龍人戦争
読み聞かせを終えたカイトはドラゴンが実在するかをノアに尋ねます。
「面白かったー!」
「僕もドラゴン乗ってみたい!」
「ドラヴァン島の人たちがドラゴンと仲良くなれてよかった!」
ミレイユを含んだ孤児院の子供達が口々に感想を俺に伝えてきた。
「うん、そうだな、ノクスが殺されなくてよかったよな。」
あれ、何だか俺の声が少し震えている気がする。
ああ、そうだった、俺はこういう感動する話に弱いんだった。
しかしあれだな、ミレイユが言うには子供向けの物語という話だったが大人でも十分に面白いだろこれ。
と、その時ヘレナさんの声が響いた。
「みんな〜!そろそろ寝る時間だよ!」
「はぁい。カイトお兄ちゃん本を読んでくれてありがとう!」
子供たちは俺にお礼を言うと散り散りにそれぞれの部屋に分かれて行った。
さて、俺はどうしようかな?まだ寝るには少し早いかな?
「うーん、お兄ちゃん、眠いよう。」
ミレイユがそうゆっくりと言ってきた。
目はほとんど開いていない。
放置しているとそのまま寝てしまいそうだ。
「おお、どうしたミレイユ、もう眠いか?」
コクリ
ミレイユが小さく頷いた。
「わかった、それじゃあ寝ような。」
セラとノアの2人に一応少し王都に戻ることを伝えよう。
「2人とも、俺はちょっと宿に戻ってミレイユを寝かしてくるな。」
「わかりました。」
「こうしてみると2人は本当の兄妹みたいだよな。」
「そうですね。」
本当の兄妹に見える…何だかそう言われるとこそばゆいな。
確かに仲のいい兄妹のようにミレイユは俺に懐いてくれてる、それは嬉しい限りだ。
ミレイユを見るとすでに意識は闇の中のようだ、立ちながら机に突っ伏している。
やれやれ、しょうがない“妹”だな。
俺は優しくミレイユの肩と足を抱き上げた。
いわゆるお姫様抱っこってやつだ。
ミレイユを起こしたら悪いからそっと階段を上がろう。
階段を上がりセラとノアの部屋に設置してある門をくぐり王都の宿へと転移する。
ミレイユをベットに寝かしつけた。
すー、すー、
うーん、起きている時のやかましさといったらないのに寝ている時は静かなのがなぁ、なんと言うか落差がすごい?
俺ももう寝ようかな?
うーん、まだ俺は寝ないでいいや。
「おやすみ、ミレイユ。」
ガチャリ
「ただいま〜。」
「あ、カイトさん、おかえりなさい。ミレイユちゃんは本当によく寝る子ですね。」
「あー、確かにそうだな。今日なんか王立資料館で昼寝もしてたのにな。」
「別にいいんじゃないか?寝る子は育つって言うだろ!あはは!」
寝る子は育つ…もはやミレイユのための言葉のように聞こえるな。
「ああ、そうだ、2人に聞きたいことがあるんだけど。」
「なんだ?」
「さっき俺が読み聞かせをした本にドラゴンが登場しただろ?それでこの世界にドラゴンは実在するのかなぁ〜って思って。」
「ドラゴンですか…ドラゴンは実在する、とは言われています」
何だか含みのある言い方だな。
「言われている、っていうことは相当珍しい生き物なのか?」
「珍しい生き物、というよりは人間の前に姿を現さない、といった方が正しいかもしれないですね。」
「人前に姿を現さない?」
「ええ、ドラゴンは天に聳える高い山、天穿山に生息していると言われています。」
また"言われている"だ。
もう少し具体的に行ってくれないかなぁ……
そんな俺の様子を感じ取ったのだろう、ノアが補足をしてくれた。
「カイトさんにはある昔話から始めましょうか。セラ、お願いします。私はホットミルクでも淹れできますね。」
「はいよ!あたしこの話好きなんだ。まず、人とドラゴンの関係についてだな。」
「うん、聞かせてくれ。」
「その昔のことだがな、その時は人とドラゴンはよろしくやっていたんだ。さっきの物語のようにドラゴン乗りなんてのもいたらしい。だがな、その関係も長くは続かなかったんだ。人というのは傲慢なもので街を切り拓くためにドラゴンたちの住処である木をなぎ倒し山を削ったんだ。そしたら当然ドラゴンは怒るだろ?怒ったドラゴンたちは人間に反逆を起こした、これは人とドラゴンの間に起きた戦争、龍人戦争だ。戦争は長く続き両陣営とも疲弊してったんだ。もうお互いに戦争を続けるメリットが無くなったところで人間の代表とドラゴンの代表、龍神様が話し合ってドラゴンは天穿山に住むこと、そして人間はこれ以上の環境破壊をしないことを約束した。そうして数千年ドラゴンと人間は関わりを持っていない。」
やっぱりこの世界の物語は実際に会ったことを伝承しているんだな。
「なるほどな、1つ質問いいか?」
「ああ、いいぞ。」
「ドラゴンが天穿山に住む理由は分かったが人間が天穿山に立ち入ることはなかったのか?」
「無かった。断言出来る。」
「それまたなぜ?」
「天穿山には龍神様が展開している結界がある。だから人間が入ったことは無いはずだ。あったとしてもおそらく記憶を消されて山の麓に戻されている。」
「教えてくれてありがとう。」
コトリ
「はい、2人とも、ホットミルクが入りましたよ。それを飲んだらそろそろ寝ましょうね。」
「わかったよノア。」
セラはあたかもノアがお母さんであるかのように返事をした。
すごく微笑ましい。
しかしドラゴンか…せっかくの異世界だ出来れば会ってみたいが戦争があったと……うーん、ドラゴンに会ってみたいなぁ!
ドラゴンは人前に姿を現さないようですね?
カイトはドラゴンを見たかったようで少しがっかりしているようです。
いつかドラゴンと会えるといいですね!
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