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つまりはこの重さなんだな。

「おい、なんで泥棒なんでしたんだ?」

「へっ、そんなこと言うかよ。」


ふむ、どうやら口を割る気はないらしい。

まあいいや、調べてもらうのは俺じゃなくて冒険者ギルドの仕事だ。

冒険者ギルドの受付に報告をする。


「泥棒を捕まえて来たんですけど。」


受付嬢は少し驚いた表情をした後に重い溜息をついて言った。


「またですか…最近多いんですよね。」

「泥棒が増えてるんですか?」

「ええ、そうなんです、今はまだ道端で盗みを働く者がいるだけですがこのままでは王都の評判が下がり、治安維持にも影響が出てしまいます。」

「取り調べかなにかはしないんですか?」

「もちろん行っていますが誰も動機を話さないんですよ。ですから対症療法になってしまうんですよね。」


なんだかきな臭い話だ。


「何はともあれ捕縛してくださってありがとうございます。あとの事は冒険者ギルドで処理します。」


冒険者ギルドに泥棒を引渡し後にする。


「なんだかやな話だな。」

「そうだな、もしかしたらそのうち大きな事件が起こるかもな。」

「ちょっと!縁起でもないこと言わないでくれよ!」

「ああ、すまん。」


その時ミレイユが目を輝かせながら言う。


「でもきっと少年なら事件が起きてもなんとかしてくれるよね?」

「事件が起きたら動くかもしれないけど、何も起きない方がいいな。」

「そうだな、あたし達にできるのは事件が起きないのを祈るだけだな。」

「そっか、平和な方がいいもんね。」


グー


その時ミレイユのお腹がお昼時を告げる。


「僕、お腹すいちゃった。」

「そうだな、そろそろお昼にしようか。」


王都の広場へと向かう。

何を食べようかな…

あ、あそこにサンドイッチの店が出てる。

誘われるようにその屋台へ向かう。

看板を見るとたまごサンドが名物らしい。


「たまごサンドがください。」

「はい、そちらの2人はどうします?」

「僕もたまごサンドで!」

「あたしはハムとチーズで」

「はいよ!」


サンドイッチを受け取り広場のベンチに座る。


「「「いただきます。」」」


美味しい、別にスーニャを悪く言うつもりはないがやはり王都の屋台だ、レベルが高い。

きっと交易の中心地だから食材も新鮮なんだろう。


「「「ごちそうさまでした。」」」


「おいおい、ミレイユ、口についてるぞ。」


口元についたたまごを拭き取ってやる。


「ん、ありがと。」


それにしてもなんだか王城に入ったり泥棒を捕まえたりで波乱な一日だったな。


帰り道にミレイユが問いかけてくる。


「少年達は帰ったら本を読むの?」

「ああ、ミレイユも東の国のこと、興味あるだろ?」

「うん!東の食べ物、食べてみたい!」

「あたしは剣術の本を読んでとにかく練習だな。」

「そうか、実践稽古をしたい時はいつでも呼んでくれ、相手になるよ。」

「ありがとう。じゃ、あたしの部屋はこっちだから、また後でな。」

「うん、じゃあ夕飯の時な。」


セラと別れ部屋に入る。


「ミレイユ、夕飯は何食べたい?」

「僕、本に書いてあるコケロックのレシピがいい!」

「わかった、作ってあげる。」

「わーい!」

「それじゃあレシピを見たいからとりあえず本を見してくれ。」

「いいよー、はい。」


渡されたレシピ本を見るとそこには見慣れた料理達が描かれていた。

親子丼にチキン南蛮なんかだ。

米を使う親子丼が書かれているのは流石王都と言ったところだ。

さらにページをめくっていくと日本人なら誰しもが好きであろう料理が目に飛び込んでくる。

唐揚げだ。

そうだな、唐揚げにしよう、唐揚げが食べたい。

一度考えてしまったらもう完全に唐揚げの口だ。


「うし、じゃあ唐揚げにするか。」

「唐揚げ〜?いいじゃん!楽しみ!」


しかし唐揚げを作るとなれば油に小麦粉が必要だ。


「俺は街に買い出しに行くけどミレイユはどうする?」

「着いてく〜。」

「わかった。」


二人で街の商店街に繰り出す。

鶏肉はこの間倒した分が残っているはずだ。

部位はムネ肉とモモ肉のどちらにしようか迷ったけどモモ肉に決めた。

今日はジャンキーな気分だ。


商店街で油と小麦粉を購入する。


「あとはキャベツだな。」


当然、揚げ物に千切りキャベツを添えるのは道理だろう。

八百屋に行きキャベツを購入する。


「レモンか…」


唐揚げにレモンをかけるかどうかは人それぞれなんだよなぁ…

日本ではよくかける派とかけない派で争いが起きてたな。

うーん、俺はかけない派なんだけど誰かにかけたかったって言われても面倒だしなぁ。


「よし、買おう。あとレモンください。」

「はいよ。」


レモンを受け取る。

俺は元高校生だからなんとなくレモンはアイテムポーチに入れるのではなく手で持って帰りたい。

このレモンの冷たさ、いいよなぁ。

思わず呟きたくなってしまった。


「つまりはこの重さなんだな。」

「どうしたの少年?」


ミレイユが不思議そうにこちらを見つめる。

途端に気恥ずかしさが全身を包み込む。


「いや、なんでもない。さ、そんなことよりこれで買い物は終わりだ!唐揚げを作るぞー!」


我ながら雑な誤魔化し方である。


「わーい唐揚げだ!僕も料理手伝いたい!」


ミレイユが単純で良かった。

てかそもそもミレイユは俺が言った独り言はわからないか。


「なら一緒に作ろうか。」

「うん!」


仲良く2人で宿に帰った。

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