なんで俺が異世界に!?
「はぁ…はぁ…」
冴えない高校2年生カイトは必死に自転車のペダルを漕いでいた。
今日も今日とて遅刻しそうなのである。
「ギリギリ間に合うか…?」
カイトは付けている腕時計を見てそう言う。
学校はもうすぐそこだ。
交差点を突き抜けようとする。
プァァァァァァ!!!
凄まじい音が鳴り響く。
横を見ると今まさにトラックがカイトに衝突するところだった。
「え、」
自分が跳ね飛ばされる感覚を味わいながらカイトは思った、
「え、俺死ぬの?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
気づいたら俺は何も無い白い空間にいた。
「あれ?俺は確かトラックに轢かれて…」
今日の朝起こったことを思い出す。
確実にトラックに轢かれ、跳ね飛ばされた記憶がある。
しかし自分の体を見ると傷一つ無い。
「怪我は無いし、そもそもここはどこなんだ?」
辺りを見回すもただ白い空間が広がっているのみである。
思えば感覚も変な気がする。
地面がないようなフワフワした不思議な感覚。
「これが死後の世界ってやつか?」
とりあえず出口を探そう。
歩けば出口が見つかるかもしれない。
どうやらこの空間は時間の流れも異質なようだ、俺は今自分が5分歩いたのか、はたまた1時間歩いたのかも分からなくなってしまった。
しばらく歩いていると暖かく光る何かがあった。
出口だ…
そう俺は直感した。
光に向かって駆け出す。
しかしその希望はすぐさま打ち砕かれることとなった。
なんとその光が話しかけてきたのだ。
「やあ。目覚めたかい?」
「光が喋った!?」
「覚えているかい?君は朝トラックに轢かれたんだ。本当はそのまま死ぬ予定だったんだけど僕が気まぐれでここに連れてきた。」
「俺が…死んだ…?」
当然俺は困惑する。
ならば今ここにいる自分はなんだと言うのだ。
その疑問を光にぶつける。
光は答える。
「死ぬところだったんだけど連れて来たって言ってるでしょ。今から君には選択肢をあげよう。このまま死を受け入れて来世に行くか、僕の管理する世界、君からすれば"異世界"とでも言うのかな、そこに行ってもらう。あ、ちなみに君の来世はバッタだよ(笑)」
小馬鹿にしたように光、いや、管理人が言う。
「異世界かバッタ…?」
悩むところだ。
バッタはもちろん嫌だが、異世界がどんな所か全く分からない。
「異世界はどんな所なんだ?」
管理人が答える。
「まあ君たちの世界のゲームや小説なんかでよくある"テンプレ通り"の異世界さ。」
「ド〇クエみたいな?」
「そうだね、そんな感じ。」
もしかしたらすごく強い能力なんかをもらって異世界で無双出来るかもしれない…
そんな邪な考えが俺の中で浮かんだ。
「じゃあ異世界で」
「おけ、特別に一つだけ君がそっちの世界で持っていたものを異世界に送るよ、何がいい?」
何を貰うべきなんだろう?
異世界でも使えそうなもの…
スマホか?いや、異世界にWiFiなんてものはないだろう。
ならば中学生から続けている剣道の防具と竹刀か?いや、異世界ならいくらでも武器は手に入るはずだ。
悩み抜いた俺は決断する。
選んだのは金だ。
俺には今まで貯金してきたお年玉やバイト代がある。
大きな金額ではないが、異世界でも使えそうなものといえばそれくらいなのであった。
「おけ、異世界の通過は銀貨だから、両替しとくね。」
そういうと同時に俺を明るく照らしていた光が眩く輝き出す。
「じゃ、今から異世界生活スタートだ。」
そう管理人が言ったと同時に俺は意識を手放した。