スーニャ領主生誕祭
それから数日後のことだった。
いよいよ領主の誕生日がやってきた。
あちこちに装飾があしらわれお祭りのようになっている。
街も大きく賑わい、広場ではいつもより多く屋台が出店していて、笑顔が輝いている。
「カイト!うちの店見てってくれよ!今ならオマケしとくよ!」
街で少し有名になってきたからあちこちから声がかけられる。
「また今度ゆっくりみるよ!」
いや〜上級冒険者ってのはいいもんだね〜
領主の登場までまだ時間があるので3人でこの祭りを楽しむことにした、かったのだが2人はロイを連れて現れた。
「あれ、ロイも一緒なのか?」
「どうしてもカイトさんに会いたいと言うので、連れてきちゃいました。」
まあ人が多い方が退屈はしないか。
ということなのでロイを含めた4人で街を歩く。
途中ロイが焼き鳥、いや、焼きコケロックとでもいうのかな?の屋台に目を奪われていたので仕方なく買ってあげることにした。
「はい、暑いから気をつけて食べなね」
「ありがとうおにいちゃん!」
なんか無性に頭を撫でたくなった。
ワシワシ
撫でてみた。
何かが満たされる気がした。
俺に弟がいたらこんな感じだったのだろうか。
そんなことを考えていた時、ファンファーレがなった。
ついに領主の登場だ。
現れた領主はタキシードのような装いに身を包んだ男の人だった。
大きな歓声が上がった。
「「「領主さまーー!!」」」
へぇ、どうやらこの街の領主は相当な人気とカリスマ性を持っているらしい、広場が大盛り上がりだ。
スッ…
領主が右手をあげた。
ピタッ
歓声が一瞬で止んだ。
「えー、いつもこの街の発展に尽力してくれて、そして私の誕生日を祝ってくれてありがとう。今日はぜひ、この祭りを楽しんでくれ!」
「領主様初めてみたなー」
「え?初めてなの?」
「うん、というか祭りに参加するのも初めてだ。」
「前は孤児院で祭りの最後に打ち上げられる花火を見ていただけでした。」
「そうか、じゃあ今日の祭りはめいっぱい楽しもうな!」
何か面白いものはないかと探していると、剣術大会が開かれていた。
異世界での実力を試せると思ったので参加することにする。
「セラも参加するか?」
「んにゃ、あたしが使うのは片手剣だからな、遠慮しとくわ。」
「そうか、じゃあノアとロイと応援しててくれな。」
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カン!カン!カン!
「勝負あり!」
優勝してしまった。
本当に元の世界で剣道だけは真面目にやっててよかった。
「それでは優勝者のカイトさん、壇上へお上がりください、領主様からのメダル贈呈です。」
え?今領主って言っていたか?
とりあえず言われた通りに壇上へ上がる。
「まさかクーガを倒して優勝するとは、君は一体何者だい?」
「俺はカイト、少し前にこの街に来ました。」
「そうか、スーニャヘようこそ。私は領主のレオニスだ、今後お見知り置きを。これがメダルだ、優勝おめでとう。」
そういうとレオニスは俺の首にメダルをかけてくれた。
「ありがとうございます。」
「そろそろお楽しみのギルドからの品物がある。ぜひ見てくれたまえ。」
「俺も実は今日それを楽しみにしてきたんですよ。」
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「みなさーーん!ここいらでギルドからの領主様へ贈り物を渡す時間で-す!!」
ぞろぞろと人が広場の中央へ集まってくる。
「今年の贈り物は両ギルド共に良い品物だと聞いている。非常に楽しみだ。まずは冒険者ギルドの方から見せてくれ。」
「はい、こちらが冒険者ギルドからの贈り物でございます。」
俺達が作ったネックレスが運ばれてくる。
「ほう、これはネックレスか、コケジュエルの宝石に、中央の宝石はなんだこれ?」
「こちらはシミズオオトカゲの宝玉でございます。我が冒険者ギルドが誇る冒険者達が討伐し素材を手に入れてくれました。」
そうギルマスが伝えた。
冒険者ギルドが誇るって、なんだか少し照れるな。
「なるほど、これは非常に良い品だな、では次に商人ギルドの品物を頼む。」
商人ギルドのギルドマスターが前に出る。
商人ギルドのギルマスはいかにも交渉上手そうな男で、表情には自身が満ちている。
「こちらが商人ギルドからの贈り物です。」
そういうと商人ギルドのギルマスは革財布を出した。
おそらくあれは蛇革か何かかな?
「ほう、これは革財布か、良い手触りだな。」
「それでは領主様、今年選んだ品物はどちらですか!?」
「うーむ、悩むところだが、今年は商人ギルドの革財布かな。何よりそろそろ私も財布を変えたかったところだ。大事に使わせてもらおう。」
「よっし!俺の勝ちだな!ロッソ、高い酒を頼むぞ!」
なんてこった…俺達のネックレスが選ばれなかった…いやまあでも剣術大会で知ってもらえたからギリギリセーフか?
とその時だった。
「ちょっと待ったぁぁあ!!!」
冒険者ギルドのギルマス、いや、ロッソが大声を張り上げた。
そしてこのロッソの発言が波乱を巻き起こしていくのだった。