0977・南ガウトレア終了
Side:ノノ
現在は夜だが、南ガウトレア第2東町は我の担当となった。今日からはミクが動けるので、第1北東町はミクの担当となり、そこから北がファーダと決まったのだ。なので我が南を担当するしかなくなったわけだな。
それはともかくとして、我は時間を掛ける気は無いので終わらせていき、最後に伯爵邸の奥へと行く。既に伯爵邸の中の者も善人化したので、残るは先代伯爵だけとなる。正直に言って、鬱陶しいだけの小物でしかないのだがな。
本人は理解していないのだろうが、ウェルディと伯爵家の家令は先代が出てきた時に一瞬渋い表情をしていた。ウェルディだけなら他所の家からの輿入れだから分からんでもないが、家令にまで嫌われるという事は何か問題のある人物という事だ。
よし、奥の別邸内の善人化も終わった。後は除けておいた先代のみだ。我はさっさと寝室に入り、魅了の香りを注入して叩き起こす。
「そなたはリュートシア伯爵家の先代だな? 何故あそこまで輿入れしてきた息子の妻を嫌うのだ。あの女は侯爵家の娘だろうが」
「ハッ! 女好きのロクデナシ侯爵の娘の間違いであろう。あんな者の血が我が伯爵家に入り込むなど汚らわしい。唾棄すべき血が入っているなど許せる筈があるまい。せっかく<ヴェノム>を利用して亡き者にしようとしたというのに、使えぬ連中だ」
「<ヴェノム>の裏には貴様が居たのか。侯爵家に怨みのあったリリベルを都合よく利用したという事だな?」
「名なぞ知らぬわ。穢れた血同士で殺し合えばよい。しょせんこの世に存在する価値もないゴミめが、何故死んでおらんのか。どいつもこいつも使えぬ者ばかりよ」
(自分だけは頭が良いと思いこんでいる勘違いタイプか。通りで家令からも嫌われる筈だ。一事が万事この調子なのであろう。むしろ、ようやく退かせて押し込めたのに、まだしゃしゃり出てくるのかと嫌悪しておるというところか。コイツ自身は欠片も気付いてなさそうだが)
「つまり殺そうとした息子の妻が生きていて、それがハンターの所為だと分かったので兵士に捕縛を命じた訳か」
「その通りよ。にも関わらず使えぬ者どもめ。さっさと捕縛して牢にブチ込めばいいものを、いったい何をしておるのか。どいつもこいつも本当に使えぬ役立たずばかりよ」
(誰も彼もお前には言われたくなかろうがな。一番使えそうにない、お前にはな)
「もしかして貴様、<ヴェノム>だけではなく<ゴート>とも関わりがあるのではなかろうな?」
「広域盗賊団の<ゴート>か、聞いた事があるがコンタクトは取れんかったな。それがどうかしたというのか?」
「お前の所為かは知らぬが、リュートシア伯爵家の村が<荒野の鷹>に襲われ壊滅しているだろう。あれはリュートシア伯爵家を狙ったものだぞ。そのうえ、まだ狙われている可能性すらある」
「ふはははははは、村人が死んだからなんだというのだ。殺したければ好きなだけ殺せばよい、代わりなど幾らでも居るのだからな。それにしても愚かなものよ、その程度の事しか出来ぬ者どもだったとはな。しょせんは盗賊か」
(コイツは駄目だな。早くに退かされたのなら、その理由もよく分かるというものだ。こんなヤツに領地を持たせても発展させる事など不可能だろう。領地が富むとは領民が富むという事なのだ。貴族だけが富んでも、領地は良くならぬ)
「もはや貴様に聞く事もない。あまりに愚かで呆れるくらいしか出来ぬわ。田分け者めが」
我は愚か者の言などこれ以上聞く気も無くなったので、さっさと善人化をしておいた。それも根底から丁寧に書き換えてやったので、二度とおかしな事も口にすまい。もはや完全な別人と言えるほどに書き換えてやったわ。
伯爵もウェルディも不審がるだろうが、善人化しただけなら我らの関与を怪しんだとしても何もするまい。証拠も無ければ根拠も無いのだ。何となく怪しんでいるだけでは何も出来ぬ。少なくとも善人になっているだけならばな。
さて、本当に鬱陶しい者の相手も終わったので、そろそろ我は周辺の村に行かねばな。愚か者の相手で無駄に時間を使ってしまったし、さっさと善人化を進めねばならん。南ガウトレアを終わらせねば帝城のあるアッテールク地方にも行けぬ。
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Side:ファーダ
よし、これで終わりだ。やれやれ、これで長かった南ガウトレアも終わりか。鬱陶しいリュートシア伯爵家の先代を善人化して20日ほど経ったか? 頑張った甲斐もあって、遂に南ガウトレアが終わった。後はアッテールク地方で終了だ。
アッテールク地方は小さく、実は帝都の近くは断崖絶壁になっていて、その先は海になっている。つまり帝都の背後と側面は山だが、背後の山の先は海という事だ。なので帝都を背後から強襲する事は出来ない。
意図的にこういう場所に都を作ったのだろうが、不便な場所によく作るなと呆れてくる。正直に言って攻められ難く守りやすいというだけで、それ以外には価値の無い立地だと思う。
このアッテールク地方を守っているのも二つの侯爵家だけらしいしな。何というか、古臭い考えに固まってる都という感じか。守る事は出来るだろうが、発展の事は考えていなさそうな感じだ。
それはともかく、既に南ガウトレア第1南西町まで来ているのだ。後はここからアッテールク地方に進んでいくだけだ。一応は帝都まで特に止められる場所も無いそうなのだが、少し先行して調べておくか。
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Side:ミク
ようやく昨日、南ガウトレアを終える事が出来た。もうちょっとで帝国も終わりだけど、ここからが大変だとも言えるかな。何と言っても帝国の中心へとこれから行く事になるんだから、色々な揉め事もあるだろうしね。
このまま進んで行くとはいえ、ここに来るまでにも色々とあった。<荒野の鷹>は見つけたけど、まさか村を巡りながら薬物の原料を探してるとは思わなかったよ。そのうえ乾燥させたりとか自分達でしてるしさ。
あまりにも手慣れすぎてて、そういう業者かと思ったくらいだよ。全員が濁った目をしていたから、すぐに薬物中毒者だと分かったけどね。ガイアの薬物中毒者も同じ感じだったから、すぐにそういう連中だというのは理解出来た。
だからこそ見つけて即潰したんだけど、死体は喰わずに薬物原料と共に燃やしてやったよ。奴等、薬物の原料欲しさに村を襲って皆殺しにしていたからね。全く制御出来ていないし、あの<ゴート>の幹部は何を思って上手く使えていると思っていたのやら。
おっと、アレッサが起きたか。二人もそろそろ起きそうだし、片付けられる物は片付けておくかな。
「おはよう……」
「はい、おはよう。今日からアッテールク地方だから、そろそろ帝国も大詰めだよ。何かが起きるかもしれないけど、何も起きないかもしれない。そんな感じだね」
「あー、うん………。アッテールクって帝都がある地方か。確かに隣まで来てるし、昨夜ファーダが終わらせてるだろうしね。確かにそろそろ終わりそう」
「おはよう」 「………おは、よう」
「はい、おはよう。カルティクはともかく、イリュは寝起き悪いね。今日は珍しい感じかな」
「昨夜、部屋に戻ってきてからも飲んでたからじゃない? しかもキツいお酒だったみたいだし」
昨日は……テキーラか。確かにキツいお酒を飲んでたみたいだね。適当に出したうちのテキーラだけやたらに減ってるから、ボトルを見ればすぐに分かる。本人は目を逸らしてるけど、飲んだ所為だという自覚はあるんだろう。
証拠のボトルは置いたままだから、目を逸らしても意味ないのにね。




