0989・王都をウロウロ
Side:ミク
あれ以降、バカなヤツが絡んでくる事は二度と無かった。もしまた絡もうとしたら再び気絶させてやるつもりだったんだけどね。【念話】で皆と話し合ったし、そのつもりで準備もしてたんだけど、ヘタレたのかこちらへ来る事は無かった。残念。
食堂を出た私達は再び町中をフラフラと歩きつつ、適当に色々と見て回る。意外にも子供達は適当な場所で遊んでいるらしく、住宅街の更地の場所で多人数で遊んでいるようだった。私達もそこでベルを遊ばせる。
私が出したのはゴムボールで、握り拳くらいの大きさの物だ。それをベルに向かって転がすと、ベルはそれを手にとって確認し始めた。その間にイリュは離れ、アレッサが横から説明する。
「そのボールをイリュに向かって投げるのよ。そしたらイリュが返してくれるわ」
「うん。………や!」
ベルは両手で上に掲げるようにボールを持つと、腕を振り下ろすように投げた。説明も無しに投げさせたけど、なかなか優秀なんじゃないかな? いきなりできちんと投げられたんだからさ。いきなり「投げて」と言われても普通は分からないでしょ。
ベルが投げたボールはそれなりに飛んだけど、イリュには届かなかった。イリュは前に出てボールを取り、ベルに向かって転がす。そして転がってきたボールをキャッチしようとして失敗、ベルは体で受け止めた。
とはいえ薄いゴムのボールなので痛みは無く、体で止めたボールを両手で持ち上げて、またもや上に掲げて腕を振り下ろす。なかなかに豪快な投げ方だなと思うも、それで投げられているのだから訂正する必要はないだろう。
ベルは投げるのが面白いのか何故か笑いながら投げている。というか、体で受け止める時も笑っているので、単にボール遊びが面白いだけだろう。そんな遊びをベルとやっていると、フィルも気になって仕方がないようだ。
私はベルに対して横向きになると、フィルはボールを投げたり受け止めたりしているベルを見て、ベビーキャリアの中で体を動かし始めた。お姉ちゃんと一緒に体を動かしているつもりなんだろうか?。
それは横に置いておくとして、そもそも生後四ヶ月で目が見えてるよね? 人間の赤ん坊の目がいつから見えるか知らないけど、明らかに早いんじゃないかという気がする。<超人族>だから既に違うとはいえ、分かっている者にはバレそうな感じだなぁ。気をつけよう。
そう思いながらもイリュとベルが遊んでいるのを見ていると、子供達が近くに寄ってきた。おそらく4歳ぐらいから10際ぐらいだと思うけど、明らかにその目線はボールに向いている。まだゴムのボールとかは無いのかな?。
イリュがボールを転がそうと思ったけど、ふと止めて私に向かって投げてくる。私はそのボールをキャッチしてアイテムバッグに仕舞った。そうすると、あからさまにガッカリした雰囲気を出すガキども。悪意が向かってきているのはバレバレだったのでボールを仕舞ったんだよ。
おそらく何処かのタイミングで奪うつもりだったんだろうけど、そんな事を許す筈が無いだろうに。イリュがベルを抱き上げたけど、ベルも近くにガキどもが集まっていたのは分かっていたので若干不安そうにしていた。なので遊びを終わらせるタイミングとしては丁度良かったんだろう。
それにしてもガキどもまで何かを奪おうと接近してくるとは、思っている以上に野蛮な惑星だね。それともウェルキスカの王都がそういう場所なのか。
昨日の事といい、王都のイメージはどんどんと悪くなる一方だよ。ま、今回も長居はしないんだけどさ。
更地の遊び場を後にした私達は、再び町中をウロウロと移動する。ある程度の距離を離れたらベルを下ろして歩かせると、再び楽しそうに歩き始めたベル。すると突然泣き始めたので慌ててイリュが確認すると、どうやら漏らしてしまったらしい。
すぐに路地に入り、ベルのズボンを下ろしておむつを脱がせ、【清潔】で綺麗にして新しいのを履かせる。最後にもう一度【清潔】を使って綺麗にし、ズボンを履かせたら完了。その頃にはベルも泣き止んでいた。
再びベルを歩かせる形で移動していくも、周りを三人が囲んでいるので怪我をする心配は無い。流石に子供まで悪意を持って近付いてくる恐れがある以上、囲んで守る必要があるだろう。
そのままウロウロとしていると、前から兵士がやってきて私達の前に立ち塞がった。それを見てベルが慌ててイリュの足にしがみつく。イリュは頭を撫でつつ抱き上げ、兵士達を睨みつける。こいつら私達に喧嘩を売ってる?。
「貴様等が昨日、憲兵隊の兵舎で取調べを受けた事は分かっている。素直に同行せよ、さもなくば容赦はせんぞ!」
「そう、じゃあ全員死ね」
イリュは即座に兵士五人を空間に閉じ込めて圧迫していく。空間に閉じ込められたのが分かったのか、すぐに小銃を構えようとしたが、もう構えられる隙間も無い。
そうして潰されようとしていると、新たな者が現れた。というか見ている奴が居るって分かってたから、イリュも即座に殺そうとしたんだよね。
「待て! 貴様らいったい何をしている!!」
「やっと出てきたと思ったらお前も死にたいようね? だったら今すぐ死ね」
「うぉっ!? ぬっ! 動けぬ! こんなバカな!! 私はこの国の王太子だぞ!! 分かっているのか!?」
「知っているわ。王族だろうが貴族だろうが、死ねば肉の塊にしかならない事をね。だから殺すのよ。いい加減、高が人間種如きが調子に乗るな!!!」
そのままイリュは先に兵士を押し潰して殺してしまい、死体は昨日と同じく転移されて消える。次に王太子を殺そうとした段階で残っていた連中が出てきて、私達を攻撃してきた。
しかしアレッサが血の壁を作り出し、全ての銃弾を受け止めて下に落とす。その間にも王太子は潰れていく。
「くそっ! このままでは潰れてしまう!! 誰か助けろ!! 私をいますぐ、ぐぶぅぇ! たしゅけ」
王太子が潰れていく最中、私達全員に対して銃弾が撃ち込まれたものの、それは狙撃銃の弾だった。しかしアレッサは血の盾で受け止め、カルティクは闇影空間で転移させて狙撃手へ。イリュも狙撃手へと返し、私は素手でキャッチした。それも御丁寧に私とフィルを狙ったものだ。
カチンと来た私は、その一瞬で狙撃方向を調べ上げ、全ての狙撃手の首から上を貪り喰った。そもそも顔を変化させるのは目の前の連中に対して見せ付ける為であり、ただ喰うだけならばそもそも顔を変化させる必要も無い。指先で十分である。
あっと言う間に首から上が貪り喰われたが、狙撃手と共に居る兵士がパニックに陥っている。それはそうだろう、突然近くに居た狙撃手の首から上が無くなり血が噴出するのだ。人間種如きでは意味が分からないだろう。
そのままイリュは王太子を押し潰しそうとしたが、その瞬間、慌てて出てきた者が土下座をする。
「申し訳ありません!! 全てはこちらの所為でございますが、どうか王太子殿下を殺す事だけはお止め下さい!! お願いいたします!!!」
急に現れたのは鬱陶しいハンター協会の受付嬢だ。何故この女が現れたのか知らないが、私達に喧嘩を売ってタダで済むと思っている方がおかしい。
「お前達は何か勘違いしているわね? 私達は相手が誰であろうと、喧嘩を売ってきた以上は殺す。そこに王族とか貴族とか関係無いのよ。何を勘違いしているのかは知らないけどねえ」
「あぶぐぶぅぇ、たす」
「お願いいたします!! どうか! どうか命だけはお願いします!!!」
いちいち鬱陶しいヤツだね。こんな所で土下座。これじゃ許さない私達の方が悪いみたいじゃないか。




