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0980・ダンジョンマスターと神と帝国




 Side:カルティク



 「チィ! ネズミ風情がいちいち面倒な!! ならばこちらを喰らうがいい!!」



 そう言って老人が取り出したのは銃口が2つのショットガンだった。さっきのはリボルバーだったけど、ショットガンに替えたところで意味は無いのに。そう思っていると、ショットガンからは「ボン!」という音が聞こえた。


 意味が分からないので確認すると、なんとショットガンの銃口の先から風の塊が2つ出ている。つまりアレはショットガン風の魔法銃らしい。まさかこんな所で魔法銃を見るとは思わなかったし、流石にちょっとビックリしてしまったわね。


 そんなショットガンの攻撃も続かず、どうやら老人は魔力が枯渇気味になったらしく、気分が悪そうにしながらも呼吸を整えている。



 「はぁ、はぁ、はぁ。おのれ、よもやここまでとは思わなんだぞ。仕方ない、神よ、さっさと出て来い! 貴様がやらせた事だろうが、さっさとワシを助けろ!!」



 そうダンジョンマスターが言うと空間が歪み、そこから紫色をした人型が現れた。おそらく何かの神なのだろうが、何の神なのかは不明ね。流石に見た目では分からないわ。その神は私達を無視してダンジョンマスターと会話を始めた。



 「貴様からの呼び出しとは珍しいな。普段は好き勝手に下界を荒らしていて我の命も聞かぬ癖に、どうしたというのだ?」


 「ふん! 貴様の命に従って動いておろうが! いちいち細かく言うてくるのが鬱陶しいから聞き流すだけだ。それに貴様の言う通りに混乱を作り出しておろうが。ワシの配下である獅子隊が、いったいどれだけの混乱をもたらしてきたと思っておる」


 「ははははははは、我の命令通りに下界を荒らしておるのであれば構わん。しかし貴様は<ハードバレット>とかいうのの経営でらぬ事が多いでな。最近はとどこおっておったであろう? うん?」


 「くっ……そんな事はどうでもいい。それより神よ、ワシの力では倒せん者が来た。これから先も下界を混乱におとしいれる為にも、そいつらをさっさと処分しろ」


 「人間如きが随分と偉そうにホザくものよ。まあ、よい。さっさとそこのゴミど」



 紫色の神がこちらに振り向こうとした瞬間、「バクン!」という感じでミクが喰らった。今のミクは首から上が化け物になっており、閉じた口がモグモグとナニカを喰らっているのが分かる。どうやら神を喰らっているらしい。


 それを見た老人は目が点になっており、ただただ呆然とした表情で怪物がナニカを咀嚼するのを見ていた。


 そんな光景の中、ミクは神を喰っているのとは〝別の口〟で話し始める。



 「こいつはどうやら魔を司る神のようだ。主に魔力や魔素の類を司っているな。神核を含めて貪ったので、それなりの権能が使えるようになった。これで闇の神も空間の神も一息吐くだろう。後はこのゴミだけか、逃がしはせん」



 そう言うと逃げようとしていたのか、ダンジョンマスターの近くには魔力が集まっていたのだが、それが一瞬にして消えた。おそらくミクが魔力を喰らったのだろう。そしてその隙に善人化したのか老人が倒れ、表情が一瞬にして変わる。



 「おお………何と言う愚かな事をしていたのか。これまでの私は猛烈に愚かであったようです。幾ら神に命じられたからといって、下界に混乱をもたらそうとするなど……!」


 「それが分かったのであれば良い。あまり愚かな事をしていると私に喰われるぞ? 愚かな神とて喰らってこいと命じられたのが私なのだしな。上には上が居ると理解しておけ。そして頂点たる神々の慈悲は既に無い」


 「はい、分かります。今までの私も含めてあまりに人は愚かでございますし、そのような者どもに対して神の慈悲が失われるは当然の事。目の前で神が喰われたのも仕方のない事なのでしょう」


 「そうだ。そしてお前を生かしたのはダンジョンマスターだからに過ぎん。今までの愚かさを猛省し、これからは善行に励め。良いな」


 「ハハッ!」



 何だかミクの家臣みたいな感じになっちゃってるけど、気にしたら多分負けね。そこはスルーして喰い終わったミクは、ダンジョンマスターから様々な事を聞き出していく。


 実はこのダンジョンマスターは重要な情報を大量に知っており、ここへ先に来て情報がゲット出来たのは私達にとって幸運だった。これも日頃の行いの御蔭かしら? 何が良かったのか知らないけど。


 十分な情報を聞いたミクは時間なので帰る事を言い、ダンジョンマスターの部屋を後にした。そのまま一気に地上まで走っていき、夕方前には地上に戻ってくる事が出来たみたい。やれやれとは思うけど、少々話を聞き過ぎたかしらね?。


 私達は何でもないような感じで帝都へと歩きつつ、【念話】で改めて確認していく。内容は神を喰らった結果からだ。



 『そうだね、特にこれといった権能ではないよ。魔素を集めて魔力に変換する効率が随分と上がったとか、魔石を無理矢理に作り出せるとか、細胞一つ一つに溜め込める魔力が増大したぐらいかな? 他にも細々とあるけど、大きいのはそんなもの』


 『少なくとも人工的に魔石が作り出せるって時点で色々とおかしいからね? ミクなら権能を持つ前から出来てそうだけど、普通は無理なのよ? そんなこと』


 『まあまあ。ダンジョンマスターが<ハードバレット>社のトップだった事といい、皇帝が実はあのダンジョンマスターの息子な事といい。ビックリするような内容だらけだったわね』


 『下界を混乱させる為に、神に力を借りて帝国を乗っ取った、ねえ。神の癖に何してんのよ、って思ったのはわたしだけじゃないでしょ』


 『流石にやってる事がメチャクチャよ。しかも先代皇帝の息子と娘は軟禁状態でしょ? よくもまあ、子供を小さい時にすり替えるなんて事をするわね。軟禁されていても生きてるから良いけど、死んでいたら血筋が絶えていたところよ』


 『とはいえ絶えるしかないんじゃない? この星に血を鑑定する技術なんて無いんだし、そうなると今の皇帝が権力を握っている以上はどうにもならないでしょ。ミクだって表沙汰にするのは止めろって言ってたし』


 『今の状況じゃ、血筋が違うとバラしても誰も得をしないからね。言葉は悪いけど、こういうのは何処の星でもある事だよ。今さらと言うしかない。何より本当の皇帝の血筋を助けたとて、何か意味があるの? って言えば無いし』



 門番に10ダルを払って通りすぎ、私達はハンター協会に行って獲物を売る。その後は食堂に行って食事をし、宿の部屋へと戻った。



 「<ハードバレット>社の魔法銃が、魔法を撃ち出す事に躍起になっているみたいで良かったわね。それとまさか私が持っている魔法銃が、<ハードバレット>社から流出した物だったなんて思わなかったわ。最初期のプロトタイプらしいけど」


 「そうねえ。魔法銃の研究は<ハードバレット>社がリボルバーに替わる新機軸として作っていたものだった。まあ、特許料を納めなきゃいけない以上、その金額は莫大なものになるものねえ。当然、他の会社も自分達で特許を持つ事を狙う、か」


 「そう考えると、ノルトスは凄い事をやってのけたのよね。それだけの物を生み出したにも関わらず、最後が悪女に殺されるとか……。何とかならないかと考えてしまうわ」


 「どうにもならないけどね。さて、そろそろお腹も落ち着いたし、さっさと寝るかな。何処からも悪意は飛んで来ないし、今日中に帝都も終わるでしょ。明日はウェルキスカに帰る旅路ね」


 「多分そうでしょうね。もし何かが起こったとしても、明後日には帰る事になるでしょう。大した違いなんて無いわ」



 そうね。私もそろそろ眠たくなってきたし、さっさと横になって寝ましょう。それじゃあ、おやすみなさい。


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