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王都に行ったら米を探そう。

祭りの次の日、俺は本当にレオニスが視察に来るか確認するために孤児院にいた。



ロイに剣術を教えていると、玄関に人の気配がある。


どうやら来客が来たようだ。



院長が応じているようだが気になるのでこっそり角から3人で見ることにする。


「これはこれは、領主様、一体こんなところになんのご用事で?」


「単刀直入に聞こう、貴様孤児院への給付金を横領しているな?」



「な…そんなわけないですよ領主様。」



「既に証拠は出ているんだ、貴様が使っていた店に聞いたら数年前からパタリと買い物をしなくなったと言っていたぞ。」



「それは、その…買う店を変えたんですよ。」



「ならば貴様の家を調べさせてもらうぞ、もし証拠が見つかればわかってるな?」


「…最初はほんの出来心だったんです。でも1度やってしまうと、やめられなくて。」



「はぁ…連れて行け。」


レオニスの後ろにいた護衛が院長を捕縛して連れて行く。



「カイトたち、見えてるぞ。」



やべ、バレてたか。



「話したいことがある、こちらに来てくれ。」



「なんですか?」



レオニスが頭を下げた。


「申し訳なかった。横領に数年間気づけずに子供たちに苦労をさせてしまった。」



「そんな、領主様、顔をあげてください!報告できなかった私たちにも責任はあります!」


「いや、本当にすまなかった。お詫びとは少し違うのかもしれないが、新しい院長を斡旋させてもらった。」


「初めまして…ではないですよね、ヘレナです。」



「え?へレナさんが院長をやるんですか?ギルドの仕事は?」



「今日をもってこの孤児院はスーニャの施設から冒険者ギルドの管轄となりました。ですからこれもギルドの仕事です。だから私が自分から立候補しました。」



「今までの受付嬢の仕事はどうするんですか?」



「大丈夫です。クエストの受注は朝一番が多いので朝だけギルドにいてあとはこちらで仕事します。そもそもギルドの受付嬢も私だけではありませんし。」



まあ、確かにへレナさんならきっとちゃんと仕事をしてくれるだろう、信頼できる。


「そして何より大きな理由が、私が、いや、冒険者ギルド全体がカイトさんたちのことを期待しているんですよ。」



「期待?」



「そうですよ、ふらっとこの街に来たかと思えばいきなりシミズオオトカゲを討伐し、先日のカイトさんの剣術大会優勝、さらにこの孤児院の横領の告発と短期間で素晴らしい功績をあげています。これからもご活躍期待しています。」


これからもって言われてもなぁ…



「でも俺、そろそろ王都に行きたいんですけど。」



「あたしたちも行きたーい!」



「なに、王都か、王都は徒歩ではかなり距離があるからな、馬車を貸しだそう。君達の功績を考えればすぐに許可を出せる。」



「え!?王都に行くんですか、せっかく私がギルドで一番最初に目をつけて…いえ、気にかけていたのに…まあでもカイトさんたちならきっと王都でも活躍するんでしょうね。王都、楽しんできてください。」


「ありがとうございます!お土産期待しててください。」



「では孤児院への給付金は今月から冒険者ギルドを通して再開する。なお今月分は既にへレナに渡してある。」



「見たところとりあえず建物の修繕からですかね。」


孤児院の今後についての話がまとまり、2人が立ち去ろうとした時だった。



「おにいちゃーん!スライムゼリー食べたーい!」


部屋から小さな女の子が出てきた。


「ゼリーな、ちょっと待っててな。」



「スライムゼリー…?なんですかそれ?」


「俺も興味があるな、スライムってのはあのスライムのことか?」


「スライムゼリーっていうのはね、冷たくてプルプルで美味しいんだよ!」



「へー、私も食べたいなー…」


「俺も食べてみたい。」



2人がキラキラした目でこっちを見つめてくる。


そんな目をされたら断れるわけがないじゃないか。



「じゃあ部屋で食べましょうか。」



2人を部屋に案内して、ゼリーを出す。


「わー、ほんとにプルプルしてる!」



「これがあのスライムか…」



「「いただきます。」」



パクリ。



「美味しーい!」




「確かにプルプルで美味いな。」



「しかし、スライムって食べられたんですね。どこで知ったんですか?」



「俺の故郷ではよく知られていました。ちなみにスライムは果物とよく合うんですよ。」


「ではスライムを一般化させるためにこのことを冒険者ギルドに伝えたいのですがよろしいですか?」



「もちろん、構いませんよ。」



「ありがとうございます。ほんとにカイトさんには驚かされてばかりです。」


「ふむ、長居しすぎたようだな、ここいらでお暇させてもらおう。王都に行く時は俺の家に来てくれ、馬車を貸し出す。」



「それじゃあ失礼しましたー、って今日から私が院長なんだった。」



「じゃあまた今度会おう。へレナが院長だから安心だとは思うが、同じことを繰り返さないためにも孤児院には定期的に足を運ぶことにしよう。」



レオニスは去っていった。



「じゃあ私はとりあえず書類の整理から始めますね。」



俺達は少し休憩することにした。


やはり領主と喋るというのはどうしても緊張してしまう。


セラが話しかけてきた。


「なあ、いつ王都に向かうつもりだ?」



「うーん、出来れば早く行きたい。」


「じゃあ3日後くらいに行くか?」


「え、3日後?俺は大丈夫だけど、2人は大丈夫なのか?」



「孤児院のことは解決できたし、新しい院長は、どうやら優秀っぽいしな。」


「じゃあ3日後、領主の家に行って馬車を借りようか。それまでに鍛冶屋で武器をもらって、メルティンから米の情報を得よう。」


「ノアもそれでいいよな?」



「私も特にしなきゃいけないこともないので大丈夫です。」





そんなこんなで3日後にいきなり王都に向かうことになってしまった。


少しロイの剣術の練習に付き合ってから宿に戻った。



というか王都に行くなら宿のチェックアウトもしなきゃいけないな。


王都に行ったらまずは米を探そう。



異世界に来てから一度も米を食べていないからとにかく米が食べたい。



王都に行ったらまた新しい出会いが待っているのだろう。ワクワクが止まらないな。




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