賭けの勝者はまさかのカイト!?
「なんだ?」
「なんだ?」
突然のロッソの大声に広場の時間が止まったようになる。
お構い無しにロッソは続ける。
「おい、メルティン!その財布はなんの革作られてるんだ?」
「そ、そりゃあ大層高級な革だよ!」
「鑑定士、あの革を見てくれ、きっとその革は俺がよーく知っている魔物の物だ!」
どこからともなく鑑定士が現れ、メルティンが差し出した革の財布をルーペで覗き込む。
「ふむ、これは紛うことなきシミズオオトカゲの革で作られています。」
会場がどよめく。と、同時にメルティンがバツの悪そうな顔をする。
シミズオオトカゲだって?ということはつまり…
領主レオニスも同じ反応をする。
「シミズオオトカゲだと?先程聞いた名のようだが?」
「そう!シミズオオトカゲです!先程言ったようにシミズオオトカゲは我が冒険者ギルドが誇る冒険者達が討伐しました!カイト、セラ、ノア!こっちに来てくれ!」
「なに?カイトだと?」
急に呼ばれてびっくりしたけど何やらチャンスっぽいのでロッソ達の元へ行く。
「ロイ、ここで少しの間待っててくれ。」
ロイにそう伝えてから行く。
ロッソが俺たちに質問をする。
「この財布の素材のシミズオオトカゲはお前達のパーティーが倒した、そうだな。」
「前にエルマの森に行った時に遭遇して倒しました。」
「そう、シミズオオトカゲは冒険者ギルドが倒して商人ギルドへ卸した魔物…つまり!この2つの品物はどちらも冒険者ギルドの物と言っていいのではないでしょうか!」
めちゃくちゃな理論だが確かに筋は通ってる。
しかしメルティンが反論する。
「何を言っているんだ!商人ギルドは物を卸して貰いそれを市場に流して回すのが仕事だ!冒険者ギルドから卸された素材を使って何が悪いんというんだ!」
「「領主様!判断をお願いします!」」
「うーむ、これは難しい…」
ここは1つ俺のワガママを聞いてもらおうかな。
「じゃあ、2つのギルドの贈り物の素材提供主として、俺のお願いを聞いてもらっていいですか?」
「うん?結果的にこんな素晴らしい品を2つも作ってくれたんだろう?私に出来ることであれば何でもしよう。」
「じゃあ、街の西側の孤児院がありますよね、あそこへの給付金の使い道を調べることと実際に訪問して見てきてください。俺から言えることはそれだけです。」
「それだけでいいのか?なら明日にでも足を運ぶが。」
ノアとセラが口を開く。
「あの、どうかよろしくお願い致します!」
「あたしからも頼みます!」
「?ああ、なんのことかよく分からないが善処しよう。」
と、そこで2人のギルマスが割り込んでくる。
「「それで、今年の勝者はどちらですか?」」
「ふむ、今年の勝者は…カイト、セラ、ノアの三人だな。」
え、俺たち?
「「ぐぬぬ、確かにカイトたちがいたから作れた物だ…納得するしかないのか…」」
「ということで今年1番私を喜ばせた品物はカイトたちのパーティーからの贈り物だ!」
「「「「わーーーーー!」」」」
歓声が巻き起こった。
「「「「カイト!セラ!ノア!」」」」
何はともあれこれで孤児院の環境は確実に良くなっていくだろう。
ひとまず大仕事成功だ!
せっかくだからこんなことを言ってみようか。
「なあ、ギルマス2人とも、賭けは俺たちの勝ちってことでひとつずつお願いを聞いてもらっていいか?」
「「なんだ?」」
「ロッソは冒険者ギルドから剣を扱えるものを1人、暇な時でいいからロイ、あの子の剣の練習を見てあげて欲しい。」
ロイを指して言う。
「わかった、剣を使えるやつだな、手配しておく。」
「それからメルティンは王都にある食材の情報をくれ、商人ギルドのギルマスなら情報は入ってくるだろ?」
「情報か、それなら商人ギルドのギルドマスターをやらせてもらってるんだ、もちろん持ってる。」
「そうか、ありがとう。」
これで王都に米があるかわかるし、俺が王都に向かってもロイは剣術の練習もできる。
孤児院の件もカタがつきそうだし、ようやく王都で米を探せる。
「皆から送られたもの、全て素晴らしい品々だった。今年の誕生日は今までで最高のものとなった、皆ありがとう!」
こうしてレオニスへの贈り物は、終わった。
あと残された物は打ち上げ花火だけとなった。
広場の真ん中で花火が打ち上がるのを待つこととする。
「ありがとうな、カイト。あたしたちの問題に付き合ってもらっちゃって。」
「私からもお礼を言わせてください。ありがとうございます。」
「何言ってるんだよ、パーティーメンバーの悩みを解決するのは当たり前のことだろ?」
ガシッ
「「本当にありがとう!」」
2人が抱きついてきた。
いや、嬉しいけどやっぱり距離近いって!!
ヒュー…
ドン!!!
その時夜空に美しい花火が打ち上がった。
それはまるで俺達の頑張りを祝福しているようだった。
「綺麗…こんな近くで見たの初めて。」
「これも全部カイトさんのおかげです。」
「わー!すごーい!キラキラしてるー!」
街のみんなも花火に夢中だ。
きっと孤児院の子たちもこの花火を見ていることだろう。
祭りの終わりを飾る壮麗な花火を4人で見上げた。