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この壊れて、それでも尊き世界で−Errifate 002:Malvane Has Distorted−  作者: 仙台赤べこ
第一章【DARK SOULSな『現実』へようこそっ】
9/36

09.なんか出られた[おい! ここはラスダンか!?]

モブ敵の能力数値はさすがに面倒くさかったので書きませんでした。『書かれている』と想定して読んでください!



――――ザンッ!!



[リンッ――詳細判明、【戦技】〈風断突進〉を開示します]



 二メートルを超えるような体で、黒煙を纏い大盾を構えた鎧騎士が突如として眼前へ現れた。

 そいつが体を『光らせ』、片方の手に持つデカい長剣を振り降ろしてくる。私は片腕を牢の格子から出したまま、ただ唖然と見ていることしかできなかった


「っ――!!」



――――ガァッン!!



 だが、意識が理解するよりも先に、体が地を這うように後方へ跳び退いていた。

 湿った風が肌に吹き付けた刹那――石床が破砕され、飛び散る礫が私の小さな体に直撃する。


「――っぶねッ、痛っ!!」


 痩せこけた体に、石つぶてが容赦なく叩きつけられる。しかも、反応が少し遅れていたようで指先が爪ごと斬り裂かれた。



[リンッ――【苦シテ楽ナシ】を発動]

[リンッ――〈戦技耐性〉を得ました]

[リンッ――〈激痛耐性〉を得ました]

[リンッ――〈苦痛耐性〉を得ました]

[リンッ――〈斬撃耐性〉を得ました]

[リンッ――〈襲撃耐性〉を得ました]

[リンッ――〈打撲耐性〉を得ました]

[リンッ――〈被弾耐性〉を得ました]

[リンッ――〈奇襲耐性〉を得ました]

[リンッ――〈欠損耐性〉を得ました]

[リンッ――〈出血耐性〉を得ました]


[リンッ――〈虚弱耐性〉を得ました]

[リンッ――〈疲労耐性〉を得ました]



「~~~~っ! ()ったぁ~! っおいお前っ! いきなり斬りかかってくるなんてどういう了見だッ!!」


 不可解な出来事や、視界の羅列よりも『怒り』が先に立ち、私は痛む指を押さえながら外の鎧騎士に怒鳴りつけた。

 しかし鎧騎士は、振り抜いた剣を肩に担ぎ直すと、何事もなかったかのように、『ガシャン、ガシャン』と鎧を鳴らしそのまま右の通路へと歩いて行ってしまう。


「あっ!? おい無視かっ! 人を斬りつけといてだんまりかこのマニュアル人間野郎ぉ~……!! ちっ、逃げたか」


 私は去っていく鎧騎士に向けて、野次だか虚勢だかを大声で吐き捨てた。

 ――少し間を置き、騎士が戻ってこないことを確認すると、私は壁を背に痛む体を座らせる。そこでようやく、斬られた指先をジッと見ることにした。そこには裂かれた断面――ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()



[※【赫血の少女(アカイチノミコ)】:〖斬獲〗の異能。『自らの血』を触媒に『奪う』刃を生み出す能力。また『血』を自在に操ることもできる。『奪った』ものは自身の糧にできる。 対価:体力の大幅低下]



(すごく痛いけど、本当に『血』を操れてるぞ。……突然知らない『知識』が浮かんできたから、頭までジャックさせたのかと思ったが……ん? ここって『ゲーム』じゃなくて『異能(そっち)』系の世界観なのか?)


 体の痛む部分を撫でながら、私は仕方なく『盤面(表示)』を開いて、少しでも情報を集めてみることにした……ダルいけど。


(さすがに情報がなさすぎるな。牢屋(ここ)を出るにも、あの『マニュアル騎士』を如何にかしないといけないし……仕方ない)


――――ポロンッ



[【名前】サク(御影 朔)【年齢】10(16)【性別】女 


【種族】夜人


〇Level:1


〇状態異常:月詠/空腹/衰弱/損傷/打撲


〇魔力:F→--


〇筋力:F→__


〇潜在力:D→__


〇耐久力:F→__


〇抵抗力:F→__


〇体力:E→__


〇敏捷力:D→__


〇技能――



「――Zzz……はっ! あれ、寝てた!? あまりのつまらなさに寝てなかったか私っ! ……ファミレスのメニュー表ならこんなことないのに……っく! というか、アルファベットじゃなくて数字で示せよな、見えないからいいけどなぁ――」


 そんな独り言を挿みつつ、意味が分からなかったり、知らん漢字を飛ばしたりと雑な読み方をし――何とか居眠りせずに数分で読み切れた……ほとんど頭に入ってないけどな。


「――はぁ~、長かったぁ。……しかし、気になる『ガチャ』と『チケット』みたいなのを見つけてしまった」


 私は数ある項目の中から、気になる『技能』なるものを見つけ出していた。



[【一期一会】:任意発動。出会った中から抽選された対象を選択する。選択した対象との『相性度』によって、無作為に『解放技能』へ変化する]


[【唯我独操Ⅰ】:解放技能。『自身が起こす操作』に関する『技能』を選択できる]



「うん、間違いなく『ゲーム』のそれだ……んじゃ早速、『ガチャ』の方から『発動』!」


 私は何の躊躇いもなく宣言した……決して、読み飽きて『ガチャ』がしたかったから、というわけではない。


(あれ? って言うか、私が出会ったのってさっきの『マニュアル騎士』だけじゃないか?)



[【一期一会】を発動]

 ⇒『出会った』中から抽選で選択肢を表示します

 ⇒〖レン〗……以上



「やっぱり一人か……これ、さっきの騎士が『レン』って名前の奴なのか? ……あっ、そういえば下の欄に……」



[〈異界ノ適応体〉:共通言語理解・ニホン語、共通文字理解・ニホン語、✕自己理解翻訳/○他者共通翻訳:()()



「お、あった」


 そこには確かに、抽選対象と同じ名前が記されている。


(ってことは、私が起きる前に会った相手。それか、この器(体)の知り合い……いや、『転生者』って書いてあるんだから『私』の知り合いなのか……)


「うーん~……よし、一旦保留にしよう!」


 私は考えることを放棄した。正直になると、早くガチャがしたいんだ私はぁ!



[選択対象〖レン〗に決定されました]

 ⇒『相性度』に応じて『解放技能』へ変化します……



(今更だが、『相性度』って何だ? 『男と恋愛』する的なあれ? ……まぁ、選択肢一つだからいいか)


「わくわくっ! わくわくっ!!」


 前世では知る由もなかったであろう、この胸の高鳴り……そうか、これが『廃課金者』どもが渇望してやまない『昂揚』なのか! ……私は一回まわせれば満足だな。



[リンッ――【一期一会】が【――――

[※称号【天主神ノ恩恵・創造】が強制介入]

 ⇒創造系統に上昇補正

[※称号【天主神ノ恩恵・娯楽】が強制介入]

 ⇒初回のみ、神引き上昇補正


[リンッ――【一期一会】が【五門顕現Ⅰ】へ変化しました]



「おおぉ! 一瞬フリーズして焦ったが、ちゃんと変わったぞォ!! ……で、これは激レアなのか?」



[【五門顕現Ⅰ】:解放技能。『柏手』『指門』の工程を踏み『門』を顕現させ、『解錠』で開くことができる。『門』の形状は創造者の『意思』によって反映される。

└Ⅰ【摩多羅門】]


[【摩多羅門】:『自身の傍』と『対象の背後』に繋がった『門』を展開する]


[〈柏手〉:手の平を強く打ち合わせる

 〈指門〉:顕現する門の指定

 〈解錠〉:門を開く言葉の宣言]



(………………んん? 強い、のか?? というか……何て読むんだ『摩多羅門(これ)』???)

(説明を読んでも分からないことが多すぎるだろ。『五門』なのに一つだけだし……)


 読んでもそれが強いのかどうなのかがわからず、私の頭に『?』が量産される。


(人によっては、使い道が『ぱっ』と思いつくのか? 私は戦略を立てるより、身体を動かしながらその時々で考えるタイプだからなぁ~)


 そんな時、右奥を進んでいった騎士の引き返してくる足音が聞こえてきた。


(――まぁ、外の騎士(あいつ)は多分、『外に出てこない限り襲わない』っていう業務マニュアルに忠実みたいだし無視でいいか……ここの前と通ったら木片投げつけてやる)


「……ええい、読んでも分からないし、もう雰囲気で使ってみるかっ!!」


 私は胡座をかき、背中を壁に預けたまま、血や埃でごわごわした長い黒髪をぐしゃっと掻いた。



[※【五門顕現Ⅰ】を発動]

 ⇒()()()()[()()]()()()()



(工程はたしか――)



――――パンッ



(『柏手』を打って――)


「え~と……『()多羅(たら)(もん)』? これで合ってるのか?」


(『指門』をよんで――この時点で『門』が出る、はずなんだが……まぁ、最後までやるか)


 この時、私の頭に浮かんでいたのは、『石壁や床』から連想した『()』のイメージだった。


「ごほん――『開け~ゴマ~ァ』!!」


(……ふむ、やっぱり不発――



――――ゴゴゴォォ……ゴロンっ



 次の瞬間、『解錠』の言葉を叫んだ私の体は、胡座をかいたまま――()()()()()()()()()()()


「は?」


 転がった先で目に入ったのは、(正面)に伸びる『()()()()()()()()()()』、そして足元には『()()()()()()()()』。


「はぁ??」


 更に、その石扉は――



――――ドッガァーンッッ!!



 ――『()()()()()()』の大盾によって、豪快に粉砕された。


「――はぁぁぁぁぁ~~っ!? 聞いてない聞いてないっ、聞いてないぞぉ~~~ッ!!?」


 どうやら私は、念願の牢屋の外へ――『マニュアル騎士』の背後から出てしまったらしい。




―――――――――――――――――――――――――




「――っちょー! 無理無理無理無理無理ぃ~~っ!!? ――のわぁ!」



――――ザンッ!!



 私は痛む体にムチ打って、転がるように立ち上がり裸足で駆けた。

 背後から風を切る音が聞こえ、『マニュアル騎士』が『業務開始』したことを察する。少しはサボれよっ。


「って、あぁぁぁ!! 早くも行き止まりかーーッッ!?」


 私の入っていた牢屋を除いて、四部屋分の廊下を駆けたところで壁にぶつかる。

 素早く振り向くと、全身を覆えるほど――二メートル近い大盾で構えた『マニュアル騎士』が、長剣を右手に持ち、にじり寄って来ていた。


(ヤバい、積んだかもっ!! どうするどうするどうするっ……あっ、そうだ! 『開示』!!)


 私は自分の『ステータス』を見られる【遊戯Baん詳(あの技能)】を使い、『マニュアル騎士』のステータスを見てみることにする。


(ゲームだったら最初に配置されてる敵なんだから弱いはず! ……『ゲーム』だったらっ!)


――――ポロンッ



[【名前】灰風の守衛騎士(剣・盾)


【種族】人間 (深淵)・亡者


【レベル】83


【状態異常】深淵/欠損


【属性】深淵・深風・物理


【生命力】――


【持久力】――


【筋力】――


【技量】――


【耐久】――


【魔力】――


【理力】――


【信仰】――


【運】――


【人間性(特性)】 1/10


【戦技】

・〈風断突進〉]


[〈風断突進〉:大盾を構えながら黒い風を纏い、素早く突進しながら盾と剣で二連続攻撃する



「――はいクソゲェー! ここはラスダンかよド畜生ぉーー!! 表記違いには目をつむるがレベルが馬鹿高すぎるだろぉぉーー!!」



――――ダンッッ!!



「うぉ! なんだ、威嚇かっ!?」


 私が『この世界』の不満を高らかに叫んでいる間に、五メートル手前まで来ていた『マニュアルラスダン騎士』が、大盾を地面に叩きつけ、さっき見た黒煙――霧のように蠢く『黒い風』を纏いながら、体全体を『光らせ』ていた。


(これ知ってるぞ! さっき見た、技発動の予備動作と『光』だろっ!! ……ってヤバッ!!)



[〈風断突進〉:大盾を構えながら黒い風を纏い、()()()()()()()()()盾と剣で二連続攻撃する



「この狭い廊下で使うのはズルいだろぉー!」


 どうやらこの『マニュラ騎士(略)』、この人一人分の幅しかない廊下で私を轢き、壁に押しつぶそうとしているようだ。


(さっきから私、叫んでばっかりだなぁ。キャラじゃないぞっ!)

(早くなにか打開策、打開策打開策っ…………冷静になれわた――



[【明鏡止水】を任意発動]



(                    )


 私は、表に出さないだけで心中パニックになっていた。背水の陣に立たされ、今まさに迫りくる『死』に対し、冷静さを欠いていた自覚がある。落ち着こうと思うほど、焦りが膨らんでいく感覚。

 そんな時――『通知音(鈴の音)』と同時に、心を埋めていた『焦り』や『不安』が、()()()()()()()()()()



[【明鏡止水】:『意識』『思考』を切り替えられる]



「――すぅぅーー、ふぅぅーーーーっ」


 真っ白になった思考に、()()()()深呼吸(ルーティーン)』を行い、眼前で突進寸前の『マニュラ騎士』を見据える。


(こんな時に、『()()()』の癖を思い出すとはな……)


 前世の記憶――『唯一』思い出せた『家族』の記憶が、今になって呼び戻された。それは、嫌々道場でしごかれた泥臭い日常と、ダルい教えの数々。そして――昔の私を思い出すきっかけにもなった。


(冷静さを欠いて、一瞬でも思考を鈍らせたら死ぬような世界だ。『深呼吸は脳を動かすエンジン』、ってジジイが言ってた……気がする――いや言ってないかも?)


『マリュラ騎士』が石床を砕く音を響かせ、一足で急接近してきた。纏う『黒い風』が格子や柵をガリガリと物理的に削りながら、私を潰そうと迫ってくる。

 それを見て私は――右の柵に足を掛け、中央の空間へ飛び出した。



――――ドガァァン!!



 直後、背後で衝突音が鳴り、衝撃が背中を押した。


(――っ! うげぇ! 『お前ら』ここに居たのか、キモすぎるだろっ!!)


 飛び出した空間を、最初は下の階へと続く穴だと思っていた。だが実際には――あの牢で見た『不細工な異形』の群れが、空間の底にびっしりとひしめき合っていた。

 芋虫のように長く、手(足?)が計六本もある白い異形が、壁を引っ掻き、血を擦り付けながら登ろうと蠢いている


(ヤバっ、下確認してから飛べばよかった! ここに落ちたら貪り喰われるぞ、絶対っ!!)


 即断即決が仇になった。ここからのことを何も考えてなかったのだ……そんな時の、この『技能』!



[【明鏡止水】を任意発動]



(                    )


「すぅぅーー――」


 焦った思考がクリアに切り替わる。わずかな滞空時間に深呼吸を挿み――解決の一手が思いつく。


(思考リセット便利すぎだろ。焦りが無くなるだけで、最善の一手が『ポンっ』と出て来るぞ……いや、私の天才的頭脳あっての結果かぁ! なーっはっはっは!!)


 顔には真剣な表情を張り付け、心中で天狗になっている私。うん、前世でも『こんな感じ』だったかも。

 そんなことを考えている間に、対岸まで半分というところで、ふと体が沈み始めた感覚に。

 私はすぐさま、『血で固めた指先』を等間隔に並ぶ対岸の『柱』へと向けた。


「れい・ざーーーっ!!」


 私は童心に返ったように叫んだ。すると、指先から噴き出した『血液』が細い糸のように伸び、柱に絡みつく。


「よし戻――はっ? 戻せないのか、この『血』!? ばい菌予防完璧かいっ!!」


『異能の知識』が私の作戦を否定する情報を流してきた。どうやら、一度出した血液は戻せないようだ。


(どうして今教えるんだよ不親切っ!!)



[【明鏡止水】を任意発動]



「うおぉぉぉ引けぇぇぇ!! 落ちたら死ぬぞぉぉぉ!!」


 ひとり漫才の思考を切り捨て、大急ぎで血の糸を手繰り寄せる。物理法則にしたがい、張った糸を起点にスイングしながら落ちて行き――壁へぶつかった。


「――っと! あ、おいっ来るな! 噛もうとすんなボケナス!!」


 ギリギリで『白い不細工』より上の壁に貼り付けた。しかし、下から仲間を踏み台に、歯をカチカチ鳴らしながら私の美脚を狙ってくる。

 それをどうにか足蹴にし――私はとうとう対面の廊下まで辿りつけた。



[【明鏡止水】を任意発動]



 思考を切り替え、柵の外側にしがみつきながら振り返る。


(アイツはどうして――

――――ズガーーッッッン!!



 刹那――視界に巨体が横切り、隣の柵をぶち抜いていく。

 そこは、最初に騎士が『牢屋エリア(ここ)』へ入ってきた時の、『扉』を塞いでしまう位置だった。


(はぁ!? コイツっ、私の真似して飛び移ってきたのか!? 鎧に重装備ぶら下げてるくせに、どんだけ身体能力が高いんだっ!!)


 私は素早く柵を乗り越え、『マニュラ騎士』と反対方こ――



――――ッ、ガシッ!! ガァ~~ッン!



「かっぁ――――!!」


 それは突然の急襲だった。崩れた石積みから()が伸びたかと思えば、それが私の首を掴み、格子へと叩きつける。



――――ゴッ、ギチチィ――



(――ヤバぃ……馬鹿力で……首が、折れ――!!)



[リンッ――〈衝撃耐性〉を得ました]

[リンッ――〈激突耐性〉を得ました]

[リンッ――〈急襲耐性〉を得ました]

[リンッ――〈絞首耐性〉を得ました]

[リンッ――〈窒息耐性〉を得ました]

[リンッ――〈混濁耐性〉を得ました]



『耐性の表示』が流れ、苦しみが幾分マシにはなった。しかし、握力が強すぎて引き剥がせない。しかも、右腕に握られた剣の切っ先をこちらに向けてきている。


(ホントにまずい……意識も……っ)


 剣で貫かれるよりも先に、窒息か骨折で死にかけた――その時。



『――――――こっち――なさぃ――――』



 ――扉と反対側、牢が並ぶ先から確かに、掠れた『呼び声』が聞き取れた。



[【明鏡止水】を任意発動]



「――――っ!」


 ――その謎めいた声に、私は『何か』を感じ取った。思考を切り替え、消えかけた瞳に再び光を灯す。


 私は立ち上がり、本格的に宙吊りの体勢となったまま、『マニュラ騎士』の伸ばした『左腕』を睨む。

 胴鎧を足場に体を支え、力が逃げないように重心を整えると――持ち上げた勢いのまま、肘裏目がけて下から掌底を叩き込んだ。

 


――――ガッ、シャンッ!!



(んん? この感触って……空っぽっ!?)


 腕は確かに、鎧ごと反対へ折れ曲がっている。しかし、私の手に感じた衝撃は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「――っはァー!!」


 ――それでも、殴った衝撃のおかげで、わずかに首の絞めつけが緩んだ。



――――パンッ!(柏手)



「『またらも、ンッ』――」


 私の背にしていた格子の感触が、『意識』した『木製の開き戸』のものへ変わる。


「――『(かい)ッ』!」


 掠れた声で言葉少なに『解錠(叫ぶ)』。背後の『扉』が開き、押し付けられていた私の体が後方へと引き流される。そして、首を絞められた体勢のまま、背中合わせの形で『マニュラ騎士』の背後へ抜け出た。


「――っ!!」


 扉を抜けた瞬間、私は騎士の膝裏を蹴り抜き、体幹を崩す。バランスを失った騎士は剣を下げ、大きくよろめきながら片膝をつく。

 その背後に腕を回し、兜を掴むと、両足を振って勢いづけ――背中を蹴り飛ばした。



――――ガジャンッッ!



(――あれ、体の方には『入ってる』感触があるぞ? 中身どうなってるんだコイツ?)


 鋼鉄の軋む音と共に、またしても手と首の間に隙間が生まれた。そこへすかさず、操った『血』を滑り込ませる。

 指の各関節を内側から針状の突起で『貫き』――力任せにこじ開けた。



[リンッ――能力値[筋力]を永続的に微上昇]



「――ごっほ、げほぉ――っっ!!」


 視界に流れる文字を無視し、絞首(拘束)から逃れた私は首をさすりながら牢の並ぶ方へと駆け出す。直後、背後で『バキッ』と木の折れる音が聞こえる。チラリと振り向くと――なぜか、()()()()()()()()()()()()


(は、取れてる? なんで? ……あっ、そういうことか!)


 どうやら、腕を潜らせた状態で扉を壊したから――転移(効果)()()()()()()()()()()()()


(そういう効果もあるなら教えろっ! こっちは必死に抜け出す方法考えたんだぞっ!!)


 心中で憤りを覚えながら、牢を一つ二つと覗きながら渡り、三つ目の牢に――その『人?』は居た。


「はぁ、はぁ――えっ、ちょっ生きてるのかお前っ!?」


 その牢屋に入っていたのは――左腕を鎖で拘束され、右腕と左足が切断された、()()()()()()()()長髪の女。しかも、両目をズタズタに切られた痕が痛々しく残り、浅い呼吸を繰り返している。まさに瀕死の状態だった。


(もしかして……呼んだのって、『助け』をだったのか? あてが外れた!!)



――――ダンッッ!!



 走ってきた方から聞き覚えのある、『大盾を叩きつける音』が響いた。


「――!? おい、片腕取れたのに何で盾を持ってるんだお前ッ!!」


 それはどういう絡繰りか、大盾を構え、黒い風を纏った『マニュラ騎士』が廊下に先に立っていた。

 盾が影になって見えないが、横から剣先が覗いているため、『両手が使えている状態なのだと察する』。


(くそっ、正々堂々戦ったって今の状態じゃあ負けるのは明らかだし……いっそのこと、『五門顕現()』使ってアイツの体削っていくか?)


私がそんな悪魔的発想を巡らせ、立ち向かうか思案していると――


「――格子の……影に、よけなさい――」


 それは、先ほど聞いた、『呼ぶ声』と同じ女のものだった。

『ダンッ』と石床を踏み抜き、騎士が再び急接近してくる。それに対し、私は――後ろへ下がり、彼女の居る牢屋の視覚から外れた。



――――――ッジャッジッジジャジジジジーーッッ!!



 周囲を破壊し(巻き込み)迫る『マニュラ騎士』。それが、一足で廊下を渡り――『彼女』の囚われている牢の前へと差し掛かかった。そして――


「――――――(ッボッォォッォォオォォオォーー)!!!」



 ――巨体の騎士を飲み込むほどの『黒炎』が、牢屋の中から噴き出た。



「――っ! 熱っ、熱っい! アぁっつーーーーッッ!!!」



[リンッ――詳細判明、【魔術】〈焦黒の息吹〉を開示します]

[リンッ――【苦シテ楽ナシ】を発動]

[リンッ――〈高温耐性〉を得ました]

[リンッ――〈高熱耐性〉を得ました]

[リンッ――〈熱気耐性〉を得ました]

[リンッ――〈熱風耐性〉を得ました]

[リンッ――〈火傷耐性〉を得ました]

[リンッ――〈外傷耐性〉を得ました]

[リンッ――〈乾燥耐性〉を得ました]

[リンッ――〈魔術耐性〉を得ました]



 それは、あまりにも凄まじい熱量だった。距離を見誤った私は、肌を文字通り焼かれ、肺の奥まで灼けつくような熱を浴びた。

『耐性』を得たにも関わらず、それをまるで感じさせない炎が、『牢屋エリア(ここ)』の空気そのものを焦がす。


「~~~熱っつぅぅぅー!! なんて熱量の炎だまったく!! 危うく私まであの騎士みたく燃えカスに――げッ!?」


 私は、隅の石壁に身体を縮こませながら、袖の無い服の襟元を引っ張り、口を覆っていた。

 大きな火球の割に爆発が生まれなかったおかげで、このエリアが蒸し風呂状態にならずに済んだのだ。そして、『黒炎』が通過し焼け焦げた現場を見て、唸った。



――――ギィ、ギギ、ギィィ――!!



(『黒炎(あれ)』を食らっても生きてるのか! しぶといにもほどがあるだろっ!!)


 それはもはや、あの鎧の中身が『人間』ではないと一目でわかる現象だった。

 背中を崩れかけた柵にめり込ませ、熱で赤く発熱したボロボロの鎧を身にまとった騎士が、五体満足――鎧を失った左腕の肘先から『()()()()()()』を生やし、尚且つ熱で空気が歪むあの空間の中をぎこちない動作で蠢いている。


「――ごっほ、ごほッげほッッ、ゔゔゔぅぅぅ、がァッ――!!!」


 牢屋の方から、苦しそうな咳が聞こえてくる。今の一発に瀕死の体が悲鳴を上げているような、そんな苦し気な声だった


「ちぃ――!!」



[【明鏡止水】を任意発動]



――――ッダ!!



 私は立ち上がると、『躊躇を覚える前に』思考を切り替え、『マニュラ騎士』が蠢く、空気も床も焼けた灼熱地獄へと駆けた。



――――ジュゥゥゥゥッッ!!!



「っぐ――――ッッ!!!」



[リンッ――【苦シテ楽ナシ】を発動]

[リンッ――〈灼痛耐性〉を得ました]

[リンッ――〈灼傷耐性〉を得ました]

[リンッ――〈失神耐性〉を得ました]



 裸足で焼けた石床を踏み抜く。

 熱が刃となり、足裏を切り刻む。呼吸は浅くなり、意識が朦朧とする。だが――視界は常に鮮明だった。



[【明鏡止水】を任意発動]

[【明鏡止水】を任意発動]

[【明鏡止水】を――



「――、――――っ!!」


『技能』を連続で発動し、沈みかける意識と激痛を強制的に『切り替える』。剝き出しになった足裏を分厚い『血の層』で覆い――立ち上がろうとする『マニュラ騎士』の眼前へと躍り出る。そして、『血を纏った』拳を固く握り締め、さらに別の『技能』を発動する。



[【――――】を発動]

 ⇒全能力激化補正。[反動軽減]付与



(私が『永休』をくれてやる――っ)


「――すぅぅーー……はぁッ!!」


 無意識に熱く乾いた空気を吸い、鋭い掛け声と共に拳を振り抜く。



――――ガシャグッッ――!!



 小さな体、しかも痩せた女の細腕からじゃ想像もできないほどの威力を叩きだし、柵をぶち抜いて『マニュラ騎士』を殴り飛ばす。



――――――――ッッッッ!!!



 柵を越えた先――『白い異形』が蠢く地獄絵図の中心に落ちた『マニュラ騎士』は、もがく間もなく、その圧倒的な物量に飲み込まれ、沈んでいく。

 そして残ったのは、ただひとつ――淡く灯る『小さな人魂』だけだった。


「――――はぁぁぁぁぁぁ……! ツカレタァァァァァ!!!」


 ボロボロの恰好で絞り出されたこの一言には、この世界に来て以来、最も濃い『感情』を孕んでいた。




―――――――――――――――――――――――――


◇御影朔のステータス


(※は非表示、見えていないものとする)

【名前】サク(御影 朔)【年齢】10(16)【性別】女


【種族】夜人


〇Level:1


〇状態異常:月詠/空腹/衰弱/損傷/打撲/灼傷


〇魔力:F→--


〇筋力:F→__


〇潜在力:D→__


〇耐久力:F→__


〇抵抗力:F→__


〇体力:E→__


〇敏捷力:D→__


※技巧:B→S-


※素質:B→A+


※運気:I→--



〇技能

・【夜目Ⅴ】:暗い場所でものがよく『視認』できる

・【気配察知Ⅳ】:周囲の『気配』を少し感知できる

《習得、取得、継承不可》



〇上位技能

・【不撓ノ肉体】:任意発動。体力上昇補正。耐久力激化補正

・【不屈ノ精神】:任意発動。体力上昇補正。抵抗力激化補正

・【隠密】:任意発動。自身の『気配』を限りなく感知されにくくする

・【大悪食】:『モノ』を何でも食べられ、普通に感じられる。『消化機能』『吸収効率』激化補正。耐久力微上昇補正。抵抗力上昇補正

・【生ヘノ執着】:『吸収効率』上昇補正。『瀕死時』のみ効果発動。一時的に全能力激化補正

・【苦シテ楽ナシ】:『苦』に対し『耐性』を得る

《習得、取得、継承不可》



〇血統技能

≪New≫【夜ヲ纏ウ者】:多能技能(マルチスキル)。『夜人』のみ発動可能。体力、敏捷力上昇補正。『夜の間』のみ、所有技能全ての『上昇補正効果』上昇補正

・『技能使用』を認知し、『魔力』を可視化できる。状態異常:[月詠]。『夜の間』の任意果発動。視線を合わせた相手の『動作』を一瞬『阻害』できる。


・『夜の間』のみ発動。『モノ』を精確に投げる高等技術補正。投擲時『精密操作』『投擲威力』上昇補正。『投擲速度』激化補正。投擲物に[反射性][隠密性]付与


・『夜の間』のみ任意発動。暗闇の中でも、『状況』『位置』を『正確に把握』することができる


・『夜の間』のみ任意発動。広範囲の『気配』を『把握』し、『自身の気配』を薄めることができる


・『夜の間』のみ任意発動。全能力上昇補正。状態異常:精神[冷静]

└(技能:〈夜天月詠〉〈夜投術・暗器〉〈暗視夜行〉〈暗隠夜行〉〈暗闘〉)

《習得、取得、継承不可》



〇固有技能

≪New≫【一期一会】:※不定期に『縁運』を一時的に極化、極下補正。|任意発動。出会った中から抽選された対象を選択する。選択した対象との『相性度』によって、無作為に『解放技能』へ変化する。 ※()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

     ↓     ↓     ↓

≪New≫【五門顕現(ごもんけんげん)Ⅰ】:解放技能(リリーススキル)。 ※不定期に『縁運』を一時的に極化、極下補正。|『柏手』『指門』の工程を踏み『門』を顕現させ、『解錠』で開くことができる。『門』の形状は創造者の『意思』によって反映される。 (※『門』を、扉や窓と同様の存在とみなす)

└Ⅰ〈柏手〉〈指門〉〈解錠〉

└Ⅰ【摩多羅門(またらもん)】:『自身の傍』と『対象の背後』に繋がった「門」を展開する


≪New≫【--】:『???』のみ任意発動。全能力激化補正。[反動軽減]付与。???


・【明鏡止水】:任意発動。『意識』『思考』を切り替えられる。潜在能力上昇補正。抵抗力激化補正


≪New≫【疵付イタ孤高ノ一匹狼】:『戦闘時』のみ任意発動。『発動者のみの時』、全能力上昇補正。『一人以上の時』、全能力激下補正。

《習得、取得、継承不可》



〇――Unknown――――

・【異界しャのタまシイ】:『転生者』の魂を器に同調、定……………運…………失……同調……に失…再実……、緊急処置に伴い、魂の同調、定着を最低限行い終了。不具合により、Level上昇不可。魔力回路消失。技能・称号の習得、取得、継承不可

└〈異界ノ適応体〉:共通言語理解・ニホン語、共通文字理解・ニホン語、✕自己理解翻訳/○他者共通翻訳:レン


・【遊戯Baん詳】:任意発動。『認識、意識したあらゆるもの』の能力、状態などを盤上に符号として明らかにすすルるるu


・【--】

└【--】

└【--】

 └(技能:〈--〉)

≪New≫└【唯我独操(ゆいがごくそう)Ⅰ】:解放技能。『自身が起こす操作』に関する『技能』を選択できる

 └Ⅰ:〈〉

《習得、取得、継承不可》



※sjんgaうw――異能力

≪New≫【赫血ノ少女(アカイチノミコ)】:〖斬獲〗の異能。『自らの血』を触媒に『奪う』刃を生み出す能力。また『血』を自在に操ることもできる。『奪った』ものは自身の糧にできる。 対価:体力の大幅低下



※称号

(器)

・【夜人ノ血族】

・【断絶ノ弱者】

・【支配サレシ者】

・【耐エ忍ブ者】

・【餌食トナル者】

・【囚ワレシ寂寞者(セキバクシャ)

・【空虚ニ沈ム者】


・【夜闇ノ牢獄者】

・【希望ヲ奪ワレタ者】



(前世)

・【悪縁ヲ纏ウ者】

・【忌ミ子】

・【天性ノ前進者】

・【武芸者】

・【研鑽ヲ絶ヤサヌ者】

・【歪ミニ囚ワレシ者】

・【新タナ歯車】

・【絶望ヲ知リシ者】

・【刈ル取ル者】

・【泣カヌ少女】

・【折レヌ心ノ持チ主】

・【刃ニ沈ム者】

・【転生セシ者】

・【見知ラヌ理ノ訪問者】

・【異能者】


・【苦痛ニ染マリシ者】

・【抗ウ者】

・【不運の継承者】

・【歪ミノ因果ヲ持ツ者】

・【転機ヲ(モタラ)ス者】

・【因果ニ囚ワレシ者】

・【試練ヲ受ケシ者】

・【悪縁ト眠ル者】

・【異界ヘ導カレシ者】



・【天主神ノ恩恵・創造】

・【天主神ノ加護・良縁】

・【深主神ノ加護・悪縁】

・【天主神ノ恩恵・奇跡】

・【天主神ノ恩恵・研鑽】

・【天主神ノ恩恵・娯楽】




ついに出た『五門顕現パイセン』。後の効果で、書くのがすごく大変になる問題児です。


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