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三話 途切れた道

 父親が処刑された。これを知った時カルマは涙を流さなかった。涙を見せてはいけない。という父の言葉は幼かった子供の心に深く刻まれた。自分は薄情な人間かもしれない。ただ力をつけて貴族に返り咲いた方が父の無念を晴らせると思った。貴族でなければいけない。力がなければ意味がない。その言葉がカルマの心を縛り付けていた。


 今までは強くなれたのかわからなかった。しかし師匠レイラに成長を認められ、少し前に進めている気がした。カルマは順調にハンターランクをIRON、SILVERと上げていった。15歳でSILVER試験に合格。これは史上最年少での合格。世間では新星と噂されていた。稼いだお金で家を買おうとしたが、レイラの買った家に半強制的に住んでいた。


ある日の夕食を食べている最中


「なぁ。MASTER試験受けねぇの?」

「なんだよ急に。アタシは嫌だね。そこまで上がると国の言うこと聞かなきゃいけないし。このぐらいがちょうどいいんだよ。」

「もったいねぇな。それによ。いつまでも俺の師匠していいのか?」

「なんで?もうアタシから教わることなんてないってのか?はぁやだやだ。いっちょ前なこと言っちゃって。」

「結婚とかしねぇの?」

「アタシが?無理無理。こんなガサツで男勝りの女もらってくれる人なんていないだろ。」

「確かにそうだな!無理無理・・・。やべ。」


尋常ではない殺気がカルマを包み込んでいた。今すぐにでもナイフをこちらに投げてきそうな雰囲気。


「嘘嘘!・・・どんな奴ならいいんだ?」

「え~?アタシの背中を任せられるやつかな・・・。」

「そんな人この国にいるのか。」

「だからアタシはいいんだよ。それに・・・。」


いつものニコニコした笑顔とは異なり、何かを考えているような神妙な表情。最近のレイラはこういう表情をすることが多くなっている気がする。


「アタシはそういうことしちゃダメな人間だから。」

「ほら!さっさと飯を食って寝る!」


レイラはどこで生まれたとか。兄弟はいるのか。とか自分のことを話してくれない。話す内容もカルマのこと。修行のことばかりだ。


「そうだ。明日からは一人で修行しな。アタシは二カ月ぐらい家を空けるから。」

「あぁ。わかった。」


レイラは時々一カ月以上どこかへ出かけることがある。どこに行くとか教えてくれないし、そのうち帰ってくるのでカルマはあまり気にしていなかった。


カルマはGOLD試験に挑むため、ひたすら任務をこなしていった。任務に行っては修行。任務がない日は修行。ひたすら身体を動かし、強くなるために努力した。どうやったらチェインってできるんだろう。色々試してみたが、当てがなさ過ぎてその修行はやめた。


 二か月が経った頃。そろそろレイラが戻ってくるな。と思い家に帰ると一枚の手紙が置いてあった。


ー明日の夕方。山の山頂で待つ。レイラ。ー


カルマは今までにない出来事に不思議に思った。しかし、レイラはたまによくわからないいたずらをする。掲示板に貼ってある依頼書をすべて取ってこいと言い、取ってきたらすべてカルマでやる羽目になったり。地図を渡され、目的地に着くやいなや。お尋ね者たちの強制捕獲任務が発生したり。今回もそんなことだろうと思いながらカルマは眠りについた。


 次の日、山の頂上につくと座っているレイラの後ろ姿が見えた。町全体が見渡せるレイラの思い出の場所。カルマは悲しい過去があったこの場所もレイラのおかげで好きになり始めていた。レイラの背中に向かって声をかける。落ちてくる日が二人の影を大きく伸ばす。


「今回はなに?まためんどくさいモンスターの討伐でもするの?」

「カルマ。あんたはよくアタシのしごきについてきたね。すごいよ。」

「なんだよ。あらたまって。おれはまだまだ強くならないといけないんだ。チェインもまだできないし。」

「・・・。」


レイラはカルマの方を向かない。ただ遠くを寂しそうに見つめる。


「カルマ。今をもってあんたはアタシの弟子を卒業とする。」


えっ。と声を漏らす。瞳が揺れ、表情が強張る。


「おいおい。なんだよ急に。冗談はやめろよ。おれはまだ勝ててないし、教えてもらいたいこともたくさんあるんだ。」

「アタシの正体を聞いてもそれ言える?」

「どういうこと?」

「アタシはね。他国の間者だよ。カルマと出会うずっと前から。他国に情報を流してたの。」


 カルマの頭の中は真っ白になった。間者?言っている意味が理解できない。いや。理解したくなかった。

 

「アタシの家族はみんな殺されたよ。この国の人たちのせいで。復讐しにきたの。」

「本当なのか。他国の間者って。」


 レイラはゆっくりと立ち上がり、剣を抜いた。ニカっと笑うあのレイラはいない。冷たい視線をカルマに刺す。カルマはゴクッと生唾を呑み、剣に触れた。


 生ぬるい風がカルマの汗を冷やす。カルマがグッと剣を握った時、レイラが疾風の如く襲い掛かる。いつもの修行よりもはるかに重く殺意のこもった連撃。カルマは防ぐので精一杯。


「全部嘘だったってことかよ!」


 声を上げ、剣で薙ぎ払う。うぉぉぉ。と声を上げ、負けじと剣を振るう。鈍い金属音が濃い橙色の空へ響き渡る。レイラの赤い瞳が獣のようにギラっと光る。


「猛り狂え。レオゼビオナ」


 大気が熱を帯びる。それがレイラの集まっていく。レイラのチェインが発動した。峰から飛び出る獣の牙のような刃が夕日で真っ赤に染められる。

ビュッと目に追えないほどの速度で一気に距離を詰める。大きく横に薙ぎ払う。カルマは後ろに飛び間一髪交わす。


「これはかなりやばいな。」


 木はなぎ倒され、焦げ臭い匂いが鼻をつく。やがてじりじりと崖に追い詰められる。レイラが一気によりを詰める。やばい。と思い咄嗟に剣で受け止めようとした。斬。カルマの剣は綺麗に半分に折られた。今までずっと一緒にいた人に裏切られた。その悔しさ。そして自分の弱さが心に深く刻まれた。

ドン!とレイラはカルマの腹を蹴り上げる。ぐっと呻き、身体が空中を舞う。カルマは崖から力なく落ちていった。


 ー畜生・・・。畜生・・・。畜生・・・。ー


 こちらをただ見下ろすレイラ。そして何か口を動かした。カルマは遠くなっていく彼女を悲しく、そして寂しく見つめていた。



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