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Side:アークス(1)


 どうやら僕は、他よりも愛が重いらしい。


 ある日、友人と酒屋に出かけた。そこで僕がフィオラの可愛さや素晴らしさを語っていたら、友人がぼそりと言葉を漏らした。


「……お前、愛が重くて嫉妬深くて、独占欲強くて愛が重いよな」


 と。げんなりした様子で言われたので、僕はどういう意味なのか詳しく聞き出した。


「いいか。あんまし愛が重すぎると、かえって引かれることがあるんだ。制約が多すぎたり過保護すぎて行動を制限したりしたら、うっとおしいと思われて嫌われるぞ」


 その言葉に、僕は衝撃を受けた。確かに僕は、フィオラが危険な目に合うのが怖くて沢山の制限をかけている。一人で外に出るのは禁止、外に出る時は必ず僕に言うこと、僕以外の男と話すときは必ず距離を取ること、その他にも数えきれないほどの約束事をしている。フィオラは毎回困ったように微笑んでいるが、もしかしたら内心ではうっとおしいと思っていたのか?


「おい、そんなに一気に飲んで大丈夫か?」


 手に持っていた酒を流し込むように飲んだら、彼に心配された。僕は酒に強く酔わない体質なので、問題はない。




「アークスさま。少し休まれてはいかがですか?」


 僕が考え込むように書類を睨んでいたからか、フィオラが話しかけてくれた。彼女はお菓子と紅茶を持っており、彼女の心遣いに胸が暖かくなる。


「ありがとう、フィオラ」


 書類を置いて立ち上がり、僕はフィオラと並んでソファーに座った。彼女が手ずから紅茶を淹れてくれて、いつも飲んでいるものよりも格別においしく感じる。

 紅茶を味わいながら息を吐いていると、フィオラが恐る恐る僕の顔を覗き込んだ。


「……アークスさま、最近何かあったのですか?」

「え?」


 僕はフィオラの愛らしい顔を見る。彼女は心配そうに僕を見ていて、それだけで心が満たされていく。このままずっと僕だけを見ていてくれたらいいのに、という思いが芽生えて、すぐに首を振ってそれを消した。


「特になにもないよ」

「そうですか……。何だか、お元気がないようにみえたので」


 そう言って、フィオラは微笑んだ。僕のことをよく見てくれているということが伝わってくる。それだけで心がいっぱいになって、このまま彼女を抱きしめてしまいたい、という思いが芽生えてきた。別に、抱きしめるくらいならいいよね。


「ひゃ! あ、アークスさま……」


 柔らかい体を抱きしめて、美しい髪をゆっくりと撫でる。最初は強張っていたフィオラの体も、徐々に力が抜かれて僕に身を任せてくれる。

 ああ、このまま抱いてしまいたい。でもそうすると、強引すぎるアークスさまは嫌いだと言われてしまうかも。例え冗談だとしても、彼女の口から嫌いだという言葉が出てきたら落ち込んでしまう。


「……やっぱり、何かあったのですか?」


 僕がフィオラを抱きしめたままぼんやりと考え込んだからか、フィオラは眉を下げて僕の頬に手を添える。彼女の癖なのだろうけど、今すぐなおした方がいいと思う。フィオラが僕以外にこんなことをしていたら、僕の額からは角が出てくるかもしれない。


「……あのさ。フィオラは、僕のこと嫌?」


 思わず問いかけてしまった。フィオラは琥珀色の瞳を丸くして驚いた表情になる。そして、彼女はぶんぶんと首を横に振った。


「嫌じゃありません。急にどうしてそのようなことを?」

「友人から、愛の重い男は嫌われるって言われたから……。僕はフィオラのことを愛しているし、大好きでずっと放したくないと思っている。それがもし嫌だとしたら、僕は……」


 僕は何も変われないと思う。

 前にフィオラの自由を奪って閉じ込めていた時も、僕はずっとそれが正しいことだと思っていた。流石にこのまま閉じ込め続けるのは良くないと思って今はこの状態になっているけど、心の奥底ではずっと、フィオラを閉じ込めておきたいと思っている。


 フィオラと両想いになれて、フィオラの全てを手に入れて、フィオラが傍にいてくれる。

 それだけで十分だったはずなのに、今ではもっと多くのことを望んでしまう。欲が多くて、自分でも嫌になるくらいだ。僕ですらそうなのだから、フィオラもきっとそうなのだろう。彼女は優しいから、優しすぎるから、僕のことを想って自分の気持ちを抑えることがよくある。


「……ごめん。変なこと言ったね」


 僕はフィオラから体を離して、立ち上がった。彼女の頭を一度撫でてから、笑みを浮かべる。無理やり浮かべた笑みだから、きっと頼りなく見えただろう。


「アークスさま……」


 フィオラは何か言いたそうにしていたけど、僕はそれに気づかなかった。


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