食への好奇心
朝起きて、今日することを考える。
孤児院の情報が欲しい。
とりあえずスーニャ資料館に向かうか。
朝食を食べに一階へ降りる。
今日の食事もパンだ。
別にパンが嫌いという訳ではないが、やはり日本人だ、米が食べたい。
欲を言えばうどんや蕎麦なんかの麺類もいただきたい。
「この街には米はないんですか?」
「コメ?聞いたことない食べ物だな、それはどんなもんなんだい?」
「白くてどんなおかずにも合う魔性の食べ物です。俺の故郷では毎日食べてました。」
「すまねぇがわからねぇな。王都に行けば見つかるかもしれんぞ。あそこは各地の品が集まるからな。」
王都か…孤児院のいざこざが終わったら探しに行ってもいいかもしれない。
異世界でやりたいことに米探しを追加しておこう。
朝食を済ませて、スーニャ資料館へと向かう。
相変わらず中が広い建物だ。
えーと、スーニャの年度別決算書はどこかなっと。
あったあった。
今日は本を借りずに資料館の中で読むことにする。
孤児院への給付金の欄を見る。
うん、給付金の額はここ数年変化していない。
これで院長が横領している証拠が見つかった。
次に孤児院の紹介本を読む。
この本の中の孤児院は、外装、内装共に綺麗だった。
つまりは元々この孤児院はきちんと整備されてたってことだ。
よしよし、これだけあれば院長を糾弾できそうだ。
あとは、米だな、米について書かれている本を探そう。
探してみるも米についての本はなかった、いやそもそも食事についての本が少なかった。
確かに思い返せば焼肉やスープ、オムレツなんかしか見ていない。
もしかしたらこの街には焼くと煮るしか調理法が浸透していないのかもしれない。
なら、米を見つけてそれを使ったレストランなんて物を作れば大儲けできるかもしれない。
仮に米が見つからなくても、 この世界にない料理を出せば人気は出るだろうし。
まぁまず建物がないんだけどね。
情報を集め終わったことだし、スーニャ資料館を出る。
昼食を買おう。
今日はパンな気分だ。
「パンを20人分、ください。」
「20人分も?あんた一人で食べるのかい?」
「何も聞かず20人分ください。」
「あいよ。」
店主も何かを察してくれた。
わかってる、こんなことをしてもなんにもならないって。
でもやらない善よりやる偽善だ。
ただ、これで銀貨がほとんど無くなってしまった。
まあ明日渡されるシミズオオトカゲの報酬金と素材を売ればなんとかなるかな。
最悪この前のコケジュエルの宝石を売ればいいや。
孤児院に着いた。
「おや、カイトさん。今日はどうされたんですか?」
「そろそろ昼食ですよね。パンを届けに来ました。」
「これはこれは、ありがとうございます。皆も喜びます。」
と、その時セラとノアも現れた。
「お!カイトじゃん!なんか用か?」
「そろそろ昼食だろ、パンを届けに来た。」
「すみません、お金は払います。」
「いや、いいんだ。俺が好きでやってる事だから。」
2人を無理やり納得させ食事をする。
やっぱり子供たちの笑顔を見るのはいいものだ。
証拠も見つかったし、あとは俺たちの知名度をあげるだけだ。
そう2人に伝える。
そしたらやっぱりセラが今すぐにでもクエストに行きたいという。
こういうタイプの人は中々自分の意思を曲げないのでこちらが折れることにする。
「簡単なクエストなら、いいよ。」
「やったー!じゃあ早くギルド行くぞー!」
ギルドで簡単そうなクエストを探す。
コケロックでもいいけど他の魔物がいいな。
スライムの討伐、これにしよう。
というかこの世界にスライムっていたんだな。
街を出てスライムを探す。
いた。
緑色でぽよぽよとはねている。
大きさはバランスボールくらいといったところか。
「ウィンドカッター」
スパッ
真っ二つに切れた。
元の世界の常識通りスライムは雑魚敵のようだ。
使い道があるか分からないけど一応スライムをアイテムポーチにしまっておく。
他のスライムを探す。
おや、今度のスライムは赤色をしている。
沢山色の種類があるのかな?
それから次々とスライムを倒していく。
不思議なことにスライムには緑色、赤色、青色、黄色がいた。
最後の1匹になった。
そのスライムは黄色だった。
ロングソードで斬ったら飛び散って顔についた。
手で拭ってみるとそのスライムだったものはなんかぷるぷるしてる。
この感じどこかで見たことがあるな…
あ、ゼリーだ。
毒だったらやばいなと思いながらも好奇心が抑えきれない。
パクッ
食べてみた。
ほのかな酸味が口に広がる。
レモン味だこれ。
2人が困惑した顔でこっちを見てくる。
「2人も食べる?」
「いやいや、スライムを食べるとか正気じゃないっしょ。」
「毒があったらどうするんですか!?」
「ん、美味しい、多分食べれる。」
そういい黄色のスライムを出す。
「2人も食べなよ、美味しいよ?」
最初は拒否していたが2人も好奇心には勝てなかったらしい。
恐る恐る口に運ぶ。
パクッ
「「お、美味しい。」」
2人が口を揃えて言った。
「でしょ?」
「スライムが食べれるなんて知らなかった!カイトはどこで知ったんだ?」
ここで何となく食べれそうだと思ったなんて言ったら怒られるだろうな。
「俺の故郷ではデザートとしてたまに食べてた。」
「カイトの故郷は美味しいものが沢山あったのか?」
「そうだね、沢山あった。孤児院を救ったら米っていう食べ物を探しに王都に行こうと思うんだ。」
「コメ?美味いのかそれ?」
「うん、美味しいよ、とっても。」
「美味いのか!ならあたしたちもついて行きたい!何よりあたしたちは仲間だからな!」
「私もコメに興味あります。あと、実物の王都の建築物も見てみたいです。」
なんだか異世界に来てまだ数日なのに元の世界がすごく懐かしく思える。
でも寂しくはないかな。
仲間たちがいる。
他愛もない話をしながら3人で街に戻った。
なんだか食べ物のことしか書いてないですね。
お腹がすいてる時に書いたからでしょうか?