今日は質問攻めの日!
「おはよう、ミレイユ。」
「おはよう、お兄ちゃん。」
ミレイユのお兄ちゃん呼びにはまだ慣れないな。
いやまあ俺がお兄ちゃんと呼べって言ったんだけど。
今日は朝から冒険者ギルドで依頼の処理をする予定だからあまり時間が無い。
朝食を軽く摂ってセラとノアと合流し冒険者ギルドへと足を運ぶ。
冒険者ギルドの中はいつもよりざわめきが大きかった。
当然だ、国王の王冠を取り戻した冒険者が入ってきたのだから。
「王冠を取り戻した報告に来ました。」
「ありがとうございます、既にカイラスさんとリュミナさんは奥の部屋にいます。案内いたします。」
案内された部屋に入るとそこには2人がいた。
でもなんか…やつれてる?
「おう、来たかカイトたち、待ってたぞ。」
「実は私たち昨日の夜から国王の王冠返還と盗賊の引渡しでずっとギルドにいたのよ。」
「そうだったのですか、お2人に任せてしまって申し訳ありません。」
「いや、いいんだ、これも先輩の仕事だから、だが後のことは…任せる…俺たちはすこし…休みたい…」
カイラスが今にも消え入りそうな声でそう言った。
昨日見せた豪快な姿とは大違いだ。
うん、昨日の後処理はやっぱり2人に任せといてよかった。
昨日の帰りの時俺は寝たかった。
それにセラは絶対後処理なんかしたら居眠りするだろうしミレイユもきっと寝てただろう。
「後は4人にギルドから質問をするだけだから私たちは帰って少し休むわね、後はよろしく。」
カイラスとリュミナさんが立ち去って行った。
しばらく部屋で待っているとギルドの職員がやってきた。
「それでは冒険者ギルドから直接ザーモンと戦った冒険者さんに質問をいたします。まず、ザーモンはどのような戦い方をしていましたか?」
「ザーモンはナイフを主とした戦闘でした。さらに魔法で矢を放っていました、それも恐ろしい精度で。」
「なるほど、ありがとうございます。それではそちらの方に質問いたします、どのようにしてザーモンに誘拐されたのですか?」
ギルドの職員がそうミレイユに尋ねる。
「えっと、後ろからガバッって捕まって連れてかれました。」
いやなんだその雑な説明は…
「そうですか、では誘拐犯はどのような格好をしていましたか?」
「黒いペンダントをしていました。」
やっぱりペンダントはしてたか。
そんな感じでしばらく俺たちは質問攻めにあった。
サーモンの領域、ザーモンの姿なんかだ。
これをあの2人は一晩中やっていたというんだから素直に尊敬する。
でも俺たちへの質問は既に2人に聞いた事の確認だったからすぐに終わった。
「これで質問は以上となります。ああそうだ、近々王冠を取り戻し王家の威信を守ったあなた方に国王陛下から面会の報せが届くと思われます、いつ呼ばれても良いように準備をよろしくお願いします。」
「え、国王に呼ばれるんですか?」
「そりゃそうでしょう、王冠は王家の権力の象徴です、それを取り返した事に国王陛下が深く感銘しているそうです。」
国王に呼ばれる…なんか凄い嫌だな、俺は別にこの世界でちやほや褒められたい訳じゃない、4人で気ままに冒険出来ればそれでいいのに。
「あの、それって断る事ってできますか?」
「できないことは無いと思いますが…国王陛下の願いですし断るんだったらこの国から出ていく覚悟が必要なんじゃないですか?というかそもそも断る理由あります?多分功績を称えて多額の報酬を貰えるんだと思うんですけど。」
「てかなんで断ろうとしてるんだカイト?国王陛下なんて田舎で普通に生きてたら会えるもんじゃないぞ?」
「そうですよ、それに国王陛下と面会ってことは国王陛下の居住区画に入れるってことなんじゃないですか?それってすごいことですよ!」
そうかなあ、そんなに言うなら面会に応じてもいいかなあ。
「分かった、いいよ。呼ばれたら行こう。」
「「やった〜!」」
そんなこんなで緊急依頼の後処理は終わった。
「それじゃあ後はノアの防御魔法についてここの冒険者に聞くんだったな?」
「ええ、防御、回復魔法の秘密、ひいては私が攻撃魔法を使えない理由についても突き止めたいです。」
「OK、じゃあ魔法使いっぽい見た目の人から聞いてみようか。」
冒険者ギルドの集会所に入り魔法使いを探す。
ザワザワ
ん?なんだか集会所にいる人がこっちを見てコソコソ話をしてるみたいだ。
何を話しているのか気になるな。
耳をすまして聞いてみる。
「おい、あの若いのがザーモン盗賊団を壊滅に追い込んだんだってよ。」
「俺らより10近く歳が離れてるのに上級冒険者ってことだろ?ちょっと嫉妬しちゃうよな。」
どうやら俺たちが王冠を取り戻した上級冒険者だと知られたらしい。
しかしやっぱり俺たちの歳で上級冒険者は珍しいのか。
確かに思い出してみればカイラスとリュミナさんも見たところ20代半ばから後半だったような気もする。
ってそんなことはいいんだ、とにかく防御魔法について聞かないと。
魔法使い魔法使いっと…
「あそこで座ってるおじいさん、魔法使いっぽくないか?」
老人で冒険者をやってるってことは多分魔法を使えるんだろう、老人が武器を振り回して魔物と力勝負をしている姿なんか想像できない。
「そうですね、ではあの方に聞いてみましょうか。」
「すみませーん、少し聞きたいことがあるんですけどお時間よろしいですか?」
「ん?なんだね若いの、わしに質問とは珍しい、わしにわかることなら何でも聞いて良いぞ。」
おじいさんから許可を貰えたので後はノアに任せよう。
「聞きたいのは魔法についてなんですけど、おじいさんは魔法使いですか?」
「そうとも、わしは魔法を使っておる。」
「そうですか、では単刀直入に質問させていただきます、防御魔法について何か知っていることはありますか?使う人間の特徴、使うための条件など何でも構いません。」
「ほう?そなたが防御魔法を使いたいということかね?」
「いえ、私は防御魔法を既に使えます、ですが攻撃魔法を使えないので気になっていまして。」
「防御魔法を使える…ああ、わしにも昔防御魔法を扱う知り合いがいた。そいつに聞いた話だがそれでいいかね?」
ノアが期待を膨らませた声色で言う。
「はい!ぜひお願いします!」
「防御魔法、それはーーーーーーー」
そのおじいさんから伝えられた内容は驚くべき内容だった。