Retry…
サルベージ。
「遅かったか」
巨人は言った。
俺は朦朧とする意識の中それを聞いた。
「わしが…わしが操作ミスさえしなければ」
巨人はorzの体勢で拳を何度も叩いていた。
「わしのせいだ。わしのせいでお前の初めてを…」
「奪われてねーよ!?」
俺は覚醒した。
「ちっ、奪われとらんのか」
巨人は舌打ちをした。
「舌打ち!? お前わざとか?」
「わざとなわけなかろ。わしはADVの神様じゃぞ、それにねちっこい奴は女の子にモテらんよ」
大きなお世話だ。それに目の前にいる巨人はADVの神様らしい。
「さっきはすまんじゃたの〜。セットし直したからはよう門をくぐれ」
帰って来てから俺への対応おかしくない?
俺は門の前に立つ。門は大きく口を開け、獲物を待っているように見える。
門の先は真っ暗で何も見えない。
俺は片足だけ門に突っ込む。すると、門の向こうにあるはずの太ももから下がない。俺は驚き、足を戻す。ちゃんと太ももから先か付いていた。もう一度、今度は逆のほうの足を突っ込む。やはり消える。
怖いな。さっきは走って通り抜けたから感じなかったが今になって怖いと思った。それにくぐってまたホモゲのセカイだったら…全身鳥肌が立ってきた。
巨人(ADVの神様)はさっきセットし直したと言ったが、本当か? 違うホモゲにセットしたとか……有り得る。
巨人は今となっては全く信用できない。
ウ〜ンどうしよ?
俺が考えていると。
「えぇい、早くせんか」
巨人は俺の背中をちょんと指で押した。それは巨人では弱くやっているかもしれないが小さな俺にとってはフルスイングでケツバットをくらった感じだ。
俺は勢いに負け門をくぐった。
まばゆい光りが辺りを包み俺は目をギュッと閉じた。
チリリリン
目覚まし時計の音。
全身がけだるくまだ寝ていたいと体が脳に訴える。
鳴り響く目覚まし時計を止め待つ。
…………
まだかな?
…………
もう少し?
…………
…………
誰も起こしに来ない。
幼なじみや妹が来ない!
俺はベッドから起き上がりあくびをする。
チュートリアルや設定の説明などは無いのだろうか。いきなりスタートして状況をつかめないまま進めるのはあまり得策ではない気がする。
それにしてもなぜか寂しい。
クリスマスの日に飛び起きプレゼントを確認すると国語辞書だったって時位寂しい。あれは小学四年の時か…そういえばあれ以来クリスマスプレゼントおかしくなっていったよ。最終的にコンビニで買ったケーキだったっけ。
俺は時計を見る。八時半。
俺は「遅刻、遅刻」と階段を下りキッチンへ。トースターにパンを入れセット。
パンが焼けるまで学校の準備。
まず一番初めに鏡。筋肉ムキムキ海パンでないことを確認する。
俺の容姿はこれといって特徴の無いものだった。かっこよくはないが悪くもない。
鏡で容姿の確認を終えると制服に着替えた。。
チーンとトースターが鳴った。
俺はすでに教科書の入ってあったカバンと出来立てのトーストを持ち家を出た。時間割りもなく何の教科書を持っていったらよいかわからなかったが今日は仕方ない明日以降ミスらないように学校についたら時間割を入手しよう。
両親とは一緒に住んでないらしい。家のなかをざっと調べたが俺の他誰もいなかった。
しかし大きな一軒家。一人でこんなのに住んでるとは…。俺は走って学校に向かった。学校の場所知らないけど。
しばらく走ると十字路が見えてきた。
俺は加速して十字路に差し掛かる。十字路に差し掛かろうとしたその瞬間、死角から影が…。
女の子だ。(狙い通り)
女の子と激突。
かじっていたトーストとカバンが宙に舞う。
「あいった〜」
俺は直ぐに立ち上がり。
尻餅を付いている女の子に歩み寄る。
「すみません。大丈夫ですか?」
俺は紳士的に言った。
「あ〜大丈夫です。って勇君?」
ゆう君ここでの呼び名もゆう君。やな予感しかしない。
てゆーか目の前女の子の名前知らないけど!こういう時ギャルゲーなら???って出てるよな〜
こういう時どうしたら名前が出るんだっけ?
………
俺が知っているゲームでは、
1主人公が記憶喪失でないか確かめるため「私の名前覚えてる?」と聞いてきて、主人公が答える。
2一人称で進んでいるため「こいつは、妹の○○朝いつも起こしにくるお節介な妹である」
3ヒロインが転校生のため「私は○○って言います!よろしくね(゜▽゜)/」的な自己紹介を聞く。
4その他…いろいろ。
駄目だ。わかんねー。
俺が考えているその時。
ブーブー
ズボンのポケットから振動がした。
中にはスマホ(見たことのない機種)が入っていた。
「ちょっとゴメン」
俺は時間を稼ぐためスマホに目をやる。メールが入っていた。それを開くと…
選択肢
1何もなかったように立ち去る
2「大丈夫か彩?」
3「今度からは気をつけろよ」
と書いてあった。俺はそれを目にして直ぐに察した。今俺は分岐点に直面していると。
ここは無難に
2だな。
俺はスマホをポケットにしまい。
「大丈夫か彩?」と言って彩に手を差し出した。
すると彩は
「大丈夫、それより勇君、そんな格好でどこいくの?」
「うん?学校だけど」
彩はポカンとした顔をしている。
「勇君? 学校ってこっちの方向じゃなくて反対方向でしょう」
知らねーよ。わかるわけねーよ。
「ありがとう彩!いやー危ない、危ない。このままだと俺は学校と反対方向に進み続け、世界を一周して登校するところだったよ。どんだけ遠回りすんだよ!ってね」
恥ずかしさのあまり早足で立ち去ろうとするが彩は更に呼び止めた。
「勇君!」
いやー(心の悲鳴)、立ち去らせてよ。
「何?」
「学校に何しに行くの?」何を言ってるんだ? この女は?
「何って、勉強をしにだよ」
「…今日、日曜だよ」
スマホを取り出し曜日を確認…本当だ、日曜日だ。
俺のほうが何言ってんだろうね!
「いやー、うっかり、うっかり。そうだよ、今日は日曜だよ、忘れてた。
ありがとう彩!」
俺は今度こそ走り去った。一目散に走り去った。これ以上目に溜まった涙がこぼれないよう。だから、今は走って帰ろう。
To be continue