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説明

 翌日、授業が全部終わると、自分の十七歳の誕生日であるのも構わないで、学校を出た。友人たちには「予定が入っちゃった」と説明し、すると「明日なんかやるからな」と釘を差される。

 八姫は光明に「なにかあるのか」と訊ねる。今日が真介の誕生日であるのがわかると、「へえ」と息をつきながら、スマートフォンの画面を見る。七月八日。


「今日なんだ」

「あいつ人の誕生日大事にするタイプなのに、自分のは俺たちに言われるまで忘れてるんだぜ。変だよな」

「なんのはなし?」

「バカの話」

「あのアホ、あんまり自分のこと好きでないからな」


 真介と中学生のころからの友人である城戸(きど)晴斗(はると)が間に入ってくる。


「自分のこと好きなタイプに見えてた」

「そんなわけ。あいつほど自己嫌悪の激しいのは見たことないさ」

「その分俺たちが愛してやんのよ。ぶちゅーって」

「キメェ」

「わはは」


 ところかわって真介は校門の前にいたアンジェラに手を振っていた。アンジェラは背中にハードケースを背負っていた。細目で分析すると、それが剣であることが分かった。


「若いねぇ、滝くん」

「学生ですもの。その背中のケースは?」

「剣をそのまま剥き出しで持ち歩けないでしょ。鞘あっても。だからさ。人生には工夫ってのが必要なのよね」

「さすがだぜ、パイセン」


 二人は場所を変え、その道中何気ない話をした。

 たとえば、家族構成に関する話。両親と妹は水都を出て東京に出ていった事や両親の職業はなんなのか、だとか。

 ちなみに真介の父・慎吾(しんご)は何やら有名な機械技術者でIQ四百、母・美咲(みさき)は何やら有名な科学者でIQ三百五十の天才である。妹・真琴(まこと)もIQ三百程度で、両親の特異性によりそれなりに金もあり、その金で暮らしているのが色恋バカ息子こと真介である。


「趣味はないの?」

「趣味はギターかな。結構うまいんだ、俺」

「絶対にあとで聞かせてもらおうかな」

「こわい。というか今何処に向かってんの?」

「ここ」


 アンジェラが立ち止まる。雑居ビルの前。


「ここに私の事務所あんの。藤宮探偵事務所。探偵はいいよ、聖域が開いた時にそれなりに情報が入ってくるし、そこら辺ほっつき歩いていても不審な目で見られないし。たまに犬猫の捜索依頼が来るし。不倫してる奴の多さが分かるし、水都の犯罪率の高さが伺える」


『じつは探偵になったこと後悔してんのかな‥‥‥』


「まぁいいや! 入っちゃって!」

「おじゃましまーす」


 事務所の中はびっくりするほど散らかっていた。

 足元に山のようにティッシュが転がっている。細目で見れば鼻をかんだものだと判明。机の上には灰皿があるが、罪人に対する死後の冒涜であるように吸い殻が山のように盛り上がっている。

 空きペットボトルと空き缶、半分入ったペットボトル。吸い殻がスターゲイジーパイのように突き出た珈琲缶。

 カップ麺の容器、何らかの汁で汚れたクッソ汚いカーペット。


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥まぁいいか! それでどんなところから教えてもらおうかな。聖域ってそもそも意味がわからないってところから話をしてもらいたいな」

「いいよ」


 聖域というのは、虚忌が現れる際に展開されるもの。

 剣士・聖剣士であれば剣の能力で何時でも入ることができる。

 極稀に虚忌のターゲットになってしまった剣士でない一般人が聖域に入ってしまうことがある。


「そういう一般人は聖域の中で迷ってしまうので、剣士は助けなきゃいけないの。そういう役目だからね」

「すげぇ‥‥‥剣士って凄いんだなぁ。安易に手を出していい代物でないんだ。コリャ参ったな‥‥‥」

「まぁ剣士にも色々いるからね。別に使命に感じなくていいんだよ」

「なるほど‥‥‥」

「なんか飲む?」

「絶対にいらないです。剣ってそもそもなんなんだろう。変な力を持っているらしいけれど‥‥‥」

「虚忌の反対で、人のプラスな感情で生まれるもの。聖剣はちょっと違うらしいけど。まぁ概ねそんな感じ。たまに虚忌と同じようにマイナス感情で生まれる剣があるけど、それは魔剣っていうらしい」

「マンガかアニメみたいだ」

「ね!」

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