金となる。誰が上手いこと言えと……。そしてそんな上手くもない。ごめんなさい。


ってか本題はそこじゃない。問題は俺が生きていることにある。

まずい、それは言い方に語弊がある。違う、そうじゃない。俺が死んでないことが問題だ。

あの時確実に死を覚悟した俺だが、体の自由がまだ大分戻ってないだけで、意識はしっかりしている。


まぁ、問題は五感が完全に鈍っていることだ。まず目が開けない。

ついでに耳も遠くなってる。いや、遠くなっているんだと思いたい。

死に際の俺に「ださい」と吐き捨てるのは知り合いなら藍花しか居ないだろう。マジ鬼畜。


「…………てください…!」


おい、なに勝手に要求してんだよ。お前なに、その、手フェチとか言う種族の部族?

確かに、死にかけだからね? 臓器移植とかさ、色々あるかもだけどさ。

手はなくね? なに鑑賞用なの? どんなグロテスクな趣味してんだよ。


と思ったのも束の間、急速に俺の体は自由を取り戻した。

まるで古びた車が急にエンジンを掛けたような、急速な力の流れに抗えず、俺は飛び起きた。


「ぐああああああああああああ!?」


「いやあああああああああああああ!?」


体から溢れるシナジーに身を任せ、叫び散らしながら起き上がる。あれ、悲鳴とハーモニーしてる?

俺はそっと視線を横にスライドした。そこには怯え切った様子でこちらを見上げる美少女。

そうか、美少女か。まれによくある美少女か………美少女ォォォ!?


俺はついついマジマジと彼女の全体をジロジロと眺めた。反復する言葉やたら多いな。


 彼女の格好は、何というかナース服を改造したような格好だ。下はロングスカートなのだが、スリットが入っていて、既存のナース服よりややエロい。実に俺とk……じゃなくてけしからん。そしてスタイルだが、華奢で線の細い感じが目立つが一部そのスタイルに真っ向から勝負を仕掛ける二つの塊が俺の目にはしっかりと刻み込まれた。……服の上からわかるんだから、相当ですね、はい。


顔立ちはやや童顔で、怯えた様子はまるで泣く寸前の小学生である。マズイ、背徳的過ぎる。

思わずロリ巨乳を泣かしてしまったかと罪悪感に苛まれてしまう。うーむ、子供は苦手だぞ…。

そんな俺の反応を見てか、若干怯えの色を収めた少女は、ささっと立ち上がって咳払いをした。


「あ、あの……お、おはようございます…?」


「え、あ、その、あ……お、おは……ょぅ……」


やっべー、ナチュラルに会話してきやがったよ。お陰で見事に返事が尻すぼみしやがったぜ。

コミュ障ナメんなよ? 折角話しかけられたのに挙動不審な態度取るんだからな。

…友達できないわけだぜ。


取り敢えず俺も咳払い、すると相手も咳払い。うーん、この距離感はなんだろうか。

あぁ、そうか。変人と一般女性か。美女と珍獣レベル? やだ、なにそれ怖い。主に俺が。

俺がどんどんネガティブな思考の海を勢いよく泳いでいると、ふと、また少女が話しかけた。


「…えっと、ゆ、勇者様…っ!」


「………………へ?」


今世紀最大の間抜けな声が出た。間抜けなのは顔だけにしろって? うるさい、黙りなさい。

いやいや、だってさ、そりゃなるでしょ? いきなり勇者様だぜ? 何かそんな気がしてくるだろ。

 もしかしたらこの会話をキーにして俺の右手小指第二関節が疼くかも知れないぞ? ……腱鞘炎ですね。すいません。そして俺も実際なりかけてるから尚更質が悪い。


さて、無駄な思考は止めようか。俺は一先ず質問することにした。


「あ、えーっと…ゆ、勇者? ってどういうこと、かな…?」


俺にしてはレベルの高い会話技術を披露してやったぜ。今後お見せする機会はないでしょう。

なんてったって、自分、友達いませんから!!


そんな俺の質問に食い入るような形で、少女は控えめに口を開いた。


「ゆ、勇者様は……その、い、異世界から選ばれた、その、能力を持つ人類…です」


「能力…? い、異世界…?」


「え、えっと、あの、勇者様は大陸の中で6名いらっしゃって…その、人知を超える能力を、全員が保有しています…。そして、その一角が、その、貴方様…でございます。い、異世界、と言うのは、こちら側から、勇者様方がいらっしゃる世界を総称して、そう言います。ですから、その、勇者様からされると、こちらの世界が異世界、という事になります…」


つっかえつっかえ話す少女。オドオドした様子は見ていて何か応援したくなる。

しかし、聞かされた話は何やら穏やかではないようだ。能力? 俺ならステルスとかじゃないかな。

思わず俺の存在が消えかけたが、どうやらそういうことではないらしい。


少女は尚も続けた。


「能力は、全て、事象に物理干渉します…。で、ですから、現段階で、魔族や霊族に対して、有効な手立てを持つのは……各国々の宮廷騎士団か、魔術師だけです…。勇者様方を除いて、ですが…」


「……えーっと、それで、俺は…」


「あ、も、申し訳御座いません…。今すぐ王室へとご案内致します」


俺の反応から機微を察したのか、慌てふためいて少女へペコペコと頭を下げた。

なんとも庇護欲を掻き立てられる。俺は珍しく柄にもないリア充っぽい事をしてみた。


「…名前、教えて、くれないかな…?」


「わ、私はメイリア、メイリア・オルコットです…」


「メイリアさん、ね」


ふぅ、何とか名前は聞き出せた。最後によろしく、とか言ってイケメンスマイルすると完璧。

ただ俺は今後彼女とよろしくやっていく仲ではない。そしてイケメンではない。

つまり、やる必要性がない。んじゃ名前は何故聞いたかって…? うーん、何となくだ。


俺はその後、彼女の後を追って王城(?)を歩く。

今はひたすら脳内でくだらない事を再生しているが、やはり混乱状態にあるのだろうか。

何となく頭の中でグルグルと浮かんだり沈んだりする何かが蠢きまわっている。

簡潔に言えば、それは疑問である。


 問い出せばキリがない。何故俺なのか、此処はどこなのか、俺は一体どういう経緯でここへ来たのか、元の世界に戻れるのか。まずはこの四つ。次に、俺は勇者なのか、勇者とは何か、大陸とは何か、何故会話が通じるのか、後は……まぁ、混乱しているワケあってか、中々質問すら浮かばない。


ぼっちで孤独なリアルワールドから抜け出せて嬉しいはずだったんだがな…。

いざ、こうやって異世界という違う世界の地を踏みしめてみると、地に足が着いた感触がない。

なんかふわふわしていて、俺は死んだ霊体のまま夢を見ているのでは、と錯覚すら覚える。


何度も入り組んだ城内を歩き回り、若干足が痛くなってきた頃だった。


「ここです…」


指し示された場所は、先程通ってきた道程の中でも、類を見ない大きさの扉だった。

荘厳にして静謐、そんな気品溢れる空気がその場を満たす。背中にゾクリ、と怖気が粟立つ。

しかし、踏み出さないわけにもいかない。案内を務めたメイリアさんは、静かに俯いている。


「……」


俺が足音を極力薄くしながら、扉の前に立つ。すると、番兵らしき男が、ゆっくりと扉を開けた。


「勇者様のォォォ、おなァァァァりィィィィ!!」


よく響く声が王室の中に響き渡り、歓迎のファンファーレが明るく俺を出迎えた。

俺は少し物怖じしながらも、スタスタと比較的足取りは軽く、王室へと侵入した。

 入って一番に感じたのは、だだっぴろいだけの空間、という印象だ。王座が置かれたその場所は、規格外に大きい割に何かが所狭しと並べられているわけではなく、まるで片付けたら予想以上に空きスペースが出来てしまった物置のようである。王室を物置とは比喩とは言え中々失礼だな…。


そして、目の前には、座ったままこちらを見下ろす一人の影。

溢れる偉大なオーラ、響くようなカリスマ性、見ただけで感じた。

コイツが…。


「…我がイシュタル皇国国王を務める、アルヴァ・デル・ローゼンマイアだ」


……やっぱり、王様でしたかぁ…。




◆◆◆




その後の王様によるタメになるお話は、かれこれ十分程続いた。校長先生のお話ばりだな、おい。

俺は失礼な所をお見せしないように、欠伸を噛み殺し、閉じる視界を強引に開いた。


 王様、アルヴァ・デル・ローゼンマイアの話によれば、ここはミズガルド大陸と呼ばれる巨大な一枚岩の大陸なんだそうだ。特にここ周辺イシュタル皇国領地内、ということで、この王様によって全てが統治されている。と言っても、王様は基本国民に干渉はしないらしい。あくまで、上から押さえつけるのではなく、上から全体を見て、危険なことには忠告をする、そういったスタンスらしい。


まぁ、大分俺の中にある王様のイメージとは違った。話し方はそれっぽいけどな。


 ついでに言うと、勇者の説明だが、勇者はその適応した人間にのみ刻印が記されるらしい。俺もその話をされて気づいたのだが、右手に見知らぬ魔法陣的な何かが描かれていた。まぁ、聖痕とかいって尻に紋章がつかなかっただけ、無事神様の辱めを避けた、と言うべきか。それでも俺は選ばれてしまった人間らしい。何だろうな、この優越感、あっちの世界じゃ何一つ選ばれなかったんだがな、てかある種選ばれないと言う事実を選ばれたような感じだったんだがな。アハハハ……ハァ。


そして、ここからが重要な、まぁ勿論今までも重要だが、俺的にとても重要なお話。


「…ふむ、異世界間での通行は、不可能……ではないな」


「本当ですか…!」


「だが、さりとて不可能に近いことは変わるまい。我々は時期になれば、神々の導きによって、異世界より勇者となるべき使者が送られることを知らされる。魔王を無事封印したあと、彼ら元勇者達が今どこで何をしているか、などといった事は我らとて一概に知っているとは言えぬな」


「……魔王を封印したんですよね? だったら何故私が勇者になったのですか?」


「魔王は不死身じゃ。謂わばその場凌ぎに過ぎない封印魔法では、長い時が経てば次第に効力を、失っていくのは自然の摂理。当然ながら、今までも魔王は封印と復活を何度も成し遂げてきた」


「…それ勝目ないんじゃないですか…? それと魔法…?」


「そうだな、まずは魔法の説明から入ろうか。魔法は大きく分けて三つに分けられる。守護魔法、攻撃魔法、封印魔法だ。その後多岐に渡って分岐を繰り広げるが、基盤はこの三つだ。守護魔法は自身、もしくは味方を守る魔法。攻撃魔法は敵や魔物を蹴散らす魔法。封印魔法は、強力な生命体や、強い魔力の源泉を封じる為のものだ」


「…な、なるほど」


全部理解したわけじゃないが、まぁ、大分分かった。そしてテンションが徐々に上がっている。

 なんて言ったって魔法である。魔法と言えばこちらの世界ではハ○ーポッターが世界的には有名だろうか。箒で空を飛ぶなんてのはアレだが、炎出したり雷出したりはしてみたい。けど魔法と言っても、やはり難しいのだろうか。俺にできるか不安である。


と、柄にも無く真面目に、しかも深く考え込んでしまった。いやはや、これは失敬失敬…。

しかし、気を害した様子もなく、王様は話を続けた。


「…そして、魔王に対する対抗策のことだが」


「……」


「ないこともない、が、実現はほとんど不可能だろう」


「…どういう意味ですか?」


「………それは、今はまだ話せぬ。だが、封印自体はそこまで難しくもない。魔王とは負の生命体の大元だ。奴を封じ込めた後の丸々1000年以上は、安泰で平和な暮らしが約束される。だが、封印魔法の効力が失われ始めると、徐々に負の魔力が溢れ出し、動物達が凶暴化し、やがて魔物となる。今や完全に復活を遂げた魔王の存在は、可及的速やかに封印せねばならん」


王様はどうやらその話題を避けたがっているらしい。何か深い事情があるのだろうか。

だが、それより俺は重大な事実を聞いてしまい、オウム返しに質問していた。


「え、もう復活しているんですか…!?」


「うむ。しかし、今回の場合は勇者の召喚が遅延されていると聞く。過去の伝承では、魔王が目覚める六日前に勇者達が到着した、との文献がある。六日前、と言うのは何か意味合いがあるのかもしれないな。今回は異例の事態だが、なんの皮肉か、魔王が復活してから六日後なのだ」


そりゃ6は不吉な数字だしな。三つ揃えば悪魔の数字だ。俺は三つ揃っても何も起こらない。

にしてもだ、これは相当ヤバいのではないだろうか。

本来の召喚ですらヌルゲーと呼ぶにはまだ厳しいレベルなのに対して、今回は遅れてるときた。

……やっべえ、俺のせいで世界崩壊なんて洒落にならんぞ…。


「しかし、奇跡的に魔王の侵略の速度は鈍い。今まで封印される度に、徐々にその力が奪われているのかもしれないな…。とは言え、のんびりまったり構えているわけにも行かない。早速ですまないが、勇者、貴方にはこの地を去り、勇者達が揃うと言われる巨大都市、『聖都ラグランジエ』に向かっていただきたい。魔王を封印する為には勇者の英知が必要、そして、貴方を除いた勇者は、多分今現在もその場所に向けて向かっているだろう」


「…ですが、俺は実力も何も付いていない、ただの雑魚に過ぎませんが…」


「その件に関しては特別問題はない。先代の勇者達も皆、最初はまったくと言っていいほど戦闘能力が皆無だった。だが、ここから『聖都ラグランジエ』までは直線にして約1000万キロオーバー、危険なルートを避ければ二倍、三倍、と距離は跳ね上がる。どう頑張っても時間は有り余る、その中で勇者達はその能力を鍛え上げ、そして唯一無二の武器にまで仕上げたのだ」


「なるほど…。それで、俺の能力と言うのは…」


「おっと……すまない、肝心な部分を忘れていた。我々もこんな異常事態は過去の文献を漁っても初めてのことでね、パニック状態なのだ。気を取り直して、その能力を判定するには、これが必要だ」


そう言って差し出されたのは、鞘に収められた剣だった。

鞘は凝ったデザインの彫刻が施されており、柄や持ち手部分にも拘った装飾が見られる。

俺は思わず首をひねった。能力を解き明かすのに、剣が必要なのか…?


「これは『英雄の魔剣』と呼ばれる代物で、代々、『災厄の時代』と呼ばれる、言ってしまえば魔王が封印から解き放たれた時代の、最も繁栄している六つの国家に与えられる、勇者に天啓を与えるための秘具だ。これによって能力が解き明かされる」


なんだか大層な剣のようである。にしても英雄の魔剣、ネーミングセンスねえな、先代様よ。

まぁ、頑張って横文字にしなかっただけ及第点だろうか。中二病炸裂って感じだな。

取り敢えず俺は、その剣を受け取った。


その時だった。


俺は別にそれを知っていたわけではない。

だが、俺は無意識のうちに、鞘から刀身を抜き出していた。犯罪者の素質があるのかも…。

それと同時に、白銀に煌く刀身から、やけに近代的なそれが聞こえてくる。


『紋章認証。貴方ヲ第126代目勇者トシテ認メマス』


「…機械音声、なのか」


「これには謎の技術が使われているのだ。我々も未だわからぬ、精製技術も何もかも。闇に埋もれたままというわけだ」


「…はぁ」


俺は刀身を睨みつける。

すると、それに反応するように、一際激しく白銀の煌きが放たれた。


『能力測定。貴方ノ持ツ『覇才』ハ、『神喰いザ・イーター』デス』


「…覇才とやらが能力なのは分かった…けど、『神喰い』…?」


「神喰い……まさか、貴方がその力を持っているとは…」


「なんですか、その力は…?」


「神喰い、それは伝承によれば、勇者の中で最も強い『奪取能力』だそうだ。この場合は『喰奪能力がだつのうりょく』と呼ばれるらしい…。その真髄は、倒した魔物や魔獣、その他負の魔力を強く持つ者の魔力を喰らい、相手の能力や使う魔法、戦闘技術までをも奪ってしまうことにある。かつての使い手はその能力を用いて、魔王軍の要、『魔神十傑』の一角を喰らい、その全てを得た」


「…神、喰い…!」


聞かされた話を要約すると、究極のスティールジョブらしい。やべえ、横文字しかねえ。

 とにもかくにもだ。戦闘能力皆無、人畜無害を謳うこの俺にとっては、こうして他人の力を奪い取りでもしないと勝ち残れないだろう。残る五名の勇者様にも迷惑掛けそうだしな、何とか俺にでも扱えそうなイージーチートが来てくれた。


まぁ、所詮たかが知れているので、過信はしないがな。

そんな形で、俺は能力の説明を聴き終わった。ふぅ、なんとかやっていけそうだ。


と、安心したのも束の間、今度は身内から思わぬ爆撃を食らう羽目に。


「さて、この世界についての知識は、後々もっと深く知る機会があるだろう。言うなれば、百聞は一見に如かず、というやつだ」


因みにだが、何故会話が通じるのか、という質問に対しては明確な答えを聞くことはできなかった。

 ミズガルド全域で、純潔の人類種であれば『ヘイム語』と呼ばれる共通言語があるらしい。その他には獣人種・幻人種・霊人種、と色々あり、各種族によって共通言語は違う。だが、先代の勇者達もこの世界における全言語を話せたという事もあり、心配する必要はなさそうだ。


まあ、もし脳内で勝手に変換されているのなら、余程高性能な翻訳スキルなのだろう。

異世界語を日本語の諺に翻訳するほどなのだから。


さて、問題はここからだ。


「で、だ。流石に勇者を一人で旅立たせるのは、勇者の所有権を得た我が国としても、中々に心苦しい部分がある。故に、勇者には仲間を付け、パーティとしての戦闘能力向上も図ってもらおう」


「(なァァァにィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!?)」


某ベ○ータ風に、いやそれ以上に驚いてしまった。

 仲間。メンバー。チーム。フレンド。ナマカ。あ、最後のは違いますね、はい。と、とにかくだ、それはつまり、人? 人間なんだよね? 獣とかじゃないんだよね? 言ってしまえば、意思疎通を取れる人型をした何か、つまり人間なんだよね?


【悲報】俺氏終了のお知らせ【二度目の死】


そんな感じのスレタイが思い上がり、そしてスレッドが伸びそうな気がしたので虚しくて止めた。

ともかくだ、これは慣れるしかない。習うより慣れろ、いい言葉である。

俺は挙動不審な態度を取りつつも、肯定の意思を示して、コクコクと頷いた。


「なに、選りすぐりの強力な戦士を集ってある。入りなさい!」


王様は大声でそう言った。声量は大したことないのだが、やけに重く心に響く。これがカリスマか…。

すると、先程の門番がもう一度扉を開けた、そしてゾロゾロと五人の人間が連れ立ってやってきた。


「紹介しよう」


「(お、おい、ちょっと待て……!)」


自信満々、と言うか何か悪戯を成功させて喜んだ子供みたいな表情で、王様はこちらへ告げた。


「『彼女ら』は、我が国でもトップクラスの実力者達だ。では……いいか? しっかりと勇者様のお役に立てるよう、傍からしっかりと援助し、命を投げ出す覚悟を持つのだ」


「「「「「ハッ!!」」」」」


全員が俺に後ろを見せて、王様に向かって跪く。

いいよ、その一体感、連帯感。だけどね、なんでだろう。こう、不安しかないのは。

ああそうか、やっとわかった。


このパーティ、俺以外に男が一人も居ないんだ……。



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