17.エレナス邸(2)[……『黒い刃の刺きゃ――(ゴスッ!)]
赤べこ
「守護騎士の皆さん、セリフ無く、鎧の音でしか表現させてあげられなくてすいません……」
守護騎士たち
「( ͡° ͜ʖ ͡°)b ͡°)b ͡°)b ͡°)b ͡°)p ͡°)b ͡°)b……――」
(――いい手応え)
振り抜いた木刀が『正面の剣騎士』の晒した顎下と、『右の盾騎士』のこめかみへ綺麗にヒットする。……うん、我ながら気持ちのいい一撃が入ったと思う。流石私っ!
――――ガッシャッ! ブォオオ――!!
「んっ――おっとぉ!」
しかし、盾騎士は肩の負傷なんて気にした様子もなく、むしろ勢いを増すように重そうな盾を『私』目がけて容赦なく振りかぶってきた。
それを大袈裟な『スウェー』で避けた、直後――今度は正面の剣騎士が懲りもせずに剣を高く構え、そのまま振り下ろしてくる。
(痛覚ないからか、こいつらの対応早いな。……まあ、避けられるけど――
「――サク!倒れたままぁ!」
背後からレンの声。気の利く私は言われるがまま、回避動作をとらず上体を反らせた姿勢をキープする。
「ふっんッ!!」
――――ゴォォオオオ!! ――ガシャッ、ャッ!!!
斬撃が届く寸前――視界を『黒く幅広い刀身』が横切る。それは騎士二体をまとめて薙ぎ払い、奥と壁際へと吹き飛ばした。
「おぉ~。すごく爽快だな~」
「サク大丈……いや、すごい格好な。全然平気だわこの人……」
ようやく追いついたレンが、私の姿勢――上着の裏地から血を伸ばして上半身を支えた状態――を見て、あっけに取られた顔をする。
「……よっと。レンのその腕、カッコイイよくなってるな? なんかこう……『未来から送られて来た、液体金属の殺戮マシーン』みたいだ」
「それ褒め言葉とちがう」
嫌でも視界に入るレンの左腕――『黒煤の義手』が、服を呑み込むようにして巨大な刀身を形成していた。上着の裾が短くなっていることから、刀身の長さをそこから補っているんだろうと察する。応用利くなぁ。
「――レン。改めて、お前は『盾』をやれ。私はもうちょい体を慣らしたい」
「……サクさん。これゲームじゃなくてリアルっすよ? なんでそんな冷静なの? さっきの動きもプロの殺し屋みたいな手際だったし……あなたホントに元地球人?」
「地球育ちの地球人だアホ。……まあ、むかつくヤツを叩きのめしたいって動機が、偶然にも『かっこいい動き』になった、それだけだ。動機は純粋。結果は上々。私は天才。問題なしだ」
「マジっすか……」
「マジマジ。あ、それと――ガシっ(蹴り)」
――会話の最中、私はレンの膝裏にさっくり蹴りを入れる。そして、ぐらついた頭のすぐ横を、『ッシュンッ』と風を裂いて短槍が通過した。……私を狙わない感じ、意地でもレンを殺したいという意志を感じる。もう、厄介なファンじゃん。
「――さっきからよそ見し過ぎだボケ。雑談中でも気を逸らすな。お前も『感知』みたいな技能使ってるんだろ、私の上位互換。それで察しろ、自分の身は自分で守れるようになれ……私の上位互換でな」
「……うす」(めっちゃ上位互換気にしてる……)
「んじゃ、今度こそ『盾』頼んだぞ――」
[【明鏡止水】を任意発動]
レンにそう告げ、私は正面の『剣騎士』へと接近する。
さっきの『横薙ぎ』が効いたのか、騎士は片膝をついたまま『緩慢』な動作で起き上がろうとしていた。私はそこへ、容赦なく追い打ちを掛けに行く。
「……」(なんか、妙な違和感が……)
――――ポロンッ
[【名前】サク【年齢】10【性別】女
【種族】夜人
〇Level:1
〇状態異常:月詠/打撲/冷静/耐久力低下/抵抗力低下――]
走りながら、久々に出した自分の『表示』をざっと確認する。状態異常の項目、そこには『二つの低下』がゆっくりと点滅していた。
(『疑似的な抜刀』で発動したのはいいが、一回の使用で紙装甲へさらにデバフかよ……)
(点滅具合的に、一分以上は下げられるっぽいな……ダルっ)
確認後、さっさと視界から『表示』を払い、改めて敵を見据える。
起き上がりかけの剣騎士。兜のないその顔面は右目を中心に渦を巻き、ねじれた皮膚が引き裂けている。眼球らしきものが見当たらず、とにかくキモい。
左腕の隙間からは、滲み出る『黒いモヤ』――『深淵』、というやつが見て取れる。カラミディア曰く、ここの連中は全員が『左腕を無くし』、それを『深淵』とか言うモヤで補っているらしい。
鎧を着けているのに『実体がない』という曖昧な存在。物理攻撃をすり抜け、『光る属性』以外効果が望めないんだとか。……まあ、狙わんけど。
(――さて、やるか)
敵まであとわずか――私は足の指で地面をぐっと掴み、一気に蹴り上げる。
――――ダンッ!!
「――――っ」
[リンッ――【苦シテ楽ナシ】を発動]
[リンッ――〈筋損耐性〉を得ました]
[リンッ――〈負荷耐性〉を得ました]
足の筋繊維が軋む痛みと共に、体が跳ねるように加速する。通常の脚力じゃありえない水準の推進力。その力をもって、瞬間的に敵との距離を縮める――刹那、『剣騎士』の右腕が閃いた。
――――ッシュウッ――ッ!!
鋭く突き出された長剣。その速度はカウンターとして凶悪なタイミングで繰り出され、『死者』とは思えないほど考えられた――狙い澄ました一撃だった――が。
――――ジャジジーッ!!
[リンッ――【苦シテ楽ナシ】を発動]
[リンッ――〈節痛耐性〉を得ました]
[リンッ――〈振動耐性〉を得ました]
私は、突き出された剣先の数センチ手前で急停止。
靴裏の『血』が地面を削り、膝のバネで勢いを殺す。股関節の軸をロックして、腰から上の動きを瞬間停止。息を吐いて力を逃がす。完璧な連動だ。…………いやウソだわ。超節々痛って~、小さい体で無理し過ぎたぁ~。
「――弱った相手に、馬鹿正直に突っ込むわけないだろ?」
(『不意打ち』が当たっただけなんだけどなっ!!)
動揺をおくびに出さず、私は急停止の慣性をそのまま木刀へ乗せて振り下ろした。まずは狙うは――剣を握る『右腕』。
――――ガッ、ゥギィッッ
加減なしの打撃は、指の付け根――『靭帯』の束が集まる中手骨と指骨の接合部――を一撃で叩き潰す。腱を潰してしまえば、痛みに関係なく握る機能そのものを奪えるからだ。
「――っふ」(念には念を――)
歪んだ手から剣が『カランッ』と落ちた。
そして直ぐ、流れる動作で右足を半歩滑らせ木刀の刃を反転させる。次に狙うは、『肘裏』――尺骨神経の走る隙間を狙って振り上げる。
――――ガィミヂミヂッ、ゥギッ!!
一息で振るわれた二撃目。鉄の木のぶつかる鈍音のあと、鎧ごと肘関節が不自然に沈み込む。力の支点を粉砕された腕は、骨の支えを失い垂れ下がった。
(――いや待てっ!! 私の『人体知識』きっも!? なんでそんなん知ってるんだよっ怖ぁッ!!?)
――――ガシャンッ(ガシッ)
「――――ッ!」
[【明鏡止水】を任意発動]
動揺はしても――いやすごく動揺したけど、油断はしていなかった、と思う。しかし気づけば、振り上げた木刀が『騎士の左腕』にがっしりと捕まれていた。
(……この左腕――『深淵』って『気配がない』のかもな……めんどくさい)
察した瞬間、私は『思考を切り替え』躊躇なく木刀を手放し――左の拳を『緩く構えた』。
「――今、ふと気づいたんだが……」
ボソッと呟いた。
[【喧嘩上等】を任意発動]
⇒全能力激化補正。[反動軽減]付与
⇒更に、全能力極化補正
[【喧嘩上等】:『無手の時』のみ任意発動。全能力激化補正。[反動軽減]付与。また、『一対一の時』のみ、更に極化補正。また、???]
「私、拳の方が性に合ってるかも?――」
――――(ッギュッ)ズドンッッッッッ!! ――ッガァァァアアアア!!!
狙いは、殴りやすい位置に下りている横っ面。
軽く握った拳をインパクトの瞬間に強く握り、筋肉を締める。そうすることで、腕の強度を上げながら、拳速の乗った硬いパンチが出せる――らしい。……いやもう、マメ知識の領域じゃん、私……。
突き刺さった重拳は肉を潰し、骨を軋ませ――騎士の巨体を吹き飛ばして壁にめり込ませた。
「…………。――ったく。女の子のスキンシップだぞぉ~? ……大袈裟に吹っ飛びやがって失礼なヤツだなぁ(現実逃避)」
異世界での初戦闘。私は手応えをもって、勝利を掴ん――
[※リンッ――【五門顕現Ⅰ】を発動]
⇒一時的に[縁運]極下補正
「……ん? なんかニオ――ッ!?」
(――ドクンッッ!!!)
[リンッ――詳細判明、【呪術】〈贖いの鈍香〉を開示します]
[リンッ――状態異常[弱体]を検出]
[リンッ――状態異常[鈍化]を検出]
[リンッ――【苦シテ楽ナシ】を発動]
[リンッ――〈呪術耐性〉を得ました]
[リンッ――〈呪イ耐性〉を得ました]
[リンッ――〈弱体耐性〉を得ました]
[リンッ――〈鈍化耐性〉を得ました]
[〈償いの鈍香〉:範囲内の対象に『香の呪い』をかける。体が弱り、動きが緩慢になる]
――それは、鼻腔の奥を焼くような突然の悪臭だった。感じた途端、心臓が一度大きく跳ね、全身の力が『スゥ』っと引いた。
直前に流れた『表示』。その意味が確かなら、私は今『攻撃を受けた』ということになる。筋肉が痙攣し、関節が冷える。息が浅く、足が震える。明確な、『戦闘不能』の前触れだった。
(――あっ。コレ、マズい感じだ。……体が重い。怠い。……早く後ろに退がんなきゃ――)
「――――サクっ、後ろだーーッ!!」
「あ? ――ゥッッ!!?」
聞こえたのは、カラミディアからの緊迫した大声。その声に反射で首を動かすと――『大きい揺らめき』が私の背後にいて、口を塞ぐと体を持ち上げられた。
気配も、音もない『ソレ』は、確かにそこに居て――
――――グシュゥ、グギュッゴッリ、グゥッッ!!
――背中に鈍い衝撃。いや、正確には『重み』そのものが無遠慮に突き抜けてきた感覚であり――明確な『殺意』だった。
左の肩甲骨――『心臓の裏側』に異物がねじ込まれる。『裂けない服』へ無理やり沈み込み、肉と骨を強引に抉じ開ける――人外の膂力。
「ぅ゛!! ――ン゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ン゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛――――!!!!!」
[【明鏡止水】を任意発動]
[【明鏡止水】を任意発動]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――【苦シテ楽ナシ】を発動]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈痛覚耐性〉を得ました]
[リンッ――〈急所耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈刺突耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈鈍撃耐性〉を得ました]
[リンッ――〈骨折耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈骨砕耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈挫傷耐性〉を得ました]
[リンッ――〈断裂耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈脱臼耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈圧迫耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈麻耐耐性〉を得ました]
[リンッ――〈神損耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈障害耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈致命耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[リンッ――〈隠密耐性〉を得ました]
[【明鏡止水】を任意発動]
[【明鏡止水】を任意――
[〈闇の抱擁〉:闇を纏い、姿を眩ませる戦技。接触や強い衝撃で効力を失う]
――『思考』を可能な限り、高速で更新し続ける。
『痛み』は本来、『意識に溜まり続けるから強くなる』ものだ。だから、『意識に届く前にリセット』し続ければいい。『痛みの記憶を蓄積させない』ために。感覚的にも、精神的にも『曖昧にしてやり過ごす』ために。……それが、理想だった。
……たぶん、肺の奥が潰れてる。塞がれた喉から、壊す勢いで苦鳴が漏れた。そのせいで、余計に体中が痛い。
(……痛みが、消えねぇ……血も、動かせない……)
どういうわけか、意識しても『血』を動かせない。ここにきて、異能に関する『理解度の無さ』が牙を剥く。
背筋に走ったのは鋭利さではなく、『砕ける音』だった。肩甲骨の裏で、何かが割れた感覚。呼吸が詰まり、視界が弾け、世界が一瞬白んだ。肺か、肋骨か――とにかく『苦しい』。腕が、重い。
(クッソ、呼吸キツい……腕が上がらんし……。折れて神経やられたか? なんかねむく――)
――――グズュッ、バギゥ!!
「――ッ゛ヴゥ゛ッ゛ッ゛ッ゛――――!!!?」(っクッソ鬼畜が――)
[【明鏡止水】を任意発動]
[【明鏡止水】を――
沈みかけた意識を、次に襲ってきた『首への一刺し』によって引き上げられる。『ネックウォーマー』で即死をまぬがれた分、異物が喉奥に沈み込み、嫌でも『感覚』として残る。
(――あー、素直に刺された方がマシだったかもなぁ……きちぃ~)
(はぁ……頭が割れるように痛いけど、保険もかけたし、あとはカラミディア……か、レンに賭けるか――)
私は、鬱陶しい奥底の『恐怖心』を無視しながら、何もできないこの状況に身を任せ――寝た。
[リンッ――【苦シテ楽ナシ】を発動]
[リンッ――〈喉潰耐性〉を得ました]
[リンッ――〈喉裂耐性〉を得ました]
[リンッ――〈声断耐性〉を得ました]
[リンッ――〈吐血耐性〉を得ました]
[リンッ――〈息難耐性〉を得ました]
[リンッ――〈瀕死耐性〉を得ました]
[リンッ――〈頭痛耐性〉を得ました]
[リンッ――〈恐怖耐性〉を得ました]
[リンッ――〈弱気耐性〉を得ました]
[リンッ――【生ヘノ執着】を発動]
[【自己暗示】を任意発動]
⇒『休眠回復』
⇒『脳内麻酔』
⇒『生存優先』
⇒『血を操作でき次第フード着と血液クッション』
⇒『また、血圧維持と酸素循環を最優先』
⇒『微細な衝撃時、反射的に筋圧縮』
⇒『レンの技能に対して許可を意識』
⇒『全快時覚醒』
⇒『起きたら――
――ぜってぇ倍返し』
――――――――――――――――――
「――サクっ、後ろだーーッ!!」
カーラさんの声に、『俺』は咄嗟に前方のサクへと視界をやる。
その瞬間、『見えない何かに』持ち上げられたサクの背が見え――途端、左の肩甲骨が『グズリッ』と不自然に沈みこんだ。
「ぅ゛!! ――ン゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛――――!!!!!」
口を塞がれたようなくぐもった声。
直後、背後にぼんやりとした『デカい影』が浮かび――全身をボロい外套で覆った鎧騎士が姿を現す。
[リンッ――詳細判明、【戦技】〈闇の抱擁〉を開示します]
(――――)
――その時、頭の中で何かがキレた。
「――――っ!!」
俺は、呼び戻していた『煤玉』をすぐさま『外套騎士』にけしかけ――
――――ッガッヅン!!!
「――――ぐぃッッ!!」
[リンッ――〈振盪抵抗〉を得ました]
――――
――
――る寸前、相対していた『盾騎士』に頭を強打される。『煤玉』は空中で力を失い地面に転がり落ちた。……操作中に頭部への攻撃は危ないらしい。記憶した。
「こんの――っ!!」
――――ギィッ、ザァンッッ!
頭から流れる血を煤へ変えると、『上着の黒煤』を丸ごと変質させて『黒い大剣』を創る。それを力任せにぶん回して『盾騎士』の腹を強引に切り裂くと、すぐさまサクの下へ――
――――ガジュッ!
――――ブッズゥジュ!!
[――〈痛覚抵抗〉を――
「ぐふっぇ!! ――ぃっズッ!?」
行こうとした瞬間、サクが殴り飛ばし、頭の陥没させた『剣騎士』が横合いから気配なく襲ってきた。黒霧状の左腕を伸ばし、篭手を着けた手が俺の首を握り潰す勢いで締めあげる。
さらには反対側――下半身を失った『盾騎士』の槍が、シャツの隙間から正確に『わき腹』を射抜いてくる。しかもご丁寧に、繋がった鎖を自分の腕に巻き着けて固定する徹底ぶり。
(うっぜぇっ、馬鹿であれよ亡者ッ!!!)
サクに言われて気配には気を付けていた……つもりだった。
だが、焦っていた。急を要する事態。制御できない感情。脅威が重なり過ぎて、判断が遅れる。……そのすべてに呑まれて、正しく対処できなかった。結果、致命的な足止めを喰らってしまう。
(クッソうっとうしぃ――!!)
焦りが苛立ちに変わる。その時――
「――レンッ! 行きなさいッ!!」
「――――っ」
後からカーラさんの声が飛ぶ。
ボロボロになりながらも、『三体』の騎士相手に踏みとどまっており、足元には二つの『騎士』と『カラの管瓶』が転がっていた。
彼女は地面に大剣を突き刺し、右腕を大きく『竜化』させて勢いよく横凪ぎ。騎士たちを弾き飛ばした。そして、その急いで振り向くと左手を握り、血を流す――刹那、そこから『黒い火輪』が生まれ、俺の方へと放ってきた。
[リンッ――詳細判明、【魔術】〈灼焔の輪〉を開示します]
[〈灼焔の輪〉:竜人の血を媒介に、灼熱の火輪を生み出す。敵を狙って飛び、当たれば爆炎を生む。『変異種』により威力上昇]
―――――ゴゥッッッッッ~~、ザァリンッッ! ――ッボゴォォォォ!!
丸鋸のような黒火の輪が槍に繋がれた鎖を断ち、そのまま極端なカーブで『盾騎士』に着弾。焼けつくような黒炎が爆ぜ、残ったのは焦げた鎧と――小さいな『ソウル』だけだった。
「――ッ。レンッ! わたしはこれ以上下がれない! 君がサクの救うしかないッッ!」
彼女にまたしても騎士が殺到する。……俺は感謝を胸に、槍を無理やり引き抜いた。内臓と血、その他もろもろが漏れ出るが――構ってられない。
次に『首の拘束』を外しにかかる――だけど、鋭利な指が喉に食い込み外せない。潰れた血管から勢いよく血が噴きでる。……鬱陶しい。
[※【剣魔錬創Ⅰ】を発動]
⇒一時的に[幸運]極化補正
(どうやってはず――――あ)
その時、俺は『最悪のアイディア』を思いついてしまった。……後に考えればいくらでも楽な方法があったのに、別案を出すヒマも、躊躇する時間すら惜しくなっていた俺は――即、実行に移した。
[リンッ――【剣魔錬創Ⅰ】を発動]
⇒二つの『素材』を検出
⇒『等価素材』を提示しました
⇒『大剣』を選択
⇒『錬創』を開始します
選択を手早く済ませ、即時開始を意識する。そして――
――――パンッ!
――『首』がはじけ飛んだ。
[リンッ――〈首痛抵抗〉を得ました]
[リンッ――〈首痛抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈首痛抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈首痛抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈喉潰抵抗〉を得ました]
[リンッ――〈喉潰抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈喉潰抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈喉潰抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈喉潰抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈喉裂抵抗〉を得ました]
[リンッ――〈喉裂抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈喉裂抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈喉裂抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈喉裂抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈断頸抵抗〉を得ました]
[リンッ――〈断頸抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈断頸抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈断頸抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈声断抵抗〉を得ました]
[リンッ――〈声断抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈声断抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈声断抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈圧損抵抗〉を得ました]
[リンッ――〈圧損抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈圧損抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈圧損抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈圧殺抵抗〉を得ました]
[リンッ――〈圧殺抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈圧殺抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈圧殺抵抗〉が強くなりました]
[――〈荒痛抵抗〉が強くなりました]
[――〈荒痛抵抗〉が強く――
(ッ!!!?!!?!?!!?!?!!?!?!?!?!?!!?!!――――)
――――ガッシッ、グジュゥッ!!
――そして、首なしの体が吹き飛ぶ首を宙で掴んで、断面を胴体に押し付ける。
「――――ァ゛、ァ゛ォ゛!! ォ゛ォ゛ォ゛――お゛え゛ぇ、ヴぅ――即死しないから、イ゛デェ゛ェ゛ェ゛ーーーッ!!!!!!!」
(――でも、ギャンブルには勝ったぞオラァ!!!)
鮮血はもちろん、涙、鼻血、涎が勝手に垂れ流れて気持ち悪い。はじけた血肉を『煤』に変え、押し付けた頭がぐずぐずと盛り上がる。骨、筋繊維、肉、声帯諸々が激痛を伴って再生されていく。………痛ってぇよっバァーカッァ!!!
――俺が思いついた打開策は、単純なことだった。
腕が首から外せないから、いっそ『首そのもの』を無くせばいいと考えたのだ。そして、ただ『取る』だけなら『黒煤』でもできた。そこで、ついでの過程で武器も一緒に創れたら一石二鳥じゃね? とバカなことを思いついてしまった。
しかも、俺には『即死・絶命』、『失神・気絶』抵抗がある。だから、躊躇もなく実行に移せた。……うん、俺もだいぶイカれた発想できるんだな、ってなったわ。
「――お前は寝てろっ!」
――――ッズュッ、グッジュッ!
走りながら転がる『煤玉』を引き寄せ、『剣騎士』に投げつける。顔を完全に潰し、『ソウル』を確認したところで――視線を、ようやく『外套騎士』に向けた。
――――ドムッ!! ガンッ! ドッスッ!!
「――――ゥ゛ッ゛……ッ゛ゥ……ヴゥ゛ッ゛!!」
――サクの口を鷲づかみにして、何度も地面に叩きつける騎士。フードが被さって彼女の表情はうかがい知れないが、漏れ出る声が力なく聞こえる。
「…………」
俺は静かに、『黒い大剣』を持つ反対の手に『錬創剣』を出した。生まれて初めて、自分の中に芽生えたであろう――『本気の殺意』を携えて駆け出した。
[【剣魔錬創Ⅰ】を任意発動]
⇒『調整』を放棄しました
⇒『錬創剣』の具現化します
[リンッ――【下剋上】を発動]
⇒『対象』を更新します
[リンッ――詳細判明、【呪術】〈贖いの鈍香〉を開示します]
[リンッ――状態異常[弱体]を検出]
[リンッ――状態異常[鈍化]を検出]
[リンッ――〈呪イ抵抗〉を得ました]
[リンッ――〈呪イ抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈呪イ抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈呪イ抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈弱体抵抗〉を得ました]
[リンッ――〈弱体抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈弱体抵抗〉が強くなりました]
[リンッ――〈弱体抵抗〉が強くなりました]
――――
――
[※リンッ――【苦シテ楽ナシ】を発動]
[※リンッ――〈砕頸耐性〉を得ました]
[※リンッ――〈咬顔耐性〉を得ました]
[※リンッ――〈撲砕耐性〉を得ました]
[※リンッ――〈脳震耐性〉を得ました]
―――――――――――――――――――――――――
◇錬創剣(New)
≪New≫≪赦鋼の大剣≫:『聖灰の鉄塊』と『重鋼の背骨棒』を用いた錬創剣。超重、超硬の片刃大剣。骨のように真っ白な刀身は、光を受けることで神秘的な輝きを宿す神聖な重刃
◇サクのステータス(New)
〇状態異常:月詠/休眠/暗示/瀕死/打撲/呪い/弱体/鈍化/精神疲労/内傷/断裂/出血/骨折/呼吸困難/神経障害/頭痛/喉損傷/裂傷/頸部損傷/脳震盪
〇固有技能
≪New≫【喧嘩上等】:『無手の時』のみ任意発動。全能力激化補正。[反動軽減]付与。また、『一対一の時』のみ、更に極化補正。???
【喧嘩上等】
「私の開示、まだまだ先じゃなかったでしたっけ? ここじゃないですよね?? もっとかっこいいタイミングでしたよね?? 騙したんですか???」
赤べこ
「ごめんなさいごめんなさい。……ただ、頻繁に使うのに引っ張り過ぎなのはどうかなって……。出すにしても今かなって……」
【喧嘩上等】
「あ゛ぁ゛??――」
赤べこ(負傷)
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……――」




