まだ足りないのか…!
ザーモンとの命をかけた激戦です!
ハラハラしながら読んでいただけると幸いです!
「少年避けて!」
ミレイユの悲痛な叫び声が耳を刺す。
でもごめん、これは無理だ、避けられない。
思えば異世界に来てからいくつもの出会いがあった。
セラにノア、それからミレイユ、ギルドマスター達、全てが俺の大切な宝物だ。
あー、死にたくない。
矢が俺に突き刺さろうかという瞬間だった。
ガキィン!
金属がぶつかり合う音がした。
「しっかりしろカイト!あたし達もいる!」
セラが盾を投げて降り注ぐ矢を防いでくれたようだ。
「ありがとうセラ!」
「魔法を1度防いだくらいで何が嬉しい。」
再びザーモンが左手を握る。
ビュッ!
今度は壁から矢が飛び出してきた。
パリィン!
俺の目の前で矢が止まる。
今度はノアの防御魔法だ。
「魔法は私が防ぎます!カイトさんはザーモンを!」
「防御魔法とな、貴様らは早めに芽を摘んでおくべきだな。今対峙できて良かったよ。」
ザーモンが意味深なことを言うがそんなことに構っている暇は無い。
「俺がザーモンの相手をする!セラはミレイユのところに!」
「了解!」
セラがミレイユが縛りつけられている柱に向かって走り出す。
「そんなことをこの俺が許すわけがないだろう!」
セラに向けて矢が放たれる。
だがその全てがノアの防御魔法に防がれる。
「チッ、なんとも忌々しい小娘よ。」
ザーモンが柱に向かっているセラに向かって踏み込みナイフを振り上げる。
だがそんなものは俺の前でさせるわけが無い。
「ウィンドカッター!」
風の刃をザーモンをセラに近づかせないように間に放つ。
ザクザク!
床を切り裂きながら風の刃が走り抜ける。
ザーモンは後ろに飛びウィンドカッターを躱していた。
「貴様から死にたいようだな。」
ザーモンがこちらを鋭く見据える。
来るぞ、集中しろ…!
ドンッ
ザーモンがこちらの間合いを侵略する。
ヒュッ!
ザーモンの鋭い刺突が俺の顔を狙う。
ビッ
俺の頬に赤い線が走る。
だがすんでのところで顔を逸らしたおかげで傷は浅い。
そのまま激しい斬り合いへとなだれ込む。
だがやはりただの斬り合いだとザーモンの方が上だ。
少しずつ俺の体が斬られていく。
痛い。
当たり前だ、俺はほんの少し前まで俺はただの高校生だった、痛みへの耐性は一般人並みだ。
魔法を使えば少しは戦況が変わるのだろうか?
だが近くにミレイユがいるから魔法は使いにくい。
と、その時俺の体を緑色の優しい光が包み込む。
傷が塞がり痛みが無くなる。
ノアの回復魔法だ。
「大丈夫ですかカイトさん!私が回復します!あと少し耐えてください!」
あと少し?
よく分からないがあと少し耐えれば状況が変わるんだな、ノアの回復魔法でまだ動ける、まだやれる!
カンカン!
さらにザーモンの斬撃の速度が上がる。
だが少しずつ慣れてきた、対応できるようになってきた。
その時状況を変える一声が響く。
「カイト!ミレイユちゃんは助けた!動けるぞ!」
声がした方を一瞥するとセラがミレイユを縛っていた縄を剣で切って救出していた。
ありがとう、これで本気が出せる。
ブオッ
剣に炎を纏わせる。
その長さはロングソードの長さの2倍ほど。
相手の間合いがロングソードよりも近く近接戦が得意なのであれば俺は間合いを長くして近づかせない。
「ほう、これまた妙技を…」
再三ザーモンが踏み込む。
やはり速い。
横薙ぎで迎え撃つもダッキングで躱される。
再び間合いを侵略されるも今の俺は魔法が使える。
「ウィンドカッター!」
大きな風の刃をザーモンに向かって放つ。
「チィッ!」
ザーモンがバックステップを踏む。
凄まじい反応速度だ。
だがなぁ、そっちに跳ぶのは読めてるんだよ。
「お返しだ!アイスアロー!」
奴への意趣返しとして上から大量の氷の矢をお見舞いする。
「クソッ!」
ザーモンが必死に身を捻る。
ドスッ!
そのうちの1本がザーモンの肩に突き刺さる。
いける!倒せる!
カラン
ザーモンが肩に刺さった矢を引き抜く。
「クソガキどもが…決めた、貴様らは無残に殺す。」
ヒュッ…
ザーモンの姿が周りに溶け込むように消えた。
「な…!どこにいった!?」
「カイトさん上です!」
ノアが叫ぶ。
上を見ても何も見えない。
いや、何かがいる!
咄嗟にロングソードを上げる。
ガチン!
ナイフとロングソードがぶつかる音がする。
「これは…透明になる魔法か!?」
どこからともなく声がする。
「言っただろう、ここは俺の領域だと、俺の魔法全てが無制限で使える!」
透明化する魔法に壁や天井から矢を放つ魔法…とんでもない強敵だ。
果たして俺達に勝てるだろうか…いや勝つ!
ギュッとロングソードを握った時だった。
バンッ!
大きな音を立て扉が開かれる。
今ここで敵の増援はまずい!
だが扉を開けた人物は俺達に希望をもらたした。
「待たせたなカイト達!入口の雑魚どもは全て捕らえた!」
「私もいるわ!さぁ、ザーモンを捕まえるわよ!」
カイラスとリュミナさんだ。
「ふむ、どうやらここまでのようだな。」
ボンッ
白煙が部屋を包み込む。
おそらくザーモンが煙玉を投げた。
「今日はここまでにしといてやる。だがクソガキ、貴様のアイテムポーチは必ず盗み、そして殺す。」
まさか逃げる気か!
「待て!」
だが煙に巻かれさらに透明になる魔法を使っているザーモンを捕まえることなど不可能だった。
シュン…
ザーモンの領域が閉じられ元々の洞窟が露になる。
「逃がしてしまいましたね…」
「ああ、だがあのまま戦っていても勝てていたか分からなかった…」
悔しいが今の実力だとザーモンを打ち倒すには至らなかっただろう。
「これじゃあ依頼は失敗ってことか?」
そうセラが言う。
確かに、ザーモンを逃がしてしまった。
「いえ、依頼は成功です、あれを見てください。」
ノアが指しのはそこにあったのは王冠、そう、国王の王冠だ。
「あれは、王冠か…」
依頼は成功した…
そう認識したと同時に疲れがどっと押し寄せてきた。
とその時俺の大切な少女が抱きついてきた。
「うわーん!怖かったよ少年!」
「ごめんな、ミレイユ俺が判断を間違えたからこんな目に合わせちゃって…ほんとごめん。」
「ううん、いいの、助けてくれたし。」
「ま!何はともあれあたし達みんな無事だ!王冠も取り戻せたし!」
そうだな、王冠も取り戻せたし依頼達成だ。
「疲れたな、もう宿に戻って寝たいよ。」
「そうですね、私も魔力を使いすぎました。」
「3人ともお疲れだったな、あとは俺とリュミナが処理しておくから先に休んでていいぞ。」
なんて優しさだ、泣けるね。
「ありがとう、そうさせてもらうよ。」
戦場となった洞窟から出て王都へと戻った。
ハチャメチャに上手く戦闘描写を描けたと思います!
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