0995・久しぶりにガイアへ
Side:カルティク
朝起きて、早速ミクに話を聞く。昨日は東ガウトレア第2西町に泊まったんだけど、中央ガウトレアをそこまで調べる事は出来ていなかった筈。場合によってはこの町で少し留まっておく必要もある。ミクの神命はゴミを食い荒らすか善人化する事だからね。
子供達がまだ寝ているので【念話】で会話をするも、ミクからの返答は意外なものだった。
『昨夜ファーダとノノが鳥になって様々に飛んでたけど、そこまで悪人が増えているなんて事は無かったよ。アレは王都だからこそ、だったみたい。要するにそれだけ腐る可能性の高い者が多く居たってこと』
『それはまあ、分かるけど……。でも、それを言い始めたら他の町にだってそういう者は居るでしょうに』
『そうじゃなくて、他の町なら悪人になりそうな者を善人になった連中が見張ってる。止めたり注意したりしてるみたい。元々チンピラっていうか悪人だから、普通のヤツも注意されたら従うんだよ。怖いから』
『ああ、そういう事ね。ただ、王都の連中は憲兵隊とチンピラ、それに貴族どもだもんね。そこまで悪人じゃなかったのと、政治は清濁併せ呑む必要があるから、そこまで悪人判定されてないって事なんでしょう』
『うん、私もそう思ってる。真っ先に穢れたのが王都っていうのが、非常に皮肉が効いてて面白かったね。ウェルキスカ王国の中で、最も取り繕ってるだけの汚い町』
『止めてあげなさいよ、気持ちはよく分かるけど。でも平民街の方はそうでも無かったんだから、やっぱり腐らせてたのは体制側か』
『そうだね。権力側と関わってるヤツが腐りやすいんだろうさ。もしくは狙われやすい』
「あ、う! あーあ!!」
「はいはい、今行くよー。ベルが寝てるから静かにね。………大きい方か。すぐに取り替えるから待ってね」
ミクがさっさとおむつを替えると、フィルは落ち着いたけど手足をバタつかせるのは変わらない。どうやら運動をしているみたいね。それとも動きたいだけかしら? 元気があり余ってるみたいだから良い事なんだけど、昨日から急ね。
それをミクと二人で見ながら、ベルに当たらないように少しズラして寝かせる。御機嫌にジタバタしてるけど、今までとガラッと変わってしまったのに少々驚く。まあ、男の子なんだから本来はこれぐらい元気なのしかしらね。
御機嫌に動いているフィルを見ながらホッコリしつつ【念話】で話していると、アレッサとイリュが同時に起きてきた。この二人、昨夜寝る前にテキーラを飲んでたのよねえ。よくもまあ、あんな強いお酒を飲むものだと思うわ。
「うー………【聖清】」
「せ、【聖清】。………ふぅ、頭が痛かったから、間違いなく二日酔いになってたわね。それにしても二人だったから、ちょっと飲み過ぎたかしら?」
「飲み過ぎたも何も、よく見たらテキーラの瓶の横にスピリタスの瓶まであるじゃない。何考えてるの、何を!」
「いやー、凄く強いお酒って気になるじゃない? だからちょーっと興味本位でさ、飲んでみた訳よ。どうせ魔法を使えばアルコールの悪影響なんて無くせるんだし、そもそもアルコールの悪影響なんて修復出来る体だし」
「まあ、それはそうだけどね。それでも子供の見本にならない行動は謹んでほしいわ。言っても聞かないだろうけどさ」
「………」
目を逸らしているから聞く気は無いようね。まあ、数百年の付き合いだから今さらなんだけど。それはともかくとして、ミクがミルクの用意をして飲ませていると、ベルが目を開けてムクっと起きたわ。
「あら、おはよう。今日の目覚めはバッチリみたいね。すぐに起き上がったくらいだもの」
「おはよう、ベル」
「おあよー」
「おはようよ。お、は、よ、う」
「お、あ、よ、う」
「うーん。まだ「は」が難しいのかな? まあ、急ぐ必要も無いから少しずつ上達していきましょう」
「あい」
ベルに早速【聖清】を使って綺麗にすると、イリュがトイレへと連れて行った。私達はそれを見送りつつ部屋の片付けを行い、イリュが戻ってくる頃には片付けとフィルのミルクは終わっていた。
イリュも片付けを行い、最後にミクが部屋に【浄滅】を使って宿を出る。そのまま食堂に行って朝食をとると、私達は一気に東ガウトレアの第2南町付近にまで移動。そこでバイクを降り、アイテムバッグに収納したら誰も見ていない事を確認。
ミクが【転移】の魔法を使い、私達はガイアへと飛んだ。
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Side:北条光時
今日は産まれた子供を初めて遥さんの所へ連れて行く日だ。葉月家の頂点なんだけど、20歳にまで若返ったからか遥さんってお呼びしないと怒られるんだよな。まあ、年寄り扱いすると怒られるのは仕方ないんだろう。
それはともかく、俺達はいつも通りの二郎衛門さんの運転で葉月家の本邸まで来たんだけど、その目の前で誰かが現れた。まるで空間が歪んでいくような光景に唖然としていると、そこから現れたのはミク達だった。
「……ん? ミツか。おそらく偶然のタイミングなんだろうけど、珍しいね。どうかした?」
「どうかしたって言われても………。俺達は遥さんの所へ産まれた子供を見せに来たんだよ。まあ、今まで何度も会った事はあるんだけど、まだ幼いから家からは出せなくてね。この子が彼方で、こっちが奏だ」
「お久しぶりです。どちらも北条になってしまうので私達の名字で言うと、この子が葉月彼方です」
「こんにちわ、お久しぶりです。私の子が京華奏です」
「カナタとカナデね、宜しく。ちなみにこの子はフィルアラーン・ヨーグスル・ダスガンド。ダスガンド帝国の皇族の血筋に連なる子供だよ。血筋っていうか直系だけど」
「私が抱いてるこの子が、ベルホープ・ヨーグスル・ダスガンド。フィルと同じくダスガンド帝国の皇族直系の血筋よ。色々あって私達が育てる事になったの。ね、ベル、私達がママよね?」
「あい!」
「は、はぁ………何かあったんでしょうが、詳しく聞くのは止めておきます。それよりまずは入りましょう。子供達と外に居る訳にはいきませんし」
「そうね。私達もハルカに話があるから伝えにいかないといけないし、丁度良かったわ。曾孫が居るなら機嫌は悪くならないでしょ」
イリュの一言に微妙な表情をする三人。気持ちは分かるけど、諦めなさい。私達とて似たようなものだから。
ガイアまで来たのはバイクか車を作ってもらわないと困るからだしね。とはいえ、お金はあるしハルカの伝手があれば問題ないと思うんだけど。
私達は三人と一緒に葉月家の屋敷に入り、そのままハルカの執務室まで案内された。どうやら私達は体裁を取り繕う相手ではなくなったようね。まあ、近しい者扱いは面倒が無くて楽でいいわ。
「……ミツや八重に桜が来るのは聞いてたけど、何でミク達が居るんだい? しかも子供を連れてるしさ。アンタ達が産んだ訳じゃないんだろう?」
「残念ながら私達は無理よ。私が<幻想精霊種・空間>になったし、カルも<幻想精霊種・闇影>になったもの。それにアレッサは元々吸血鬼だし、今は<真・吸血鬼族>に変わったわ。だから子供を産むなんて不可能よ」
「ああ、うん。よく分からないけど、産めないというのは分かったよ。じゃあ目的はなんだい?」
「わたし達の目的は後でいいよ、時間が掛かるし。ミツ達の用件を済ませたら?」
「俺達はそもそも子供の顔を見せに来ただけで、それ以上は何も無いんですけど?」
「という事で、用があるんなら早めに頼むよ」
まあ、良いのならミクが話すでしょ。それが一番聞いてくれそうだし。




