協力体制構築中!
昼食を摂るために外を出ることにする。
冒険者ギルドは受付を通り修練場に行く構造となっているため必然的に修練場に出入りする時はギルドの受付を通る必要がある。
ザワザワ
冒険者ギルドはたくさんの人で溢れていた。
流石王都の冒険者ギルドだ、冒険者が多いななんて思っていたが何かがおかしい。
ギルド内を満たしている話し声は明るい雰囲気ではなくどこか緊張を孕んでいる。
「なんか変だな。」
「そうですね、まるで何かが起こったかのようです。」
厄介事にはあまり首を突っ込みたくないが気になるし聞いてみよう。
受付に話を聞きに行く。
「あの、何かあったんですか?」
「何かなんてもんじゃないです!国を揺るがす大事件ですよ!」
国を揺るがすだって?
どんな大事件なんだろう?
ゴクリ。
「一体何が起きたんです?」
「実は、国王陛下の王冠が盗まれてしまったんです。」
王城に泥棒が入ったってことか、それは確かに事件だな。
ってか確か前に泥棒を捕まえたな、関係があるのか?
「そういえば泥棒が増えているって前に言ってたじゃないですか、それと関係があるんですか?」
「そうですね、おそらくはザーモン盗賊団の仕業だと思われます。厳重な警備が敷かれている王城に侵入できる泥棒はそれくらいです。」
「今までの泥棒もそのザーモン盗賊団の犯行ってことですか?」
「その可能性は高いと思われます。と言ってもおそらくは下っ端でなんの情報も持ってないでしょうけど。」
「それでギルドが騒がしいんですね。」
「ええ、冒険者ギルドは王冠の奪還を緊急依頼として設定しました。当然報酬も多額なので多くの冒険者が集まっています。」
なるほどな、おおよその概要は掴めた。
「俺たちはどうする?依頼を受けるか?」
「もちろん、困ってる人がいるのに助けないのは冒険者として失格じゃないか?さらにいえば被害者は国王陛下だってんだろ?受けない理由はない。」
「そうですよ、それにカイトさん前に泥棒を捕まえたのでしょう?一度手を出したなら最後までやりましょうよ。」
「そうだな、じゃあ王冠の奪還、参加しようか。」
受付で緊急依頼を受注する。
「緊急依頼を受注したいんですけど。」
「はい、ですが1つ条件があります。あなた方は上級冒険者ですか?」
「そうですけど上級冒険者じゃないと受けられないんですか?」
「そうです、今回のように危険度が高いと予測される依頼は上級冒険者以上の方にお願いしております。」
「そうなんですね。」
これで受注は済んだが1つ疑問があるな。
「依頼って複数のパーティーが同時に受注していいんですか?」
「緊急依頼は何よりもまず依頼の解決が優先されますので、受注したパーティーの中で報酬の分割は後々活躍次第で支払われます。」
「今はどれくらいのパーティーが受注しているんですか?」
「今はそちらのパーティーの他に1組です。上級冒険者は数が少ないのでこれくらいですね。」
「そうですか、ありがとうございます。」
受付を済ませたところで俺達に話しかけてくる人達がいた。
1人はゴリマッチョな短髪の男背中には大きなバトルアックスを装備している。
もう1人は青髪の綺麗な女性だ杖を持っているから多分魔法使いだ。
「おい、アンタも王冠の奪還を受注したのか?」
「ええ、そうですけどあなた達は?」
「ああ、すまん、俺はカイラス、こっちはリュミナだ。」
「よろしく。」
リュミナさんが握手を求めてくる。
快く応じる。
「俺はカイトだ。」
「あたしはセラ。」
「私はノアといいます。」
「そうか、それでそっちの女の子はなんて言うんだ?」
ミレイユを見ると見事に人見知りを発動している。
「ああ、この子はパーティーには入っていないんだ、名前はミレイユ、俺の妹だ。」
「妹か、そういえばカイト達はもうお昼ご飯を食べたかい?私たちはまだだから良かったら一緒に食べないか?」
「そうだな、持っている情報を共有したいし何より一緒に仕事をするんだ、カイト達の事を知っておきたい。」
俺達もザーモン盗賊団の情報は知っておきたい。
「いいな、俺達も情報を知りたい、行こうか。」
「お、ノリがいいな、カイト!私いい店知ってるんだ〜!」
リュミナに案内された店は綺麗なレストラン、なんて訳ではないがどこか懐かしい温かみのある食堂だった。
「それで、リュミナさん達はどんな情報を持っているんですか?」
「私達が持ってる情報はザーモン盗賊団の頭領、ザーモンについてだな。」
「ザーモンはどんな奴なんですか?」
「申し訳ないがどんな姿かは明らかになってない。ただ不思議な魔法を使えてそれを盗みに使っているらしい、そして隠密行動が非常に得意なんだ。今まで失敗した盗みは無いとまで言われている。」
なんだかすごく手強い相手のようだ。
「カイト達の持っている情報も俺達に教えてくれ。」
「俺から出せる情報は今王都で泥棒が増えているって話だ。俺の考えだとおそらくザーモン盗賊団の構成員で下っ端だと思う。」
「ならその泥棒から何か聞き出せるかもしれないな。」
「ああ、でもギルドによるとその泥棒たちは何も話さないらしい。」
「そうか、なら私の出番だな。」
「私の出番?どういう意味だ?」
「私はある魔法を使えてな、それは対象を魅了させるとある種の催眠状態にできる魔法だ。名前は魅了魔法。」
「へー!それはすごい!それを使えば色々しれそうだな。」
「リュミナは特殊な魔法を数多く覚えているからな、便利なんだ。」
「こらこら、人に向かって便利なんて言葉を使うな〜!ところでカイト達の自慢はなんだ?私達に教えてくれ。」
「そうだな、俺は剣技かな、さらに魔法を剣に纏わせることが出来る。」
「あたしはやっぱりパワーだ!パワーなら誰にも負けない自信がある!」
「私は防御魔法と回復魔法を使えます、後衛なら任せてください。」
ノアが自分の使える魔法を説明すると2人の目が丸くなる。
「なに?防御魔法と回復魔法を使えるのか?そりゃ凄い、俺達も長く冒険者をやっているが初めてあったな。」
「そうよ、ノアちゃん恵まれているのね。」
「いやいや、そんなことないですよ、私は攻撃魔法ができないので。」
「そうだとしても余りある才能よ!」
リュミナさんがやけに食いつく。
同じ魔法使いだからだろうか、目を輝かせてノアを褒めている。
「それで今後の方針だがとりあえずリュミナさんがその魅了魔法を使って泥棒から情報を聞き出すってことでいいか?」
「うん、それでいいよ。」
そんなこんなで依頼を開始した。
王冠の奪還、そしてザーモンの捕縛、厳しい任務になると思うが新しい仲間もできた、絶対に成功させてみせる!