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焦ってもいいことなんかないよ

汚いな。


まずはそう感じた。



外面だけでなく、部屋の中もボロボロだ。



個人的な院長への評価をさらに下げておく。



ふくよかな男性が話しかけてきた。


「おや、2人とも、お帰りなさい。そちらの方は?」


「院長、ただいま。彼はカイト、私たちとパーティを組むことになった人よ。」


「そうですか、ぜひ仲良くしてあげてください。それでカイトさんは何の用でこんなところに?」


「2人から、孤児院の子達が薄い毛布一枚で寝ていると聞きまして。」


「そうですね、だんだんと領主様からの給付金が減っていて、苦労しています。」


こいつ…ありもしないことをペラペラと…


院長が子供たちを集める。


「皆さん、この孤児院から冒険者になったセラさんに、ノアさん、それからパーティメンバーのカイトさんが毛布を作ってきてくれました。お礼を言いましょう。」


「「「ありがとうございます!!!」」」



人に感謝されるのはなんかちょっとこそばゆい気持ちになるな。



それから寝室に毛布を交換しに行く。



かわいそうに、こんなに汚い毛布で寝ていたなんて。



交換した毛布はアイテムポーチへしまっておく。




大部屋に戻ると昼食の準備をしていた。


だがそこに並べられていたのは野菜の入ったスープのみだった。



「いつもこれだけですか?」


「最近はセラさんとノアさんが魔物を倒して肉を獲ってきてくれるのですが今日は無いようですし。」


「肉は買えなくてもパンなんかは買えないんですか?」



「そうですね。お金がなくて、野菜は孤児院の裏にある畑で育てていますが、種や肥料を買う費用でお金が無くなってしまいます。」




この外道が、今すぐ顔面を殴ってやりたいが我慢する。


「実は今日リーフディアの肉を持ってきてまして、それをステーキにして出しましょう。」


「ありがとうございます。では準備しましょう。ぜひカイトさんも一緒に食べましょう。」



リーフディアの肉を出す。



キッチンを借りて3人で焼くことにする。



ジュー


これは美味そうだ。


全員分焼き終わったので、食事にする。



「「「いただきます!」」」



みんなが笑顔で美味しそうに食べている。



そういえばこの子達の笑顔を見るのは初めてだ。




子供たちが次々に感謝を伝えてくる。



乗りかかった船だ、この現状を何とかするしかない、そう感じた。



昼食も終わったところであまり長居しても悪いのでお暇する事にした。



一応院長に失礼しますと言っておく。


孤児院を出たが何故かセラとノアが着いてくる。

なぜ?


「なんで着いてくんの?」


「…」


無言とか怖いんですけど…


しばらく歩いたところでもう1度聞いてみる。



「どうしたの?」



「今すぐ領主様の所へ行きましょう。もう我慢できません。」



「あんな屈託のない笑顔見せられちまったら守りたくなっちまうだろ。」


だから着いてきたのか。


だけどまだ時期尚早ってやつかな。


「いや、まだ領主の所へ報告には行かない方がいいだろう。」


「何故ですか?」



「今行っても俺たちの話を信じてもらえるわけが無い。行くならまずは領主に知られること、最低でも冒険者ギルドで有名になってからじゃないと。」



2人は納得いかないようだったけど理解を示してくれた。



「じゃあ有名になるために今からクエストに行こう!」



「ダメですよセラ、もう午後です。今からクエストを受けたら今日中に帰れなくなってしまいます。」



「でもあたしいてもたってもいられないよ。」



ここはひとつ、


「じゃあ今からギルドの修練場に行って訓練でもするか?」


「それだ!」


「それなら夜には帰れそうですね。賛成です。」


「じゃああたしたちは装備を取ってくるから先に行っててくれ!」



ということでギルドに行き3人で訓練を始めることになった。



まあ俺も魔法の練習をしたかったしちょうどいいかな。



先に着いたから魔法の練習をしよう。



レベルが上がってMPも上がっているからきっと前よりも強く魔法を出せるだろう。



まずは風から練習しようか。


修練場の人形を用意する。



風をどう攻撃に使おうか?


やっぱりここはシンプルに風で対象物を切り裂くイメージにしよう。


名前は…そうだな、「ウィンドカッター」とでもするか。


魔力を掌から出すイメージでやってみる。



「ウィンドカッター!」


手から風が吹き出し人形を真っ二つにする。



炎と水は名前はつけないことにする。


名前をつけたらその名前に魔法のイメージが引っ張られてしまいそうな気がするから。



と、その時2人が入ってきた。


「やってるなー!早速だがあたしと手合わせ願えるかい?」


快く引き受ける。



「はぁ!!」



セラが片手剣を振り上げる。


避けてもいいが力勝負をしてみたくなった。


鉄と鉄がぶつかり合い火花を散らす。


勝てるかと思ったがジリジリと押され始める。


どんな腕力だよ。



耐えきれずにバックステップを踏む。


「力ならあたしの勝ちだな!」


勝ち誇ったようにセラが言う。


負けっぱなしは悔しいので少々本気を出すことにする。




風魔法を打ち出す。


ウィンドカッターは危ないから突風をぶつけるイメージにする。


セラが必死に盾で受け止めている。



「うらぁぁぁ!」


何とセラが風魔法をはじき飛ばす。



素直に凄いと思うが体勢が悪い。



盾も風魔法を弾くために振り上げている。



隙だらけである。



生まれた隙を突いてセラの喉元にロングソードを突きつける。



「今度は俺の勝ちだな。」



「ムキー!悔しいー!」



と、そこでノアが言う。


「あの!私の防御魔法の練習をさせてください!」


「じゃあ防御魔法の複数同時展開の練習をするか。」


セラと協力し2つの方向から同時にノアに向け攻撃を繰り出す。



パリィン!


2つの攻撃がノアの目の前で止まる。


大成功だ。


「これで2人を同時に守れます!でも、魔力の消費が激しいですね。」



「それはこれからも練習しよう。」


「はい!」



俺とノアのMPが切れたところで訓練はお開きになった。


「そうだ、明日は休みにしよう。シミズオオトカゲの解体が終わるのは明後日だそうだし、休むのも冒険者の仕事だ。」



そう言って2人と別れる。



明日は孤児院の一人で孤児院の情報を集めよう。



明日の計画を考えながら宿に帰った。















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