聖女ノエリア、その生涯
ついにノアの防御魔法の秘密が明かされます…!
ぜひお楽しみください!
「防御魔法、それはーーー」
ゴクリ
緊張する。
一体防御魔法にはどんな秘密があるのだろうか?
ずっと気になっていたことが今明かされる。
「それは、祖先が聖女様であることだ。」
「聖女様?それって一体どういうことですか?」
当たり前だがノアが食いつく。
俺ももちろん興味がある、おじいさんの話が本当だとするとノアは…
「ふむ、少し昔話をしようかのう。これは昔から伝承されている物語じゃが実在した人物の話じゃ。」
おじいさんが髭を触りながらそういう。
「そう…これは遠い昔の話じゃ、あるところ、といってもこの国のどこかじゃが、ある女性がいた。それはそれはたいそう美しい女性じゃ。その女性の名はノエリア、といったそうじゃ。」
ノエリア…どことなくノアと名前が似ているな。
「ノエリアは不思議な魔法を使ってな、干ばつに苦しむ農民のために雨を降らせたり、病に倒れた人々に回復魔法を使い病を治したりして旅をしていた。そうしているうちにいつしかこの国の中でノエリアは聖女様として崇められるようになった。」
回復魔法を使う、やっぱりノアと似ている。
「じゃが旅をしていくノエリアは不思議と攻撃魔法を使わなかったそうじゃ。何故かわかるかの?」
ノアが少し考えて答える。
「それは、聖女様として崇められているからそのイメージを守るためでしょうか?」
「いい考えじゃが少し違うのお。"代償魔法"は知っておるかの?」
代償魔法…俺は前に学んだばかりだ。
「ええ、代償魔法なら知っています。自らの体の一部を捧げることで術を強化することですよね。」
「そう、だがノエリアは違った。何が違うかというと捧げたものじゃ。」
「捧げた物ですか?」
「ノエリアが捧げた物は人生、とでもいうべきかの。」
「人生ですか?」
「ノエリアは生涯に渡り魔法で他人を傷つけない代わりに人を救う、人のための魔法を使ったのじゃ。だからノエリアは攻撃魔法を使わない、いや、使えなかったのじゃ。」
人生を捧げる…すごい覚悟だ。
「でも、旅をしていたのだったら魔物と遭遇、なんてことはしなかったんですか?」
「もちろんしたさ、じゃがそこは共に旅をしていた男の冒険者が倒したそうだ。」
「そうしている内にその2人はここ、王都にたどり着き、子供も産まれ幸せな家庭を築いた。」
「子供…じゃあその子供の子孫が私…」
「まあまあ、そう焦りなさんな、まだ話は続いておる、防御魔法についての話がまだじゃろうが。」
そうだ、まだ雨を降らせて、回復魔法を使った話しか聞いていない。
「そんなある日のことじゃ。王都に大量の魔物が押し寄せてきた。それを率いていたのは魔王じゃ。」
「魔王?そんなものが存在していたんですか?」
「ああ、魔王は確かに存在した。魔王は数千、数万の魔物を率い王都に攻め込んできた。」
「王都にいた冒険者が王都を守るために応戦したが魔王軍の圧倒的な物量に押され始めた。もちろんノエリアと苦楽を共にした男も戦いに出た、ノエリアも戦いに出ようとしたがその男はそれを良しとしなかった。当然じゃ、既にノエリアと男の間には赤ん坊がいた、もし2人とも死んでしまったら赤ん坊が孤児となってしまう。男は死を覚悟していたのじゃろう。」
魔王の軍勢…そんなものがこの世界にいたなんて知らなかった。
その時代に転生しなくて本当に良かった。
「皮肉なものでのう、人々を救ったノエリアは魔法軍の圧倒的な暴力を前にして何も出来なかったのじゃ。そのうちに魔王軍が王都の門にたどり着こうかという時じゃ、ノエリアの秘めたる力が覚醒した。」
「秘めたる力…それはなんですか?」
「それが君が求めている答え、防御魔法じゃ。王都を守るために戦っている冒険者たちが傷つくのを見たノエリアは王都を、冒険者を守りたいと強く、強く願ったのじゃ。それは自らが命を捧げても構わないと思う程に。」
命を捧げる…それってまさか…!
ノアも同じ考えのようだった。
おじいさんは俺たちの考えを見透かしたように言う。
「そう、君たちが考えている通りじゃ。ノエリアは王都を防御魔法で包み込み魔王軍の侵攻を止めた。さらには回復魔法で冒険者たちの傷を治したのじゃ。そうして回復した冒険者たちは次々と魔物を討伐した。そうして最後に残った魔王はノエリアのパートナーとの一騎打ちとなり、見事勝利した。じゃが魔王を討伐するには至らず撃退するに留まった。男はすぐにノエリアの元へ向かったが着いた時には既にノエリアは事切れていた。これが防御魔法の秘密じゃ。」
グスン
俺とノアは自然と涙を流していた。
王都を守るために命を捧げ防御魔法を王都全体に展開した…
その自己犠牲に感動したんだ。
「それで、その2人の子孫が私ということですか?」
「そうだろう、わしの知り合いの防御魔法を扱った人間の家で伝承されていた物語が今の話だ。」
「そうですか、長い話ありがとうございます。」
「いや、構わんよ、しかし君は回復魔法も使えるのかね?」
「はい。」
「ふむ、わしの知り合いは防御魔法しか使えなかった。ひょっとすると君は…いや、そんなことはありえないか。とにかく君は素晴らしい才能を持っておる。攻撃魔法が使えないことを恥じる必要は無い。むしろ防御魔法、回復魔法が使えることを誇りなさい。」
「ありがとうございます!」
おじいさんと別れて冒険者ギルドを後にした。
「すごいなノア!聖女様の子孫だなんて!」
「そうですね、これで防御魔法が使える理由、そして攻撃魔法が使えない理由がわかりました。」
「でもノア、本当にその聖女様の子孫なのか?ずっとあたしと同じ孤児院にいただろ?」
確かに、孤児院で育ったのに聖女の子孫とは考えにくいのか?
だがノアが否定する。
「むしろ孤児だからそう考えられるのでは?私は親の顔を知りませんし、だからこそ本当に祖先が聖女様なのかもしれません。」
「確かにそうだな、それにノアが防御魔法を使えるのが何よりも根拠になるよな。」
「とにかく私の魔法の秘密がわかって良かったです。肩の荷がおりた気分です。」
「よかったねノア!ねぇ、僕お腹すいちゃった!ご飯食べに行こうよー!」
「ふふ、そうですね、行きましょうか。」
4人で食事をしに向かった。
昔話っぽく伝承された聖女様の話を描きました!
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