3人の研鑽
朝だ。
横を見るとミレイユはまだ寝ている。
ほっといてもそのうち起きるだろ。
顔を洗って昨日約束した鍛錬の準備をする。
「ん〜、おはよう。」
ミレイユが起き上がってきた。
「おはよう、ミレイユ、顔を洗っておいで。」
「うん、わかった。」
眠い目をこすりながらミレイユが洗面台へと向かう。
朝食の準備をしよう、今から米を炊くのは面倒だ、パンにしちゃおう。
今のうちに2人を呼んでこよう。
「おーい、2人とも、ご飯だぞ〜。」
なんだかお母さんみたいである。
「はーい、すぐ行きます!ほらセラ、起きてください。」
ドアの向こう側ではノアがお母さんのようだ。
俺とミレイユの部屋に戻る。
ちーん
ミレイユが机に突っ伏している。
「おいおい、二度寝するなミレイユ。」
「んん、眠いよ、少年。」
まったく、本当に少女だな、ミレイユは。
えーと、ブラシブラシ。
椅子に座り船を漕いでいるミレイユの髪をブラシでとかす。
ずっと思ってたけど綺麗な金髪だよな、それに癖もなくストレートだ。
羨ましい限りだ。
ガチャリ
「おはようございます。」
「おや、今日はパンか?」
「うん、今日はちょっとめんどくさかってんな。」
「そうか、まぁそう言う日もあるよな。」
4人で朝食を摂る。
「さて、そしたら冒険者ギルドの修練場に行こうか。」
「はい、行きましょう。」
例の本を持ち冒険者ギルドへと出発する。
冒険者ギルドはまだ朝早いからだろうか、人はまばらだった。
「修練場を借ります。」
「承知いたしました。」
修練場に入る。
「さて、それじゃあ各々やるべき事をやろうか。」
まず久しぶりにステータス画面を開こう。
どれくらい強化されているか楽しみだ。
【ステータス】
名前:カイト
レベル:20
HP:220 / 220
MP:130 / 130
攻撃力:42
防御力:35
素早さ:34
所持品: アイテムポーチ(無限)
シミズオオトカゲのロングソード
スキル: 魔法基礎4属性(火・水・風・土)
うおお、いい感じにレベルが上がってるな。
さて、俺がずっと気になっていた事をやろう。
それは魔法の強化だ。
今覚えている魔法は4属性だがこれを増やしてみたい。
水の魔法から拡張する形で魔法を覚えられないだろうか。
そう、気になっているのは氷の魔法だ。
まずは水の魔法で水を出して…ここからは火の魔法の応用でやってみよう。
火の魔法の反対で手から熱を奪っていくイメージだ。
パキパキ
手に集められた水から温度が抜けていきひんやりとした感覚が手を包む。
できた…
手に氷の塊が生成されている。
早速ステータス画面を確認してみよう。
【ステータス】
名前:カイト
レベル:20
HP:220 / 220
MP:130 / 130
攻撃力:42
防御力:35
素早さ:34
所持品: アイテムポーチ(無限)
シミズオオトカゲのロングソード
スキル: 魔法基礎5属性(火・水・氷・風・土)
よしよし、しっかり氷の魔法が追加されている。
「カイト、そろそろ手合わせ、しよう。」
セラが笑顔で誘ってくる。
ちょうどいい、氷の魔法を試したいところだった。
「いいよ、やろうか。」
置かれている練習用の木でできたロングソードを手に取り
修練場の真ん中で向き合う。
「2人とも頑張れー!」
ミレイユも応援している。
「それでは、始め!」
ノアの合図と同時に飛び込む。
示し合わせたようにセラも飛び込んでいた。
それにしてもなんだか踏み込んだ時の速度が早い気がする。
レベルが上がったからかな?
俺がロングソードを振り下ろすとセラは簡単に盾で受ける。
「こういうのはどうかなっ!」
セラが盾でロングソードを受け止めたままかがみ込む。
飛び出したのは足斬りである。
「やばっ!」
すんでのところで後ろに飛び難を逃れる。
ん?飛びすぎじゃないか?
軽く飛んだつもりだったが数メートルは飛んでいる。
明らかに身体能力が上がっている。
でもこれだと加減に注意しないといけないな。
少し考えているとセラが煽ってくる。
「どうした?もう来ないのか?ならこっちから行かせてもらうぜ!」
セラが突進してくる。
俺は冷静に上へ飛ぶ。
予想通りに高く飛べる。
よし、氷の魔法を試してみよう。
氷の矢をイメージしよう。
矢を5本作り出す。
もちろん刺さったら危ないから矢尻は丸くしておく。
そうだなぁ、名前はアイスアローといったところか。
「アイスアロー!」
ビュッ
俺の詠唱と同時に矢がセラに降り注ぐ。
しかし簡単に盾で弾かれてしまう。
うーん、威力は低いのかな?
なら矢は牽制用かな。
落下の勢いを利用してロングソードを振り下ろす。
横っ飛びでセラは避ける。
お互いに決め手にかける、膠着状態だな。
ここで勝負に出よう。
「力勝負だセラ!」
「待ってました!」
お互いの剣がぶつかり合う。
ステータスが上がっているから勝てると思ったけどセラの力はまさに異常値だ、押され始める。
でもこれでいいんだ。
ロングソードから右手を離す。
左手よ、あと数秒だけ耐えてくれ!
右手に作り出したのは氷の暗器だ。
五寸釘の頭をとったような形状。
イメージしたのは棒手裏剣。
それをセラに突きつける!
「俺の勝ちだな!」
「ムキー!悔しい!次は絶対に勝つからな!」
「2人ともすごいよ!かっこいい!」
「どうにも魔法と剣を同時に処理するのが難しいな。」
「セラの力もとんでもなかったよ。」
「2人とも素晴らしい試合でした。そしてカイトさん、疲れていると思いますが次は私の練習に付き合ってください。」
「ん?いいよ。」
「ありがとうございます、私が練習をお願いしたいのはーーーー」
ノアの口から発せられた練習内容は意外なものだった。