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ザーモン盗賊団頭領ザーモン、その実力

洞窟の中は豪勢な建物になっていた。


「これが仮の拠点…?」


ザーモンが言っていた通りにここが仮の拠点なのだとしたら相当な宝物を盗み荒稼ぎしているということになる。


「落ち着いてくださいカイトさん、これはおそらく魔法です、魔法で見せかけの外見を作っているだけです。」


そうか、そうだよな、誰にも気付かれずに洞窟にこんな建築を施すのは不可能だ、いつもノアの冷静さには助けられてばかりだ。

その時どこからともなく声が響く。


「そうだ、その女、中々やるじゃないか、この建物は魔法で見せている幻覚だ。ここは言うなれば俺の領域(フィールド)、俺の持つ魔法が無制限で使える空間だ。俺は最奥の部屋にいるぞ、さあ、早く来て俺を楽しませろ!」


どうやら自分が負ける想像など微塵もしていないようだ。

相当な自信家に見える。


「そうだ、お前たちにはこれを見せておこう。」


フォン


目の前にザーモンが映り込む。

派手なアクセサリーを多数身につけていてそれは今まで成功させてきた盗みの数がとてつもないことを表していた。

顔は深く被ったフードで見えない。

画面外から構成員が現れ何かを引っ張ってくる。


「やめてよ!」


引っ張られている者は聞き馴染みのある声を上げる。

それはミレイユだった。


「ミレイユ!」

「ごめん、少年、宿に戻ろうとしたところで捕まっちゃった。」

「俺の使う魔法は人間を乗っ取る魔法だけじゃないぞ、魔法をかけた人間の視覚も共有できる。」


視覚を共有してミレイユを攫ったのか…

やられた…!


「これでお前たちはここに来る他無くなった。さあ、早くそのアイテムポーチをよこせ!」


フォン


ザーモンを映していた画面が消えた。


「急ぐぞ2人とも、ミレイユを助けるぞ。」

「ああ!」

「はい!」


ザーモンが魔法で見せているであろう建物の中を走る。


「来たぞ、冒険者だ!ザーモン様のために捕らえろ!」


構成員が洞窟の奥から姿を現す。

まだいたのか…!

めんどくさい、いくら構成員が弱くともここで時間を使うのは嫌だ。

ここは一気に片をつける。

氷の大砲をイメージする。


「アイスキャノン!」


ボンッ!


作り出した氷の塊は構成員たちに直撃する。

倒れた構成員達を入口でやったように氷漬けにする。


「うっ…」


目眩がする、急に魔力を消費しすぎた。


「大丈夫ですかカイトさん!?今回復魔法を使います!」


ノアに回復魔法を使ってもらい何とか回復する。


「ありがとうノア、これでまた動ける。」


再び洞窟の奥へ走り出す。




しかししばらく進んだところで足を止める。

分かれ道だ。


「右かな?」

「あたしは左だと思う。」

「いや右だろ。」

「左だって。」


俺とセラが睨み合う。


「2人とも、落ち着いてください、私が探査魔法を使います。」


ノアが探査魔法を使用する。


「ふむふむ、左ですね、右には落とし穴があります。」


左だったか。


「…ごめん、セラ。」

「別に気にしてないさ、そんなことよりほら、ミレイユちゃんを助けに行くぞ!」


再び洞窟の中を駆け抜ける。

それにしてもこの洞窟、広い。

ザーモンの魔法で同じような景色をずっと見せられているからだろうか、意識が朦朧としている気もする。

そのままフラフラと走っていたらノアが叫ぶ。


「カイトさんストップ!罠です!」


罠!?

ノアの叫び声に反射的に後ろへ飛ぶ。


ヒュカッ!


洞窟の天井から多数の矢が降り注ぐ。

背筋に冷たいものが走る。

あと少し反応が遅れていたら俺は脳天から矢を刺されていた。


「あぶないねぇ…」


命の危機を前にして完全に俺の思考は停止した。


「しっかりしてくださいカイトさん!ミレイユちゃんがいる部屋はすぐそこです!」


そうだ!しっかりしろ俺、ミレイユを助けるんだ!


「すまん2人とも、俺は2人に助けられてばかりだ。」

走っていると大きな扉に突き当たった。


「ここです、ここにザーモンとミレイユちゃんがいます。」


ここか…ここにザーモンが…!


「開けるぞ。」


ギィ…


重い扉を開ける。

そこは広い空間となっていて教会のような荘厳な雰囲気を感じる。

盗んだであろう品物がうず高く積まれている。

その空間の奥にザーモンとミレイユはいた。

ミレイユは柱に縛られていた。

その一方でザーモンは煌びやかな椅子に足を組み座っていた。

さながら玉座と言ったところか。


「待っていたぞ冒険者、さあ、早くそのアイテムポーチをよこせ!」

「渡すわけがないだろう、お前はここで俺達に捕まるんだ。」

「そうか、残念だ、ならここで殺す。」


スッ…


ザーモンが抜いたのは漆黒に輝くナイフだった。

俺もロングソードを抜く。

ザーモンに対し峰打ち1発で意識を刈り取るのはおそらく不可能だ、俺は覚悟を決めた。

と、その時ザーモンがフードを下げた。

ザーモンの顔が露になる。

蛇のような鋭い目をした男だった。

髪の毛は暗い紫色。


「さあ、やろうか。」


ドンッ


ザーモンが雷鳴のような踏み込みを見せる。

速い!

咄嗟にロングソードを上げ防御を取る。


カンッ!


ナイフとロングソードがぶつかる。


「ほう…その剣、中々良い品物だな、お前を殺してそれも奪う。」


流れるような連撃が俺を襲う。


カンカン!


俺は防御をするだけで精一杯だ。

ザーモンの攻撃は全てが俺の命を奪う軌道をしている。



「ザーモン、とんでもない…速すぎて戦いに入れない…」


セラがそう言葉を漏らす。

確かに速い、速いのだがそれ以上に間合いが近い、当然だ、ナイフとロングソードでは戦いやすい距離が違う。

ここは1度距離をとるしかない。

俺はバックステップを踏んだ。

その時ザーモンの口元が吊り上がる。


「言っただろう、ここは俺の領域(フィールド)だと。」


ザーモンがナイフを持っていない左手を握る。

俺がバックテップで着地する場所、その天井から矢が降り注ぐ。

さっき俺を襲った矢は元々設置されていた罠でなくてザーモンの魔法だったのか…!

まずい!避けられない!

このままだと死ぬ…!

死にたくない…!


俺はあまりの恐怖にギュッと目を瞑った。


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