王都で初めての夜
もぐもぐ
「これが米か!もちもちしてて美味しいな!」
「そうだろう、これが俺とミレイユの故郷の自慢の食べ物だ。」
「このスープも美味しいです。」
「このスープは味噌汁って言ってな、ほぼ毎日食卓に並んでたんだ。具材はもちろん味噌にも種類がたくさんあっていろんな楽しみができるんだ。」
「味噌汁…私この食べ物好きかもです。」
ノアが味噌汁の中の豆腐を箸でつまんで言う。
「ああ、それは豆腐だな、豆を材料にして作られているんだよ。」
「豆がこんな姿に…すごいです。」
「そういえばカイト、さっきの店で買った醤油?ってのは使わないのか?」
「確かに〜、僕も醤油使った料理楽しみにしてたのに〜。」
醤油は確かに使っていないな…何に使おうか?
今ある食べ物は米に卵か、そうだな、明日の朝に目玉焼きを作ってそれにかけよう。
「じゃあ明日の朝に目玉焼き作るからその時に使うよ。」
「目玉!?目玉を食べるのか?」
「いやいや、本当の目玉を使うわけじゃないよ、楽しみにしといて。」
「ああ、カイトの作る料理はいつも美味いからな、今から楽しみだ!」
「もう、セラ、今は夕飯を食べているのに明日の朝食のことを考えているなんて食い意地張りすぎですよ。」
「そうか?すまんすまん。」
なんか全く反省してなさそうに言ってるな。
「こんなに美味しいものを毎日食べていたなんて、カイトさん達が羨ましい限りです。もしかしたらカイトさん達が育った村というのも東の国に属しているのかもしれないですね。」
「東の国か、いつか行ってみるのもいいかもな。」
「その時は僕も連れて行って〜。」
「ああ、一緒に行こう。」
ミレイユの頭を撫でながら言う。
不思議なものだがいつのまにか俺の中でミレイユが大切な存在になっている。
最初は異世界の管理人として接してきてなんと言うか腹立たしい場面も多々あったけど、実際にこの世界に来てからは普通の少女のようだ。
しかもセラとノアの前では妹って設定にしてるし。
「もちろんあたし達も着いていくぜ。」
「カイトさんが現れてからずっと楽しいんです。これからもよろしくお願いします。」
「うん!これからも一緒にいろんな冒険しような!」
「「「「ごちそうさまでした!!!」」」」
「それで明日は何をするんだ?」
「明日か…そうだな、とりあえずミレイユの身分証明書を作りたいけど、そんなに時間がかかるわけでもないだろうし、どうしようか?」
「あの、でしたら王立資料館の見学はいかがでしょうか?」
「王立資料館?何それ?」
「王立資料館はスーニャにあった資料館と同じで、国の資料がたくさんあるところです。さらにいえば王朝の変遷から外国とのやりとりも記録されていると言われています。スーニャ資料館よりも貴重な魔導書もあるらしいです。」
外国とのやりとりか…東の国の情報も手に入るのかな?
それに魔導書か…今使える魔法を強化できるかもしれない。
「いいね、王立資料館、行ってみようか。」
「やったー、ありがとうございます!」
ということで明日の予定はまずミレイユの身分証明書を作って、その後に王立資料館へ行くことに決定した。
「それじゃあもう夜も更けてきたし、あたしとノアは部屋に戻るな。明日の朝、目玉焼き、楽しみにしてるな。」
「すみません、料理も後片付けも任せてしまって、ごちそうさまでした。」
「全然大丈夫だよ、おやすみ。」
「おやすみ〜」
「おやすみなさい。」
さて、これでミレイユと2人きりなわけだがどうしたものか…
とりあえず料理の後片付けをする。
片付けがあらかた終わったところで一つの疑問が頭に浮かんだ。
「なぁミレイユ、お前は一体何歳なんだ?」
「ん〜、年齢はよくわかんない。」
「よくわかんないってどういうことだ?」
「だってずっと白い空間に居たんだもん、その時の時間の感覚がどんなんだったかいまいち覚えてない。」
「そっか…見た目は10歳くらいだから10歳にしとくか?」
「別になんでもいいよ〜。」
「じゃあ10歳でいいか。」
「うん。」
ミレイユは10歳、そういうことにしよう。
10歳に手を出すんじゃないぞ、俺。
「ねぇ少年、やっと王都に着いたね。」
「そうだな。」
「王都でも新しい出会いとかあるといいね。」
「新しい出会いか…俺は今の4人で十分楽しいよ。」
「そうなの?嬉しいこと言ってくれるね少年。」
ふわぁ〜〜〜
大きなあくびが部屋に響いた。
「なんだか疲れちゃった、そろそろ寝ようか、少年。」
ミレイユがベットに寝転がった。
さて俺はどうしようか、床で寝るしかないか?
ぽんぽん
音がした方を見るとミレイユが布団を軽く叩いている。
「おいで、少年。」
「いや、ここは硬派な日本男児として譲れないものがある!」
「意味わかんないこと言ってないでいいから一緒に寝ようよ〜。」
「いいよ、俺は床で寝るよ。」
「床は硬いから腰とか痛めちゃうよ?」
「覚悟の上だ。」
「んも〜そんなに僕と一緒に寝るの、嫌?」
ミレイユが上目遣いをして聞いてくる。
そんな顔されちゃうとなぁ…
よく考えろ俺、ミレイユは妹だ、妹。
妹と同じベッドで寝るだけだ、それ以上でもそれ以下でもない。
「はぁ、わかった、いいよ、一緒に寝よう。」
「やったー!じゃあ早く寝よー!」
電気を消して2人で布団に寝転がる。
女の子と一緒に寝るなんて初めてだ。
少しばかりドキドキする。
「それじゃあおやすみ、少年。」
「ああ、おやすみ、ミレイユ。」