才能への羨望、そして
「カイトさん、私は攻撃魔法の練習を手伝っていただきたいのです。」
「攻撃魔法か、確かに王立資料館で攻撃魔法の本を借りてたな。」
「ええ、なので攻撃魔法を扱えるカイトさんにご教授願いたいのです。」
「いいよ、じゃあやろうか。」
攻撃魔法ね、別に俺ができるから急いで覚える必要はないと思うんだけど、そんなに丁寧に頼まれてしまうと断りにくい。
てかそもそも断る理由ないし。
「なんの属性から始める?」
「ではまずは風魔法からお願いします。」
「おっけー。」
「カイトさんは風魔法をどのようなイメージで打ち出していますか?」
イメージか…
「そうだなあ、俺は風が手を中心にして渦巻くイメージでやってるかな。」
「なるほど、やってみますね!」
ノアが手を前に突き出し魔力を込める。
これは簡単に出来そうかな。
そう思ったのもつかの間、ノアの手に集まっていた魔力が霧散してしまう。
「あれ、今のいい感じだったのに。」
「いつもこうなってしまうんです、魔力が足りないのかとも思いましたが魔力消費の多い防御魔法と回復魔法を使えますし、魔力の活性化も済んでいますから理由に心当たりがないんですよね。」
原因が分からないか…これは困ったな。
「うーん、それじゃあ一旦ほかの属性の魔法もやってみようか。」
「はい。」
火…
水…
風…
土…
基本の4属性を試してみたけどどれもやはり発動はできずに魔力が霧散していく。
「やっぱり私には才能がないのでしょうか…?」
「いやいや、そんなことはないと思うけどな、防御魔法も回復魔法もできるじゃないか。って、ああ、そうだノア、俺も練習を付き合って欲しいんだった。」
「練習ですか、そうですね、カイトさんの練習もしないと不公平ですよね。」
「ありがとう。」
ようやっとずっとやりたかった練習ができる。
王立資料館で借りた例の本を取り出す。
その本のタイトルは
〜防御魔法、攻撃から身を守る術〜
そう、俺も防御魔法を習得したかったんだ。
ドキドキしながら本のページを開く。
最初に書いてあったことはこれだった。
「防御魔法は非常に高度な術であり習得できるのは限られた人間のみである。」
限られた人間…俺に覚えられるのだろうか?
あでも、確かミレイユが君には魔法の才能があるって言ってたな、ならできるか。
本に書いてあった防御魔法発動の方法は何者も通さない壁を空間に展開するイメージとの事だ。
確かに基礎の魔法に比べてイメージが難しく思える。
「じゃあ、とりあえずノア、お手本を見せてくれるか?」
「はい、やってみますね。」
シュウン
いつも見たくノアが防御魔法を展開する。
空間に展開するイメージを理解するために魔法を打ち込みたい。
「ここに魔法を打ち込んでいいか?」
「もちろん、どうぞ。」
じゃあとりあえず風魔法だな。
「ウィンドカッター!」
パリィン
放った風魔法は防御魔法の前にあえなく消滅する。
なるほどなぁ、ガラスに近いのかもしれない。
「おっけー、何となくイメージは掴めた気がする。やってみるね。」
空間にガラス…
魔力を俺とノアの間に集める。
よしよし、集まってきた…ってあれ?
確かに魔力は集まる、集まるのだが防御魔法の展開には至らない。
なんでだ?
「できないな。」
なんでできないんだ?
俺には魔法の才能があるってミレイユは言ってなかったか?
ジッとミレイユを見つめると、彼女は知らぬ存ぜぬと言った顔だ。
何となく(僕まだ管理人になって日が浅いからよくわかんないな〜。)
みたいな事を思っているのがわかる。
「まだ、初めてやっただけですから、次はきっとできますよ!」
ノアが励ましてくれる。
「そうだな、やってみるよ。」
……
しばらく練習を続けたが一度も防御魔法の展開には成功しなかった。
「うーん、なんでできないんだろう。」
「何故でしょうね、カイトさんの攻撃魔法は一級品で、間違いなく才能があるはずなのに。」
「でも本には防御魔法を習得できるのは限られた人間のみって書いてあるから俺には才能がないのかもしれない、むしろノアにこそ才能があるんじゃないか?」
「いやいや、私は攻撃魔法をひとつも打てないのでカイトさんの方が才能がありますよ。」
2人で首を傾げているとセラがやってきた。
「何言ってるんだ2人とも!あたしなんかそもそも魔法を使えないぞ!だから気にすんなって!」
不器用ながら励ましてくれようとしているのがわかる。
「いやいや、セラはパワーが異常だから、セラも力の才能はあるんじゃないか?ってかどうやってそんなパワーを手に入れたんだ?」
「どうやってって言われてもなあ、よく食ってよく寝る!それしかないな!アハハ!」
この快活な性格、そこに底知れぬパワーの秘密があるのかもしれないな。
3人で会話をしているとミレイユも参戦してきた。
「でもでも、人それぞれ得手不得手があるのは当たり前じゃない?それを補っていけばいいじゃん、仲間なんだし!」
じーん
ミレイユの言葉に胸を打たれた。
どうやら2人も同じらしい。
「いいことを言うなミレイユちゃん!」
「そうですね、私たち"4人"は仲間、ですもんね!」
2人はミレイユに抱きつき頭を撫でている。
「うわー、何すんの2人とも〜せっかく少年が髪の毛とかしてくれたのに〜。」
ミレイユはじたばたと抵抗をするが満更でもないらしい。
まったく、これじゃあミレイユは俺のじゃなくて皆の妹キャラだな。
動きっぱなしでお腹がすいたな。
ちょうどお昼時だし、みんなでお昼を食べに行こう。
「なあみんな、もうお昼だしそろそろご飯を食べに行かないか?」
「賛成ー!」
「行きましょう!」
「お腹すいたぁー!」
「それじゃあまだ見ぬ料理を探しにしゅっぱーつ!」
ミレイユの号令と一緒に冒険者ギルドの修練場を後にする。