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0986・取調べと愚か者




 Side:イリュディナ



 「うー………」


 「ごめんね、ベル。どうにもまだここに居なきゃいけないみたい。せっかく王都の観光をしてたのに、あんなゴミどもに邪魔されるとは思わなかったわ。前もそうだったけど、王都って碌な所じゃないわね」


 「それは申し訳ない。ところで取調べを始めさせてもらっていいかな?」


 「構わないけど、早くしてくれる? ずっとこんな辛気臭い所に放置されてるのよ。子供連れの女性に対してする事じゃないわ。王都の憲兵隊というのは、随分とマナーが無いみたいね」


 「キサマッ!?」


 「止めろ。その事については申し訳無いが、我々にも事情というものがあるのだよ」


 「身内がチンピラとつるんで悪さをしていたから捕縛するっていう事情? それは単なる不祥事と言うのよ」


 「なっ!?」



 目の前に居るそれなりに階級が上そうなヤツは、一瞬渋い表情をしたわ。憲兵隊の中に悪事を働く者が居た。それが王都民の中に噂として広がると堪ったものじゃないものねえ。信用というのは何だかんだと重要なのよ。特に王のお膝元の憲兵隊に信用が無いなんて最悪。


 他の都市にまで噂が波及する恐れがあるわ。王都ですらチンピラと結託しているのだから、地方はもっと酷いんじゃないかとね。王都の憲兵隊の所為で、地方が余計な苦労を背負いこむ羽目になったら……。突き上げが凄い事になるでしょうよ。


 当然その地の貴族も攻撃してくるだろうし、いちいち面倒な事になるわ。王様も頭が痛いでしょうねえ。



 「まったくもって君の言う通りだ。随分とそういった事に詳しいようだが、何か過去にあるのかね?」


 「何もないわよ。強いて言えば、色々なものを見てきただけね。そう、〝色々〟と」


 「そうか。………それで、王都の大通りで決闘騒ぎを起こしたようだが?」


 「決闘騒ぎなんて起こしてないわよ。一方的に連中が銃を抜いて撃ってきただけ。そもそも決闘はお互いに銃を抜かなきゃおかしいでしょう。私達は銃を抜く事もしていないんだもの。なら、それは決闘ではないわね?」


 「………確かに理屈の上ではそうなるな。しかしあのチンピラどもは手に銃弾が当たったとおぼしき傷を受けていた。それをどう説明するのだ?」


 「そんな事を言われても困るわ。自分の手を撃ったんじゃないの?」


 「そんな事がある訳ないだろう!! 貴様がやったんだろうが!!!」


 「うう、うぇぇぇぇぇぇん!!!」



 流石に鬱陶しいゴミどもが圧力を掛けてくる所為で、ベルが泣いてしまったわ。私は慌ててベルを強めに抱き締めて頭を撫でる。「大丈夫、大丈夫」と声を掛けると、少しずつベルの泣き声が治まってきたわ。やれやれ、余計な事をしてくれるわね。



 「チッ! ガキが鬱陶し……ゴハッ!?」



 私は【空間操作】を使い、横で騒いでいたゴミを壁に叩きつけた。お前の命なんて何の価値も無いのよ。カスがいったい何を勘違いしているのかしらねえ……!。



 「今すぐお前達ゴミを皆殺しにして出て行っても良いんだけど? 何で人間種如きが調子に乗っているのかしらねえ……! そこまで殺されたいなら、今すぐ殺してやるぞ」


 「「………」」


 「どうした、何を震えている? お前達が喧嘩を売ってきたんでしょう? 高々矮小な人間風情が調子に乗って私に喧嘩を売ってきたのだから、当然滅ぼされる覚悟があると見做す。覚悟はいいか、ゴミども……!!」


 「……ま、待ってくれ! そこの者は叩き出す! だから落ち着いてくれ!!」


 「落ち着いて〝くれ〟? 随分と私を舐めているようじゃないの。どうやら貴様ら人間は生きる価値も無いらしいな。未だに己の立ち位置すらわきまえないとは。救い様の無いゴミめ」


 「待って下さい。お怒りはもっともです。この者は叩き出しますので、落ち着いて下さい。お願いします!」


 「た、隊長! こんな女如きに何故!? たいちょ、なんだ、コレは!?」


 「何って? 空間を操っているだけよ。矮小なゴミに生きる価値など無い、愚かにも勘違いしたまま死ね」


 「な!? 空間って……何が!? 動けない! 隊長、動けません!! 何かが迫って、隊長、助けて下さい! 隊長、たいちょ、ぎゃあ! あし!? ぐぶ、ぅぇ」



 私は360度、全方位から空間を狭めていき、人間一人を押し潰した。おびただしい血を噴出する筈が、その血や肉は全て空間を転移させて王都の外に捨てている。隊長と言われた偉そうな男は、部下が押し潰されるのを見て顔が真っ青になっている。



 「私にとって何の価値も無いゴミだというのに、いったい何様のつもりなのやら。私の大事なベルを泣かせた以上、死、あるのみ」


 「………」



 目の前の男もようやく理解したようね。世の中には押さえつける事の出来ない怪物が居るという事を。確かにミクほどの怪物ではないとはいえ、高が人間如きが調子に乗っていい相手じゃないのよ私は。かつて<鮮血の女王>と呼ばれていたのは伊達では無いのだしね。



 「で、お前はどうするの? このままここで下らない事を続けるのか、それとも私達をさっさと出すのか。時間の猶予は無いわよ? ここの憲兵隊がチンピラと結託して下らない事をしてくれたのだしねえ」


 「す、すぐに手続きを終わらせます!」



 一応情報は聞いておかないといけないとの事で、最初から事のあらましを語っていったけど、最初からそうやって話を聞いておけば良かったのよ。


 それを下らない圧力でも掛けようとしたのだから、その結果下らないゴミが死んだだけ。最初から普通に話を聞いておけば、こんな事にはなっていない。


 徹頭徹尾、自業自得でしかないのよ。そもそもまず最初に圧力を掛けるなどと決めたバカが悪いのだし、仮に他の者にはそれで上手くいっていたとしても、私に対してそれで上手くいくとは限っていない。


 この国の法律に照らし合わせれば、私は間違いなく殺人犯でしょう。しかし目の前で潰れた死体は消えている。目の前のコイツにとっては何処に連れて行かれたかも分からない。今はそういう恐怖で頭がいっぱいな筈よ。


 おそらく数日置けば冷静になるでしょうけど、今はまだ無理。そして今日の夜に再び悪人は善人に変えられる。なら後は放っておいても問題無いでしょう。そもそも敵になった以上、私も容赦なんてしないしね。


 取調べはすぐに終了し、私は憲兵隊の建物の外に出る。アレッサは建物の前で待っていてくれたみたいね。お互いに挨拶をしてゆっくり歩いて離れる。アレッサの方は大丈夫だったのかしら?。



 「わたしの取調べ? 確かに圧力を掛けようというバカは居たわね。殺気と殺意で早々に気絶させてやったわ。泡を吹きながら漏らしてたけど、わたしは知った事じゃないしね。何より笑顔でやってやったからか、その後はすぐにまともな取調べに変わったわ」


 「アレッサは気絶程度で許したのね。私なんてベルを泣かせたから、圧縮して殺してやったわ。血や肉に骨は王都近くの森に転移させる形でね。おかげで理解不能な死に様だったからか、恐怖で真っ青になっていたわ」


 「そりゃそうでしょ。目の前で空間ごと圧縮されていく様なんて見せられた日にはトラウマものよ。流石は<鮮血の女王>、容赦がないわねえ。とはいえ喧嘩を売ってきたバカが悪いんだけどさ」


 「当たり前よ。そもそも普通に取調べをしていれば良かったのに、何を調子に乗って恫喝紛いの事をしてくれてるのかしら。そんな事をするから死ぬのだし、そんな事をするマヌケが悪いのよ」


 「まあ、それはそうね。それにイリュがそこまで怒る事があったんでしょうし」



 あのゴミ、ベルを鬱陶しいガキとか言ったのよ。それだけで私が容赦をしてやる必要が何処にも無いわね。


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