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「ふぅ~……」

 夕刻。

 ラナリアは、一人で使うには些か大きな湯船に肩まで浸かっていた。

 普段の風呂の時間よりは少し早く、風呂場の窓からは夕焼けの橙色がまだ見えている。

「……なんか、いつもよりもお湯がやわらかいような」

 そこまで言ったところで、今日だけは自分よりも前に別の使用者がいたことを思い出して、頬を赤らめる。

「そうだったわ……。今日は旦那様も使ったのよね……」

 いつもは面倒なのか、時間の無駄だと思っているのか、風呂場を使わずに魔法で身体を綺麗にしてしまう彼は、雨に濡れた今日ばかりは湯に浸かったらしい。

 そういえば、風呂場に足を踏み入れた時も、いつものような冷たさを感じなかった。それもやはり、彼が先程までここにいたということで――

「…………」

 ラナリアは恥ずかしさのあまり、湯にぶくぶくと口元まで沈んでから、「これも旦那様が使った後のもの!!」と、ザバッと顔を上げた。

 それから今度は膝を抱えて、口をへの字に曲げた。

「なーんて……、旦那様の方は気にも留めてないんだろうなぁ……」

 自分一人盛り上がっているという現実を思い出し、はぁと溜息をつく。

 ラナリアは彼のことが好きだ。

 命の恩人である、というきっかけはあったが、この家に転がり込んでからの一年間で、一見素っ気ない中に見える些細な優しさに気付いてから、もう気持ちを止められなくなった。

「そろそろ、一年、か……」

 あの日もこんな少し肌寒い、夕焼けの綺麗な日だったとラナリアは目を閉じた。

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