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ザーモンを捕らえろ!

「風…?」


何かがおかしい、この部屋は密室で風なんか吹くはずがない。

部屋のドアもまだ開けていない。


「ククク…」


笑い声が聞こえる。

よく聞くと泥棒から笑い声が発せられている。


「ハハハハハ!」

「な、何だ!?」

「話は聞かせてもらったぞ、不快な冒険者ども。」


明らかに先程までの泥棒じゃない。


「誰だお前は!?」

「何を隠そう、俺こそがザーモン盗賊団頭領、ザーモン様だ!」


そんなバカな、じゃあなぜ捕まっているんだ?

ザーモンはこちらの反応を意に介さずに続ける。


「もちろんこの俺が簡単に冒険者どもに捕まるわけが無いだろう!この男の意識を乗っ取っているだけの話しよ。」


人の意識を乗っ取る…これがさっき話していた不思議な力か…!


「そこのガキ、聞いていたぞ。」


ザーモンが俺を鋭く見つめる。


「何をだ?」

「貴様の持つアイテムポーチ、それは容量が無限なんだってなぁ…!」


そうだ、ザーモンは大容量のアイテムポーチを求めているんだったな…


「どうせ貴様らは俺の拠点に宝物を取り返しに来るのだろう?来るがいいさ、俺が貴様らを蹂躙しそのアイテムポーチを強奪してやるさ!洞窟で待っているぞ。ハハハハハ!」


パリィン!


何かが割れる音がした。

それと同時だった、泥棒の首がガクリと下を向く。

意識を失っているようだ。


「何が割れたんだ?」


泥棒に歩みよると足元に黒いガラスのような物が散らばっている。

その中にひときわ異彩を放つ物がある。


「お札?」


その小さな札には赤黒いインクで謎の紋章が書かれていた。

泥棒を見ると付けていたペンダントが割れている、おそらくペンダントの中に隠されていたものだ。


「これでこいつの意識を乗っ取ったってことか。」


と、その時ノアが何かに気づく。


「このインク…ひょっとして血じゃないですか?」


血だって?


「なるほど、血か、それなら乗っ取りの魔法も説明がつくわね。」


どういうことだ?

俺にはよく分からない。


「血を使うと何が起こるんですか?」


リュミナさんが説明をしてくれる。


「血というか、体の一部ね。体の一部を捧げた魔法は強力な効果を実現させるのよ。」


体の一部を捧げる、か。

これは魔法というより元の世界で言う呪いに近いのかもしれない。


「しかし代償魔法か…ザーモン、予想していたよりも手練だ。」

「代償魔法は高等な術なんですか?」

「いや、代償魔法自体は魔法が使えれば誰にでも使用できるわ、私も、カイトも。だけど代償魔法っていうのは基本的に自分に使うものよ。理由は捧げた供物を通して魔法をかけた者から自分に影響が出る可能性があるから。」


やっぱり呪いだ、藁人形に釘を打ち込むのを誰かに見られると自分が死ぬなんて話を聞いたことがある。


「それにしても捧げた供物が軽すぎますね、こんな少量の血で他人を乗っとるなんてありえないです。」

「あれ?ノアは代償魔法を知っていたのか?」

「もちろん知ってますよ、私だって魔法使いの端くれです、勉強をしっかりやってます。しかしこの少量の血で人を乗っ取れるとなると多くの人に魔法をかけているのではないでしょうか。」

「ああ、そうだろうな、このペンダント、これが手がかりになるだろう。」


そうカイラスが言う。

ペンダントか、この黒いペンダントどこかで見たような…あ、あれだ!


「分かった!」

「何が分かったんだ?」

「このペンダント、前に俺が捕まえた泥棒も付けてた!」

「そうなの、ならやはりザーモンはこのペンダントを介して人を乗っ取っているってことで間違いなさそうね。早く西側の洞窟に行くわよ、面倒なことはさっさと済ませましょう。」


俺のアイテムポーチを狙っているなら俺も行かなきゃきっと雲隠れするだろう。


「分かった、行こう。ミレイユは危険だから宿で待っててくれ。」

「うん、少年、無事に戻ってきてね、約束だよ?」

珍しくミレイユが不安げだ。


「必ず戻ってくる、約束だ。」


ミレイユと指切りをする。

ザーモンとその構成員を捕らえる用の縄を用意しミレイユと別れ5人で西の洞窟へと向かう。

ザーモンの拠点がある西側の洞窟は崖にぽっかりと穴が空いている形で悪党が隠れるには最適そうな場所だった。


「どうやら俺たちを歓迎してくれているな。」


カイラスがそう言う。

洞窟の前にはザーモン盗賊団の構成員が複数待ち構えていた。

全員首にペンダントを付けている、


「ああ、これは確かに手厚い歓迎だ。」


その時示し合わせたように構成員たちが突っ込んでくる。

反射的にロングソードを抜いてしまったがいくら異世界で相手が盗賊だとしても斬るのは気が引ける。

ギルドの依頼には王冠を取り返せばザーモン達の生死は問わないと書いてあったから殺してしまっても罪は無いはずだが人殺しなんてのはしたくない。

しょうがない、ここは峰打ちにしよう。

あ、ロングソードは両刃だから峰がないや。

瞬間的にロングソードを鞘に納め背中から鞘ごと抜き、飛び込んできた構成員にロングソードを振り抜く。


ホグッ


ロングソードは構成員の腹を捉える。


「グエッ!」


構成員は腹を抑えて倒れる。

縄で縛っている余裕は無いな、氷魔法で氷漬けにしておこう。


パキパキ


倒れた構成員の足元を凍らせる。

周りを見るとセラとカイラスが暴れている。

セラは盾で殴打し、カイラスは首元に鋭い手刀を当て意識を奪っていく。

リュミナさんは倒れた構成員達を次々と縄で縛っていく。

しかし数が多い、構成員は次々と湧いてくる。

と、その時カイラスが声を上げる。


「ここは俺とリュミナに任せて先へ行け!」


2人にこの人数を任せられない。


「ダメだ、2人だと危険だ!」


カイラスが怒声を放つ。


「俺達はお前らより先に上級冒険者になってるんだ!舐められちゃ困る!先輩の言うことは黙って聞け!」


確かにそうだ、この2人は歴戦の上級冒険者だ。

一瞬の逡巡ののち、決断する。


「分かった!俺達は先に行く!ここは頼む!」

「任せろ!すぐに追いかける!」


俺たち3人は洞窟の奥へと歩を進めた。









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